2017/07/01(土) - 00:00
フランス語で「剥ぎ取る」「削ぎ落とす」を表すEmonderを語源にするトレックの軽量オールラウンダー『Émonda(エモンダ)』が2代目へとフルモデルチェンジ。ノーマルブレーキで640g、ディスクブレーキで665gという圧倒的な軽さを武器に、ツール・ド・フランスでの活躍を約束された稀代のオールラウンダーを、トレック本社でのプレゼンテーション、テストライド、そして開発者インタビューを通して掘り下げていきたい。
ここはトレック社代表、ジョン・バーク氏の邸宅。各国を代表するサイクルメディアたち10数名は、バーク社長や奥様に出迎えられ、ウェルカムホームパーティーに招かれたのだ。湖畔に沈まんとする夕陽をスポットライトにして、新型Émondaがそのベールを脱いだ。
エアロロードのMadone、エンデュランスモデルのDomaneとトレックが誇るロードバイクラインアップ全てに共通する力強いヘッドチューブのデザインや、弓なりのトップチューブ、細く直線的なリアバックなど、そのフォルムは一見すると先代Émondaと瓜二つ。手にとってよく観察すれば、トップチューブは横幅がくびれ、シートチューブ断面形状はより角ばっていることが分かるくらいだ。
しかし実際には、中(カーボン積層)も外(シェイプ)も含めて完全なるフルモデルチェンジを遂げており、自信満々に告げられたフレーム重量は、なんとノーマルブレーキモデルで640g、ディスクブレーキモデルで665g。その場に居あわせたジャーナリスト達から感嘆のため息が漏れた。
先代比較で-50g、一般的な軽量ディスクブレーキロードとの比較で一気に200g以上も削ぎ落としたその数値は、まさにマスプロモデルとしては世界最軽量。当然ヒルクライム専用マシンなのでは?と疑問が浮かぶものの、プロダクトマネージャーのベン・コーツ氏は「重量もさることながら、最も注力したのはオールラウンドレーサーとしての質」と一言。これまでのÉmondaのコンセプトはそのままに、更にトータル性能を引き上げることが開発上の目標だった。
もちろん製造上の問題に対して保証を行なう「ライフタイム・ワランティ(生涯保証)」が適用されることも、並々ならぬ自信の表れだ。プレゼンテーションでは、現在トレックのアンバサダーとして活動するイェンス・フォイクトをゲストに迎え、次々とそのテクノロジーが語られていった。
最大の疑問は、大きな形状変更なく、如何にして大幅な重量削減、そして性能向上を果たしたのか。
その裏にはトレックのお家芸であるOCLVカーボンと、それを最大限活かしきる設計・解析技術の蓄積がある。カーボンの数字だけを見れば2012年に先代Madoneと共にデビューした「700」で変わりないが、その中身もまた全くの別物。詳細は企業秘密(プレゼン後に行われたファクトリーツアーでもフレーム生産現場は立ち入り禁止だった)と聞くこと叶わなかったが、素材も解析手法も格段に進歩しているという。
「ただ軽く、ただ硬くするだけならそう難しくありません。けれど走り心地を損なわずに全ての数値目標に到達することは、非常に難しい課題でした。新しいÉmondaは我々にとってのチャレンジでもあったのです」とコーツ氏は言う。解析ソフト上では数千ものデザインをシミュレーションし、そこからプロトタイプを制作して実走テストを重ね、製品版へと繋げてきた。
ノーマルブレーキモデルとディスクブレーキモデルはルックスこそほぼ同一だが、ヘッド周りやリアバックを調整しただけではなく、制動力の違いを踏まえ100%別設計をとっている。フレームはコンマmm単位で形状と積層を煮詰めており、もちろん各サイズ毎に走りのバランスが崩れないよう乗り味は調整済みだ。
OCLVカーボンを最大限生かすためのフォルムを、更により一層突き詰めたÉmonda。ボトムブラケットは最高レベルの剛性を持つトレックオリジナルのBB90で、一般的なシートクランプと比べチューブ集合部にしなり量設計の自由度を持たせることができ、かつ軽量性と柔軟性に優れたシートマストや、チェーン落ちを防ぐ3Sチェーンキーパーなど、トレックの特徴的なシステムは全て引き継がれている。
結果的に新型Émondaは大幅にフレーム重量を削ぎ落としたにも関わらず、フレーム剛性、更に垂直方行の柔軟性という相反する要素を共に高めた(詳細値は横のチャートをご覧頂きたい)というから、トレックの技術力の高さを感じずにはいられない。
そうして完成度を高めたÉmondaはトレック・セガフレードの元へと届けられ、ツール・ド・フランス制覇を狙うアルベルト・コンタドール(スペイン)らからも非常に良い反応を得たという。その後コンタドール本人はツール前哨戦であるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネから製品版を使用しており、それを海外メディアが取り上げて話題となったことも記憶に新しい。
Émondaには従来通り一般ライダーにベストなジオメトリーを採用した「H2」フィットと、よりアグレッシグなプロ選手好みの「H1」フィットが用意される。店頭に並ぶのはH2だが、人気のカスタムオーダーシステム「プロジェクトワン」ではH1を選択することもできる。このあたりの懐の広さ、深さは流石トレックと言うべきだろう。
日本での展開モデルは、新開発のボントレガー製軽量ブレーキや、68gという驚きの重量を達成したXXX carbonサドルを投入したÉmonda SLR 9(税抜1,111,000円)と、最新のカーボンクリンチャーホイール「Aeolus Pro 3 TLR」を採用したディスクブレーキモデルÉmonda SLR 8 Disc(税抜893,000円)を筆頭とした5つの完成車パッケージ。もちろんプロジェクトワンでのカスタムも可能であり、自分だけの一台を作り出すことが可能だ。
また、従来SLR、SL、Sと3グレードが用意されてきたものの、2018ラインアップからはSグレードが無くなり、SLがカーボンモデルのボトムラインを担うことになる。SLはSLRと同じようなモデルチェンジは施されないが、従来からのトレック独自の走りの剛性を高める「BB90」や快適な乗り心地を提供する「シートマスト」が備えつつも実質的に大幅なプライスダウンとなるため、市場での価値が今一度上がることになるだろう。こちらはディスクブレーキ仕様の国内販売が無い代わりに、ウィメンズモデルとフレームセットが販売される予定だ。各種販売パッケージと詳細は、トレック・ジャパンのホームページを参照してほしい。
トレック社長邸宅で披露された新型Émonda
シカゴ国際空港を出て、いかにもアメリカを感じさせる広大なハイウェイを飛ばすことおよそ2時間。ウィスコンシン州第2の街マディソン(かの有名小説のマディソン郡ではない)にある、湖畔の閑静な住宅地には、意欲的な目つきのジャーナリストたちが集まっていた。ここはトレック社代表、ジョン・バーク氏の邸宅。各国を代表するサイクルメディアたち10数名は、バーク社長や奥様に出迎えられ、ウェルカムホームパーティーに招かれたのだ。湖畔に沈まんとする夕陽をスポットライトにして、新型Émondaがそのベールを脱いだ。
エアロロードのMadone、エンデュランスモデルのDomaneとトレックが誇るロードバイクラインアップ全てに共通する力強いヘッドチューブのデザインや、弓なりのトップチューブ、細く直線的なリアバックなど、そのフォルムは一見すると先代Émondaと瓜二つ。手にとってよく観察すれば、トップチューブは横幅がくびれ、シートチューブ断面形状はより角ばっていることが分かるくらいだ。
しかし実際には、中(カーボン積層)も外(シェイプ)も含めて完全なるフルモデルチェンジを遂げており、自信満々に告げられたフレーム重量は、なんとノーマルブレーキモデルで640g、ディスクブレーキモデルで665g。その場に居あわせたジャーナリスト達から感嘆のため息が漏れた。
目指したのは、軽さだけではないオールラウンダーとしての質
先代比較で-50g、一般的な軽量ディスクブレーキロードとの比較で一気に200g以上も削ぎ落としたその数値は、まさにマスプロモデルとしては世界最軽量。当然ヒルクライム専用マシンなのでは?と疑問が浮かぶものの、プロダクトマネージャーのベン・コーツ氏は「重量もさることながら、最も注力したのはオールラウンドレーサーとしての質」と一言。これまでのÉmondaのコンセプトはそのままに、更にトータル性能を引き上げることが開発上の目標だった。
もちろん製造上の問題に対して保証を行なう「ライフタイム・ワランティ(生涯保証)」が適用されることも、並々ならぬ自信の表れだ。プレゼンテーションでは、現在トレックのアンバサダーとして活動するイェンス・フォイクトをゲストに迎え、次々とそのテクノロジーが語られていった。
最大の疑問は、大きな形状変更なく、如何にして大幅な重量削減、そして性能向上を果たしたのか。
その裏にはトレックのお家芸であるOCLVカーボンと、それを最大限活かしきる設計・解析技術の蓄積がある。カーボンの数字だけを見れば2012年に先代Madoneと共にデビューした「700」で変わりないが、その中身もまた全くの別物。詳細は企業秘密(プレゼン後に行われたファクトリーツアーでもフレーム生産現場は立ち入り禁止だった)と聞くこと叶わなかったが、素材も解析手法も格段に進歩しているという。
「ただ軽く、ただ硬くするだけならそう難しくありません。けれど走り心地を損なわずに全ての数値目標に到達することは、非常に難しい課題でした。新しいÉmondaは我々にとってのチャレンジでもあったのです」とコーツ氏は言う。解析ソフト上では数千ものデザインをシミュレーションし、そこからプロトタイプを制作して実走テストを重ね、製品版へと繋げてきた。
ノーマルブレーキモデルとディスクブレーキモデルはルックスこそほぼ同一だが、ヘッド周りやリアバックを調整しただけではなく、制動力の違いを踏まえ100%別設計をとっている。フレームはコンマmm単位で形状と積層を煮詰めており、もちろん各サイズ毎に走りのバランスが崩れないよう乗り味は調整済みだ。
OCLVカーボンを最大限生かすためのフォルムを、更により一層突き詰めたÉmonda。ボトムブラケットは最高レベルの剛性を持つトレックオリジナルのBB90で、一般的なシートクランプと比べチューブ集合部にしなり量設計の自由度を持たせることができ、かつ軽量性と柔軟性に優れたシートマストや、チェーン落ちを防ぐ3Sチェーンキーパーなど、トレックの特徴的なシステムは全て引き継がれている。
結果的に新型Émondaは大幅にフレーム重量を削ぎ落としたにも関わらず、フレーム剛性、更に垂直方行の柔軟性という相反する要素を共に高めた(詳細値は横のチャートをご覧頂きたい)というから、トレックの技術力の高さを感じずにはいられない。
そうして完成度を高めたÉmondaはトレック・セガフレードの元へと届けられ、ツール・ド・フランス制覇を狙うアルベルト・コンタドール(スペイン)らからも非常に良い反応を得たという。その後コンタドール本人はツール前哨戦であるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネから製品版を使用しており、それを海外メディアが取り上げて話題となったことも記憶に新しい。
Émondaには従来通り一般ライダーにベストなジオメトリーを採用した「H2」フィットと、よりアグレッシグなプロ選手好みの「H1」フィットが用意される。店頭に並ぶのはH2だが、人気のカスタムオーダーシステム「プロジェクトワン」ではH1を選択することもできる。このあたりの懐の広さ、深さは流石トレックと言うべきだろう。
日本での展開モデルは、新開発のボントレガー製軽量ブレーキや、68gという驚きの重量を達成したXXX carbonサドルを投入したÉmonda SLR 9(税抜1,111,000円)と、最新のカーボンクリンチャーホイール「Aeolus Pro 3 TLR」を採用したディスクブレーキモデルÉmonda SLR 8 Disc(税抜893,000円)を筆頭とした5つの完成車パッケージ。もちろんプロジェクトワンでのカスタムも可能であり、自分だけの一台を作り出すことが可能だ。
また、従来SLR、SL、Sと3グレードが用意されてきたものの、2018ラインアップからはSグレードが無くなり、SLがカーボンモデルのボトムラインを担うことになる。SLはSLRと同じようなモデルチェンジは施されないが、従来からのトレック独自の走りの剛性を高める「BB90」や快適な乗り心地を提供する「シートマスト」が備えつつも実質的に大幅なプライスダウンとなるため、市場での価値が今一度上がることになるだろう。こちらはディスクブレーキ仕様の国内販売が無い代わりに、ウィメンズモデルとフレームセットが販売される予定だ。各種販売パッケージと詳細は、トレック・ジャパンのホームページを参照してほしい。
提供:トレックジャパン text:So.Isobe