2022/06/21(火) - 17:20
前編で得たロングライドに向けたノウハウを元に、日本でも屈指の山岳ロングライドであるグランフォンド軽井沢へチャレンジ。「サイクルハウスWISH」のサポートライダーの方々、そして3Tアンバサダーの佐藤寿美さんが走った浅間山一周の様子をお伝えしていこう。
今回挑戦するグランフォンド軽井沢は、その名の通り軽井沢プリンスホテル・スキー場をスタート/ゴールとし、浅間山麓をぐるりと反時計回りに回るロングライドイベント。距離こそ120㎞程とそこまで長くない一方で(とはいえ100㎞は越えている訳ですが)、獲得標高2,400mというメリハリの利いた……ありていに言えば登りと下りしかないような山岳コースで、シーズン初めの足試しとして多くのサイクリストが参加してきた人気大会だ。
コロナ禍以前であれば、土曜日にはグルメフォンド軽井沢という、軽井沢グルメを堪能できる「摂取カロリー>>>>消費カロリー」なコースがあり、カーボローディングも兼ねて参加する方やファミリーの方などもたくさんいらっしゃったのだけれども、残念ながら今年は開催を見合わせるとのこと。そんな影響もあってか、グランフォンド軽井沢の参加者も例年より少なめだという。
春先のロングライドイベントの例に漏れず、グランフォンド軽井沢もまた日の昇らないうちから駐車場がオープンする。例年であれば広大な軽井沢プリンススキー場の駐車場が埋めつくされるのだけれど、今年はそんなことも無く便利な位置に楽々駐車。果たしてこれが良いことなのかどうなのか。少し複雑な感情を抱きつつ、いそいそ準備を始めるのだった。
サイクルハウスWISHの下田店長に教えていただいた通り整備した愛車を取り出すべく車から降りると、気づきたくなかった現実が否応なく迫ってくる。そう、雨が降っている。誰が言ったか「自転車イベントの成否は晴れてるかどうか」という言葉は、まるでイベント運営側の努力の一切を無に帰すような身も蓋も無さに満ちているけれど、ある程度の真実でもある。
だって、とってもホスピタリティに満ちた運営の土砂降りイベントと、最高のサイクリング日和に行われるちょっと微妙な運営のイベント、どっちが楽しいでしょうか??いやまあ、厳しい状況ほど燃えるとか、苦痛の先にある栄光こそ真実とか、そういう楽しみ方もあるとは思いますが、一般的には後者でしょう。
少し話が逸れたけれど、とにかくロングライドと雨の相性は良くはないもの。そもそも天気予報では夜の間に雨雲は過ぎ去っているはずだったのだけれど、現実としてまだ雨は降り続けている。雨雲レーダーの予測としては昼前頃には上がるとのことだが、しばらく止む気配はなさそうだ。雨天に強いというウェルドタイトのセラミックルブを注油してきているので、その点は安心ではある。
こんなこともあろうかと用意していたレインウェアを着込みスタートラインへ。そこには既に完全装備のサポートライダーの皆さん、そして3Tアンバサダーの佐藤寿美さんが待っていた。ちなみにレインウェアを着るといっても、基本的には上半身のみで下半身はレーパンという方が大半。これは脚が濡れることによるデメリットとレインパンツを履くことによって失われるペダリング効率などを天秤にかけた結果の判断でもある。
今回帯同した皆さんは3Tバイクライダーなのだが、機材チョイスは個性が出ている部分。佐藤さんをはじめ、ロードモデルのSTRADAを選んだ方もいれば、グラベルモデルのEXPLOROシリーズに跨る方も多い。EXPLOROにロードタイヤを組み合わせている人もおり、それぞれの走り方やこだわり、ノウハウが垣間見える。
さて、しとしと降り続く雨の中、軽井沢プリンススキー場をスタート。雨音に閉ざされた早朝の軽井沢市街を抜け、まず目指すのは年に一度、グランフォンド軽井沢のためにサイクリストに開放される自動車専用道の「白糸ハイランドウェイ」だ。
獲得標高2000mを越えるこの大会の中でも、最も厳しいのがこの区間。軽井沢から嬬恋方面へと向かう登りで、全長約9.4km、平均斜度約4.2%と、数値だけ見ればそこまで厳しくはなさそうなのだが、最初の1kmが平均斜度11%、最大15%超という急勾配となっているのが難所たるゆえん。
実はそれでもグランフォンド軽井沢の最大勾配地点ではないものの、1㎞に渡ってコンスタントにこの勾配が続くというのはここだけ。乗るには辛く、押すには長い。参加者の皆さんもゼーハー言いつつ、登っていく。
XCレーサーとして腕(脚?)を鳴らした佐藤さんはフロントシングルのSTRADAでも力強いペダリングでグイグイと、EXPLOROに乗るサポートライダーの皆さんは低いギア比を活かしてクルクルと、それぞれのスタイルでこの難所をクリア。
一息ついたらしばらく下り、その後また上っていく。途中には、白糸ハイランドウェイの名前の由来となった名所「白糸の滝」も登場。自転車を押しながら少し歩くと、その先には美しい滝が。浅間山麓に降り注いだ雨が、6年もの歳月をかけて徐々に湧き出した結果、幾条もの細い滝が重なり、一反の純白の絹織物のような美しい光景を形作るのだという。
さて、ここまでくればピークはもう目の前。白糸ハイランドウェイの嬬恋側ゲートをくぐれば、第1エイドステーションの浅間山ハイランドパークまでダウンヒル。とはいえ、普段であればご褒美の下りも雨とあっては慎重に。特に雪国の路面は凸凹しているので、注意していきたいところ。
こういうシーンでは、太めのタイヤのキャパシティは大きなメリット。EXPLOROをチョイスした面々は終始余裕のある様子。そうして雨中のヒルクライム&ダウンヒルをこなし、第1エイドに駆け込むのだった。
浅間山ハイランドパークからは、一路北軽井沢を走り抜け嬬恋にあるバラギ湖へ。というのが本来のコースなのだけれど、実は大会直前に起きた崩落の影響でルートが急遽変更されている。嬬恋村方面へは下り切らずに、北軽井沢の別荘地帯を西へ通りぬけ、「つまごいパノラマライン」を進んでいくルートになった。
バラギ湖への登りが省かれるというのは朗報だ。しかもだんだん雨も弱まってきて、別荘地帯を通り抜けるころには雨粒を感じることも無くなった。こうなればしめたもので、キャベツ畑の間を縫うアップダウンを走りながらだんだんテンションもペースも上がってくる。あっという間に第2エイドの「JA嬬恋高原フレッシュセンター」に到着だ。
おにぎりとお味噌汁のふるまいを頂いていると、どうやらパンクトラブルがあった様子。雨で路面のゴミが流され、刺さりやすくなっているので雨上がりの路面は注意が必要だ。今回はチューブレスタイヤの参加者の方で、サポートライダーがバーズマンのチューブレスリペアキットを駆使し、あっという間に修理完了。流石全国のグラベルを走っている経験豊かなライダーだけある手際の良さだ。
とはいえ、まだまだ先が長いのがグランフォンド軽井沢。ここからは第2の登りである「鳥居峠」へ向かっていく。つまごいパノラマラインを下りきり、国道144号線へ左折すると既に登りは始まっている。約3.5km、平均斜度約5%と緩やかな登りなので、マイペースで走っていこう。
群馬県と長野県の境となる鳥居峠は、群馬県側と長野県側でかなり趣を異にしている。浅間山麓の高原が広がる群馬県側は比較的緩やかで直線的なコースであるのに対し、長野県側はかなりの斜度かつ九十九折れが続くのだ。初心者の方は無理せずにゆっくり下るのが吉。
下り終えた先の第3エイドでカレーとパン(カレーパンではない)を頂き、ダウンヒルで冷えた身体に熱量を補給。約60㎞と全行程のほぼ半分を走ってきた計算になるが、その分しっかりとエネルギーも消費したことになる。特に前半は雨ということもあり、思っている以上に身体が疲労しているはず。念のためにプラスアルファの補給も摂って、後半戦に備えよう。
上田市の第3エイドから先は、時間帯的にも交通量が増えてくるため、幹線道路を迂回するようにルートが設定されている。信州上田の名物でもある棚田や、リンゴの段々畑の間を縫うように巡るコースは車も少なく走りやすい……のだが、つまりアップダウンも激しいということだ。
ここまで走り続けた脚にはかなり厳しめの登りが続くが、それでも皆さんのペダリングが軽やかに見えるのは、ついに青空が多くなってきたからだろう。気温的にも程よく、陽射しを遮るもののないこの浅間山の南麓エリアを走るにはちょうど良いくらい。
有名な老舗チーズ工房「アトリエ・ド・フロマージュ」からのダウンヒルは特筆ものの絶景で、このタイミングで晴れてくれたことには感謝の一言。もちろん全部晴れてくれているのがイチバンだけれど、タメがあってこそ幸せも引き立つというものである。
そして、最後の難関となる「菱野温泉への登り」が始まる。浅間サンラインから小諸市の菱野温泉までの全長約2.6km、平均斜度6.9%のヒルクライム。ただでさえ、ここまで2,000m近く登ってきたサイクリストにとどめを刺すような登りであるが、実はこの区間最大の難所となるのがラスト100m。なんと斜度20%に迫ろうとする激坂が立ちはだかるのだ。
ここで心折れる参加者も少なくない。あきらめて押し歩く参加者も多いのだが、その分応援も多いのがこの区間。ただ一つ言えるのは、この区間ではどれだけ大きなスプロケットがあっても足りないということだ。この区間に備えるという理由だけでも、ギア比の軽いグラベルバイクを選ぶ価値はあるかもしれない。
菱野温泉のエイドでお手製のいなり寿司と、ヒルクライムで火照った身体に嬉しいアイスバーを頂き、ラストとなる軽井沢までの区間へ再出発。とはいえ、実はこの先の「1,000m林道」はほぼフラットで、ここまで頑張ってきた参加者に報いるような凱旋コースのような区間。
その名の通り、浅間山南麓の標高1,000m地帯をキープするようにしつらえられた林道を快速ライド。林道とはいえ、しっかり舗装されている道なのでこの区間はやはりロードバイク有利といったところ。
林道を抜けると軽井沢の別荘エリアを横断し、軽井沢千ヶ滝温泉に設けられた最後のエイドへ。御代田町や上田市で展開する人気ベーカリーカフェ「ココラデ」のパンを頂き、フィニッシュまで残すは8㎞。日曜の軽井沢の賑わいを横目に見つつ、軽井沢プリンススキー場に駆け込んだ。
フィニッシュエイドでは軽井沢名物の「峠の釜めし」が振舞われ、過酷な山岳ライドを走り切った体に、具沢山の釜めしでしっかり栄養補給できるのは嬉しいご褒美だ。
「XCレースを中心に走っていたので、実はこういったイベントは初めてだったんです」と、今回初めてグランフォンド軽井沢に挑戦した3Tアンバサダーの佐藤さん。
「最初は雨でどうしよう、と思ってましたが、途中から晴れてきたのは本当に良かったです(笑)。佐久の街並みを見下ろしながら走る区間は最高でした」と初のオンロードのロングライドイベントに満足いただけた様子。
今回佐藤さんが駆ったのは、3TのレーシングロードであるSTRADA。プロレースで初勝利を挙げたフロントシングルバイクという歴史的な名車でもあるSTRADAでグランフォンド軽井沢を走り切った。
「軽くて、良く走ってくれるバイクですね。MTB出身なので、フロントシングルというのも違和感なくて。でも、最後の菱野温泉の登りだけはもっと軽いギアが欲しかったです(笑)」と佐藤さん。それでも足を着かずに登り切ったのはさすがの一言。
また、今回サポートライダーとして参加者の皆さんと共に走り支えてくれたサイクルハウスWISHの皆さんも共にフィニッシュ。ジェロボームをはじめとした過酷なグラベルイベントで磨かれたライディングスタイルや機材選びは、オンロードライドでの余裕にも繋がるものだ。
サポートライダーの皆さんのバイクを見ていると、オンロードのイベントだからロードバイクで、という固定観念は今や古いものだと実感できる。体へのダメージを軽減する快適性と下りの安心感につながるグリップを備えたワイドタイヤ、そして激坂にも対応するワイドレシオなドライブトレインの組み合わせは、未舗装路だけでなく舗装路でも大きなメリットをもたらしてくれる。特に、未舗装路でもある程度ハイスピードを出すことを前提とした3TのEXPLOROシリーズに代表されるグラベルレーサーは、こういったオンロードロングライドにももってこいだ。
MTBクロスカントリーレーサーとして現役時代は「drawer THE RACING」に所属。2016年、2017年には全日本選手権(ジュニア)を制するなど数々の実績を挙げた。2020年11月に現役を引退し、2021年6月より3Tアンバサダーとしてロード&グラベルバイクでの活動を行っている。
→佐藤寿美インスタグラム
距離124㎞、獲得標高2400m 国内屈指の山岳コースへ
今回挑戦するグランフォンド軽井沢は、その名の通り軽井沢プリンスホテル・スキー場をスタート/ゴールとし、浅間山麓をぐるりと反時計回りに回るロングライドイベント。距離こそ120㎞程とそこまで長くない一方で(とはいえ100㎞は越えている訳ですが)、獲得標高2,400mというメリハリの利いた……ありていに言えば登りと下りしかないような山岳コースで、シーズン初めの足試しとして多くのサイクリストが参加してきた人気大会だ。
コロナ禍以前であれば、土曜日にはグルメフォンド軽井沢という、軽井沢グルメを堪能できる「摂取カロリー>>>>消費カロリー」なコースがあり、カーボローディングも兼ねて参加する方やファミリーの方などもたくさんいらっしゃったのだけれども、残念ながら今年は開催を見合わせるとのこと。そんな影響もあってか、グランフォンド軽井沢の参加者も例年より少なめだという。
春先のロングライドイベントの例に漏れず、グランフォンド軽井沢もまた日の昇らないうちから駐車場がオープンする。例年であれば広大な軽井沢プリンススキー場の駐車場が埋めつくされるのだけれど、今年はそんなことも無く便利な位置に楽々駐車。果たしてこれが良いことなのかどうなのか。少し複雑な感情を抱きつつ、いそいそ準備を始めるのだった。
しとしと雨模様 されどグランフォンド軽井沢の幕は上がる
サイクルハウスWISHの下田店長に教えていただいた通り整備した愛車を取り出すべく車から降りると、気づきたくなかった現実が否応なく迫ってくる。そう、雨が降っている。誰が言ったか「自転車イベントの成否は晴れてるかどうか」という言葉は、まるでイベント運営側の努力の一切を無に帰すような身も蓋も無さに満ちているけれど、ある程度の真実でもある。
だって、とってもホスピタリティに満ちた運営の土砂降りイベントと、最高のサイクリング日和に行われるちょっと微妙な運営のイベント、どっちが楽しいでしょうか??いやまあ、厳しい状況ほど燃えるとか、苦痛の先にある栄光こそ真実とか、そういう楽しみ方もあるとは思いますが、一般的には後者でしょう。
少し話が逸れたけれど、とにかくロングライドと雨の相性は良くはないもの。そもそも天気予報では夜の間に雨雲は過ぎ去っているはずだったのだけれど、現実としてまだ雨は降り続けている。雨雲レーダーの予測としては昼前頃には上がるとのことだが、しばらく止む気配はなさそうだ。雨天に強いというウェルドタイトのセラミックルブを注油してきているので、その点は安心ではある。
こんなこともあろうかと用意していたレインウェアを着込みスタートラインへ。そこには既に完全装備のサポートライダーの皆さん、そして3Tアンバサダーの佐藤寿美さんが待っていた。ちなみにレインウェアを着るといっても、基本的には上半身のみで下半身はレーパンという方が大半。これは脚が濡れることによるデメリットとレインパンツを履くことによって失われるペダリング効率などを天秤にかけた結果の判断でもある。
今回帯同した皆さんは3Tバイクライダーなのだが、機材チョイスは個性が出ている部分。佐藤さんをはじめ、ロードモデルのSTRADAを選んだ方もいれば、グラベルモデルのEXPLOROシリーズに跨る方も多い。EXPLOROにロードタイヤを組み合わせている人もおり、それぞれの走り方やこだわり、ノウハウが垣間見える。
雨中の白糸ハイランドウェイ、そして北軽ダウンヒルへ
さて、しとしと降り続く雨の中、軽井沢プリンススキー場をスタート。雨音に閉ざされた早朝の軽井沢市街を抜け、まず目指すのは年に一度、グランフォンド軽井沢のためにサイクリストに開放される自動車専用道の「白糸ハイランドウェイ」だ。
獲得標高2000mを越えるこの大会の中でも、最も厳しいのがこの区間。軽井沢から嬬恋方面へと向かう登りで、全長約9.4km、平均斜度約4.2%と、数値だけ見ればそこまで厳しくはなさそうなのだが、最初の1kmが平均斜度11%、最大15%超という急勾配となっているのが難所たるゆえん。
実はそれでもグランフォンド軽井沢の最大勾配地点ではないものの、1㎞に渡ってコンスタントにこの勾配が続くというのはここだけ。乗るには辛く、押すには長い。参加者の皆さんもゼーハー言いつつ、登っていく。
XCレーサーとして腕(脚?)を鳴らした佐藤さんはフロントシングルのSTRADAでも力強いペダリングでグイグイと、EXPLOROに乗るサポートライダーの皆さんは低いギア比を活かしてクルクルと、それぞれのスタイルでこの難所をクリア。
一息ついたらしばらく下り、その後また上っていく。途中には、白糸ハイランドウェイの名前の由来となった名所「白糸の滝」も登場。自転車を押しながら少し歩くと、その先には美しい滝が。浅間山麓に降り注いだ雨が、6年もの歳月をかけて徐々に湧き出した結果、幾条もの細い滝が重なり、一反の純白の絹織物のような美しい光景を形作るのだという。
さて、ここまでくればピークはもう目の前。白糸ハイランドウェイの嬬恋側ゲートをくぐれば、第1エイドステーションの浅間山ハイランドパークまでダウンヒル。とはいえ、普段であればご褒美の下りも雨とあっては慎重に。特に雪国の路面は凸凹しているので、注意していきたいところ。
こういうシーンでは、太めのタイヤのキャパシティは大きなメリット。EXPLOROをチョイスした面々は終始余裕のある様子。そうして雨中のヒルクライム&ダウンヒルをこなし、第1エイドに駆け込むのだった。
道路崩落の影響で設定された新コースへ 待ちに待った晴れ間でも雨上がりの路面は要注意!?
浅間山ハイランドパークからは、一路北軽井沢を走り抜け嬬恋にあるバラギ湖へ。というのが本来のコースなのだけれど、実は大会直前に起きた崩落の影響でルートが急遽変更されている。嬬恋村方面へは下り切らずに、北軽井沢の別荘地帯を西へ通りぬけ、「つまごいパノラマライン」を進んでいくルートになった。
バラギ湖への登りが省かれるというのは朗報だ。しかもだんだん雨も弱まってきて、別荘地帯を通り抜けるころには雨粒を感じることも無くなった。こうなればしめたもので、キャベツ畑の間を縫うアップダウンを走りながらだんだんテンションもペースも上がってくる。あっという間に第2エイドの「JA嬬恋高原フレッシュセンター」に到着だ。
おにぎりとお味噌汁のふるまいを頂いていると、どうやらパンクトラブルがあった様子。雨で路面のゴミが流され、刺さりやすくなっているので雨上がりの路面は注意が必要だ。今回はチューブレスタイヤの参加者の方で、サポートライダーがバーズマンのチューブレスリペアキットを駆使し、あっという間に修理完了。流石全国のグラベルを走っている経験豊かなライダーだけある手際の良さだ。
とはいえ、まだまだ先が長いのがグランフォンド軽井沢。ここからは第2の登りである「鳥居峠」へ向かっていく。つまごいパノラマラインを下りきり、国道144号線へ左折すると既に登りは始まっている。約3.5km、平均斜度約5%と緩やかな登りなので、マイペースで走っていこう。
群馬県と長野県の境となる鳥居峠は、群馬県側と長野県側でかなり趣を異にしている。浅間山麓の高原が広がる群馬県側は比較的緩やかで直線的なコースであるのに対し、長野県側はかなりの斜度かつ九十九折れが続くのだ。初心者の方は無理せずにゆっくり下るのが吉。
下り終えた先の第3エイドでカレーとパン(カレーパンではない)を頂き、ダウンヒルで冷えた身体に熱量を補給。約60㎞と全行程のほぼ半分を走ってきた計算になるが、その分しっかりとエネルギーも消費したことになる。特に前半は雨ということもあり、思っている以上に身体が疲労しているはず。念のためにプラスアルファの補給も摂って、後半戦に備えよう。
青空が見えた後半戦 行く手にそびえる斜度20%の壁
上田市の第3エイドから先は、時間帯的にも交通量が増えてくるため、幹線道路を迂回するようにルートが設定されている。信州上田の名物でもある棚田や、リンゴの段々畑の間を縫うように巡るコースは車も少なく走りやすい……のだが、つまりアップダウンも激しいということだ。
ここまで走り続けた脚にはかなり厳しめの登りが続くが、それでも皆さんのペダリングが軽やかに見えるのは、ついに青空が多くなってきたからだろう。気温的にも程よく、陽射しを遮るもののないこの浅間山の南麓エリアを走るにはちょうど良いくらい。
有名な老舗チーズ工房「アトリエ・ド・フロマージュ」からのダウンヒルは特筆ものの絶景で、このタイミングで晴れてくれたことには感謝の一言。もちろん全部晴れてくれているのがイチバンだけれど、タメがあってこそ幸せも引き立つというものである。
そして、最後の難関となる「菱野温泉への登り」が始まる。浅間サンラインから小諸市の菱野温泉までの全長約2.6km、平均斜度6.9%のヒルクライム。ただでさえ、ここまで2,000m近く登ってきたサイクリストにとどめを刺すような登りであるが、実はこの区間最大の難所となるのがラスト100m。なんと斜度20%に迫ろうとする激坂が立ちはだかるのだ。
ここで心折れる参加者も少なくない。あきらめて押し歩く参加者も多いのだが、その分応援も多いのがこの区間。ただ一つ言えるのは、この区間ではどれだけ大きなスプロケットがあっても足りないということだ。この区間に備えるという理由だけでも、ギア比の軽いグラベルバイクを選ぶ価値はあるかもしれない。
残るはほぼ平坦の1,000m林道 軽井沢プリンスへウィニングラン
菱野温泉のエイドでお手製のいなり寿司と、ヒルクライムで火照った身体に嬉しいアイスバーを頂き、ラストとなる軽井沢までの区間へ再出発。とはいえ、実はこの先の「1,000m林道」はほぼフラットで、ここまで頑張ってきた参加者に報いるような凱旋コースのような区間。
その名の通り、浅間山南麓の標高1,000m地帯をキープするようにしつらえられた林道を快速ライド。林道とはいえ、しっかり舗装されている道なのでこの区間はやはりロードバイク有利といったところ。
林道を抜けると軽井沢の別荘エリアを横断し、軽井沢千ヶ滝温泉に設けられた最後のエイドへ。御代田町や上田市で展開する人気ベーカリーカフェ「ココラデ」のパンを頂き、フィニッシュまで残すは8㎞。日曜の軽井沢の賑わいを横目に見つつ、軽井沢プリンススキー場に駆け込んだ。
フィニッシュエイドでは軽井沢名物の「峠の釜めし」が振舞われ、過酷な山岳ライドを走り切った体に、具沢山の釜めしでしっかり栄養補給できるのは嬉しいご褒美だ。
3Tバイクで走り切ったグランフォンド軽井沢
「XCレースを中心に走っていたので、実はこういったイベントは初めてだったんです」と、今回初めてグランフォンド軽井沢に挑戦した3Tアンバサダーの佐藤さん。
「最初は雨でどうしよう、と思ってましたが、途中から晴れてきたのは本当に良かったです(笑)。佐久の街並みを見下ろしながら走る区間は最高でした」と初のオンロードのロングライドイベントに満足いただけた様子。
今回佐藤さんが駆ったのは、3TのレーシングロードであるSTRADA。プロレースで初勝利を挙げたフロントシングルバイクという歴史的な名車でもあるSTRADAでグランフォンド軽井沢を走り切った。
「軽くて、良く走ってくれるバイクですね。MTB出身なので、フロントシングルというのも違和感なくて。でも、最後の菱野温泉の登りだけはもっと軽いギアが欲しかったです(笑)」と佐藤さん。それでも足を着かずに登り切ったのはさすがの一言。
また、今回サポートライダーとして参加者の皆さんと共に走り支えてくれたサイクルハウスWISHの皆さんも共にフィニッシュ。ジェロボームをはじめとした過酷なグラベルイベントで磨かれたライディングスタイルや機材選びは、オンロードライドでの余裕にも繋がるものだ。
サポートライダーの皆さんのバイクを見ていると、オンロードのイベントだからロードバイクで、という固定観念は今や古いものだと実感できる。体へのダメージを軽減する快適性と下りの安心感につながるグリップを備えたワイドタイヤ、そして激坂にも対応するワイドレシオなドライブトレインの組み合わせは、未舗装路だけでなく舗装路でも大きなメリットをもたらしてくれる。特に、未舗装路でもある程度ハイスピードを出すことを前提とした3TのEXPLOROシリーズに代表されるグラベルレーサーは、こういったオンロードロングライドにももってこいだ。
佐藤寿美 3Tアンバサダー
MTBクロスカントリーレーサーとして現役時代は「drawer THE RACING」に所属。2016年、2017年には全日本選手権(ジュニア)を制するなど数々の実績を挙げた。2020年11月に現役を引退し、2021年6月より3Tアンバサダーとしてロード&グラベルバイクでの活動を行っている。
→佐藤寿美インスタグラム
提供:あさひ 制作:シクロワイアード編集部