2013/06/21(金) - 17:08
スイスが誇る世界屈指の高性能スポーツバイクブランド、BMC。そのロードラインナップにおいて、フラッグシップの座に君臨するオールラウンドレーシングモデルがteammachine SLR01だ。
BMCレーシングチームが駆り、ツール・ド・フランス制覇や世界選手権優勝など幾多の功績を生み出したSLR01は、2013年、フルモデルチェンジを果たした。2日間をかけ、南フランス・プロヴァンス地方で行われたプレゼンテーションの様子をレポートしよう。
あるとき届いたBMCからの便り。見れば南フランス・モンヴァントゥー山麓にて新車のプレゼンテーションを行うとある。その招待状にバイクについての情報は一切記されてなかったが、ツール・ド・フランスの伝説的な峠が舞台ということでおおかたの察しはつく。そう、BMCのフラッグシップレーシングモデルの世代交代だ。5月27日、発表会へ出席すべく成田から一路フランスへと飛んだ。
プレゼンテーションの舞台となったのは、プロヴァンス地方ヴォクリューズ県の中心地・アヴィニョンから高速道路を使って30分ほど離れた5つ星リゾートホテル「ラ・コックヤード」。周辺には幾重にもぶどう畑の丘が続き、かのモンヴァントゥーをも見渡すことのできるその立地は、サイクリストならば誰もが憧れるロケーション。マルセイユや地中海にも近く、温暖な気候に恵まれた美しい風土が魅力だ。
従来モデルであるSLR01のデビューは2010年のこと。BMCレーシングチームの選手たちが駆り、カデル・エヴァンスによるツール・ド・フランス制覇、そして2012年にはフィリップ・ジルベールによるアルカンシエル獲得をサポート。集団スプリントから超級山岳のヒルクライムに至るまで、持ち前のオールラウンドな性能を発揮して様々なレースで活躍を見せてきた。
しかし。ライバルブランドがほぼ毎年旗艦モデルを更新する一方、各部のブラッシュアップを経つつもSLR01は3年以上の長きに渡りトップモデルの座を張ってきた事も事実。そしていよいよもって、2013年シーズン途中より新型モデルを実戦投入し、今回のプレゼンテーションで初めて正式発表を迎えた。
「BMC史上最も軽く、最も性能の高いバイク」
ラ・コックヤードのパーティールームに集まったのは、主にヨーロッパとアメリカ、オーストラリアのサイクルジャーナリストたち。開かれた扉の向こうに姿を表したのは、明らかにボリュームを増した新型teammachine SLR01の姿。すぐにプレゼンテーションが開始された。
ブラッシュアップやマイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジを行ったSLR01。だが車名は従来より引き継がれ、特徴あるシートポスト下の造形やコンパクトなリアバックなど、SLR01たるディティールはほぼそのままである。しかしBMC自慢の最新技術を駆使したことで、中身は全くの別物に。プレゼンテーションを行ったアンドリュー氏曰く「BMC史上最も軽く、最も性能の高いバイク」を作り上げた。
新型SLR01の開発コンセプトは、より軽く、強く、パフォーマンスを落とさずに快適性を高めること。これまでエアロや悪路走行/ロングライドに重きを置いた特徴あるバイクをリリースしてきたBMCだが、オールラウンドマシンであるSLR01には、当然の如く全要素をバランス良く高めることが求められた。そこでデザインプロセスを見直し、新たな開発ソフトウェアを導入。それが「Accelerated Composites Evolution」、通称「ACEテクノロジー」だ。
スイスの大学と共同開発したこのACEソフトを開発に導入したことでジオメトリー、チューブの接合部形状、カーボンレイアップ(積層)などを含め飛躍的に開発精度を高めることに成功。およそ1年という短期間のうちに34000通りのプロトタイプをソフト上で生成し、その中から先のコンセプトに見合うベストなパターンを選び抜いた。
特に前三角のボリュームをひと際増大させ剛性アップを図りつつ、フレーム重量は54サイズで790g(塗装済み、シートクランプ、リアエンド、ヘッドセットなどスモールパーツ込みの数値)と、前モデルと比較し130g、14%もの軽量化を達成。さらに各性能も向上させ、具体的にはBB周辺の横剛性を10%、バイク全体で25%の剛性強化、そして10%の縦方向への衝撃吸収性を増す事に成功している。
BBシステムは引き継ぎBB86を採用しているが、シートチューブやダウンチューブの接合部はシェル幅いっぱいに広げられ、よりマッシブな印象を与えるものとなった。リアバックのボリュームアップは特に感じられないが、チェーンステーとシートステーは共に、左右で大きく断面形状を変えることでより駆動効率の向上を追求。シートポストは前後方向のみにしならせるため、台形に近い断面の専用品を使用する。
そしてワイヤー類が遂に内蔵化されたこともSLR01のトピックスだと言えるだろう。シフトワイヤーは専用パーツを使ってダウンチューブのヘッド寄りから内蔵され、リアブレーキワイヤーはヘッドチューブ前面からトップチューブ内部を伝わり最短距離でキャリパーへと到達する。新たに機械式/電動両対応となったため、取り付けるコンポーネントを選ばない。さらにリアエンドは両側からフレームを挟み込むように取り付ける構造を採用しており、確実な固定力を実現するよう注力された。
新型teammachine SLR01の開発にあたっては、もちろんBMCレーシングチームとの共同開発が行われ、トップ選手による徹底的な乗り込みが行われた。フィリップ・ジルベール、カデル・エヴァンス、ティージェイ・ヴァンガーデレン。この3名がカーボンレイアップの異なる2種類のモデルを乗り比べてテストし、最終的に生み出されたのが今回のSLR01だ。
既に製品版のモデル数台が選手に供給されており、ヴァンガーデレンのツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝と、エヴァンスのジロ・デ・イタリア総合表彰台獲得を達成。オールラウンドレーシングバイクとしての性能を見事に発揮し、結果で性能を証明してみせたのだ。
次ページでは、新型SLR01に投入されたテクノロジーの詳細、BMCレーシングとの開発ストーリーについて触れていく。
BMCレーシングチームが駆り、ツール・ド・フランス制覇や世界選手権優勝など幾多の功績を生み出したSLR01は、2013年、フルモデルチェンジを果たした。2日間をかけ、南フランス・プロヴァンス地方で行われたプレゼンテーションの様子をレポートしよう。
あるとき届いたBMCからの便り。見れば南フランス・モンヴァントゥー山麓にて新車のプレゼンテーションを行うとある。その招待状にバイクについての情報は一切記されてなかったが、ツール・ド・フランスの伝説的な峠が舞台ということでおおかたの察しはつく。そう、BMCのフラッグシップレーシングモデルの世代交代だ。5月27日、発表会へ出席すべく成田から一路フランスへと飛んだ。
プレゼンテーションの舞台となったのは、プロヴァンス地方ヴォクリューズ県の中心地・アヴィニョンから高速道路を使って30分ほど離れた5つ星リゾートホテル「ラ・コックヤード」。周辺には幾重にもぶどう畑の丘が続き、かのモンヴァントゥーをも見渡すことのできるその立地は、サイクリストならば誰もが憧れるロケーション。マルセイユや地中海にも近く、温暖な気候に恵まれた美しい風土が魅力だ。
従来モデルであるSLR01のデビューは2010年のこと。BMCレーシングチームの選手たちが駆り、カデル・エヴァンスによるツール・ド・フランス制覇、そして2012年にはフィリップ・ジルベールによるアルカンシエル獲得をサポート。集団スプリントから超級山岳のヒルクライムに至るまで、持ち前のオールラウンドな性能を発揮して様々なレースで活躍を見せてきた。
しかし。ライバルブランドがほぼ毎年旗艦モデルを更新する一方、各部のブラッシュアップを経つつもSLR01は3年以上の長きに渡りトップモデルの座を張ってきた事も事実。そしていよいよもって、2013年シーズン途中より新型モデルを実戦投入し、今回のプレゼンテーションで初めて正式発表を迎えた。
「BMC史上最も軽く、最も性能の高いバイク」
(プロダクトマネージャー アンドリュー・ジェームズ)
ラ・コックヤードのパーティールームに集まったのは、主にヨーロッパとアメリカ、オーストラリアのサイクルジャーナリストたち。開かれた扉の向こうに姿を表したのは、明らかにボリュームを増した新型teammachine SLR01の姿。すぐにプレゼンテーションが開始された。ブラッシュアップやマイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジを行ったSLR01。だが車名は従来より引き継がれ、特徴あるシートポスト下の造形やコンパクトなリアバックなど、SLR01たるディティールはほぼそのままである。しかしBMC自慢の最新技術を駆使したことで、中身は全くの別物に。プレゼンテーションを行ったアンドリュー氏曰く「BMC史上最も軽く、最も性能の高いバイク」を作り上げた。
新型SLR01の開発コンセプトは、より軽く、強く、パフォーマンスを落とさずに快適性を高めること。これまでエアロや悪路走行/ロングライドに重きを置いた特徴あるバイクをリリースしてきたBMCだが、オールラウンドマシンであるSLR01には、当然の如く全要素をバランス良く高めることが求められた。そこでデザインプロセスを見直し、新たな開発ソフトウェアを導入。それが「Accelerated Composites Evolution」、通称「ACEテクノロジー」だ。
スイスの大学と共同開発したこのACEソフトを開発に導入したことでジオメトリー、チューブの接合部形状、カーボンレイアップ(積層)などを含め飛躍的に開発精度を高めることに成功。およそ1年という短期間のうちに34000通りのプロトタイプをソフト上で生成し、その中から先のコンセプトに見合うベストなパターンを選び抜いた。
特に前三角のボリュームをひと際増大させ剛性アップを図りつつ、フレーム重量は54サイズで790g(塗装済み、シートクランプ、リアエンド、ヘッドセットなどスモールパーツ込みの数値)と、前モデルと比較し130g、14%もの軽量化を達成。さらに各性能も向上させ、具体的にはBB周辺の横剛性を10%、バイク全体で25%の剛性強化、そして10%の縦方向への衝撃吸収性を増す事に成功している。
BBシステムは引き継ぎBB86を採用しているが、シートチューブやダウンチューブの接合部はシェル幅いっぱいに広げられ、よりマッシブな印象を与えるものとなった。リアバックのボリュームアップは特に感じられないが、チェーンステーとシートステーは共に、左右で大きく断面形状を変えることでより駆動効率の向上を追求。シートポストは前後方向のみにしならせるため、台形に近い断面の専用品を使用する。
そしてワイヤー類が遂に内蔵化されたこともSLR01のトピックスだと言えるだろう。シフトワイヤーは専用パーツを使ってダウンチューブのヘッド寄りから内蔵され、リアブレーキワイヤーはヘッドチューブ前面からトップチューブ内部を伝わり最短距離でキャリパーへと到達する。新たに機械式/電動両対応となったため、取り付けるコンポーネントを選ばない。さらにリアエンドは両側からフレームを挟み込むように取り付ける構造を採用しており、確実な固定力を実現するよう注力された。
ツアー・オブ・カリフォルニアでの優勝、ジロ・デ・イタリアの表彰台獲得
新型teammachine SLR01の開発にあたっては、もちろんBMCレーシングチームとの共同開発が行われ、トップ選手による徹底的な乗り込みが行われた。フィリップ・ジルベール、カデル・エヴァンス、ティージェイ・ヴァンガーデレン。この3名がカーボンレイアップの異なる2種類のモデルを乗り比べてテストし、最終的に生み出されたのが今回のSLR01だ。
既に製品版のモデル数台が選手に供給されており、ヴァンガーデレンのツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝と、エヴァンスのジロ・デ・イタリア総合表彰台獲得を達成。オールラウンドレーシングバイクとしての性能を見事に発揮し、結果で性能を証明してみせたのだ。
次ページでは、新型SLR01に投入されたテクノロジーの詳細、BMCレーシングとの開発ストーリーについて触れていく。
提供:フタバ商店 text:シクロワイアード編集部