2022/10/14(金) - 17:05
R9200デュラエースで第2世代化を果たしたシマノのパワーメーター。今年に入ってフォースベクトル表示機能が実装され、よりユーザーインターフェイスが向上した注目製品を、シマノ担当者のインタビューをもとに掘り下げる。計測精度をどう向上させたのか、どのような思いで開発されたのか、そして今後の展開についても紹介したい。
一部の海外トッププロ選手だけが使っていた時代を経て、普及価格帯モデルの登場によって、堰を切ったかのように使用率が上昇したのが10年以上前のこと。BB軸型やハブ型、クランク型、そしてペダル型。はたまた心拍数や空気圧で計測する変わり種モデルまで、パワーメーターの進化は留まることを知らず、今やプロ選手のみならず、ホビーレーサーはもちろん、効率良くロングライドを楽しみたい週末ライダーまで幅広いサイクリストに迎えられている。
パワーメーターという言葉が広く知れ渡り、誰もが興味を持っていたからこそ、コンポーネント界最大手シマノが2018年にデビューさせた、同社初のパワーメーター「FC-R9100-P」は待ってましたと言わんばかりに受け入れられた。チェーンリング付きで15万円弱というプライスにも関わらず、シマノクランクを使った他社製品とは違う、純正だけが持つ絶対的な信頼感と高い計測精度や動作は、特にデータの質にこだわるユーザーから厚い支持を集めてきた。
そんなシマノ製パワーメーターは、R9200系デュラエースのデビューと共に「FC-R9200-P」へと進化して第2世代化。左右両側クランクでの計測や、300時間のバッテリーライフを誇る内蔵充電式バッテリー、BluetoothとANT+を兼ね備える通信システムといった基本構造は引き継ぎつつ、パワー測定精度をFC-R9100-Pと比較して1.5%改善したことが大きなポイントだ。
さらにR9100世代のクランクがパワーメーター無し基準で設計しているのに対し、R9200クランクはあくまでパワーメーターを内蔵することを踏まえて設計している。これが測定精度を向上させた大きな理由の一つであり、R8100シリーズで初デビューしたアルテグラのパワーメーター(FC-R8100-P)にも当然引き継がれている。
シマノ製パワーメーターの大きな特徴は、フルブリッジ方式(センサーの出力が大きく、温度補償を向上させるセンサーの回路構成)で片側12個ずつものセンサーをクランクに配置し、クランクとの同時開発だからこそできる左右一体構造を採用していること。左右クランクを繋ぐスピンドル内部に組み込まれたリチウムイオンバッテリーを介して左右センサーが有線接続されているため、計測時間の微細なズレを排除。左右別体の他社製パワーメーターとは異なる、ごく正確なパワー計測が可能なのだ。
そして、デビューから約半年が経過した2022年5月25日、シマノはFC-R9200-P(デュラエース)とFC-R8100-P(アルテグラ)のアップデートを発表し、フォースベクトルのペダリング分析機能を追加した。これによって力の大きさだけでなく、方向をフォースベクトルによって示し、ペダリングの質が可視化されるようになった。ペダリングの内容を掘り下げたいユーザーにとっては待望の機能追加であり、デビューは大きな期待感を持って迎え入れられた。
パワーメーターで計測したデータは、シマノのモバイルアプリE-TUBE RIDEやガーミンorワフーのサイクルコンピュータを介し、シマノの走行データ収集・分析サービス「SHIMANO CONNECT Lab(シマノコネクトラボ)」のクラウドにアップロードすることで、さまざまなデータ・グラフ表示や地図表示が可能だ。走行データの管理はもちろんのこと、フォースベクトルを筆頭にするデータ解析を行うことで、ライダーのペダリングスキル向上にも役立ってくれる。
なおシマノのパワーメーター商品企画担当にインタビューしたところ、フォースベクトルのリリースは単なる始まりに過ぎず、CONNECT Labは今後、蓄積されたデータをもとに、ユーザーにとって有益な情報をフィードバックできるよう努めていくという。サービスアップデートを心待ちにしたい。
シクロワイアードでは、シマノのパワーメーターのメリットを掘り下げるべく、シマノパワーメーターの開発を担った同社バイシクルコンポーネンツ事業部商品企画担当、手塚俊雄氏にインタビューする機会を得た。
シマノの企画担当者に直接質問をぶつけ、その思いを聞くことのできる機会は極めて稀なこと。他社製品と比べて何が優れているのか、そして何にこだわって作り上げたのか。話を進めるうちに、世界ナンバーワンコンポーネントブランドとしての矜持や、製品に込めた思いを感じ取ることができたのだった。抜粋して紹介したい。
―R9200シリーズのテーマである「サイエンス・オブ・スピード」を象徴する製品ですね。発表会では他社と一線を画すこだわり抜いた開発がなされていると語られましたが、どのような思いが込められているのでしょうか?
R9100でようやくパワーが測れるようになりましたが、それは「トッププロは一体全体どんな踏み方をしているんだ」という思いつきを、我々自身の製品を通して知りたかったから。それに会社の中で誰も自分のペダリングをレベルの高いところで分析できていた人はいなかった。じゃあやってみようよ、という興味本位でのスタートでした。
―プレゼンテーションでは「単に後付けしただけじゃない」と語られましたが、実際開発にはどのような苦労があったのでしょうか?
これ、ものすごく難しかったんです。なぜかというと元々デュラエースのクランクって、重量・剛性・強度・変速性能など、さまざまな要素をバランスさせて作っています。そこにパワーメーターをインストールするのは、どうやってやればいいんだと。製法にも精度にも関わってくるし、計測精度を高めるためにどうしたらいいのか。なおかつ様々なペダリングに対してどう対応させたらいいのか。様々な要因が関わってくるので、非常に難しかったんですね。
最も重要なことは、左右クランクにどのような力が働いているのかを、同時にタイムラグなく動かすこと。24のセンサーを使用していますが、全てを同時に計測しないとパワーデータは正しく出ないんです。24のデータを同時に処理し、パワーを送り、なおかつベクトル表示を出す。これはハード・ソフト共に今までやったことのない領域にまで踏み込んで設計・開発しています。
―計測における精度とは一体どのようなことなのでしょうか?
荷重と時間をきちんと測れること、です。
例えばデジタル体重計がありますよね。あれって実は、電源を入れたらゼロオフセットして、きちんと正確な値が出るまで数秒待つんです。
シマノのパワーメーターも同じようなことをやっていて、簡単に言うと片側のクランクに体重計が3つ乗っているような構造になっています。ペダリング時は様々な方向に力がかかっていて、それをしっかり計測して正しい値を算出できるよう苦心しました。特にR9200ではクランクの構造自体をパワーメーターありきで設計し、測定精度±1.5%を実現しました。
パワーは直接測れるものではなく、荷重と時間を測定した後に計算して求められる値です。
詳しくは、クランク一回転中の平均荷重にクランク長から求めた周長を掛けて、クランク一回転に要した時間で割って計算されます。
つまり、荷重だけでなく、時間もきちんと計測できていないと、パワーの精度を高くすることはできないのです。
シマノではクランク一回転に要した時間を正確に測るために、マグネットとリードスイッチという安定した計測方法を採用しています。フレームにマグネットを付ける必要があり面倒なのですが、これによって時間の誤差は無視できるほど小さくなり、表示までのレスポンスも早く、石畳などでの激しい振動でも安定して測定できるメリットがあります。
もう一つ重要なことは、マグネットの位置からクランクの絶対角度を算出する事ができて、フォースベクトルの向きを正しく知る事ができるということ。フォースベクトルを使われる際にはマグネット校正をマニュアル通りに正しく行ってくださいね。
我々のパワーメーターが他と違うのは、あくまでパワーメーターを組み込むためにクランクと一体開発している点。シマノのクランクに後付けした製品もありますが、それらとは全く精度が異なるもの。様々な計測機器の中でもかなりハイレベルなものだと自負しています。
―プロと一般ライダーでは出す出力が全く異なりますが、それにどう対応しているのでしょうか?
校正とプログラムをとことん突き詰めることで解決しています。
例えば体重80kgのライダーが片足で立ったら80kgfの荷重がかかっていて。そこに20kgfの力でハンドルを引いたら100kgfかかる。プロ選手がもがいている状態では、クランクには百数十kgfの力が普通にかかるんです。
でも一般ライダーの場合はそこまで荷重がかかりません。200ワットで平坦を踏んでる時ってせいぜい20〜30kgfくらいなんです。
例えば体重計は10kgから100kg超まで測れますが、キッチン用の計りって1gからせいぜい2kg、3kgまでですよね。これからも分かるとおり、本来計量器って、その範囲に適したものを用意する必要があるんですが、シマノのパワーメーターは10ワットでも2000ワットでも一つで測る性能を担保しています。
10ワットと2000ワットは本来であれば全く別の計測器が必要なほどかけ離れた大きさなんですが、これもきちんと測れるようにするには、それだけの校正を行わなければならない。ペダルを踏んでいる位置だって内側なのか外側なのかで違うし、温度変化にも対応する必要があります。これらの複合条件をきちんと組み込んで、出来るだけ正確な数値が出せるように校正プログラムを組んでいます。
―製品を見比べると、パワーメーターの有無でクランクの形状や機構が違うことに気づきました。
穴が開いているから強度が落ちてるんじゃないかとよく言われるんですが、当然そんなことは分かっていて設計にも織り込み済みです。強度も担保してますし、防水性能はDI2が培ってきたものと同様です。
―シマノとして、今後パワーメーターに対してどのように注力していくのでしょうか?
R9200に進化して性能進化し、コネクトラボのアップデートでフォースベクトル表示がようやく可能になりました。でも、今はデータを見られるようになっただけ。蓄積データをもとにライダーに有益な情報をフィードバックできるようになって、はじめてシマノとしてのパワーメーターのサービスが完成すると言えます。
そのフィードバックというのは、選手だけではなく、効率よく走りたいサイクリストにとっても大きな意味をなすもの。今後はハード面はもちろん、そういったソフト面のサービス拡充にも努めていきたいと考えています。
特集後編では、ユーザー目線から見たシマノパワーメーターの利点を、ハムスタースピンの福田昌弘氏のコラム、そしてRX-bikeの高岡亮寛氏のインプレッションで紹介していく。
圧倒的高精度と信頼感を誇る、シマノのパワーメーター
パワーメーターが一般ユーザーに普及して、どれくらい経つだろうか。一部の海外トッププロ選手だけが使っていた時代を経て、普及価格帯モデルの登場によって、堰を切ったかのように使用率が上昇したのが10年以上前のこと。BB軸型やハブ型、クランク型、そしてペダル型。はたまた心拍数や空気圧で計測する変わり種モデルまで、パワーメーターの進化は留まることを知らず、今やプロ選手のみならず、ホビーレーサーはもちろん、効率良くロングライドを楽しみたい週末ライダーまで幅広いサイクリストに迎えられている。
パワーメーターという言葉が広く知れ渡り、誰もが興味を持っていたからこそ、コンポーネント界最大手シマノが2018年にデビューさせた、同社初のパワーメーター「FC-R9100-P」は待ってましたと言わんばかりに受け入れられた。チェーンリング付きで15万円弱というプライスにも関わらず、シマノクランクを使った他社製品とは違う、純正だけが持つ絶対的な信頼感と高い計測精度や動作は、特にデータの質にこだわるユーザーから厚い支持を集めてきた。
測定精度を1.5%改善、シマノ第2世代パワーメーターのデビュー
そんなシマノ製パワーメーターは、R9200系デュラエースのデビューと共に「FC-R9200-P」へと進化して第2世代化。左右両側クランクでの計測や、300時間のバッテリーライフを誇る内蔵充電式バッテリー、BluetoothとANT+を兼ね備える通信システムといった基本構造は引き継ぎつつ、パワー測定精度をFC-R9100-Pと比較して1.5%改善したことが大きなポイントだ。
さらにR9100世代のクランクがパワーメーター無し基準で設計しているのに対し、R9200クランクはあくまでパワーメーターを内蔵することを踏まえて設計している。これが測定精度を向上させた大きな理由の一つであり、R8100シリーズで初デビューしたアルテグラのパワーメーター(FC-R8100-P)にも当然引き継がれている。
シマノ製パワーメーターの大きな特徴は、フルブリッジ方式(センサーの出力が大きく、温度補償を向上させるセンサーの回路構成)で片側12個ずつものセンサーをクランクに配置し、クランクとの同時開発だからこそできる左右一体構造を採用していること。左右クランクを繋ぐスピンドル内部に組み込まれたリチウムイオンバッテリーを介して左右センサーが有線接続されているため、計測時間の微細なズレを排除。左右別体の他社製パワーメーターとは異なる、ごく正確なパワー計測が可能なのだ。
ペダリングを可視化するフォースベクトル表示の実装
そして、デビューから約半年が経過した2022年5月25日、シマノはFC-R9200-P(デュラエース)とFC-R8100-P(アルテグラ)のアップデートを発表し、フォースベクトルのペダリング分析機能を追加した。これによって力の大きさだけでなく、方向をフォースベクトルによって示し、ペダリングの質が可視化されるようになった。ペダリングの内容を掘り下げたいユーザーにとっては待望の機能追加であり、デビューは大きな期待感を持って迎え入れられた。
パワーメーターで計測したデータは、シマノのモバイルアプリE-TUBE RIDEやガーミンorワフーのサイクルコンピュータを介し、シマノの走行データ収集・分析サービス「SHIMANO CONNECT Lab(シマノコネクトラボ)」のクラウドにアップロードすることで、さまざまなデータ・グラフ表示や地図表示が可能だ。走行データの管理はもちろんのこと、フォースベクトルを筆頭にするデータ解析を行うことで、ライダーのペダリングスキル向上にも役立ってくれる。
なおシマノのパワーメーター商品企画担当にインタビューしたところ、フォースベクトルのリリースは単なる始まりに過ぎず、CONNECT Labは今後、蓄積されたデータをもとに、ユーザーにとって有益な情報をフィードバックできるよう努めていくという。サービスアップデートを心待ちにしたい。
シマノ商品企画担当へのインタビュー:シマノパワーメーターは何が優れている?
シクロワイアードでは、シマノのパワーメーターのメリットを掘り下げるべく、シマノパワーメーターの開発を担った同社バイシクルコンポーネンツ事業部商品企画担当、手塚俊雄氏にインタビューする機会を得た。
シマノの企画担当者に直接質問をぶつけ、その思いを聞くことのできる機会は極めて稀なこと。他社製品と比べて何が優れているのか、そして何にこだわって作り上げたのか。話を進めるうちに、世界ナンバーワンコンポーネントブランドとしての矜持や、製品に込めた思いを感じ取ることができたのだった。抜粋して紹介したい。
―R9200シリーズのテーマである「サイエンス・オブ・スピード」を象徴する製品ですね。発表会では他社と一線を画すこだわり抜いた開発がなされていると語られましたが、どのような思いが込められているのでしょうか?
R9100でようやくパワーが測れるようになりましたが、それは「トッププロは一体全体どんな踏み方をしているんだ」という思いつきを、我々自身の製品を通して知りたかったから。それに会社の中で誰も自分のペダリングをレベルの高いところで分析できていた人はいなかった。じゃあやってみようよ、という興味本位でのスタートでした。
―プレゼンテーションでは「単に後付けしただけじゃない」と語られましたが、実際開発にはどのような苦労があったのでしょうか?
これ、ものすごく難しかったんです。なぜかというと元々デュラエースのクランクって、重量・剛性・強度・変速性能など、さまざまな要素をバランスさせて作っています。そこにパワーメーターをインストールするのは、どうやってやればいいんだと。製法にも精度にも関わってくるし、計測精度を高めるためにどうしたらいいのか。なおかつ様々なペダリングに対してどう対応させたらいいのか。様々な要因が関わってくるので、非常に難しかったんですね。
最も重要なことは、左右クランクにどのような力が働いているのかを、同時にタイムラグなく動かすこと。24のセンサーを使用していますが、全てを同時に計測しないとパワーデータは正しく出ないんです。24のデータを同時に処理し、パワーを送り、なおかつベクトル表示を出す。これはハード・ソフト共に今までやったことのない領域にまで踏み込んで設計・開発しています。
―計測における精度とは一体どのようなことなのでしょうか?
荷重と時間をきちんと測れること、です。
例えばデジタル体重計がありますよね。あれって実は、電源を入れたらゼロオフセットして、きちんと正確な値が出るまで数秒待つんです。
シマノのパワーメーターも同じようなことをやっていて、簡単に言うと片側のクランクに体重計が3つ乗っているような構造になっています。ペダリング時は様々な方向に力がかかっていて、それをしっかり計測して正しい値を算出できるよう苦心しました。特にR9200ではクランクの構造自体をパワーメーターありきで設計し、測定精度±1.5%を実現しました。
パワーは直接測れるものではなく、荷重と時間を測定した後に計算して求められる値です。
詳しくは、クランク一回転中の平均荷重にクランク長から求めた周長を掛けて、クランク一回転に要した時間で割って計算されます。
つまり、荷重だけでなく、時間もきちんと計測できていないと、パワーの精度を高くすることはできないのです。
シマノではクランク一回転に要した時間を正確に測るために、マグネットとリードスイッチという安定した計測方法を採用しています。フレームにマグネットを付ける必要があり面倒なのですが、これによって時間の誤差は無視できるほど小さくなり、表示までのレスポンスも早く、石畳などでの激しい振動でも安定して測定できるメリットがあります。
もう一つ重要なことは、マグネットの位置からクランクの絶対角度を算出する事ができて、フォースベクトルの向きを正しく知る事ができるということ。フォースベクトルを使われる際にはマグネット校正をマニュアル通りに正しく行ってくださいね。
我々のパワーメーターが他と違うのは、あくまでパワーメーターを組み込むためにクランクと一体開発している点。シマノのクランクに後付けした製品もありますが、それらとは全く精度が異なるもの。様々な計測機器の中でもかなりハイレベルなものだと自負しています。
―プロと一般ライダーでは出す出力が全く異なりますが、それにどう対応しているのでしょうか?
校正とプログラムをとことん突き詰めることで解決しています。
例えば体重80kgのライダーが片足で立ったら80kgfの荷重がかかっていて。そこに20kgfの力でハンドルを引いたら100kgfかかる。プロ選手がもがいている状態では、クランクには百数十kgfの力が普通にかかるんです。
でも一般ライダーの場合はそこまで荷重がかかりません。200ワットで平坦を踏んでる時ってせいぜい20〜30kgfくらいなんです。
例えば体重計は10kgから100kg超まで測れますが、キッチン用の計りって1gからせいぜい2kg、3kgまでですよね。これからも分かるとおり、本来計量器って、その範囲に適したものを用意する必要があるんですが、シマノのパワーメーターは10ワットでも2000ワットでも一つで測る性能を担保しています。
10ワットと2000ワットは本来であれば全く別の計測器が必要なほどかけ離れた大きさなんですが、これもきちんと測れるようにするには、それだけの校正を行わなければならない。ペダルを踏んでいる位置だって内側なのか外側なのかで違うし、温度変化にも対応する必要があります。これらの複合条件をきちんと組み込んで、出来るだけ正確な数値が出せるように校正プログラムを組んでいます。
―製品を見比べると、パワーメーターの有無でクランクの形状や機構が違うことに気づきました。
穴が開いているから強度が落ちてるんじゃないかとよく言われるんですが、当然そんなことは分かっていて設計にも織り込み済みです。強度も担保してますし、防水性能はDI2が培ってきたものと同様です。
―シマノとして、今後パワーメーターに対してどのように注力していくのでしょうか?
R9200に進化して性能進化し、コネクトラボのアップデートでフォースベクトル表示がようやく可能になりました。でも、今はデータを見られるようになっただけ。蓄積データをもとにライダーに有益な情報をフィードバックできるようになって、はじめてシマノとしてのパワーメーターのサービスが完成すると言えます。
そのフィードバックというのは、選手だけではなく、効率よく走りたいサイクリストにとっても大きな意味をなすもの。今後はハード面はもちろん、そういったソフト面のサービス拡充にも努めていきたいと考えています。
シマノ パワーメータースペック
DURA-ACE FC-R9200-P
チェーンリング構成 | 50-34T、52-36T、54-40T |
平均重量 | 745g(50-34T)、752g(52-36T)、774g(54-40T) |
精度 | ±1.5% |
バッテリー寿命 | 300時間以上 |
歪みセンサー | 24個 |
税込価格 | 176,253円(ギアなし:156,849円) |
ULTEGRA FC-R8100-P
チェーンリング構成 | 50-34T、52-36T |
平均重量 | 758g(50-34T)、769g(52-36T) |
精度 | ±2% |
バッテリー寿命 | 300時間以上 |
歪みセンサー | 24個 |
税込価格 | 143,582円(ギアなし:132,006円) |
特集後編では、ユーザー目線から見たシマノパワーメーターの利点を、ハムスタースピンの福田昌弘氏のコラム、そしてRX-bikeの高岡亮寛氏のインプレッションで紹介していく。
制作:シクロワイアード編集部/提供:シマノセールス