2019/12/03(火) - 12:03
11月16・17日、2日間に渡り開催される南アルプスロングライド。地元の食材を使用したほうとうやこしべんとなどのグルメと、距離110kmで獲得標高差1900mのチャレンジングなコースを堪能した。スタートから身延山の激坂までレポートします。
道の駅富士川をベースとした南アルプスロングライドの2日目。この大会は初日に開催される白州・韮崎ステージとプチ南アルプスステージの2つのライド、2日目に行われるツール・ド・富士川の3つのライドが用意されたライドイベント。そのメインディッシュとなるツール・ド・富士川を迎えたのだ。
朝8時にはライドがスタートするため、日が昇りきらない朝6時頃から続々と参加者の皆さんが道の駅富士川に集まってきている。夜明け前はダウンジャケットが必要なほど冷え込んでいたものの、気温は身支度を整えているうちに上昇しているのが肌で感じるほど。最高気温は18℃と予報されており、この日のライドも気持ちが良いものになると期待が膨らむ。
晩秋の夜明けほど素晴らしいシチュエーションはない。顔を覆い隠すほど寒くもない気温、川から立ち上がる靄、澄んだ空気感、東から徐々に姿を現す太陽。全てが完璧である上、三方を山に囲まれた富士川というロケーションが気持ちを高揚させてくる。逸る気持ちを抑えて、サイクルコンピューターの電池残量やタイヤの空気圧をチェックして、スタートの時を待つ。
朝7時ごろになるとMCの浅利そのみさんの元気な声とともに動き出し、参加受付けが開始される。今年の参加賞は山梨のマスコット・チャリたぬのボトルが配られていたのだが、これが大人気なようで、早速自転車のボトルケージに差し込んでいた方も少なくない。また、ボトルは意外と忘れやすい物でもあるため、イベント会場で配布されるのは非常にありがたいのだ。近場の温泉で利用できる入浴券も合わせて配られた。
準備を終えたライダーからスタートゲートに自転車を並べ、第0エイドとして振る舞われていたひねりドーナツとホットコーヒーで朝食を摂りながら、スタートの時刻を待つ。刻一刻と気温が上昇していくため、ウェアの選択は非常に難しい。筆者は今後の気温変化にも対応できるようにウィンドブレーカーやアームウォーマー、夏用レッグカバーなどを着用してみた。グローブはMTB用の夏用ロングフィンガーをチョイスしている。
開幕式は富士川町の志村町長の挨拶から始まり、エネルギッシュなやまなしサイクルプロジェクト理事長の青木さんと続き、ゲストライダーの紹介に入っていく。レジェンド今中大介さんとモデルの石垣美帆さん、山梨をベースに活躍するアスリートのエース栗原さんという3名は昨年同様。
今年もエース栗原さんは久那土から始まる登りで全力をもって応援してくれるという。さらに、最後のヒルクライムはランニングで参加者を追っていくと宣言。栗原さんはトライアスロン・アジアチャンピオンなので、抜かれることは必至だが、追い抜かれてしまった場合はその速さに驚愕するはず。大会のハイライトとなる登りでは栗原さんが現れるため、楽しみにしておきたいポイントの1つだ。
ゲストと参加者全員で「ふじかわー!」と掛け声を上げて1つにまとまったところで、大会は始まる。南アルプスロングライドは25名前後のグループに分かれてスタートする方式を採用。サポートライダーが各集団の先頭を走るため、ペースメイキングやルートに関しては任せてしまってOK。グループのペースが合わなければ離脱しても大丈夫だ。先頭に近いグループで出発すれば、後続がやってくるため、ペースの合うグループを見つけて一緒に走るという楽しみ方もできる。
サポートライダーのペースって遅いんじゃないの?と考える人も案ずるなかれ。第1グループは予想時刻よりも早く進行する快速ペースで走るというグループとなっており、ある程度のペースで走れてしまう人も満足できるようになっている。
さて、快速第1グループは今中大介さんを先頭に出発。これから我々参加者は山梨の峡南と呼ばれる地区を目指して走っていく。朝8時、出発待機していた身体は太陽に照らされ温まっていたが、走り出してみると冷たい走行風が身体を一気に冷やしていく。ヒヤリとした風が、再び目覚ましのように身体にムチを入れる。
スタートから約2.5km、富士川の河川敷を走行し鉄橋を渡ると早速上り坂が目の前に現れる。ツール・ド・富士川は距離110km/獲得標高差1900mという山岳ライドなのだが、その片鱗が早くも姿を表したようだ。序盤は緩やかな斜度でジワジワと登っていくのだが、ピーク地点のトンネル手前は約9%の斜度となっており、一発目のジャブとしてサイクリストを牽制する。
登り切ると久那土までは、下り基調の道だ。人々の活動がまだ本格的に始まっておらず静かな岩間の町を駆け抜けていく。グループ走行をしていると気が付きにくいのだが、向かい風が吹き付けており前方の集団との距離を詰めにくい。とはいえ、先頭付近からスタートを出発すれば、後続がどんどんやってくるため、それまで気楽にペダルを回していればよいのだが。
久那土の集落を抜けると下部射撃場の登りを通り、第1エイドが構えられる下部温泉に繋がる本栖みちを目指す。峡南は富士山の外輪山と南アルプスに挟まれており、それらが合流する谷間に富士川が流れる地域だ。気がつけばヒルクライムが登場するのも納得の地形。カジュアルに登場するヒルクライムに度々心が折られていては仕方がないので、序盤のヒルクライムは楽天的にこなしていく。
本栖みちまでたどり着いたら、第1エイドステーションまではもうすぐそこだ。非常にきれいな路面かつ広い道幅の本栖みちでは、緊張を解き景色を見る余裕が生まれる。紅葉が始まった山間の景色をぼんやり眺め、下部温泉・甲斐黄金村・湯之奥金山博物館に設置されたエイドに転がり込む。
第1エイドで振る舞われるのは山梨名物ほうとうだ。滋味あふれる温かい出汁と太麺、沢山の野菜。日が昇りきらない時間帯にダウンヒルと快速巡航で冷えた身体と、1時間ほど走行して空いた小腹を満たすのにはピッタリ。温かいほうとうを堪能しているうちに、腰をすっかり落ち着かせてしまったが、現在走行したのは23km。まだまだ先は長いため、重い腰を上げてツール・ド・富士川の3大ヒルクライム"身延山"に向かう。
第1エイドステーションを後にした我々は再び富士川の河川敷に行き当たる。これまで山間を走行してきただけに、富士川の河川敷から目の前に広がるダイナミックな景色は新鮮だ。目の前に見えている山がこれから向かう身延山。日蓮宗の総本山であり、開祖・日蓮上人が今も遺骨とともに祀られている地だ。お坊さんが厳しい修行を行うためなのか、本堂へ至る道は非常に激坂なのである。
富士川と合流した我々は道幅が広く気持ち良くスピードを乗せられる県道9号を通り、身延山へ向けて南下していく。身延橋を渡ったところが身延山の麓だ。地形に沿って作られた上り坂を走っていると、久遠寺の入り口を表す"総門"が我々を迎える。営業準備中のお店が立ち並ぶ参道を駆け上がり、三門で休憩を挟む。
ここではサポートライダーが牽引する集団にいると、これから始まる激坂に挑むに当たる注意事項が伝えられる。道幅が狭く観光バスや自家用車も通る道のため、蛇行をしてしまうとアクシデントに繋がってしまうのだ。限界が近くなったら遠慮なく降りることが、身延山を安全にクリアするための秘訣なのだとか。
ちなみに三門から頂上までのStravaセグメントでは距離は780m、平均斜度は12%となっているが、最も厳しい所で斜度18%はある激坂である。足をつかずに登り切ると非常に大きな達成感を味わえるはずだ。2回めのチャレンジとなる筆者は、途中の駐車場に避難してしまった。もちろん、撮影を行うため。決して脚がいっぱいになったからではないと付け加えておこう。
ひと休憩、いや撮影を終えた私は、圧倒的激坂に苦しみながらもなんとかピークに到着。道路はここで終点なのだが、ツール・ド・富士川の参加者は特別に久遠寺の敷地内を歩いて横断することができる。一般の参拝客に混じり、自転車を押しながら久遠寺を参拝する。走行中は停車して写真を撮ることは少ないが、ここでは気軽にスマホで写真を撮影できる。参加者はめいめいに境内や五重塔、マスコットキャラクターこぞうくんをスマホのカメラに収める。
駐車場までたどり着くと再び自転車に跨り、第2エイドを目指す。久遠寺からは下って、登って、下って繰り返しながら、徐々に標高を下げていくダウンヒル。終盤は一気に下り勾配が急になり、ジェットコースターのように一気に富士川沿いまで駆け下りる。
text&photo: Gakuto Fujiwara
photo: Naoki Yasuoka
道の駅富士川をベースとした南アルプスロングライドの2日目。この大会は初日に開催される白州・韮崎ステージとプチ南アルプスステージの2つのライド、2日目に行われるツール・ド・富士川の3つのライドが用意されたライドイベント。そのメインディッシュとなるツール・ド・富士川を迎えたのだ。
朝8時にはライドがスタートするため、日が昇りきらない朝6時頃から続々と参加者の皆さんが道の駅富士川に集まってきている。夜明け前はダウンジャケットが必要なほど冷え込んでいたものの、気温は身支度を整えているうちに上昇しているのが肌で感じるほど。最高気温は18℃と予報されており、この日のライドも気持ちが良いものになると期待が膨らむ。
晩秋の夜明けほど素晴らしいシチュエーションはない。顔を覆い隠すほど寒くもない気温、川から立ち上がる靄、澄んだ空気感、東から徐々に姿を現す太陽。全てが完璧である上、三方を山に囲まれた富士川というロケーションが気持ちを高揚させてくる。逸る気持ちを抑えて、サイクルコンピューターの電池残量やタイヤの空気圧をチェックして、スタートの時を待つ。
朝7時ごろになるとMCの浅利そのみさんの元気な声とともに動き出し、参加受付けが開始される。今年の参加賞は山梨のマスコット・チャリたぬのボトルが配られていたのだが、これが大人気なようで、早速自転車のボトルケージに差し込んでいた方も少なくない。また、ボトルは意外と忘れやすい物でもあるため、イベント会場で配布されるのは非常にありがたいのだ。近場の温泉で利用できる入浴券も合わせて配られた。
準備を終えたライダーからスタートゲートに自転車を並べ、第0エイドとして振る舞われていたひねりドーナツとホットコーヒーで朝食を摂りながら、スタートの時刻を待つ。刻一刻と気温が上昇していくため、ウェアの選択は非常に難しい。筆者は今後の気温変化にも対応できるようにウィンドブレーカーやアームウォーマー、夏用レッグカバーなどを着用してみた。グローブはMTB用の夏用ロングフィンガーをチョイスしている。
開幕式は富士川町の志村町長の挨拶から始まり、エネルギッシュなやまなしサイクルプロジェクト理事長の青木さんと続き、ゲストライダーの紹介に入っていく。レジェンド今中大介さんとモデルの石垣美帆さん、山梨をベースに活躍するアスリートのエース栗原さんという3名は昨年同様。
今年もエース栗原さんは久那土から始まる登りで全力をもって応援してくれるという。さらに、最後のヒルクライムはランニングで参加者を追っていくと宣言。栗原さんはトライアスロン・アジアチャンピオンなので、抜かれることは必至だが、追い抜かれてしまった場合はその速さに驚愕するはず。大会のハイライトとなる登りでは栗原さんが現れるため、楽しみにしておきたいポイントの1つだ。
ゲストと参加者全員で「ふじかわー!」と掛け声を上げて1つにまとまったところで、大会は始まる。南アルプスロングライドは25名前後のグループに分かれてスタートする方式を採用。サポートライダーが各集団の先頭を走るため、ペースメイキングやルートに関しては任せてしまってOK。グループのペースが合わなければ離脱しても大丈夫だ。先頭に近いグループで出発すれば、後続がやってくるため、ペースの合うグループを見つけて一緒に走るという楽しみ方もできる。
サポートライダーのペースって遅いんじゃないの?と考える人も案ずるなかれ。第1グループは予想時刻よりも早く進行する快速ペースで走るというグループとなっており、ある程度のペースで走れてしまう人も満足できるようになっている。
さて、快速第1グループは今中大介さんを先頭に出発。これから我々参加者は山梨の峡南と呼ばれる地区を目指して走っていく。朝8時、出発待機していた身体は太陽に照らされ温まっていたが、走り出してみると冷たい走行風が身体を一気に冷やしていく。ヒヤリとした風が、再び目覚ましのように身体にムチを入れる。
スタートから約2.5km、富士川の河川敷を走行し鉄橋を渡ると早速上り坂が目の前に現れる。ツール・ド・富士川は距離110km/獲得標高差1900mという山岳ライドなのだが、その片鱗が早くも姿を表したようだ。序盤は緩やかな斜度でジワジワと登っていくのだが、ピーク地点のトンネル手前は約9%の斜度となっており、一発目のジャブとしてサイクリストを牽制する。
登り切ると久那土までは、下り基調の道だ。人々の活動がまだ本格的に始まっておらず静かな岩間の町を駆け抜けていく。グループ走行をしていると気が付きにくいのだが、向かい風が吹き付けており前方の集団との距離を詰めにくい。とはいえ、先頭付近からスタートを出発すれば、後続がどんどんやってくるため、それまで気楽にペダルを回していればよいのだが。
久那土の集落を抜けると下部射撃場の登りを通り、第1エイドが構えられる下部温泉に繋がる本栖みちを目指す。峡南は富士山の外輪山と南アルプスに挟まれており、それらが合流する谷間に富士川が流れる地域だ。気がつけばヒルクライムが登場するのも納得の地形。カジュアルに登場するヒルクライムに度々心が折られていては仕方がないので、序盤のヒルクライムは楽天的にこなしていく。
本栖みちまでたどり着いたら、第1エイドステーションまではもうすぐそこだ。非常にきれいな路面かつ広い道幅の本栖みちでは、緊張を解き景色を見る余裕が生まれる。紅葉が始まった山間の景色をぼんやり眺め、下部温泉・甲斐黄金村・湯之奥金山博物館に設置されたエイドに転がり込む。
第1エイドで振る舞われるのは山梨名物ほうとうだ。滋味あふれる温かい出汁と太麺、沢山の野菜。日が昇りきらない時間帯にダウンヒルと快速巡航で冷えた身体と、1時間ほど走行して空いた小腹を満たすのにはピッタリ。温かいほうとうを堪能しているうちに、腰をすっかり落ち着かせてしまったが、現在走行したのは23km。まだまだ先は長いため、重い腰を上げてツール・ド・富士川の3大ヒルクライム"身延山"に向かう。
第1エイドステーションを後にした我々は再び富士川の河川敷に行き当たる。これまで山間を走行してきただけに、富士川の河川敷から目の前に広がるダイナミックな景色は新鮮だ。目の前に見えている山がこれから向かう身延山。日蓮宗の総本山であり、開祖・日蓮上人が今も遺骨とともに祀られている地だ。お坊さんが厳しい修行を行うためなのか、本堂へ至る道は非常に激坂なのである。
富士川と合流した我々は道幅が広く気持ち良くスピードを乗せられる県道9号を通り、身延山へ向けて南下していく。身延橋を渡ったところが身延山の麓だ。地形に沿って作られた上り坂を走っていると、久遠寺の入り口を表す"総門"が我々を迎える。営業準備中のお店が立ち並ぶ参道を駆け上がり、三門で休憩を挟む。
ここではサポートライダーが牽引する集団にいると、これから始まる激坂に挑むに当たる注意事項が伝えられる。道幅が狭く観光バスや自家用車も通る道のため、蛇行をしてしまうとアクシデントに繋がってしまうのだ。限界が近くなったら遠慮なく降りることが、身延山を安全にクリアするための秘訣なのだとか。
ちなみに三門から頂上までのStravaセグメントでは距離は780m、平均斜度は12%となっているが、最も厳しい所で斜度18%はある激坂である。足をつかずに登り切ると非常に大きな達成感を味わえるはずだ。2回めのチャレンジとなる筆者は、途中の駐車場に避難してしまった。もちろん、撮影を行うため。決して脚がいっぱいになったからではないと付け加えておこう。
ひと休憩、いや撮影を終えた私は、圧倒的激坂に苦しみながらもなんとかピークに到着。道路はここで終点なのだが、ツール・ド・富士川の参加者は特別に久遠寺の敷地内を歩いて横断することができる。一般の参拝客に混じり、自転車を押しながら久遠寺を参拝する。走行中は停車して写真を撮ることは少ないが、ここでは気軽にスマホで写真を撮影できる。参加者はめいめいに境内や五重塔、マスコットキャラクターこぞうくんをスマホのカメラに収める。
駐車場までたどり着くと再び自転車に跨り、第2エイドを目指す。久遠寺からは下って、登って、下って繰り返しながら、徐々に標高を下げていくダウンヒル。終盤は一気に下り勾配が急になり、ジェットコースターのように一気に富士川沿いまで駆け下りる。
text&photo: Gakuto Fujiwara
photo: Naoki Yasuoka
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