モンヴァントゥーで繰り返された過酷なブレーキングテスト

約10kmにわたって高速ダウンヒル約10kmにわたって高速ダウンヒル photo:Loris von Siebenthal/MavicSAS3年間におよんだコスミックカーボン40Cの製品開発。その間、MAVICは研究所でのテストと並行して、実際のライディングテストを積極的に行なって来た。特にコスミックカーボン40Cの開発において時間が費やされたのはブレーキングのテストだ。

テスト場所として多用されたのが、ツール・ド・フランスでもお馴染み「魔の山」モンヴァントゥーの下り区間。極限の状況を作り出すために、体重100kgのライダーが全長10kmの下りを何度も何度も繰り返し下ったという。しかも、目一杯のスピードで、コンスタントにブレーキングをかけながら。

温度によって色が変わる温度シールをリムの内側に貼り、ブレーキング時の実際の温度上昇を計測。ウェットでもドライでも最高のブレーキングパフォーマンスを発揮できるよう、アルミ製リムベッドインサートやカーボンのレジンを徹底して突き詰めた。

テストライドには、ロードレースでなじみのMAVICカラーの車両が帯同したテストライドには、ロードレースでなじみのMAVICカラーの車両が帯同した photo:Kei Tsuji各国ジャーナリストに混ざってコスミックカーボン40Cを試す各国ジャーナリストに混ざってコスミックカーボン40Cを試す photo:Loris von Siebenthal/MavicSAS

コートダジュールの急峻な山々でテストライド

コートダジュール内陸部の山岳地帯を行くコートダジュール内陸部の山岳地帯を行く photo:Loris von Siebenthal/MavicSAS
プレゼンテーションが行なわれたペイヨンの村は、ニースから車で20分ほど入った山の中にある。直線距離だとモナコに近い。

モナコと言えば急峻な斜面にへばりつくような街を思い浮かべていただけると思うが、内陸部に入ってもその地形は続いている。つまり、どこに行っても登りと下りしかない。サイクリストにとっては格好のトレーニング場所であり、伝統的に多くの選手がこの地域一帯に住み着き、絶え間なく連なる峠でハードなトレーニングを行なってきた。

テストライドに用意されたのはキャニオンのアルティメイトCF SLXテストライドに用意されたのはキャニオンのアルティメイトCF SLX photo:Kei Tsuji各国ジャーナリストのテストライド用に用意されたのは、キャニオンのアルティメイトCF SLX。山岳ライドを想定した軽量なセットアップで、脚もとは当然コスミックカーボン40Cで固められる。外観は完全にフルカーボンホイールであり、戦闘的なルックスだ。

バイクと同時に、MAVICのウェアとヘルメット、シューズをテスト。

特に気に入ったのが200gを切る超軽量シューズ「ヒュエズ」。その軽さからは想像出来ないほどのホールド感に驚いた。

コスミックカーボン40Cには、タイヤまで含めてトータルでの性能を追求するMAVICの概念「WTS(ホイール・タイヤ・システム)」が採用されており、販売時点でのタイヤは、フロントホイールにはグリップ力とコントロール性能を重視した「グリップリンク」、リアホイールにはパワー伝達性と回転抵抗の低さを重視した「パワーリンク」が装着される。

テストライドにはMAVICカーとMAVICモトが同行。「トラブルなんて起こらないから、スペアのホイールを用意する必要は全くないのだけど」と笑いながら、スタッフがホイールを車とバイクに詰め込む。走り出してすぐ、早速標高1000mの最初の峠がやってきた。

内陸の山岳地帯へと向かう一行内陸の山岳地帯へと向かう一行 photo:Loris von Siebenthal/MavicSASスイッチバックが続くブラウス峠を登るスイッチバックが続くブラウス峠を登る photo:Loris von Siebenthal/MavicSASダンシング時、左右の振りの軽さが印象的ダンシング時、左右の振りの軽さが印象的 photo:Loris von Siebenthal/MavicSAS

扱いやすいハンドリングと、ウェットでも確実に効くブレーキ

一定ペースで登りを踏んでいる限り、1585gというホイールセット相応の印象しか受けない。基本コンセプトの異なる超軽量ホイールと登坂性能を比較するのは酷だ。

しかし、同じような1550〜1600gのホイールセットと比較した場合、加減速のクイック感は重量よりも軽く感じる。そしてダンシングでバイクを左右に振ると、ディープリムにありがちな「バイクを直立に保とうとする力」が極めて弱いことに気付く。ロープロファイルの平リムに近いような感触。これもリム外周が軽いことによる低い慣性モーメントから来ているアドバンテージだ。

イタリア国境に近い南フランスを走るイタリア国境に近い南フランスを走る photo:Loris von Siebenthal/MavicSAS
コートダジュールの海沿いを走る際には、山から吹き下ろす風を真横から受けたが、いわゆるディープリムに分類されるホイールにしてはハンドルを取られる感触が薄い。縦方向の剛性は抑えられているため乗り心地は良好。ルックスは攻撃的だが、とにかく使い勝手が良い印象。

そしてやはり気になるのはブレーキング性能だ。その性能に自信をもつMAVICスタッフは、様々なスピード域の下りコーナーを試乗コースに詰め込んだ。

ホイールとして基本中の基本のことではあるが、まずはブレーキ面のスムーズさに気付く。つまり歪みが無く、面が出ている。「あて利き」の状態でのスピードコントロールからフルブレーキングまで、制動力がスムーズに上昇していく。スイスストップのイエローブレーキシューとのマッチングは良く、極めて高い制動力を発揮してくれる。つまり、ガッツリとブレーキングした時はガッツリ止まる。

ハードブレーキングを繰り返しながらダウンヒルハードブレーキングを繰り返しながらダウンヒル photo:Loris von Siebenthal/MavicSASハードなダウンヒル後、スイスストップ製のイエローシューの粉が飛ぶハードなダウンヒル後、スイスストップ製のイエローシューの粉が飛ぶ photo:Kei Tsuji

長い下りでは何度も何度も無意味なほどブレーキングを繰り返し、ブレーキ面をわざと高熱にしてみたが、ブレーキングのフィーリングに大きな変化は起こらなかった。ブレーキ面の剛性が高い影響でブレーキシューの減りの早さが少し気になったが、「減速する」「止まる」という性能がとにかく高い。

テストライドは好天に恵まれたため、ブレーキ面が濡れるシチュエーションには出会えなかった。そこで、並走するライダーにボトルの水を1本分たっぷりホイールにかけてもらいながら即興ウェットテスト。さすがにドライの状態で見せたガッツリ感は影を潜めたが、しっかりと確実に減速してくれる。最初は半信半疑だった「ウェット状態の制動距離が半分に縮まった」というMAVICの文句は伊達じゃない。制動力のピークを失ってしまうような他のカーボンホイールと比較した場合、ウェット状態におけるコスミックカーボン40Cのアドバンテージは圧倒的と言っていいだろう。

マヴィック コスミックカーボン40C

コスミックカーボン40Cコスミックカーボン40C ©MavicSAS
重量1545g(タイヤなし)フロント670g/リア875g
2085g(イクシオンプロクリンチャータイヤ込み)フロント940g/リア1145g
仕様クリンチャー
リムハイト40mm
リム幅19mm
スポークダブルバテッドステンレス F16、R20
対応カセットカンパニョーロ、シマノ/SRAM(シマノ11s対応)
予価283,500円(税込)
入荷時期2013年7月下旬予定
提供:アメアスポーツジャパン 編集/取材:シクロワイアード/Kei Tsuji