2019/11/27(水) - 20:10
ツール・ド・おきなわの魅力はレースだけじゃない。沖縄本島北部の大自然を満喫するロングライドが「やんばるセンチュリーライド」だ。海岸線と亜熱帯のジャングル、アップダウンが待つタフなコースが人気のロングライドを実走取材した。
ツール・ド・おきなわのレース部門が開催される前日の土曜日、同エリアでサイクリング部門が開催される。用意されるコースは6つ。チャレンジサイクリング90km、恩納村ファミリーサイクリング70km、伊平屋島サイクリング73km、伊江島ファミリーサイクリング50km、そして土日の2日間で行われる本島一周サイクリング336km、そして本島一周と同じコースで土曜のみを走るのがここで紹介するやんばるセンチュリーライド175kmだ。
朝7時、スタート地点となる名護市民会館前にサイクリストたちが集まってくる。サイクリング部門には合計1,136人がエントリー。天気予報は晴れで、例年よりもやや涼しいものの、半袖でも寒さは感じない。昨夜は沖縄の美味しい料理とオリオンビール、泡盛を楽しんだであろう参加者たち。
離島サイクリングの部に参加する顔ぶれは親子連れや子どもたち、カップルも多い。本島一周とやんばるセンチュリーライドは長距離であるため本格サイクリストがほとんど。そして近年、海外でも知名度が上がっているため台湾やアジアのサイクリストのグループが多く、国際色豊かな印象。
恒例の名護桜太鼓の勇ましい応援を受けてスタート。ウェーブ形式で走り出していく。やんばるセンチュリーライドと本島一周のグループの合計399人は、走るルートも同じであるため一緒にスタートしていく。
ライドのおもな舞台となるやんばる地方は、国頭村、大宜味村および東村ならびにこれら3村の周辺海域を区域とする国立公園に指定された一帯。「やんばる(山原)」とは「山々が連なり森の広がる地域」を意味する。その豊かな生態系と生物多様性で、「奄美・琉球」の推薦区域としてユネスコ世界自然遺産への登録を目指している。
サイクリングの隊列の一行はまぶしい朝陽を浴びながら本部半島へ。この1日で走る距離は175kmと長く、しかもアップダウンが厳しいことで名高いレース部門とほぼ同様の道を行くのだ。
この3年ほどでとくに目立つのが台湾からの参加者の多さ。じつに本島一周の半数以上の約236人が台湾人で、おきなわのイベントですっかりおなじみの夏美さん(台湾ライオン旅行社)によれば、70人のグループツアーで参加しているという。台湾からは同じようなサイクリングツアーを扱う旅行社によるグループツアーが数団体来ているという。独自のサポートカーなども帯同させ、ワイワイと賑やかに楽しんでいる様子。ちょうど日本人にとってのホノルルセンチュリーライドのような存在になっているようだ。ちなみに台湾、香港、マレーシアなどアジアのサイクリストはファッションが独特でキマっており、各国のカラーも違うので見分けがつくのだ。
今年も今帰仁村の沿道に現れたのは、お揃いのシャツを着た北山学童「うーまくクラブ」の子どもたち。太鼓を叩いての応援がなんとも可愛いらしく、嬉しくなる。「ツール・ド」(大会の通称)は地元にすっかり定着しているから、こうした住民の応援がたくさん受けられる。
本部半島を走っていると屋我地島のワルミ大橋に出る。橋の上から遠くに見えるは美ら島センチュリーランでお馴染みの古宇利大橋。ダイナミックな景観に回すペダルを止め、仲間同士で記念写真を撮りあう。青い海に浮かぶ海中道路の眺めは最高だ。
大宜味の道の駅では沖縄名産の柑橘「シークヮーサー」のドリンクが振る舞われた。JAや地元メーカーごとに5種類ほど用意され、甘酸っぱい風味を楽しむ。この日はこの後のほとんどすべてのエイドでこのシークヮーサードリンクがたっぷり提供され、スポーツドリンク要らず。バナナに黒糖、揚げドーナツの「サーターアンダギー」も人気。
本部半島を出れば海岸線を北上することに。午前中は涼しいながらも向かい風が強くなり、数人のグループで走っていてもかなり脚を削られた。この海岸線はときどきこうした強い風が吹くのだ。
ルートはレース部門の難所である普久川ダムへの登りは登らず、辺戸岬へと進路を取る。辺戸岬を越えると、ここからは坂の厳しいやんばる路が待っている。
最北の地、奥のエイドでは昼食に豚汁とカレーが振る舞われる。厳しいやんばる路はガッツリ食べておかなくては乗り切れない。昼食を終え、北端で折り返してからは、鬱蒼としたジャングルの広がるやんばるの森を貫く道路が続く。ヤンバルクイナの棲息地であり、道路沿いには「ヤンバルクイナと野生動物に注意」の標識が続く。
ここからの山道は本当に厳しい。繰り返すアップダウンに早々にバイクを押して歩き出す人も。後方には回収車が控えている。ジャングルはしんと静まり返って、通過するクルマもほとんどいない。ときおり通るのは明日のレースの試走を行うサイクリストと、そのサポートカーだけだ。
道は険しく、エイドステーションの間は距離があるが、沖縄独特のコミュニティスーパー「共同売店」があるので、立ち寄って補給するには困らない。地元のおじい、おばあに応援される。
時折、森の展望が開けるスポットからは太古の息吹が聞こえてきそうな原始の風景が覗き見ることができる。運が良ければヤンバルクイナに会うことができるというが、それも納得の秘境の雰囲気だ。
東海岸の村「東村(ひがしそん)」はパイナップルの産地として有名な村。エイドでは荒く切ったカットパインや果汁から作ったパインゼリーが食べ放題。冷たい素麺にシークヮーサー(亜種のカーブチ)の酸っぱい果汁をかけて食べると、何杯でもイケます。
東村からの海岸線は、ときおり坂もあるがなだらかになるのがホッとするところ。日暮れの気配を感じつつ、残り時間を気にしながらペダルを回す。
最後のエイドは静かな海を臨む道の駅「わんさか大浦パーク」で。この地点での足切りタイムは17時。これに間に合えば山越えで名護まで走ることができるが、この時刻を過ぎれば乗合バスで山を越えて帰ることに。コースの厳しさにここで自主降参する人も多い。
本島一周サイクリング2日間に参加する人はさらに海岸線を進み、土曜のみのやんばるセンチュリーライド組はレース部門の最後の勝負どころと言われる羽地ダムへ向かう上りを登る。レースコースは番越トンネルから右折するが、サイクリング部門は直進し、軽くもうひと山越えて名護へと向かうのだ。
峠からダイナミックなダウンヒルをこなすと、名護市街と海が見晴らせるパノラマスポットに出る。下りきればオリオンビール工場の前に出て、名護市街へ。フィニッシュはレースと共通のメイン会場。各ブースには市民レーサーたちがたくさん集まってなごやかな雰囲気だ。会場には沖縄そばの露店なども多く、食券で食べることができる。非常に厳しく、充実感たっぷりのライド。今夜も走りきった仲間とオリオンビールでの乾杯が待っている。
やんばるサイクリングを走った人の中には翌日のレースに出る人も。「”おきなわを走り尽くす”がテーマですから!」と力強く話すのは新潟のサイクルショップFins(フィンズ)の皆さん。明日のレースに向けて良い足慣らしになったでしょうか?
176kmという距離以上に厳しさを感じるセンチュリーライド。獲得標高は実測で2,351m! もあるから、ワンデイのロングライドイベントとしては国内屈指の走り応えある難コースだと太鼓判を押します。ツール・ド・おきなわはサイクリング部門もおススメなのです!
photo&text:Makoto.AYANO
ツール・ド・おきなわのレース部門が開催される前日の土曜日、同エリアでサイクリング部門が開催される。用意されるコースは6つ。チャレンジサイクリング90km、恩納村ファミリーサイクリング70km、伊平屋島サイクリング73km、伊江島ファミリーサイクリング50km、そして土日の2日間で行われる本島一周サイクリング336km、そして本島一周と同じコースで土曜のみを走るのがここで紹介するやんばるセンチュリーライド175kmだ。
朝7時、スタート地点となる名護市民会館前にサイクリストたちが集まってくる。サイクリング部門には合計1,136人がエントリー。天気予報は晴れで、例年よりもやや涼しいものの、半袖でも寒さは感じない。昨夜は沖縄の美味しい料理とオリオンビール、泡盛を楽しんだであろう参加者たち。
離島サイクリングの部に参加する顔ぶれは親子連れや子どもたち、カップルも多い。本島一周とやんばるセンチュリーライドは長距離であるため本格サイクリストがほとんど。そして近年、海外でも知名度が上がっているため台湾やアジアのサイクリストのグループが多く、国際色豊かな印象。
恒例の名護桜太鼓の勇ましい応援を受けてスタート。ウェーブ形式で走り出していく。やんばるセンチュリーライドと本島一周のグループの合計399人は、走るルートも同じであるため一緒にスタートしていく。
ライドのおもな舞台となるやんばる地方は、国頭村、大宜味村および東村ならびにこれら3村の周辺海域を区域とする国立公園に指定された一帯。「やんばる(山原)」とは「山々が連なり森の広がる地域」を意味する。その豊かな生態系と生物多様性で、「奄美・琉球」の推薦区域としてユネスコ世界自然遺産への登録を目指している。
サイクリングの隊列の一行はまぶしい朝陽を浴びながら本部半島へ。この1日で走る距離は175kmと長く、しかもアップダウンが厳しいことで名高いレース部門とほぼ同様の道を行くのだ。
この3年ほどでとくに目立つのが台湾からの参加者の多さ。じつに本島一周の半数以上の約236人が台湾人で、おきなわのイベントですっかりおなじみの夏美さん(台湾ライオン旅行社)によれば、70人のグループツアーで参加しているという。台湾からは同じようなサイクリングツアーを扱う旅行社によるグループツアーが数団体来ているという。独自のサポートカーなども帯同させ、ワイワイと賑やかに楽しんでいる様子。ちょうど日本人にとってのホノルルセンチュリーライドのような存在になっているようだ。ちなみに台湾、香港、マレーシアなどアジアのサイクリストはファッションが独特でキマっており、各国のカラーも違うので見分けがつくのだ。
今年も今帰仁村の沿道に現れたのは、お揃いのシャツを着た北山学童「うーまくクラブ」の子どもたち。太鼓を叩いての応援がなんとも可愛いらしく、嬉しくなる。「ツール・ド」(大会の通称)は地元にすっかり定着しているから、こうした住民の応援がたくさん受けられる。
本部半島を走っていると屋我地島のワルミ大橋に出る。橋の上から遠くに見えるは美ら島センチュリーランでお馴染みの古宇利大橋。ダイナミックな景観に回すペダルを止め、仲間同士で記念写真を撮りあう。青い海に浮かぶ海中道路の眺めは最高だ。
大宜味の道の駅では沖縄名産の柑橘「シークヮーサー」のドリンクが振る舞われた。JAや地元メーカーごとに5種類ほど用意され、甘酸っぱい風味を楽しむ。この日はこの後のほとんどすべてのエイドでこのシークヮーサードリンクがたっぷり提供され、スポーツドリンク要らず。バナナに黒糖、揚げドーナツの「サーターアンダギー」も人気。
本部半島を出れば海岸線を北上することに。午前中は涼しいながらも向かい風が強くなり、数人のグループで走っていてもかなり脚を削られた。この海岸線はときどきこうした強い風が吹くのだ。
ルートはレース部門の難所である普久川ダムへの登りは登らず、辺戸岬へと進路を取る。辺戸岬を越えると、ここからは坂の厳しいやんばる路が待っている。
最北の地、奥のエイドでは昼食に豚汁とカレーが振る舞われる。厳しいやんばる路はガッツリ食べておかなくては乗り切れない。昼食を終え、北端で折り返してからは、鬱蒼としたジャングルの広がるやんばるの森を貫く道路が続く。ヤンバルクイナの棲息地であり、道路沿いには「ヤンバルクイナと野生動物に注意」の標識が続く。
ここからの山道は本当に厳しい。繰り返すアップダウンに早々にバイクを押して歩き出す人も。後方には回収車が控えている。ジャングルはしんと静まり返って、通過するクルマもほとんどいない。ときおり通るのは明日のレースの試走を行うサイクリストと、そのサポートカーだけだ。
道は険しく、エイドステーションの間は距離があるが、沖縄独特のコミュニティスーパー「共同売店」があるので、立ち寄って補給するには困らない。地元のおじい、おばあに応援される。
時折、森の展望が開けるスポットからは太古の息吹が聞こえてきそうな原始の風景が覗き見ることができる。運が良ければヤンバルクイナに会うことができるというが、それも納得の秘境の雰囲気だ。
東海岸の村「東村(ひがしそん)」はパイナップルの産地として有名な村。エイドでは荒く切ったカットパインや果汁から作ったパインゼリーが食べ放題。冷たい素麺にシークヮーサー(亜種のカーブチ)の酸っぱい果汁をかけて食べると、何杯でもイケます。
東村からの海岸線は、ときおり坂もあるがなだらかになるのがホッとするところ。日暮れの気配を感じつつ、残り時間を気にしながらペダルを回す。
最後のエイドは静かな海を臨む道の駅「わんさか大浦パーク」で。この地点での足切りタイムは17時。これに間に合えば山越えで名護まで走ることができるが、この時刻を過ぎれば乗合バスで山を越えて帰ることに。コースの厳しさにここで自主降参する人も多い。
本島一周サイクリング2日間に参加する人はさらに海岸線を進み、土曜のみのやんばるセンチュリーライド組はレース部門の最後の勝負どころと言われる羽地ダムへ向かう上りを登る。レースコースは番越トンネルから右折するが、サイクリング部門は直進し、軽くもうひと山越えて名護へと向かうのだ。
峠からダイナミックなダウンヒルをこなすと、名護市街と海が見晴らせるパノラマスポットに出る。下りきればオリオンビール工場の前に出て、名護市街へ。フィニッシュはレースと共通のメイン会場。各ブースには市民レーサーたちがたくさん集まってなごやかな雰囲気だ。会場には沖縄そばの露店なども多く、食券で食べることができる。非常に厳しく、充実感たっぷりのライド。今夜も走りきった仲間とオリオンビールでの乾杯が待っている。
やんばるサイクリングを走った人の中には翌日のレースに出る人も。「”おきなわを走り尽くす”がテーマですから!」と力強く話すのは新潟のサイクルショップFins(フィンズ)の皆さん。明日のレースに向けて良い足慣らしになったでしょうか?
176kmという距離以上に厳しさを感じるセンチュリーライド。獲得標高は実測で2,351m! もあるから、ワンデイのロングライドイベントとしては国内屈指の走り応えある難コースだと太鼓判を押します。ツール・ド・おきなわはサイクリング部門もおススメなのです!
photo&text:Makoto.AYANO
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