2011/12/10(土) - 09:41
「熱帯の花となれ、風となれ」をキャッチフレーズに開催されるツール・ド・おきなわ。日曜のレース部門がメインだが、土・日曜にわたって楽しめるサイクリングの部も人気が高い。やんばる地方をぐるりと巡るダイナミックなセンチュリーライドの様子を実走レポートでお伝えしよう。
沖縄北部ヤンバル地方、アップダウンの厳しいコースだが、コースの素晴らしさ、おきなわならではの雰囲気にリピーターも多いのが素晴らしいサイクリングである証拠。
ここでは土曜日の本島一周サイクリングの一日目と、やんばるセンチュリーライドの模様を紹介しよう。このふたつは基本的に土曜は同じコースを走り、沖縄本島の北半分をぐるりと廻る。本島一周サイクリングは日曜にもう半分の南を走ることができる2日間のフルコースだ。
今年からスタート地点が変わり、名護市中心部の名護十字路からスタートする。大会メイン会場には、早朝7時のスタートにあわせサイクリングの部の参加者約1000人が集合した。
ここから、沖縄本島一周サイクリング(2日間、313km)とやんばるセンチュリーライド (189㎞)、チャレンジサイクリング100㎞)、恩納村ファミリーサイクリング(70km)伊平屋島体験サイクリング(76㎞)、伊是名島体験サイクリング(56㎞)、バリアフリーサイクリング(40km)などが、順次スタートしていく。
ツール・ド・おきなわのレースを含む全体の参加者は約4,400人。サイクリングの部の参加者は約1000人と、レースもツーリングも日本最大級のイベントだ。実行委員会の話では、大会として安全に運営できる人数で応募を締め切らざるを得ず、すぐに定員一杯になるほど。もちろん参加希望者数はもっと多い。そして、今年多かったのが台湾からの参加者。全部門で170名以上の台湾のサイクリストが、参加してくれた。このサイクリングにも、大きなグループで走っていた。震災被災地への義援金を200億円以上寄せてくれた台湾。距離が近いというだけでなく、大いなる親日家だ。
この日は朝から素晴らしい天気に恵まれた。暑すぎず、爽やかな晴天。湿度も低く走りやすいおきなわ独特の晩秋の天気が嬉しい。もっとも、2010年は大雨に見舞われ、あまりの豪雨に途中で棄権する人が続出したという。その無念をもって今年再度チャレンジするリピーターさんもかなりの数がいたようだ。
ヤンバル地方を走るこのコースは、レースの部も通るやんばる地方の過酷なアップダウンを189㎞にわたって走り抜ける。コースが厳しいことで知られ、完走するにはそれなりの体力が必要だ。
前半の約85kmは海沿いの沖縄らしい景観をいく平坦路。海を左手に見ながら、淡々と、快調に距離を稼いでいける。
参加者たちはチェックポイントになっているエイドステーションでストップしながらも、脚の揃った仲間や集団をみつけて足早に走っていく。
エイドステーションで供されるのは、バナナなどと並んで、沖縄名産のサーターアンダーギー(揚げドーナツ)や、シークワーサージュース(レモンの一種)黒糖など、南国ならではの味が嬉しい。汗を大量にかくので、ミネラル補給の塩もしっかり用意されている。
昼食がしっかり出るのもポイント。奥の休憩ポイントでは、豚汁とカレーがひとりづつに供されて、しっかりと食事を摂ることができる。
そして待っている後半の110km以上が、世界遺産になっているやんばるの熱帯林のジャングルをいくアップダウンの激しい道のりだ。ちょうど昼食タイムを挟んでコースの厳しさががらりと変わる。しっかり食事を摂る必要性は、この後の道の厳しさをしっていれば十分理解できるのだ。
道端でよくみる「ヤンバルクイナ横断注意」の看板は、観光客ウケを狙っているわけではなく、本当に出没するから。道を横切るときにクルマにはねられて交通事故に遭うケースが多いようで、注意を呼びかけているようだ。
走りながら撮影していると、台湾人のジャーナリストに声をかけられる。なんでもレース系の仕事もしている雑誌社に勤める若者、Alan君で、私事だが、つい先日台湾で開催されたレースの写真と記事のやり取りをしてくれた雑誌社に勤務している。意外なところでつながっているのだなぁと嬉しくなった。この翌週の台湾のMAXXIS太魯閣国際ヒルクライムに行くんだよ、と話したら、古くからつきあいのあるジャーナリストと久々に会えるだろう、と教えてくれた。
台湾や韓国との交流がますます盛んになるツール・ド・おきなわでは、アジアのお客さんを迎える用意を年々進めている。実行委員長の森兵次さんが社長をつとめる沖縄輪業(外部リンク)では、スポーツバイクのレンタルを始めたとのこと。かなり高級なカーボンバイクもこの先レンタルが可能になる準備を進めているとのことで、荷物を抱えてのアクセスの問題が徐々にクリアになりそうだ。
ちなみにAlanが借りたラボバンクカラーのジャイアントのアルミバイクは、105装備の本格的ロードバイクだった。Alanによれば、台湾では都市型バイクショップでカーボンバイクやDi2装備の高級バイクがレンタルできるのは当たり前になりつつあり、沖縄がそれに学ぼうとしているんだとか。さすが、サイクリングアイランド構想を掲げる沖縄だけある。
ハイライトはやんばるの厳しいコース
本島一周サイクリングとやんばるセンチュリーライドのハイライトは、やっぱり厳しくてもやんばる地方のジャングル地帯を行く道だと思う。アップダウンが繰り返し、海もときどきしか見えないが、道の両側に広がる亜熱帯ならではの独特の森の風景を見ながら走るのは、なかなか楽しい。
おおきなシダ植物や、人がすっぽり隠れてしまいそうなイモ科の葉が生い茂る森は、ヤンバルクイナがいつでてきてもおかしくない。恐竜が住んでそうな雰囲気さえ漂う風景だ。
やんばる地方では休憩所の数は減るが、代わりなるのが共同売店という名前の地域の商店。ここで必要な補給食は買うことができる。運が良ければ100円でおきなわソバを食べることもできる(ただしすぐなくなってしまう)。
高江のチェックポイント手前には、有名なヒロ・コーヒーファームがある。ここは知る人ぞ知る隠れスポット。ご主人のヒロさん(足立浩志さん)が一昨年亡くなってしまったのだが、有機栽培の自家製コーヒーを出してくれる味のあるお店で、ここのやんばるコーヒーは格別に美味しいと評判だ。毎年このお店に立ち寄ってコーヒーを楽しむのが、私の密かな楽しみ。ちょうど眠気が襲ってくるタイミングなので、美味しいホットコーヒーと、コーヒーの若葉で入れた緑茶(サービス)が、目覚めの喝を入れるのにちょうどいいのだ。
高江を越え、東村の海岸部に入り海沿いの道になるとアップダウンが減り、ペースを上げることができる。疲れは溜まってくるが、最後のエイドステーションの大浦まではもうすぐ。
大浦の道の駅でしっかり補給をとって、最後に待ち構えているのは、レース部門でも同じみの羽地ダムへの上りだ。原生林の間を縫って登るダイナミックな道は、レースがトンネルの先を右折してダムへの道を行くが、サイクリングの部は直進してさらに上り、名護市街を目指す。
頂上から下ると、一気に名護市街のオリオンビール工場へと到着するのだ。メイン会場の名護十字路はすぐそこ。1日コースはここでゴールを迎えるが、2日間コースの人はふたたび海沿いの道を喜瀬ビーチまで走らなければいけない。この大浦からの最後の上り区間と、ホテルまでの道のりは、疲れた身体にはちょっとキツイ冗談に思えるオマケだ。夕暮れを過ぎてゴールする人も多いのだ。
走った後は居酒屋で沖縄料理とオリオンビール、そして泡盛を楽しむ。胃も疲れているからあまり飲み食いはできないはずだけど、厳しいやんばる地方を走りきった身体には、身体に良い沖縄料理と、泡盛の心地よい酔いが嬉しい。走って食べて沖縄を実感する。それがやんばるサイクリングの魅力だと思う。
text&photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー(picasa)
沖縄北部ヤンバル地方、アップダウンの厳しいコースだが、コースの素晴らしさ、おきなわならではの雰囲気にリピーターも多いのが素晴らしいサイクリングである証拠。
ここでは土曜日の本島一周サイクリングの一日目と、やんばるセンチュリーライドの模様を紹介しよう。このふたつは基本的に土曜は同じコースを走り、沖縄本島の北半分をぐるりと廻る。本島一周サイクリングは日曜にもう半分の南を走ることができる2日間のフルコースだ。
今年からスタート地点が変わり、名護市中心部の名護十字路からスタートする。大会メイン会場には、早朝7時のスタートにあわせサイクリングの部の参加者約1000人が集合した。
ここから、沖縄本島一周サイクリング(2日間、313km)とやんばるセンチュリーライド (189㎞)、チャレンジサイクリング100㎞)、恩納村ファミリーサイクリング(70km)伊平屋島体験サイクリング(76㎞)、伊是名島体験サイクリング(56㎞)、バリアフリーサイクリング(40km)などが、順次スタートしていく。
ツール・ド・おきなわのレースを含む全体の参加者は約4,400人。サイクリングの部の参加者は約1000人と、レースもツーリングも日本最大級のイベントだ。実行委員会の話では、大会として安全に運営できる人数で応募を締め切らざるを得ず、すぐに定員一杯になるほど。もちろん参加希望者数はもっと多い。そして、今年多かったのが台湾からの参加者。全部門で170名以上の台湾のサイクリストが、参加してくれた。このサイクリングにも、大きなグループで走っていた。震災被災地への義援金を200億円以上寄せてくれた台湾。距離が近いというだけでなく、大いなる親日家だ。
この日は朝から素晴らしい天気に恵まれた。暑すぎず、爽やかな晴天。湿度も低く走りやすいおきなわ独特の晩秋の天気が嬉しい。もっとも、2010年は大雨に見舞われ、あまりの豪雨に途中で棄権する人が続出したという。その無念をもって今年再度チャレンジするリピーターさんもかなりの数がいたようだ。
ヤンバル地方を走るこのコースは、レースの部も通るやんばる地方の過酷なアップダウンを189㎞にわたって走り抜ける。コースが厳しいことで知られ、完走するにはそれなりの体力が必要だ。
前半の約85kmは海沿いの沖縄らしい景観をいく平坦路。海を左手に見ながら、淡々と、快調に距離を稼いでいける。
参加者たちはチェックポイントになっているエイドステーションでストップしながらも、脚の揃った仲間や集団をみつけて足早に走っていく。
エイドステーションで供されるのは、バナナなどと並んで、沖縄名産のサーターアンダーギー(揚げドーナツ)や、シークワーサージュース(レモンの一種)黒糖など、南国ならではの味が嬉しい。汗を大量にかくので、ミネラル補給の塩もしっかり用意されている。
昼食がしっかり出るのもポイント。奥の休憩ポイントでは、豚汁とカレーがひとりづつに供されて、しっかりと食事を摂ることができる。
そして待っている後半の110km以上が、世界遺産になっているやんばるの熱帯林のジャングルをいくアップダウンの激しい道のりだ。ちょうど昼食タイムを挟んでコースの厳しさががらりと変わる。しっかり食事を摂る必要性は、この後の道の厳しさをしっていれば十分理解できるのだ。
道端でよくみる「ヤンバルクイナ横断注意」の看板は、観光客ウケを狙っているわけではなく、本当に出没するから。道を横切るときにクルマにはねられて交通事故に遭うケースが多いようで、注意を呼びかけているようだ。
走りながら撮影していると、台湾人のジャーナリストに声をかけられる。なんでもレース系の仕事もしている雑誌社に勤める若者、Alan君で、私事だが、つい先日台湾で開催されたレースの写真と記事のやり取りをしてくれた雑誌社に勤務している。意外なところでつながっているのだなぁと嬉しくなった。この翌週の台湾のMAXXIS太魯閣国際ヒルクライムに行くんだよ、と話したら、古くからつきあいのあるジャーナリストと久々に会えるだろう、と教えてくれた。
台湾や韓国との交流がますます盛んになるツール・ド・おきなわでは、アジアのお客さんを迎える用意を年々進めている。実行委員長の森兵次さんが社長をつとめる沖縄輪業(外部リンク)では、スポーツバイクのレンタルを始めたとのこと。かなり高級なカーボンバイクもこの先レンタルが可能になる準備を進めているとのことで、荷物を抱えてのアクセスの問題が徐々にクリアになりそうだ。
ちなみにAlanが借りたラボバンクカラーのジャイアントのアルミバイクは、105装備の本格的ロードバイクだった。Alanによれば、台湾では都市型バイクショップでカーボンバイクやDi2装備の高級バイクがレンタルできるのは当たり前になりつつあり、沖縄がそれに学ぼうとしているんだとか。さすが、サイクリングアイランド構想を掲げる沖縄だけある。
ハイライトはやんばるの厳しいコース
本島一周サイクリングとやんばるセンチュリーライドのハイライトは、やっぱり厳しくてもやんばる地方のジャングル地帯を行く道だと思う。アップダウンが繰り返し、海もときどきしか見えないが、道の両側に広がる亜熱帯ならではの独特の森の風景を見ながら走るのは、なかなか楽しい。
おおきなシダ植物や、人がすっぽり隠れてしまいそうなイモ科の葉が生い茂る森は、ヤンバルクイナがいつでてきてもおかしくない。恐竜が住んでそうな雰囲気さえ漂う風景だ。
やんばる地方では休憩所の数は減るが、代わりなるのが共同売店という名前の地域の商店。ここで必要な補給食は買うことができる。運が良ければ100円でおきなわソバを食べることもできる(ただしすぐなくなってしまう)。
高江のチェックポイント手前には、有名なヒロ・コーヒーファームがある。ここは知る人ぞ知る隠れスポット。ご主人のヒロさん(足立浩志さん)が一昨年亡くなってしまったのだが、有機栽培の自家製コーヒーを出してくれる味のあるお店で、ここのやんばるコーヒーは格別に美味しいと評判だ。毎年このお店に立ち寄ってコーヒーを楽しむのが、私の密かな楽しみ。ちょうど眠気が襲ってくるタイミングなので、美味しいホットコーヒーと、コーヒーの若葉で入れた緑茶(サービス)が、目覚めの喝を入れるのにちょうどいいのだ。
高江を越え、東村の海岸部に入り海沿いの道になるとアップダウンが減り、ペースを上げることができる。疲れは溜まってくるが、最後のエイドステーションの大浦まではもうすぐ。
大浦の道の駅でしっかり補給をとって、最後に待ち構えているのは、レース部門でも同じみの羽地ダムへの上りだ。原生林の間を縫って登るダイナミックな道は、レースがトンネルの先を右折してダムへの道を行くが、サイクリングの部は直進してさらに上り、名護市街を目指す。
頂上から下ると、一気に名護市街のオリオンビール工場へと到着するのだ。メイン会場の名護十字路はすぐそこ。1日コースはここでゴールを迎えるが、2日間コースの人はふたたび海沿いの道を喜瀬ビーチまで走らなければいけない。この大浦からの最後の上り区間と、ホテルまでの道のりは、疲れた身体にはちょっとキツイ冗談に思えるオマケだ。夕暮れを過ぎてゴールする人も多いのだ。
走った後は居酒屋で沖縄料理とオリオンビール、そして泡盛を楽しむ。胃も疲れているからあまり飲み食いはできないはずだけど、厳しいやんばる地方を走りきった身体には、身体に良い沖縄料理と、泡盛の心地よい酔いが嬉しい。走って食べて沖縄を実感する。それがやんばるサイクリングの魅力だと思う。
text&photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー(picasa)
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