2018/04/21(土) - 09:08
すっかり春真っ只中の甲府盆地で、今年が初開催となった「桃と桜のサイクリング~リニアライドやまなし中央~」が4月8日に行われた。桃源郷と形容される山梨の春を楽しむ濃密なイベントの様子をレポートしましょう。
桃と桜のサイクリング。そのネーミングから想像するのは、ピンクに色づく中をふんわりゆったり走る、女性的なイメージだろう。獲得標高何千m!走り応えのあるコース!なんてキャッチコピーで、汗臭さをアピールしてくるロングライドが巷間溢れるなか、パステルピンクなオフィシャルサイトから伝わってくるのは、マッチョイズムからは程遠い楽しさに満ちた時間だ。
大会が目指すその思いは正しく伝わったようで、この日会場に集まった参加者の中に占める女性サイクリストの割合は、これまで見てきたどのロングライドイベントよりも高いように感じた。ぱっと見た印象だったので、実際のところの男女比はどのくらいなんですか?と運営スタッフへ尋ねると「3割ほどは女性参加者なんですよ!」とのいらえ。
一般的なライドイベントであれば、1割に届けば「女性人気のある大会なんですねー」なんて言われる男社会たる輪界で、3割というのは圧倒的な数字だ。もちろん、パートーナーと参加されている方もたくさんいらっしゃる一方で、女性同士のグループやソロ参加されている方もたくさん。
そんな方々のために、第1スタートは女性限定の特別グループになる配慮も。グループごとに帯同するサポートライダーも経験豊富な女性サイクリストが起用されており、ペーシングもお手の物だ。メカニック作業にも強いので安心して走ることできるし、先輩ライダーとして走りのお手本にもぴったり。
会場となったのは、甲府南ICから車で約10分ほどの豊富農業者トレーニングセンター。スタート前には、中央市で汲み上げられたカルシウムやマグネシウム等のミネラル分も豊富な地下水「命水」が提供され、ボトルに詰めることが出来るほか、命水で淹れたコーヒーのサービスも。そんなスタートのふるまいは、南アルプスロングライドから受け継ぐおもてなしの精神だろう。
田中中央市長やゲストライダーの今中さんや佐藤綾衣さん、やまなしサイクルプロジェクトの青木理事長らのあいさつが終われば、待ちに待ったスタート。青空に響く銅鑼の音とともに、第1陣となる女性グループがコースへ飛び出した。
甲府盆地を取り囲む山裾には、名高い勝沼フルーツラインをはじめ、多くの広域農道が走っている。その中でも南端に位置する「みやさか道」が前半のメインルートに選ばれた。山裾を走っていくためにどうしてもアップダウンが続くけれど、一つ一つの距離が短いのと斜度も緩やかなのでペースを保って走る分にはビギナーでも十分走り切れるはず。サポートライダーのペーシングの妙もあり、女性限定グループのみなさんも脚をつく人もおらず一団となって登っていく。
どんなものであろうと坂といえば少しは苦しいもの。それでも、そんな苦しさを意識することが少なかったのは、息を呑むような景色が登っている先に待っていて、登っている途中も見えていたから。鮮やかなピンクの桃の花が行く先を彩り、甲府盆地を見下ろす絶景が左手に広がっている。西から東へと向かうコースはそんな景色を味わうのにぴったりで、地元を知り尽くしたルート設計の妙を感じる。
いくつかの丘を越えた先に見えてくるのが、この大会最初のエイドである「八代ふるさと公園」。甲府盆地を一望できるロケーションの公園内に、こんもりと盛り上がっているのは2つの古墳。前方後円墳の「岡銚子塚古墳」と円墳「盃塚古墳」が寄り添うように並んでいる。昔は葺石がされていたであろう二つの古墳には今は芝が植えられており、自由に登ることが出来るよう整備されている。
なんと、この古墳の上で人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のロケが行われたこともあるのだとか。山梨でデートした第3話で、新垣結衣さん演ずるみくりが「教えておじいさーん!」と叫んだのが、この古墳の頂上だったということで、いわゆる聖地巡礼の行先にもなっているそう。
古墳の上でふかふかの芝生に腰を下ろしていただくのはもっちりふわふわなマフィン。広がる平野から吹き抜ける風を受けながら、もう一つ真っ赤なトマトをぱくっ。プツンと皮が弾けた瞬間、あふれ出てきた果肉はほんのり甘い。出来るだけ水分を与えずに育てることで糖度を上げたフルティカトマトなのだとか。
いつまでもこの公園で過ごせそうな居心地の良さなれど、残念ながらそうもいかない。全長53kmのコースと短めのイベントだけど、まだ最初のエイドステーションに着いたばかり。事前の情報によれば、残る4つのエイドも、あっと驚くおもてなしがあるのだという。
次はどんなエイドが現れるのか、期待を膨らませながら桃の花咲く下り坂へ再び漕ぎ出すのであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
桃と桜のサイクリング。そのネーミングから想像するのは、ピンクに色づく中をふんわりゆったり走る、女性的なイメージだろう。獲得標高何千m!走り応えのあるコース!なんてキャッチコピーで、汗臭さをアピールしてくるロングライドが巷間溢れるなか、パステルピンクなオフィシャルサイトから伝わってくるのは、マッチョイズムからは程遠い楽しさに満ちた時間だ。
大会が目指すその思いは正しく伝わったようで、この日会場に集まった参加者の中に占める女性サイクリストの割合は、これまで見てきたどのロングライドイベントよりも高いように感じた。ぱっと見た印象だったので、実際のところの男女比はどのくらいなんですか?と運営スタッフへ尋ねると「3割ほどは女性参加者なんですよ!」とのいらえ。
一般的なライドイベントであれば、1割に届けば「女性人気のある大会なんですねー」なんて言われる男社会たる輪界で、3割というのは圧倒的な数字だ。もちろん、パートーナーと参加されている方もたくさんいらっしゃる一方で、女性同士のグループやソロ参加されている方もたくさん。
そんな方々のために、第1スタートは女性限定の特別グループになる配慮も。グループごとに帯同するサポートライダーも経験豊富な女性サイクリストが起用されており、ペーシングもお手の物だ。メカニック作業にも強いので安心して走ることできるし、先輩ライダーとして走りのお手本にもぴったり。
会場となったのは、甲府南ICから車で約10分ほどの豊富農業者トレーニングセンター。スタート前には、中央市で汲み上げられたカルシウムやマグネシウム等のミネラル分も豊富な地下水「命水」が提供され、ボトルに詰めることが出来るほか、命水で淹れたコーヒーのサービスも。そんなスタートのふるまいは、南アルプスロングライドから受け継ぐおもてなしの精神だろう。
田中中央市長やゲストライダーの今中さんや佐藤綾衣さん、やまなしサイクルプロジェクトの青木理事長らのあいさつが終われば、待ちに待ったスタート。青空に響く銅鑼の音とともに、第1陣となる女性グループがコースへ飛び出した。
甲府盆地を取り囲む山裾には、名高い勝沼フルーツラインをはじめ、多くの広域農道が走っている。その中でも南端に位置する「みやさか道」が前半のメインルートに選ばれた。山裾を走っていくためにどうしてもアップダウンが続くけれど、一つ一つの距離が短いのと斜度も緩やかなのでペースを保って走る分にはビギナーでも十分走り切れるはず。サポートライダーのペーシングの妙もあり、女性限定グループのみなさんも脚をつく人もおらず一団となって登っていく。
どんなものであろうと坂といえば少しは苦しいもの。それでも、そんな苦しさを意識することが少なかったのは、息を呑むような景色が登っている先に待っていて、登っている途中も見えていたから。鮮やかなピンクの桃の花が行く先を彩り、甲府盆地を見下ろす絶景が左手に広がっている。西から東へと向かうコースはそんな景色を味わうのにぴったりで、地元を知り尽くしたルート設計の妙を感じる。
いくつかの丘を越えた先に見えてくるのが、この大会最初のエイドである「八代ふるさと公園」。甲府盆地を一望できるロケーションの公園内に、こんもりと盛り上がっているのは2つの古墳。前方後円墳の「岡銚子塚古墳」と円墳「盃塚古墳」が寄り添うように並んでいる。昔は葺石がされていたであろう二つの古墳には今は芝が植えられており、自由に登ることが出来るよう整備されている。
なんと、この古墳の上で人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のロケが行われたこともあるのだとか。山梨でデートした第3話で、新垣結衣さん演ずるみくりが「教えておじいさーん!」と叫んだのが、この古墳の頂上だったということで、いわゆる聖地巡礼の行先にもなっているそう。
古墳の上でふかふかの芝生に腰を下ろしていただくのはもっちりふわふわなマフィン。広がる平野から吹き抜ける風を受けながら、もう一つ真っ赤なトマトをぱくっ。プツンと皮が弾けた瞬間、あふれ出てきた果肉はほんのり甘い。出来るだけ水分を与えずに育てることで糖度を上げたフルティカトマトなのだとか。
いつまでもこの公園で過ごせそうな居心地の良さなれど、残念ながらそうもいかない。全長53kmのコースと短めのイベントだけど、まだ最初のエイドステーションに着いたばかり。事前の情報によれば、残る4つのエイドも、あっと驚くおもてなしがあるのだという。
次はどんなエイドが現れるのか、期待を膨らませながら桃の花咲く下り坂へ再び漕ぎ出すのであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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