2017/02/01(水) - 12:49
サイクリングウェアのカスタムオーダーを手がけるChampionSystem(チャンピオンシステム)の、香港本社と中国工場を訪問した。チームでデザインしたオーダーウェアを迅速かつ膨大な生産量で届ける同社の秘密を公開してもらった。
香港の中心部からやや離れた、九龍湾(クーロンベイ)エリアにあるチャンピオンシステム本社を訪ねた。対応してくれたのは創業者ルイス・シー氏とマーケティング担当者クリス・レイノルズ氏。まずは同社のアウトラインを紹介してもらいつつ、ブランドの生い立ちなどを話してもらった。
チャンピオンシステム社が注文生産によるカスタムウェアのビジネスを始めてから今年で11年目になる。カスタマーがデザインするサイクリング、ランニング、トライアスロン他のスポーツウェアを注文により制作している。この香港オフィスは本社機能とデザイン部署からなっており、主要な生産工場は中国とタイにあるという。
ルイス氏「ここでは本社機能の他に10人のグラフィックデザイナーが特別な案件に対応しています。中国工場では600人、タイ工場では200人以上が働いています。世界中では約1,000人ほどの人々が働いています。チャンピオンシステム・ジャパンのような支社は世界に約20社ほどあり、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアにニュージーランド、そしてアジアなど毎年増え続けています」。
今回訪問に同行してくれた同社ジャパン代表の棈木亮二(あべきりょうじ)氏は、8年前から日本でのオーダー窓口としての業務をスタートさせている。棈木さんといえばシクロクロス東京やスターライトクロス幕張のオーガナイザーとしても知られるが、もともとはメッセンジャー会社を経営していた人物。「リョウジは私のカスタマーだったんです。出会いはラスベガスショーでした」とルイス氏。
棈木さんは「メッセンジャー会社を経営していたときに、毎年たくさんジャージを作っていたんです。注文したジャージの品質の良さ、リーズナブルな価格、そしてオーダーに的確に応えてくれる対応の素晴らしさなどに、いつも驚いていたんです。そして『これは誰かが日本に紹介しなくてはならない!』と思ったんです。そうしてクロスベガスを観に行った際に日本での展開をルイスにオファーしました。それがスタートでした」と振り返る。
クリス氏にはチャンピオンシステムのブランドとしての特徴を聞いてみた。
「他の会社との違いを挙げるとするなら、カスタマーにフォーカスしていることです。私たちはオーダーウェアのメーカーですから、できるだけ細かな要求に応えるよう努力しています。たった10着のジャージを造るというオーダーでも、カスタマーの細かな要求に柔軟に、そして迅速に応えること。すべてを自社工場で行うことで要望に早く応えています。他社ではおそらくできないことです。また、クオリティーチェックについて非常に厳しく考えています。注文製作ではコミュニケーションのズレが製品に現れてしまいがちですが、ミスを無くすように製作段階で何重にもチェックを重ねています」。
ルイス氏「ランプレ・メリダへのスポンサードは3年を終えて今年で4年目に入ります(2017年からチームは”UAEアブダビ”に名を変えるが継続サポートする)。UCIワールドツアーチームをサポートしたことは素晴らしいことでした。彼らは私たちのウェア開発を非常に後押ししてくれます。
毎日200kmといった長距離を走りますし、世界中ありとあらゆる気候の国々で、雨の中も風の中もレースを走ります。ワールドツアーチームは最高の開発ラボ(研究室)です。そこでは本当のテストが行えます。彼らの要望で新たに生まれた製品や、アイデアが活かされた部分はいくつもあります。例えば雨の日、私達なら30分で走ることを止めるでしょう。しかし彼らは走り続けます。そのためのウェアや用品が生まれました。かけがえのない経験です。
ランプレ・メリダだけではありません。私たちは数多くのナショナルチームなどにもスポンサードやサポートも行っているため、あらゆるレースの経験がフィードバックされます。一般のホビーサイクリストのためだけに製品づくりを行っていたのでは産まれない製品も誕生しています。
タイムトライアルのスピードスーツはウィンドトンネルでのテストを重ねて設計します。トラック、BMXの種目や、レインボー(アルカンシェル)ジャージ、特殊な用途のウェアも勝負のために真剣に研究して製作します」。
チャンピオンシステムには、今までに6枚のアルカンシェルがあります。ランプレ・メリダのルイ・コスタ、香港の誇るワン・カンポ、ニュージーランドBMXチャンピオンなどなど、それが我々の誇りでもあります。我々には次のようなスローガンがあります。
チャンピオンシステムは世界じゅうのUCIレースのチャンピオンジャージや、ホビー大会のサポートも展開。国内でもあらゆるイベントをサポートしている。大会のスタッフやバルーンアーチなどでそのロゴを見る機会が多い。その活動はなぜ行っているのかも聞いてみた。
「中国のUCIレース ”ツアー・オブ・チンハイレイク”では、弊社がサポートするまで市販のジャージにロゴを入れて勝者に授与していました。ある年ダミアーノ・クネゴは大きめのリーダージャージを縫ってサイズを小さくして着ていたのです!
我々が大会スポンサーになってからはもちろんそんなことはありません。ピッタリのサイズのチャンピオンジャージを表彰式でチームのロゴをプリントしてすぐに授与します。大会のスタッフたちもお揃いのデザインのウェアで着揃えています。それらがレースをより華やかに見せ、大会の格式を上げることに繋がります。
スポンサードによって私達が見返りに受ける経済効果はほとんど無いのですが、レースが盛り上がることが、最終的には私たちが目指すところなのです。イベントが成長し、大会の質が上がると、地元の企業などのスポンサーもつくようになります。そのレースが成長していけば良いのです。世界各地でそんな活動を行っています。ツアー・オブ・ジャパンにツール・ド・熊野。リョウジは日本で頑張っています(笑)」とルイス氏。
「UCIレースだけではありません。ツアー・オブ・フレンドシップ(タイ)など、市民レベルの大会も支援します。それがファン(楽しみ)だから。成功してほしいからです。セールスには直接的にはつながりませんが、良いサイクルイベントには成功して欲しいのです」(クリス氏)。
今までのオーダーから、日本のカスタマーについてどう思うかも聞いてみた。
「日本の方はデザイン力があり、アートワークがいつも素晴らしいんです! とてもチャレンジングで、ディテールにこだわることにも驚いています。デザインのフィニッシュはジャパンオフィスがやってくれるからでしょう。日本にはいいオフィスがありますから!(笑)」(ルイス氏)。
オーダーの取りまとめとデザインのブラッシュアップは各国ごとのブランチが担当するのだ。
最後にクリス氏が新しい製品ラインナップについて説明してくれた。
「2017年から展開する新製品の開発にはとても力を入れました。渾身の新ラインナップになります。とくに最高峰のAPEX(エイペックス)はランプレ・メリダが着たジャージが一般の方のオーダージャージとして注文いただけるようになります。エアロダイナミックで、ディンプル加工を施した生地は身体へのフィットは素晴らしく、最新技術をフルに活かしたコレクションになります。ツール・ド・フランスを走ったジャージがホビーサイクリストのものとなります。カスタムウェアとしては最高峰のものとなるでしょう」。
新ラインナップでのオーダーはすでに1月1日からスタートしている。製品詳細についてはこちらのレビュー記事を参照して欲しい。
インタビューを終えて香港オフィスを出る前、ルイス氏は私の差し出した名刺を手に「このロゴをもとにジャージを作りますよ。1日でね。明日はその行程をお見せしましょう」と話してくれた。以降では中国工場を訪問してのジャージ製作風景を紹介しよう。
香港の中心部からやや離れた、九龍湾(クーロンベイ)エリアにあるチャンピオンシステム本社を訪ねた。対応してくれたのは創業者ルイス・シー氏とマーケティング担当者クリス・レイノルズ氏。まずは同社のアウトラインを紹介してもらいつつ、ブランドの生い立ちなどを話してもらった。
チャンピオンシステム社が注文生産によるカスタムウェアのビジネスを始めてから今年で11年目になる。カスタマーがデザインするサイクリング、ランニング、トライアスロン他のスポーツウェアを注文により制作している。この香港オフィスは本社機能とデザイン部署からなっており、主要な生産工場は中国とタイにあるという。
ルイス氏「ここでは本社機能の他に10人のグラフィックデザイナーが特別な案件に対応しています。中国工場では600人、タイ工場では200人以上が働いています。世界中では約1,000人ほどの人々が働いています。チャンピオンシステム・ジャパンのような支社は世界に約20社ほどあり、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアにニュージーランド、そしてアジアなど毎年増え続けています」。
今回訪問に同行してくれた同社ジャパン代表の棈木亮二(あべきりょうじ)氏は、8年前から日本でのオーダー窓口としての業務をスタートさせている。棈木さんといえばシクロクロス東京やスターライトクロス幕張のオーガナイザーとしても知られるが、もともとはメッセンジャー会社を経営していた人物。「リョウジは私のカスタマーだったんです。出会いはラスベガスショーでした」とルイス氏。
棈木さんは「メッセンジャー会社を経営していたときに、毎年たくさんジャージを作っていたんです。注文したジャージの品質の良さ、リーズナブルな価格、そしてオーダーに的確に応えてくれる対応の素晴らしさなどに、いつも驚いていたんです。そして『これは誰かが日本に紹介しなくてはならない!』と思ったんです。そうしてクロスベガスを観に行った際に日本での展開をルイスにオファーしました。それがスタートでした」と振り返る。
クリス氏にはチャンピオンシステムのブランドとしての特徴を聞いてみた。
「他の会社との違いを挙げるとするなら、カスタマーにフォーカスしていることです。私たちはオーダーウェアのメーカーですから、できるだけ細かな要求に応えるよう努力しています。たった10着のジャージを造るというオーダーでも、カスタマーの細かな要求に柔軟に、そして迅速に応えること。すべてを自社工場で行うことで要望に早く応えています。他社ではおそらくできないことです。また、クオリティーチェックについて非常に厳しく考えています。注文製作ではコミュニケーションのズレが製品に現れてしまいがちですが、ミスを無くすように製作段階で何重にもチェックを重ねています」。
ランプレ・メリダへのスポンサードから得たもの
チャンピオンシステムと言えば、2013年には同社の名前でアジア初のUCIプロコンチネンタルチームを立ち上げ、その名を背負って世界のレースを走った。昨年までは新城幸也も所属したランプレ・メリダのスポンサーもつとめた。同社のロゴが入るプロチームは多いが、プロチームやプロ選手へのサポートから得たものは何だろう?ルイス氏「ランプレ・メリダへのスポンサードは3年を終えて今年で4年目に入ります(2017年からチームは”UAEアブダビ”に名を変えるが継続サポートする)。UCIワールドツアーチームをサポートしたことは素晴らしいことでした。彼らは私たちのウェア開発を非常に後押ししてくれます。
毎日200kmといった長距離を走りますし、世界中ありとあらゆる気候の国々で、雨の中も風の中もレースを走ります。ワールドツアーチームは最高の開発ラボ(研究室)です。そこでは本当のテストが行えます。彼らの要望で新たに生まれた製品や、アイデアが活かされた部分はいくつもあります。例えば雨の日、私達なら30分で走ることを止めるでしょう。しかし彼らは走り続けます。そのためのウェアや用品が生まれました。かけがえのない経験です。
ランプレ・メリダだけではありません。私たちは数多くのナショナルチームなどにもスポンサードやサポートも行っているため、あらゆるレースの経験がフィードバックされます。一般のホビーサイクリストのためだけに製品づくりを行っていたのでは産まれない製品も誕生しています。
タイムトライアルのスピードスーツはウィンドトンネルでのテストを重ねて設計します。トラック、BMXの種目や、レインボー(アルカンシェル)ジャージ、特殊な用途のウェアも勝負のために真剣に研究して製作します」。
チャンピオンシステムには、今までに6枚のアルカンシェルがあります。ランプレ・メリダのルイ・コスタ、香港の誇るワン・カンポ、ニュージーランドBMXチャンピオンなどなど、それが我々の誇りでもあります。我々には次のようなスローガンがあります。
“Choice of champion, champions choose championsystem.
Championsystem make champions ー
チャンピオンの選択がチャンピオンシステム、チャンピオンシステムがチャンピオンをつくる”
Championsystem make champions ー
チャンピオンの選択がチャンピオンシステム、チャンピオンシステムがチャンピオンをつくる”
世界中のサイクリングイベントをサポートするというポリシー
チャンピオンシステムは世界じゅうのUCIレースのチャンピオンジャージや、ホビー大会のサポートも展開。国内でもあらゆるイベントをサポートしている。大会のスタッフやバルーンアーチなどでそのロゴを見る機会が多い。その活動はなぜ行っているのかも聞いてみた。
「中国のUCIレース ”ツアー・オブ・チンハイレイク”では、弊社がサポートするまで市販のジャージにロゴを入れて勝者に授与していました。ある年ダミアーノ・クネゴは大きめのリーダージャージを縫ってサイズを小さくして着ていたのです!
我々が大会スポンサーになってからはもちろんそんなことはありません。ピッタリのサイズのチャンピオンジャージを表彰式でチームのロゴをプリントしてすぐに授与します。大会のスタッフたちもお揃いのデザインのウェアで着揃えています。それらがレースをより華やかに見せ、大会の格式を上げることに繋がります。
スポンサードによって私達が見返りに受ける経済効果はほとんど無いのですが、レースが盛り上がることが、最終的には私たちが目指すところなのです。イベントが成長し、大会の質が上がると、地元の企業などのスポンサーもつくようになります。そのレースが成長していけば良いのです。世界各地でそんな活動を行っています。ツアー・オブ・ジャパンにツール・ド・熊野。リョウジは日本で頑張っています(笑)」とルイス氏。
「UCIレースだけではありません。ツアー・オブ・フレンドシップ(タイ)など、市民レベルの大会も支援します。それがファン(楽しみ)だから。成功してほしいからです。セールスには直接的にはつながりませんが、良いサイクルイベントには成功して欲しいのです」(クリス氏)。
今までのオーダーから、日本のカスタマーについてどう思うかも聞いてみた。
「日本の方はデザイン力があり、アートワークがいつも素晴らしいんです! とてもチャレンジングで、ディテールにこだわることにも驚いています。デザインのフィニッシュはジャパンオフィスがやってくれるからでしょう。日本にはいいオフィスがありますから!(笑)」(ルイス氏)。
オーダーの取りまとめとデザインのブラッシュアップは各国ごとのブランチが担当するのだ。
最後にクリス氏が新しい製品ラインナップについて説明してくれた。
「2017年から展開する新製品の開発にはとても力を入れました。渾身の新ラインナップになります。とくに最高峰のAPEX(エイペックス)はランプレ・メリダが着たジャージが一般の方のオーダージャージとして注文いただけるようになります。エアロダイナミックで、ディンプル加工を施した生地は身体へのフィットは素晴らしく、最新技術をフルに活かしたコレクションになります。ツール・ド・フランスを走ったジャージがホビーサイクリストのものとなります。カスタムウェアとしては最高峰のものとなるでしょう」。
新ラインナップでのオーダーはすでに1月1日からスタートしている。製品詳細についてはこちらのレビュー記事を参照して欲しい。
インタビューを終えて香港オフィスを出る前、ルイス氏は私の差し出した名刺を手に「このロゴをもとにジャージを作りますよ。1日でね。明日はその行程をお見せしましょう」と話してくれた。以降では中国工場を訪問してのジャージ製作風景を紹介しよう。
提供:チャンピオンシステム photo&text:綾野 真(シクロワイアード)