2024/07/14(日) - 11:46
5月に日本各地を駆け抜けた最高峰のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」。8日間の全日程にプレスとして帯同した小俣雄風太さんと辻啓さんがブロンプトンの12速モデル「Explore 12-speed」を伴侶に、各ステージのレース現場と地元の名所を巡った。「便利な手段」以上の楽しみを見つけたという帯同記を綴ります。
折りたたみ自転車は2024年の今、自転車好きにとって最も面白い分野なのではないかと思い始めている。
昨今、スポーツサイクリング専門誌やウェブメディアのロードバイク偏重が叫ばれている。それが理由かは定かではないが(卵が先か、鶏が先か?)、今日の日本におけるスポーツバイクマーケットの大部分を占めるのがロードバイクであることは疑いえない。
曲がりなりにもいくつかのハイエンドモデルを乗ってきた実感として、ロードバイクはエアロ化の追求の果てに完成形へと収斂(しゅうれん)しつつある。平たく言ってしまえば、どれも似たりよったりの形状で、かろうじてカラーパレットとブランディングで個性を担保している。1秒を争うレースロードバイクの世界においてこれは正常な方向性であって、咎める気はまったく無いのだが、ふと「なぜ自分はこのバイクに乗っているんだっけ?」と我に返ることがある。
レーサーではない私にとっては、1秒を削り出すよりも、バイクの個性と自らのライディングスタイルをリンクさせる喜びの方が重要だ。その意味で、エアロやスピードの追求を免れた折りたたみ自転車には、個性と所有する喜びと、なにより乗る喜びがある。
折りたたみ自転車の代名詞的存在と言っていいブロンプトンと共に、この初夏1週間ほどの旅をしてきた。普段はロードバイクやグラベルバイクに乗るライダーが初めて出会った、小径・折り畳みの世界。「自転車に乗ること」の意味を広げてくれたこの旅を通じて、ロードバイク好きにこそ、ブロンプトンの喜びを共有したいと感じている。
きっかけは今年のサイクルモードだった。ブロンプトン・ジャパンがデーヴィット・ミラー氏をゲストに呼び、僭越ながらそのトークセッションの進行役を担当した。そこで語られた氏の言葉に多いに興味を惹かれたのだった。「ツール・ド・フランスの取材時も、ブロンプトンであちこち走り回っているんだ。すごく便利なんだよ」。
ミラー氏は、個人タイムトライアルのスペシャリストとしてロードレース界で一時代を築いたイギリスの元プロ選手。自転車界を鋭利に見通す視点と歯に衣着せない発言は、コメンテーターとしても人気を博している。そんな彼が、ツールの取材の現場にプロンプトンを持ち込んでいるのだという。
ツールを始めとしたレース会場で、ジャーナリストは膨大な距離を歩かされることがある。クルマの駐車場所とフィニッシュエリアが離れていることも、山岳ポイントでクルマを停めるスペースが無いこともざらだ。そんな時はひたすら歩くことになるが、ミラー氏はブロンプトンをさっとクルマから取り出して、スイスイと移動して効率よく取材しているのだと胸を張る。
ライダーとしてではなく、現場で動くジャーナリストとしてブロンプトンに乗ってみたいと思った。サイクルモードが終わって一月ほどして、早くもその機会に恵まれた。日本最長のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンに帯同することになったのだ。プロンプトン・ジャパンに最新の12速の「P Line Explore 12-speed」をお借りして、大阪行きの新幹線に飛び乗った。
公式メディアチームの一員として帯同した今回のツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。フォトグラファーの辻啓も同じチームで、同じくブロンプトンを借りて、隙間時間で乗ってみることにした。共にロードバイクにはしょっちゅう乗っているが、折り畳み自転車に乗る姿は新鮮。なんなら違和感すらある。
ライドのフィーリングに最初は違和感があった。……のだけれど、一度走らせ方がわかると、もたつく感じがなく非常に快適に走ることができる。ちゃんとしたスポーツバイクなのだ。これには二人して驚く。想像以上の走りに、思わず笑みもこぼれる。
大会前日の記者会見の取材を終え、翌日のレースコースとなる大仙公園までライドする。実際に走ってみることで、最終コーナーの深さや路面の荒れ具合などを確かめることができ、翌日のレースを見る目が少し変わった。これだけでもいい収穫だ。フィニッシュラインのバナーを見つけると、ついつい踏んでしまうのは自転車乗りの悲しい性か。
可能であれば、続く日程もレースコースをもっと走りたかったが、毎日の移動と宿の位置との兼ね合いで、日々の業務を終えた後ではなかなかコースまで行くことはできなかった。そのため、ホテルにチェックインしてから、その周辺をライドすることにした。
フォトグラファーである辻啓も、ジャーナリストである僕も、各ステージが訪れる土地を実際に自転車で走ることで得られるものは大きかった。辻啓は風景や景色の予習をすることになり、僕はその土地の風土への理解を深めることができた。これらはそれぞれの発信に活かせるものだ。
毎年決まった周回コースを走るTOJは、コース自体に目新しい変化があるわけではない。しかしブロンプトンで毎日周囲を走ってみることで、改めて地域の変化、すなわち旅するステージレースならではの文化横断を身を以て体感することになった。着順を争う選手たちには、どうしても地域を味わう余裕は無いだろうが、我々のようなメディア側の人間はなるべくその開催地の理解を深めておきたい。TOJという大会のもつステージレースとしてのポテンシャルを知るのにはまたとない方法だったことを記しておく。
小難しく書いたが、要は「日本各地を走れて、自転車の上から見る地域差は楽しい」これに尽きる。
さて、そんな変わった視点をもたらしてくれたブロンプトンだが、その走行性能についても触れておきたい。「ロードバイク畑」の僕が乗り換えても、違和感はすぐ無くなったことはすでに書いた。取り回しよく小気味よい走りに、ミラー氏が「BMXを乗っているかのような自由を味わえる」と言っていたことが思い出される。
Midハンドルはアップライトなポジションとなるため、スピードを出そうとすると立った上半身がもどかしくなることもあるが、そもそもゼーゼーハーハー言いながら乗るバイクではない。むしろ、田園風景や町並み、行き交う人々や商店の軒先を横目に見ながら流して走るのが合っている。
などと言いつつ、翌週に富士ヒルクライムを控えた辻啓が見通しの良い農道でスプリントをけしかけてきて、ブロンプトンでもがき合ってみると、最高時速は44km/hを記録していた。ただの「折り畳めるお洒落な自転車」ではない。
12速の恩恵をまず実感したのは、美濃ステージの前日に走った長良川沿いのコース。緩やかな下り基調に追い風を受けて、どんどんスピードに乗っていく感覚。それでもクランクが回り切ることはなく、踏み応えがあった。もっと下りが急でも、踏んでいけるだけの余地がある。
そしてもちろん登坂である。10%勾配ほどの登り坂ならクルクルと回しながらクリアできる。小径車という特性もあるだろうが、Midハンドルのアップライトなポジションでもハンドルにかじりつかず坂をクリアできたのは、端的に気持ちが良い。
前記事にあるように、12速は内装3速と外装4速の掛け合わせ。もっとも軽いギアでは、ロードバイクのインナーロー36T×30Tとほぼ同等(ギアインチ換算)。そう考えるとある程度以上の登り坂であっても、走れて当たり前とも思えてくる。
右手のシフトレバーが内装ギアの変速を担当するが、変速時に少しペダルを踏む力を抜いてあげるとスムーズだ。また左手のレバーがリアの外装変速を担いギアが軽くなるのは、「左側のシフトアップ=フロント変速=ギアが重くなる」に慣れているローディやMTBerにとっては、直感に反する。ここは乗りながら慣れないといけないが、スポーツバイクに乗り慣れた人であれば、すぐにアジャストできるだろう。
小径車ならではの足つきの良さは、ロードバイクとは全く違っていて、このようなちょい乗りを繰り返すには圧倒的にラクだ。そして後輪側を折りたたんで自立するのも本当に使い勝手が良い。ロードバイクに乗っている時には気にもとめなかった「立てかけられる場所を探す」という行為がこんなにストレスであることを今回始めて知ったのだった。
レースの取材・帯同をするうえでこのような恩恵を感じたのだが、ブロンプトンの機動性をレース会場で最も活用できるのは、やはり観戦だろう。京都ステージでは「ブロンプトンのイベントでもあるのか?」というくらいにブロンプトンでレースを観に来ている人たちがいて、極めて長いホームストレートも快適に移動しながら観戦を楽しむファンの姿が目立った。
飯田ステージではスタート地点から山岳ポイント過ぎのエリアまで抜け道があるから、スタートしていく選手を見送ってからブロンプトンを漕ぎ出せばよい。登り坂も12速なら問題ないし、フィニッシュを見るためにはただ下ればいい。大変便利である。
僕がそうしたように電車での輪行はロードバイクと比べてもコンパクトでしやすいので、「レース観戦+その近隣都市のシティライド」を楽しむ旅は面白そうだ。このあと行われる全日本選手権や、ツール・ド・九州、ジャパンカップなどでブロンプトンを持ち込む計画をすでに立てている。
そうそう、ミラー氏はブロンプトンでガリビエ峠もラルプデュエズも登ったと言っていた! それだけのポテンシャルがあるバイクだから、どこに持っていっても観戦のよいお供になりそうだ。ツール・ド・フランスもいいけれど、周回コースのレースのほうが効率良く回れることを考えると、世界選手権やオリンピックなどでは活躍するだろう。
ロードバイクは乗ることそのものに没頭していく楽しさがあるが、ブロンプトンでは移動そのものが楽しくなる。同じ自転車ありながら、まったく違う体験を味わってしまった今、ロードバイク乗りにこそ、ブロンプトンをおすすめしたい。12速なら大げさでなくどんな峠だって走れてしまう(ふだんロードに乗っている足があるならなおさら)から、自転車生活を深める新たな相棒になる。
速さよりも楽しさが勝る自転車は、人生を豊かにしてくれるはずだ。折りたたみ自転車は、2024年の今、自転車好きにとって最も面白い分野であると思い始めている。
折りたたみ自転車は2024年の今、自転車好きにとって最も面白い分野なのではないかと思い始めている。
昨今、スポーツサイクリング専門誌やウェブメディアのロードバイク偏重が叫ばれている。それが理由かは定かではないが(卵が先か、鶏が先か?)、今日の日本におけるスポーツバイクマーケットの大部分を占めるのがロードバイクであることは疑いえない。
曲がりなりにもいくつかのハイエンドモデルを乗ってきた実感として、ロードバイクはエアロ化の追求の果てに完成形へと収斂(しゅうれん)しつつある。平たく言ってしまえば、どれも似たりよったりの形状で、かろうじてカラーパレットとブランディングで個性を担保している。1秒を争うレースロードバイクの世界においてこれは正常な方向性であって、咎める気はまったく無いのだが、ふと「なぜ自分はこのバイクに乗っているんだっけ?」と我に返ることがある。
レーサーではない私にとっては、1秒を削り出すよりも、バイクの個性と自らのライディングスタイルをリンクさせる喜びの方が重要だ。その意味で、エアロやスピードの追求を免れた折りたたみ自転車には、個性と所有する喜びと、なにより乗る喜びがある。
折りたたみ自転車の代名詞的存在と言っていいブロンプトンと共に、この初夏1週間ほどの旅をしてきた。普段はロードバイクやグラベルバイクに乗るライダーが初めて出会った、小径・折り畳みの世界。「自転車に乗ること」の意味を広げてくれたこの旅を通じて、ロードバイク好きにこそ、ブロンプトンの喜びを共有したいと感じている。
ツール・ド・フランスの取材でブロンプトンに乗るデーヴィット・ミラー
きっかけは今年のサイクルモードだった。ブロンプトン・ジャパンがデーヴィット・ミラー氏をゲストに呼び、僭越ながらそのトークセッションの進行役を担当した。そこで語られた氏の言葉に多いに興味を惹かれたのだった。「ツール・ド・フランスの取材時も、ブロンプトンであちこち走り回っているんだ。すごく便利なんだよ」。
ミラー氏は、個人タイムトライアルのスペシャリストとしてロードレース界で一時代を築いたイギリスの元プロ選手。自転車界を鋭利に見通す視点と歯に衣着せない発言は、コメンテーターとしても人気を博している。そんな彼が、ツールの取材の現場にプロンプトンを持ち込んでいるのだという。
ツールを始めとしたレース会場で、ジャーナリストは膨大な距離を歩かされることがある。クルマの駐車場所とフィニッシュエリアが離れていることも、山岳ポイントでクルマを停めるスペースが無いこともざらだ。そんな時はひたすら歩くことになるが、ミラー氏はブロンプトンをさっとクルマから取り出して、スイスイと移動して効率よく取材しているのだと胸を張る。
ライダーとしてではなく、現場で動くジャーナリストとしてブロンプトンに乗ってみたいと思った。サイクルモードが終わって一月ほどして、早くもその機会に恵まれた。日本最長のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンに帯同することになったのだ。プロンプトン・ジャパンに最新の12速の「P Line Explore 12-speed」をお借りして、大阪行きの新幹線に飛び乗った。
ツアー・オブ・ジャパンが巡る各地をブロンプトンで走る
公式メディアチームの一員として帯同した今回のツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。フォトグラファーの辻啓も同じチームで、同じくブロンプトンを借りて、隙間時間で乗ってみることにした。共にロードバイクにはしょっちゅう乗っているが、折り畳み自転車に乗る姿は新鮮。なんなら違和感すらある。
ライドのフィーリングに最初は違和感があった。……のだけれど、一度走らせ方がわかると、もたつく感じがなく非常に快適に走ることができる。ちゃんとしたスポーツバイクなのだ。これには二人して驚く。想像以上の走りに、思わず笑みもこぼれる。
大会前日の記者会見の取材を終え、翌日のレースコースとなる大仙公園までライドする。実際に走ってみることで、最終コーナーの深さや路面の荒れ具合などを確かめることができ、翌日のレースを見る目が少し変わった。これだけでもいい収穫だ。フィニッシュラインのバナーを見つけると、ついつい踏んでしまうのは自転車乗りの悲しい性か。
可能であれば、続く日程もレースコースをもっと走りたかったが、毎日の移動と宿の位置との兼ね合いで、日々の業務を終えた後ではなかなかコースまで行くことはできなかった。そのため、ホテルにチェックインしてから、その周辺をライドすることにした。
フォトグラファーである辻啓も、ジャーナリストである僕も、各ステージが訪れる土地を実際に自転車で走ることで得られるものは大きかった。辻啓は風景や景色の予習をすることになり、僕はその土地の風土への理解を深めることができた。これらはそれぞれの発信に活かせるものだ。
毎年決まった周回コースを走るTOJは、コース自体に目新しい変化があるわけではない。しかしブロンプトンで毎日周囲を走ってみることで、改めて地域の変化、すなわち旅するステージレースならではの文化横断を身を以て体感することになった。着順を争う選手たちには、どうしても地域を味わう余裕は無いだろうが、我々のようなメディア側の人間はなるべくその開催地の理解を深めておきたい。TOJという大会のもつステージレースとしてのポテンシャルを知るのにはまたとない方法だったことを記しておく。
小難しく書いたが、要は「日本各地を走れて、自転車の上から見る地域差は楽しい」これに尽きる。
さて、そんな変わった視点をもたらしてくれたブロンプトンだが、その走行性能についても触れておきたい。「ロードバイク畑」の僕が乗り換えても、違和感はすぐ無くなったことはすでに書いた。取り回しよく小気味よい走りに、ミラー氏が「BMXを乗っているかのような自由を味わえる」と言っていたことが思い出される。
Midハンドルはアップライトなポジションとなるため、スピードを出そうとすると立った上半身がもどかしくなることもあるが、そもそもゼーゼーハーハー言いながら乗るバイクではない。むしろ、田園風景や町並み、行き交う人々や商店の軒先を横目に見ながら流して走るのが合っている。
などと言いつつ、翌週に富士ヒルクライムを控えた辻啓が見通しの良い農道でスプリントをけしかけてきて、ブロンプトンでもがき合ってみると、最高時速は44km/hを記録していた。ただの「折り畳めるお洒落な自転車」ではない。
12速の恩恵をまず実感したのは、美濃ステージの前日に走った長良川沿いのコース。緩やかな下り基調に追い風を受けて、どんどんスピードに乗っていく感覚。それでもクランクが回り切ることはなく、踏み応えがあった。もっと下りが急でも、踏んでいけるだけの余地がある。
そしてもちろん登坂である。10%勾配ほどの登り坂ならクルクルと回しながらクリアできる。小径車という特性もあるだろうが、Midハンドルのアップライトなポジションでもハンドルにかじりつかず坂をクリアできたのは、端的に気持ちが良い。
前記事にあるように、12速は内装3速と外装4速の掛け合わせ。もっとも軽いギアでは、ロードバイクのインナーロー36T×30Tとほぼ同等(ギアインチ換算)。そう考えるとある程度以上の登り坂であっても、走れて当たり前とも思えてくる。
右手のシフトレバーが内装ギアの変速を担当するが、変速時に少しペダルを踏む力を抜いてあげるとスムーズだ。また左手のレバーがリアの外装変速を担いギアが軽くなるのは、「左側のシフトアップ=フロント変速=ギアが重くなる」に慣れているローディやMTBerにとっては、直感に反する。ここは乗りながら慣れないといけないが、スポーツバイクに乗り慣れた人であれば、すぐにアジャストできるだろう。
自転車レースの現場で乗って気づいたこと
今回、レースの現場に持ち込んでブロンプトンを乗り回した。プレステントから離れたパドックエリアやチームプレゼンテーションエリアにすぐに乗り付けることができ、その機動性の恩恵を味わった。往々にしてフィニッシュライン地点から離れたところにあるトイレに行くのにも、利便性がよかった(12速のバイクなのにそんな使い方でゴメン)。小径車ならではの足つきの良さは、ロードバイクとは全く違っていて、このようなちょい乗りを繰り返すには圧倒的にラクだ。そして後輪側を折りたたんで自立するのも本当に使い勝手が良い。ロードバイクに乗っている時には気にもとめなかった「立てかけられる場所を探す」という行為がこんなにストレスであることを今回始めて知ったのだった。
レースの取材・帯同をするうえでこのような恩恵を感じたのだが、ブロンプトンの機動性をレース会場で最も活用できるのは、やはり観戦だろう。京都ステージでは「ブロンプトンのイベントでもあるのか?」というくらいにブロンプトンでレースを観に来ている人たちがいて、極めて長いホームストレートも快適に移動しながら観戦を楽しむファンの姿が目立った。
飯田ステージではスタート地点から山岳ポイント過ぎのエリアまで抜け道があるから、スタートしていく選手を見送ってからブロンプトンを漕ぎ出せばよい。登り坂も12速なら問題ないし、フィニッシュを見るためにはただ下ればいい。大変便利である。
僕がそうしたように電車での輪行はロードバイクと比べてもコンパクトでしやすいので、「レース観戦+その近隣都市のシティライド」を楽しむ旅は面白そうだ。このあと行われる全日本選手権や、ツール・ド・九州、ジャパンカップなどでブロンプトンを持ち込む計画をすでに立てている。
そうそう、ミラー氏はブロンプトンでガリビエ峠もラルプデュエズも登ったと言っていた! それだけのポテンシャルがあるバイクだから、どこに持っていっても観戦のよいお供になりそうだ。ツール・ド・フランスもいいけれど、周回コースのレースのほうが効率良く回れることを考えると、世界選手権やオリンピックなどでは活躍するだろう。
ロードバイクは乗ることそのものに没頭していく楽しさがあるが、ブロンプトンでは移動そのものが楽しくなる。同じ自転車ありながら、まったく違う体験を味わってしまった今、ロードバイク乗りにこそ、ブロンプトンをおすすめしたい。12速なら大げさでなくどんな峠だって走れてしまう(ふだんロードに乗っている足があるならなおさら)から、自転車生活を深める新たな相棒になる。
速さよりも楽しさが勝る自転車は、人生を豊かにしてくれるはずだ。折りたたみ自転車は、2024年の今、自転車好きにとって最も面白い分野であると思い始めている。
photo&text : Yufta Omata 提供:ブロンプトン・ジャパン