2020/09/07(月) - 18:02
新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、開催が約2ヶ月遅れの8月29日となったツール・ド・フランス。シマノのDURA-ACE、S-PHYRE、PRO、LAZERを使用する選手たちの活躍にフォーカスする特集がスタート。現在、ユンボ・ヴィスマを筆頭としたサポートチームが躍動している。
2020年1月下旬から全世界を飲み込んだ新型コロナウイルス「COVID-19」。各国で感染拡大を抑え込むべく都市封鎖が行われ、人々は自宅での生活を余儀なくされた。ツアー・ダウンアンダーから開幕していたUCIワールドツアーもUAEツアーとパリ~ニースが途中で閉幕しレースが完全にストップ。毎年楽しみにしていた春のクラシックも当然開催されず、さらに次々とレース中止のアナウンスが耳に入ってくる状況に先への不安を感じた方もいたことだろう。
ツール・ド・フランスも影響を免れることはできなかった。予測不可能な数ヶ月先の世界最大規模のレースは中止なのか、延期なのか世界中のサイクリストが案じたはずだ。その動きを察知してか、4月15日にはUCIがツール8月開催を中心とした新カレンダーを発表。暗雲立ち込める情勢の中、ツールが開催される予定というアナウンスは久々の明るいニュースとしてロードレースファンの希望となった。このアナウンスを受けドゥクーニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップは「トンネルの先に見えた光」とコメントを残している。
一方で、東京五輪、UEFA欧州選手権など各国際大会が延期に追い込まれ、ツールは本当に開催されるのかという疑いは払拭されないまま、8月1日にUCIワールドツアーは開幕。ストラーデ・ビアンケ、ミラノ~サンレモ、クリテリウム・デュ・ドーフィネとレースは無事に続いていき、今、ツールのプロトンは開幕地ニースの街を出発し、パリを目指している。
今年のツール・ド・フランスは総距離3484kmで争われる。山岳ステージは計8つ、うち5つが山頂フィニッシュを迎える設定だ。主催者が「フランスにある5つの山脈全てを詰め込んだ」と胸を張るほど、難易度の高い山岳ステージが満遍なく散りばめられている大会となっている。2級以上のカテゴリーがつけられた山岳は29箇所。
総合成績を左右するのは山岳ステージだけではなく、3つ用意された”HILLY”と名付けられているアップダウンステージの重要度も高い。さらに第20ステージの個人タイムトライアルは、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユという登りフィニッシュとされており、最終日前日で成績が入れ替わる可能性もある。
ワンミスさえ許されない過酷な3週間を戦い続けるためには、身の回りやレース機材の不安を全てクリアにしておくことが肝心。レース開始前から総合はタフな争いが予想されており、各チーム入念な準備を整えて臨んでいるはずだ。
平坦ステージは昨年よりも2つ多い計9ステージが用意されているが、山岳ステージでもコース前半にスプリントポイントが設定されていれば、積極的にポイント獲得を狙うチームが現れてもおかしくなく、こちらも気が抜けない争いが待っている。求められるのはライダー、チーム、機材、サポート体制、これら全ての信頼性だ。
さて、ニースを出発した176名の選手のうち136名、77%の選手たちがシマノコンポーネンツの最高峰グレード、DURA-ACEのコンポーネンツを搭載したバイクでレースに臨んでいることはご存知だろうか。シマノコンポーネンツを使用する17チームのうち8チームがシマノのグローバルサポートチームだ。残りの9チームは自費購入でDURA-ACEを選択している。この数字が示すものは、プロトン内でシマノのパーツが信頼に足るものという認識が浸透していることに他ならない。
本特集ではシマノ・グローバルサポートチームの活躍にフォーカスしていくため、8チームと使用機材状況を紹介しよう。
約2ヶ月遅れで開幕した、マイヨジョーヌを決める1ヶ月の戦い
2020年1月下旬から全世界を飲み込んだ新型コロナウイルス「COVID-19」。各国で感染拡大を抑え込むべく都市封鎖が行われ、人々は自宅での生活を余儀なくされた。ツアー・ダウンアンダーから開幕していたUCIワールドツアーもUAEツアーとパリ~ニースが途中で閉幕しレースが完全にストップ。毎年楽しみにしていた春のクラシックも当然開催されず、さらに次々とレース中止のアナウンスが耳に入ってくる状況に先への不安を感じた方もいたことだろう。
ツール・ド・フランスも影響を免れることはできなかった。予測不可能な数ヶ月先の世界最大規模のレースは中止なのか、延期なのか世界中のサイクリストが案じたはずだ。その動きを察知してか、4月15日にはUCIがツール8月開催を中心とした新カレンダーを発表。暗雲立ち込める情勢の中、ツールが開催される予定というアナウンスは久々の明るいニュースとしてロードレースファンの希望となった。このアナウンスを受けドゥクーニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップは「トンネルの先に見えた光」とコメントを残している。
一方で、東京五輪、UEFA欧州選手権など各国際大会が延期に追い込まれ、ツールは本当に開催されるのかという疑いは払拭されないまま、8月1日にUCIワールドツアーは開幕。ストラーデ・ビアンケ、ミラノ~サンレモ、クリテリウム・デュ・ドーフィネとレースは無事に続いていき、今、ツールのプロトンは開幕地ニースの街を出発し、パリを目指している。
クライマー向けと評される難易度の高い2020大会
今年のツール・ド・フランスは総距離3484kmで争われる。山岳ステージは計8つ、うち5つが山頂フィニッシュを迎える設定だ。主催者が「フランスにある5つの山脈全てを詰め込んだ」と胸を張るほど、難易度の高い山岳ステージが満遍なく散りばめられている大会となっている。2級以上のカテゴリーがつけられた山岳は29箇所。
総合成績を左右するのは山岳ステージだけではなく、3つ用意された”HILLY”と名付けられているアップダウンステージの重要度も高い。さらに第20ステージの個人タイムトライアルは、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユという登りフィニッシュとされており、最終日前日で成績が入れ替わる可能性もある。
ワンミスさえ許されない過酷な3週間を戦い続けるためには、身の回りやレース機材の不安を全てクリアにしておくことが肝心。レース開始前から総合はタフな争いが予想されており、各チーム入念な準備を整えて臨んでいるはずだ。
平坦ステージは昨年よりも2つ多い計9ステージが用意されているが、山岳ステージでもコース前半にスプリントポイントが設定されていれば、積極的にポイント獲得を狙うチームが現れてもおかしくなく、こちらも気が抜けない争いが待っている。求められるのはライダー、チーム、機材、サポート体制、これら全ての信頼性だ。
シマノのプロダクトで戦うグローバルサポートチーム
さて、ニースを出発した176名の選手のうち136名、77%の選手たちがシマノコンポーネンツの最高峰グレード、DURA-ACEのコンポーネンツを搭載したバイクでレースに臨んでいることはご存知だろうか。シマノコンポーネンツを使用する17チームのうち8チームがシマノのグローバルサポートチームだ。残りの9チームは自費購入でDURA-ACEを選択している。この数字が示すものは、プロトン内でシマノのパーツが信頼に足るものという認識が浸透していることに他ならない。
本特集ではシマノ・グローバルサポートチームの活躍にフォーカスしていくため、8チームと使用機材状況を紹介しよう。
コンポーネンツ | DURA-ACEホイール | PRO | PRO TT用ホイール | S-PHYREシューズ | LAZER | |
---|---|---|---|---|---|---|
ボーラ・ハンスグローエ | ○ | - | ○ | - | - | - |
ドゥクーニンク・クイックステップ | ○ | - | ○ | - | - | - |
グルパマFDJ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - |
イネオス・グレナディアーズ | ○ | ○ | - | ○ | - | - |
ミッチェルトン・スコット | ○ | ○ | - | ○ | - | - |
ユンボ・ヴィスマ | ○ | ○ | - | ○ | ○ | ○ |
サンウェブ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
アルケア・サムシック | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - |
全てのチームがDURA-ACEコンポーネンツを使用し、ブレーキタイプはチームごとの異なる選択が行われており、その選び方でチーム特色が表れている。ディスクブレーキの存在感が今まで以上に際立つ本年だが、その中においてもリムブレーキのみという選択を維持し続けるのがイネオス・グレナディアーズとユンボ・ヴィスマだ。
この2チームに共通するのは、自他ともに認めるマイヨジョーヌの最有力候補を抱えていること。総合優勝を獲得するために最も重要となる山岳ステージでのパフォーマンスを大前提とするが、下り坂、横風、スプリントフィニッシュでの位置取り、ありとあらゆるシチュエーションにおいて安定した性能を発揮することもまた求められている。使い慣れており、信頼性も高いDURA-ACE R9150で勝負を仕掛けるのは必然だろう。
リムブレーキとディスクブレーキを使い分けているのはサンウェブとグルパマFDJの2チーム。サンウェブはエアロロードにはディスクブレーキ、山岳用バイクにはリムブレーキという明快な使い分けを行っている。グルパマFDJは選手、レースコースの難易度に合わせてバイクを使い分けている模様。ちなみに白いケーブルが露出しているのがリムブレーキ、黒いケーブルがディスクブレーキというように判別しやすいように組み分けられていると見られる。
ボーラ・ハンスグローエとドゥクーニンク・クイックステップ、ミッチェルトン・スコット、アルケア・サムシックはディスクブレーキがメイン。ボーラはペテル・サガンのポイント賞を視野に入れており、ドゥクーニンク・クイックステップはウルフパックという二つ名に相応しく、どのようなステージでも優勝を狙える布陣だ。
一方で、ミッチェルトン・スコットからはアダム・イエーツ、アルケア・サムシックからはナイロ・キンタナという総合優勝や表彰台を狙える選手が出場している。ブレーキタイプの差で彼らが勝負を諦めることはない。それは自分自身とチームのパフォーマンス、シマノのコンポーネンツを信頼しているから。彼らの激闘をダイジェストで振り返っていこう。
終盤はスプリントフィニッシュに向けレースが再開されたが、残り3km地点でも再びクラッシュ。落車を免れた選手たちによるスプリント争いで第1ステージの決着がつき、なんとかツール・ド・フランスが開幕した形となった。
翌第2ステージは大会2日目にして標高1500m級のカテゴリー山岳が登場するコースが用意された。この日の主役はスプリンターではなく、総合を狙うオールラウンダーやアタッカー。この日のフィニッシュ争いに加わらないと判断したペテル・サガンが、マイヨヴェールのために少しでもポイントを稼ぐべく、レーススタートから逃げグループに入る展開に。スプリントポイントで2着を取ったことで、ポイント賞2位に浮上した。
この日の勝負はカテゴライズされていないキャトルシュマン峠で動いた。最も勾配のある残り13km地点で、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタックを仕掛け、マルク・ヒルシ(サンウェブ)を引き連れて、メイン集団から抜け出すことに成功。後にアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)も逃げに合流することができ、3名でフィニッシュ地点であるニースの街に戻ってきた。
3名によるスプリントはアラフィリップに軍配が上がる。昨年もレース終盤からのアタックで逃げ切り優勝を決めていたフランスの英雄が、今年もアグレッシブな走りで魅せ、再びマイヨジョーヌに袖を通した。アラフィリップの動きに呼応したヒルシもマイヨブランを獲得し、若手中心のチームに成功をもたらした。
大会3日目、途中降雨に見舞われるも第1ステージと比べると落ち着いてレースは進行。平坦ステージらしく順当に集団スプリントとなり、一気に選手たちがフィニッシュラインになだれ込んできた。シマノ・グローバルサポートチームは惜しくも優勝を逃してしまったが、ステージ5位に入ったサガンがマイヨヴェールに袖を通す結果に。前日のエスケープ作戦が効いた形となった。
2020年のツールは第4ステージで早くも1級山岳オルシエール・メルレットがラストに現れる山岳コースが登場する。主役はもちろん総合勢だ。パリは遥か彼方だが、早くもマイヨジョーヌ争いに参加する選手たちがお互いの調子を窺う1日として注目された。
1級山岳の本格的な登りが始まるとレースを掌握したのはプリモシュ・ログリッチ擁するユンボ・ヴィスマ。ワウト・ファンアールト、セップ・クスの強力な牽引で、どのライダーにもアタックさせない状況を作り出すことに成功。残り600mでようやくエース選手たちの争いに切り替わったが、強力な仲間にエスコートされてきたログリッチがライバルを圧倒し優勝。マイヨジョーヌはアラフィリップが堅守したが、ユンボ・ヴィスマの調子の良さが改めて確認された1日となった。
第5ステージは逃げグループが生まれず、普段とは違う様子の1日となった。終盤の上り勾配において総合勢によるペースアップで集団の人数は絞られていったが、約70名の大集団スプリントでレースは決着。完璧なリードアウトトレインを形成したサンウェブや、ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)、サガン(ボーラ・ハンスグローエ)を抑えて、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)が先頭で両手を上げた。
この日はジュリアン・アラフィリップが残り20km以内で補給するというルール違反を犯したことでタイムペナルティが課され、マイヨジョーヌがアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)へと移る急展開が待っていた。何があるかわからないツール。常に勝負圏にいることが重要だということがわかる一幕となってしまった。また、マイヨヴェールはベネットに移っている。
急転直下のマイヨジョーヌ移動が発生した翌日の第6ステージ。山頂フィニッシュが用意されていたが、アダム・イェーツを抱えるミッチェルトン・スコットをはじめとする総合勢はステージ優勝を逃げグループに託した。一方で、メイン集団に残ったアラフィリップは総合首位を奪還するべくフィニッシュ直前でアタックを仕掛けるものの、イェーツらエース選手を引き離すことは叶わず。マイヨジョーヌはイェーツのもとを離れなかった。
週末のピレネーを控えた第7ステージは、コースプロファイルだけを見るとスプリンター向けのフラットコース。この日レースを序盤から動かしたのはボーラ・ハンスグローエだった。マイヨヴェール奪還のため、スタート直後の3級山岳でペースアップを図り、ポイント賞のライバルたちを引き離すことに成功。サガンは手堅くスプリントポイントを確保し、レース途中の段階で暫定ポイント賞トップに返り咲いた。
スプリントポイントを通過してもボーラは先頭集団を牽引し続け、横風区間ではイネオスやユンボ、ミッチェルトン、グルパマFDJなど総合系チーム達も牽引に加わったことで、集団はさらに分裂されることに。先頭と幾つかの後続集団が一つになることはなく、レースはフィニッシュへ。生き残ったスプリンターたちが激しく火花を散らす背後から飛び出し、先頭でフィニッシュしたのはワウト・ファンアールトだった。ステージ前半はログリッチの風除けとして働いたベルジャンが、ステージ2勝目を飾った。
ニースを出発したプロトンは中央山塊を経てピレネー山脈に到着。第8ステージは1級、超級、1級と山岳を3つ越えた先の平坦フィニッシュが用意されていた。マイヨジョーヌのイェーツ率いるメイン集団は逃げ切り勝利を容認し、総合はメイン集団内で争われることに。勝負が動いたのは最終の1級山岳ペイルスルド峠。アラフィリップのアタックを皮切りに活性化したエース同士の戦いが繰り広げられたが、総合順位が変動すること無く1日を終えた。
第9ステージはピレネーの玄関口"ポー"の街をスタートし、4級を含む5つの峠を越えるコース。序盤の4級を過ぎてもアタック合戦は終わること無く、1級ラ・ウルセル峠に突入。ここでマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)が単独エスケープを開始する。ただ一人ピレネーの山中で逃げ続けるヒルシは1級、3級、3級と次々に峠を越えていき、最終の1級マリーブランク峠も単独で山頂を通過し、ステージ優勝が目の前に見えてきた。
しかし、メイン集団でのアタック合戦を経て生き残ったログリッチ、ベルナルら精鋭4名たちが、残り2km地点でヒルシを捉えることに成功。そのまま5名でのスプリントフィニッシュを迎えたが、ヒルシはあと一歩のところでステージ優勝には届かず。残り90km地点から単独で逃げ続けたヒルシには敢闘賞が贈られ、山岳賞も3位に浮上した。
最終スプリントで2位に食い込んだログリッチはついにマイヨジョーヌを獲得。第1週から強烈な存在感を放つユンボ・ヴィスマが、目標である総合優勝へ向けて駒を1つ進めることに。しかし、何が起こるかわからないツールはまだ始まったばかり。
21秒差でベルナルは2位、32秒差の5位にはキンタナ、首位から陥落したもののアダム・イェーツは1分2秒差の8位に留まっている。ポイント賞は1位サガン、2位ベネット、3位ファンアールトという並び。これからもシマノ・グローバルサポートチームの活躍に期待したい。
この2チームに共通するのは、自他ともに認めるマイヨジョーヌの最有力候補を抱えていること。総合優勝を獲得するために最も重要となる山岳ステージでのパフォーマンスを大前提とするが、下り坂、横風、スプリントフィニッシュでの位置取り、ありとあらゆるシチュエーションにおいて安定した性能を発揮することもまた求められている。使い慣れており、信頼性も高いDURA-ACE R9150で勝負を仕掛けるのは必然だろう。
リムブレーキとディスクブレーキを使い分けているのはサンウェブとグルパマFDJの2チーム。サンウェブはエアロロードにはディスクブレーキ、山岳用バイクにはリムブレーキという明快な使い分けを行っている。グルパマFDJは選手、レースコースの難易度に合わせてバイクを使い分けている模様。ちなみに白いケーブルが露出しているのがリムブレーキ、黒いケーブルがディスクブレーキというように判別しやすいように組み分けられていると見られる。
ボーラ・ハンスグローエとドゥクーニンク・クイックステップ、ミッチェルトン・スコット、アルケア・サムシックはディスクブレーキがメイン。ボーラはペテル・サガンのポイント賞を視野に入れており、ドゥクーニンク・クイックステップはウルフパックという二つ名に相応しく、どのようなステージでも優勝を狙える布陣だ。
一方で、ミッチェルトン・スコットからはアダム・イエーツ、アルケア・サムシックからはナイロ・キンタナという総合優勝や表彰台を狙える選手が出場している。ブレーキタイプの差で彼らが勝負を諦めることはない。それは自分自身とチームのパフォーマンス、シマノのコンポーネンツを信頼しているから。彼らの激闘をダイジェストで振り返っていこう。
展開が目まぐるしい第1週目 シマノ・グローバルサポートチームの活躍を振り返る
約2ヶ月遅れでグランデパールを迎えたツール・ド・フランスだったが、第1ステージは大波乱の幕開け。レース途中から降り始めた雨は路面をスリッピーにさせ、そこかしこで落車が発生する事態となったのだ。通常のレース進行もままならない状況に、ベテランのトニー・マルティン(ユンボ・ヴィスマ)が主導して自主ニュートラル状態に。終盤はスプリントフィニッシュに向けレースが再開されたが、残り3km地点でも再びクラッシュ。落車を免れた選手たちによるスプリント争いで第1ステージの決着がつき、なんとかツール・ド・フランスが開幕した形となった。
翌第2ステージは大会2日目にして標高1500m級のカテゴリー山岳が登場するコースが用意された。この日の主役はスプリンターではなく、総合を狙うオールラウンダーやアタッカー。この日のフィニッシュ争いに加わらないと判断したペテル・サガンが、マイヨヴェールのために少しでもポイントを稼ぐべく、レーススタートから逃げグループに入る展開に。スプリントポイントで2着を取ったことで、ポイント賞2位に浮上した。
この日の勝負はカテゴライズされていないキャトルシュマン峠で動いた。最も勾配のある残り13km地点で、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタックを仕掛け、マルク・ヒルシ(サンウェブ)を引き連れて、メイン集団から抜け出すことに成功。後にアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)も逃げに合流することができ、3名でフィニッシュ地点であるニースの街に戻ってきた。
3名によるスプリントはアラフィリップに軍配が上がる。昨年もレース終盤からのアタックで逃げ切り優勝を決めていたフランスの英雄が、今年もアグレッシブな走りで魅せ、再びマイヨジョーヌに袖を通した。アラフィリップの動きに呼応したヒルシもマイヨブランを獲得し、若手中心のチームに成功をもたらした。
大会3日目、途中降雨に見舞われるも第1ステージと比べると落ち着いてレースは進行。平坦ステージらしく順当に集団スプリントとなり、一気に選手たちがフィニッシュラインになだれ込んできた。シマノ・グローバルサポートチームは惜しくも優勝を逃してしまったが、ステージ5位に入ったサガンがマイヨヴェールに袖を通す結果に。前日のエスケープ作戦が効いた形となった。
2020年のツールは第4ステージで早くも1級山岳オルシエール・メルレットがラストに現れる山岳コースが登場する。主役はもちろん総合勢だ。パリは遥か彼方だが、早くもマイヨジョーヌ争いに参加する選手たちがお互いの調子を窺う1日として注目された。
1級山岳の本格的な登りが始まるとレースを掌握したのはプリモシュ・ログリッチ擁するユンボ・ヴィスマ。ワウト・ファンアールト、セップ・クスの強力な牽引で、どのライダーにもアタックさせない状況を作り出すことに成功。残り600mでようやくエース選手たちの争いに切り替わったが、強力な仲間にエスコートされてきたログリッチがライバルを圧倒し優勝。マイヨジョーヌはアラフィリップが堅守したが、ユンボ・ヴィスマの調子の良さが改めて確認された1日となった。
第5ステージは逃げグループが生まれず、普段とは違う様子の1日となった。終盤の上り勾配において総合勢によるペースアップで集団の人数は絞られていったが、約70名の大集団スプリントでレースは決着。完璧なリードアウトトレインを形成したサンウェブや、ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)、サガン(ボーラ・ハンスグローエ)を抑えて、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)が先頭で両手を上げた。
この日はジュリアン・アラフィリップが残り20km以内で補給するというルール違反を犯したことでタイムペナルティが課され、マイヨジョーヌがアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)へと移る急展開が待っていた。何があるかわからないツール。常に勝負圏にいることが重要だということがわかる一幕となってしまった。また、マイヨヴェールはベネットに移っている。
急転直下のマイヨジョーヌ移動が発生した翌日の第6ステージ。山頂フィニッシュが用意されていたが、アダム・イェーツを抱えるミッチェルトン・スコットをはじめとする総合勢はステージ優勝を逃げグループに託した。一方で、メイン集団に残ったアラフィリップは総合首位を奪還するべくフィニッシュ直前でアタックを仕掛けるものの、イェーツらエース選手を引き離すことは叶わず。マイヨジョーヌはイェーツのもとを離れなかった。
週末のピレネーを控えた第7ステージは、コースプロファイルだけを見るとスプリンター向けのフラットコース。この日レースを序盤から動かしたのはボーラ・ハンスグローエだった。マイヨヴェール奪還のため、スタート直後の3級山岳でペースアップを図り、ポイント賞のライバルたちを引き離すことに成功。サガンは手堅くスプリントポイントを確保し、レース途中の段階で暫定ポイント賞トップに返り咲いた。
スプリントポイントを通過してもボーラは先頭集団を牽引し続け、横風区間ではイネオスやユンボ、ミッチェルトン、グルパマFDJなど総合系チーム達も牽引に加わったことで、集団はさらに分裂されることに。先頭と幾つかの後続集団が一つになることはなく、レースはフィニッシュへ。生き残ったスプリンターたちが激しく火花を散らす背後から飛び出し、先頭でフィニッシュしたのはワウト・ファンアールトだった。ステージ前半はログリッチの風除けとして働いたベルジャンが、ステージ2勝目を飾った。
ニースを出発したプロトンは中央山塊を経てピレネー山脈に到着。第8ステージは1級、超級、1級と山岳を3つ越えた先の平坦フィニッシュが用意されていた。マイヨジョーヌのイェーツ率いるメイン集団は逃げ切り勝利を容認し、総合はメイン集団内で争われることに。勝負が動いたのは最終の1級山岳ペイルスルド峠。アラフィリップのアタックを皮切りに活性化したエース同士の戦いが繰り広げられたが、総合順位が変動すること無く1日を終えた。
第9ステージはピレネーの玄関口"ポー"の街をスタートし、4級を含む5つの峠を越えるコース。序盤の4級を過ぎてもアタック合戦は終わること無く、1級ラ・ウルセル峠に突入。ここでマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)が単独エスケープを開始する。ただ一人ピレネーの山中で逃げ続けるヒルシは1級、3級、3級と次々に峠を越えていき、最終の1級マリーブランク峠も単独で山頂を通過し、ステージ優勝が目の前に見えてきた。
しかし、メイン集団でのアタック合戦を経て生き残ったログリッチ、ベルナルら精鋭4名たちが、残り2km地点でヒルシを捉えることに成功。そのまま5名でのスプリントフィニッシュを迎えたが、ヒルシはあと一歩のところでステージ優勝には届かず。残り90km地点から単独で逃げ続けたヒルシには敢闘賞が贈られ、山岳賞も3位に浮上した。
最終スプリントで2位に食い込んだログリッチはついにマイヨジョーヌを獲得。第1週から強烈な存在感を放つユンボ・ヴィスマが、目標である総合優勝へ向けて駒を1つ進めることに。しかし、何が起こるかわからないツールはまだ始まったばかり。
21秒差でベルナルは2位、32秒差の5位にはキンタナ、首位から陥落したもののアダム・イェーツは1分2秒差の8位に留まっている。ポイント賞は1位サガン、2位ベネット、3位ファンアールトという並び。これからもシマノ・グローバルサポートチームの活躍に期待したい。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード