日本一過酷な山岳ロングライド初日では、メカトラブルに持病の膝痛発症と、全く見せ場を作れないまま不完全燃焼に終わったlongridefan.comの面々。往路で膝痛に見舞われたtattsさんに代わり、復路は4126さんのレポート続編をお届けしましょう。

復路 134.2km 獲得標高 2724m
変更後の復路 123.5km 獲得標高 2232m
山岳組 往路コース(ルートラボより転載)山岳組 往路コース(ルートラボより転載)
山岳組 往路コース(ルートラボより転載)
実際のコースマップはコチラ(ルートラボページ)

明けて30日。朝食をとって出発準備を済ませた全参加者が7時半に集合。さすがに朝はひんやりとして寒い。全員で記念写真を撮影して、距離の長い超級組と山岳組が続いて出発。復路は超級組も山岳組もコースは一緒である。前日、超級組のサポートについていた山崎氏の運転するサポートカーが復路では山岳組についてくれる。

最初のヒルクライムはすぐにやってくる最初のヒルクライムはすぐにやってくる シクロ軽井沢やシクロ八ヶ岳の場合は、基本は復路は往路の逆を行くのだが、このシクロ奥秩父は往路と復路が全く違うコースになっている点が面白い。

宿泊地が標高が高いところにあるので、東松山のシクロパビリオンのゴールまでは全体としては下り基調になる点で往路よりは楽なコース設定になっているのだが、それでも峠越えが3発ある130kmで獲得標高が2700mというコースは、それだけで十分にグランフォンド級のロングライドになるコースである。

自分のバイクは前日のマシントラブルで乗れなくなってしまったため、復路も諦めていたのだが、往路でtattsが持病の膝痛になってしまったため、急遽tattsのFOCUSにペダルだけ付け替えての復路走行になった次第だ。

身長差はさほどないので、サイズ的には問題無いがやはりハンドル位置などかなり違っている。しかも普段はフロントトリプルなので、最も軽いギアは30T-30Tでギア比1.0という超軟弱構成に乗り慣れているので、tattsの34T-30Tの最軽ギア比ではちょっとキツイな、と思ったが仕方ない。とりあえず慣れないバイクでの出発である。

香立サイクルリーダーに続いて上って行く”ゆっくり班”香立サイクルリーダーに続いて上って行く”ゆっくり班” コースに何カ所かある暗いトンネルもサポートカーがライトアップコースに何カ所かある暗いトンネルもサポートカーがライトアップ


こまどり荘を後にして中津川の渓流沿いを2kmほど下り、本日最初のヒルクライムに突入。八丁トンネルを超えて志賀坂峠に下る林道ルートである。出発してまだアップもできてない状態でいきなり一発目の上りがやってくる。登り始めて少し行くとなんとチューブラーの後輪がパンクしてしまう。急遽サポートカーに積んであったクリンチャーホイールを借りることになり、リアホイールを交換してストップ時間を短縮。

霧雨模様の462号を次の峠に向けて走る霧雨模様の462号を次の峠に向けて走る だが、交換したリアホイールについていたスプロケットは27T。ということで、34T-27Tというさらに重めのギア比で復路を走らなければいけないことになってしまった。

コンパクトの標準的なギア比ではあるが、普段軟弱ギア比に慣れきっている自分に大丈夫だろうか・・・。

不安は尽きないが仕方ない。ずっと登りが続くので、香立氏がボトル以外のサドルバックなどは全部サポートカーに載せて最低限の身軽な状態で走るようにすすめてくれたのでお言葉に甘えさせてもらう。

コースはさほど急斜度の箇所はなく10%くらいまでの斜度の狭い林道の上りが続いていく。途中数箇所あるトンネルは灯火もなく真っ暗。サポートカーがぴったり後ろについて後方からのヘッドライトで路面を照らしてくれる。このへんのサポートもありがたい。

元気に坂を登って行く510。彼は復路を無事に完走した元気に坂を登って行く510。彼は復路を無事に完走した 約9km続く上りで標高差500mを登りきり休憩。すでに超級組は先に進んでしまっているが山岳組は全員揃って下りに突入。八丁トンネルから少し下って志賀坂峠頂上へ。天気予報では雨マークが全然なかったのだが、ここで霧雨が降ってくる。

温度も寒いので、ウインドブレーカーを羽織ったり、グローブを変えたりして下り装備をして志賀坂峠を北の群馬県側に下っていく。雨の降る中を一気に下って462号を東に進む。ここで悪天候によるコース変更が行われ、2発目の峠越えが距離と標高がやや少ない土坂トンネル越えのルートに変更。

とはいえ標高差400mくらいはあるから、もちろんキツイ。2発目は群馬側から埼玉側に南下するルートだ。登りはきついが景色はキレイで車の通行量も少なく走りやすい。なるべく遅れないようにと頑張って登って行くが、やはり指定席のどん尻をのろのろと登っていく。この坂も急斜度こそあまりないが、当たり前のように10%前後の坂が続いたりする。

いきなりの激坂が襲いかかるいきなりの激坂が襲いかかる 土坂トンネルの手前で休憩して下り装備を整え、一気に埼玉側に下っていく。雨脚もほとんど収まってきているので下りも爽快。下った先の宮戸で、すでにランチを終えてスタートしてきた超級組のメンバー達にすれ違う。やはり早い!

このあたりは食事を取れるような店もない田舎で、少し先のコンビニにてランチ休憩。店頭にて各自で思い思いのランチを購入して食べる。またこの先はずっと補給できないコースが続くので、各自補給食も調達してサポートカーに詰め込ませてもらう。ランチ後は宮戸まで少し戻っていよいよ復路3本目のヒルクライムに突入。ここが復路で最大の難所だ。

また雨が少し降ってきだした中を、宮戸からしばらくはさほど斜度のきつくない登りアプローチが5kmくらい続き、そこから右折してコースを東方面の城峯峠方面に入る。ところが曲がった途端に激坂の洗礼!いきなり15%の坂が襲いかかる。

さすがにこの激坂は34T-27Tでは超キツイ!!ノロノロでもがきながらいきなりの激坂をクリアするもののその先も城峯峠頂上まで約9km,時折激坂を織り交ぜながら林道をひたすら登りが続いていく。10%超えの斜度は当たり前のように続いていくし、さすがにここまでキツイ坂は国内でははじめてである。

ひたすら登り続けていくがどこまでも続く登りが容赦ない。1本目や2本目の登りが完全にかすんでしまうほどの登りだ。サポートカーに励まされながらなんとか城峯峠頂上にたどり着く。ホントにきつかった。
ここで雨がかなり降ってきだした。復路スタートからここまでまだ70kmくらしか走っていないのに獲得標高はもう1900mというから相当なものである。

奥多摩の自然の中を登りは延々と続く奥多摩の自然の中を登りは延々と続く tattsのバイクで激坂に悶絶中の私(4126)tattsのバイクで激坂に悶絶中の私(4126)


これでメインの登り3発は完了したので、あとはさほど大きな登りはない。が、予定よりもかなり時間がかかってしまい、残り距離と日没までの時間を考えるとかなりタイトな状況に。

残念ながら私とその前を走っていた方の落ちこぼれ(?) 2人組はここでサポートカーに乗車してリタイヤとなり、途中道間違えして別の方に行ってしまった一人を救済するために、ここで山岳組のメンバーを香立氏と谷口選手の2人のサポートライダーに任せて、今登った道を逆に車で降りていく。こんなに登ったのか・・・と思うくらいずっと下ってはぐれた参加者と合流。彼も車に乗せて群馬側から帰路に向かう。

別れた山岳組は城峰峠から尾根伝いに東方面に下り長瀞町のほうに進むルートだ。満載のサポートカーは関越花園インターから一路東松山のシクロパビリオンへの帰路に着く予定であったが、山岳組のサポートライダー香立氏やすでにシクロパビリオンに戻った優雅組をサポートしてた浅田監督とも連絡を取り合い、山岳組がコース変更をしたりして近場の寄居付近にいることがわかったためにサポートに急行する。

街灯もまばらな道をサポートカーのライトアップを助けに進んで行く山岳組のメンバー街灯もまばらな道をサポートカーのライトアップを助けに進んで行く山岳組のメンバー 2日間を無事終了して「お疲れさまでした」。浅田監督とlongridefan.com3人組(tatts、4126、510)2日間を無事終了して「お疲れさまでした」。浅田監督とlongridefan.com3人組(tatts、4126、510)


すでに日が傾いている中、シクロパビリオンから駆けつけた浅田監督とともに山岳組に合流。暗くなってきた中を残り約20km、2台のサポートカーで山岳組にぴったり搬送して暗い路面を照らしながら次第に真っ暗になった中を山岳組が無事にシクロパビリオンに到着し、2日間に渡った超ハードな新シクロイベントが終了した。

参加した皆さん並びに2日間に渡って参加者のサポートをしてくれたスタッフやサポートライダーの皆さん、お疲れさまでした。


■ 総括 <シクロ奥秩父を振り返って> by 4126

残念ながら今回は往路、復路とも完走できずにサポートカーのお世話になってしまう、とい情けない結果に終わってしまった。その点ではシクロ奥秩父の全貌を自分の身をもって全て体感して書くことはできないのだが、それでもこのイベントについて体感した範囲で、という注釈付きでまとめてみよう。

ポイント1:おそらく日本で最高に登りがキツイロングライドイベント。しかしバランスのいいコース設定

コースは車の少ない林道が中心。登りはキツいが走りやすいコースは車の少ない林道が中心。登りはキツいが走りやすい 今年の春参加したシクロ軽井沢もかなりハードなライドだったが、今回のシクロ奥秩父は超級組はもちろんのこと、今回我々が参加した山岳組でも、シクロシリーズ最高にハードなイベントだった。コース全体はバランスよく(これでもか!というくらいに)峠が配置されていて、しかも車のあまり走らない林道主体で組んであるので走りやすく、もちろん奥秩父の自然と絶景を堪能できる素晴らしいコースになっているのが流石である。
遠くまでいかなくてもこんなに身近にこんなにいいコースがあることは大きな発見だった。

ポイント2:坂に弱い参加者でも楽しめるように組まれている

エキップアサダならではのハードな山岳ライド、と聞くと登りを得意にするヒルクライムエキスパートや健脚ライダーだけのためのイベントかと言うとそれだけではない。

まだライド歴の少ないライダーや体力・脚力に自信のないライダーでも同じイベントを一緒に楽しめるように、ということで走行距離、獲得標高ともに控えめなコース設定もちゃんと用意しているところが、単にハードにするだけではなくより多くの参加者が楽しめるライドイベントにしたい、というエキップアサダの配慮からだろう。いきなりハードではなく、最初は比較的楽なコースではじめて自分に自信がついてきたらステップアップしてハードなコースに挑んでみることもできるようになっているのがうれしい。

ポイント3:万全のサポート体制で安心

ハードなコースのライドイベントの場合、体調や体力、その他バイクトラブルなどでまさに私が今回お世話になったように途中でのリタイヤをする参加者も想定できるし、往路最後の日没後の数名の回収など、参加者の安全をなによりも大事にしているエキップアサダならではのサポート姿勢がイベント全体に渡ってうかがうことができた。

終始サポートについて2日間大活躍した山崎氏運転のエクシーガ終始サポートについて2日間大活躍した山崎氏運転のエクシーガ シクロ軽井沢の時もそうだあったが、少ない人数でのグループライドで、しかもエカーズの選手を含むプロフェッショナルなサポートライダーみんながホントに一人一人の参加者のことに気を配って支えてくれる。
私のように遅くてみんなの足を引っ張るような参加者に対しても申し訳なくなるくらいに暖かいサポートで励まし支えてくれるのが本当に心強い。

しかもサポートカーがフル活動しての荷物運搬や水などの補給、車のライトでの暗路のライトアップ併走などなど、数え上げればきりがないくらい至れり尽くせりなどだ。これこそエキップアサダのライドイベント最大の魅力だと言っても過言ではない。

今までに経験したことがないハードなコースにチャレンジすることはもちろん不安も大きいのだが、だからこそ、こういう手厚いサポート体制の安心感の中でステップアップしていくことをオススメしたい。
ポイントをまとめてみるとこんなところだろうか。

もちろん初回(シクロ奥秩父)ならではのマイナスポイントもなかったわけではない。これだけのハードコースを詰め込んでいたために、マシントラブルや走行遅れなどで想定以上に時間がかかってしまったために夜間走行になり最後のほうのライダーを全員回収など、今後出発時間やコースを再検討する必要があるかもしれない。とはいえ、これだけの魅力的なライドイベントがまた誕生したということで、素直にこれを歓迎したい。

レースチーム(エカーズ)というとあまりにもレベルが高そうで普通のライダーには近寄りがたいイメージを持たれがちだが、エキップアサダはすごくフレンドリーに参加者を迎えてくれ、そしてめいっぱい楽しませてくれる。
初日夕食後の恒例の楽しいミーティングなど、アットホームな雰囲気に溢れ、常連の参加者はもちろんのこと、初めての参加者も楽しめるように配慮されている点でも浅田監督やスタッフの方達のサービス精神には頭がさがるばかりだ。

チームのような超級組。参加者の多くがエキップアサダのウェアを着ているチームのような超級組。参加者の多くがエキップアサダのウェアを着ている 前回のシクロ軽井沢では参加者の多くがエキップアサダのサイクルウェアを着て参加しているのを見て「ずいぶんファンというか常連メンバーが多く参加しているイベントなんだな」と感じたが、今回はっきりわかったのは「ファンが多いのではく、ファンになってしまうのだ」ということを。

そして一緒に参加した山岳組の参加者が相当レベルが高いというか皆かなり速いのは、「速い人が集まっているのではなく、エキップアサダのイベントや講習会などの活動に参加しそして速くなっていった、という部分もかなりあるのだろう」ということも実感した。

ロードレースという走りの技術を極めるフィールドの最前線で活動してきたエキップアサダのノウハウがここまでのエキスパート達を育て上げていったと素直に考えればやはりすごい。

レースではないロングライドなどのイベントでは速く走ることだけがすべてではないのはもちろんだが、それでもスピーディーに坂を登れればもっと気持ちいいだろうし、峠を登ることも楽しくなるから、「楽しむために」こういうライドイベントを通して、エキップアサダの片鱗に触れていくことをロングライダー達におすすめしたいと思った。

エキップアサダのシクロイベントといえばキツイというイメージだけが有名になっているような気がする。実際にシクロ軽井沢でも今回のシクロ奥秩父でも自転車仲間に「一緒に参加しないか?」と声をかけても尻込みする人も少なくはなかった。(というか510君以外は全員からソッポを向かれた)その大半が私より全然坂に強いライダーであってもだ。

しかしそこで敬遠しないで、ぜひこの世界に飛び込んでハードなだけではないその楽しさを満喫してほしいと思う。
たとえ完走できなくてもこんなに清々しく楽しめるイベントなど、そうはないはずなのだから。

※終わり、にlongridefan(tatts&4126)はエキップアサダの大ファンです。いつかここから絶対に“ツール・ド・フランス”に出場して欲しいと心から応援しています!


text&photo:4126/longridefan.com



longridefan.comレポータープロフィール

tatts
今でこそロングライドにハマっているものの、かつてはMTBのダウンヒルを愛し、ピーク時には年間20回ほど富士見や岩岳DHに行っていたという、スピード狂の元DH系オヤジ。?現在はロードバイクにも食指を伸ばし、広くロングライドを楽しんでいる。?愛車はロードがサーヴェロ RS、MTBがサンタクルズ Blurに乗る。?理論派かつ武闘派。ダウンヒルバイクの頃を含めると、キャリアはメンバーの中で随一。
4126
中学時代にフレームを購入し、パーツ組みでランドナーを作り、ユースホステルを利用して関東から信州にかけて休みを使ってのツーリングにのめり込む。その後30年のブランクを超えてロードバイクで復活。90kgオーバーというヘビー級重量のために上り坂がなによりも苦手な51才。愛車は激安中古フレーム&パーツを買い集めて組んだBMC SL-01とTREK5200
Longridefan.comLongridefan.com longridefan.com について
ロングライドが大好きな方のための情報交換の場とすべく2010年にスタートした非営利のロングライドコミュニティサイト。tattsと4126の2人が国内外の様々なロングライドイベントに参戦し、各イベントをレビューしています。
さらにハワイではオアフ島一周のライドイベント「ラウンドライド・オアフ」を主催したり、「マイキャラ」という一人づつのサイクリストのキャラクターイラストとニックネーム入りのオーダーサイクルウェアの製作販売を開始するなど活動のフィールドを広げています。

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