1月30日、東京都渋谷区のバイクフォーラム青山で、14名の参加者に対し、チーム・ブリヂストンアンカーの現役選手・監督のなんと計6名が自転車の乗り方のアドバイスをしてくれるという、なんとも贅沢な講習会が開催された。

「アンカーセミナー」と銘打たれた講習会シリーズの第1回の今回は、ロードレーサー購入後2年以内の初心者を対象にポジショニングを教える「初級・ロードレーサー/ポジション編」。

まずは藤野監督から全体説明まずは藤野監督から全体説明
この3時間ほどのセミナーは、少人数の班に分かれてバイクフォーラム青山周辺を講師の選手たちと10数km走り、その途中、講師から参加者にアドバイス。バイクフォーラム青山に戻ったら、今度はローラー台で個別にポジションをじっくりチェックして愛車の調整ができるというゴージャスな内容だ。ちなみに参加費も1,500円とリーズナブル。この、小さくも内容の濃いイベントの様子をレポートしよう。

気持ちのいい青空の広がる土曜日の午前11時、関東近県から参加した31~59歳の男性14名がバイクフォーラム青山に集まった。迎える講師は、チーム・ブリヂストンアンカーの現役選手である山本雅道・普久原奨・三瀧光誠・狩野智也・清水良行さんと、同監督の藤野智一さんの計6名という豪華な布陣だ。これに数名のサポートスタッフが加わって、この日のセミナーは始まった。

名簿の順番で班分け。数グループに分けて実走にでかけるのだ名簿の順番で班分け。数グループに分けて実走にでかけるのだ 班ごとにミーティング班ごとにミーティング


今回走ったコース今回走ったコース まずは藤野監督からの全体説明から。続いて参加者を名簿順で3班に分け、各班には担当講師2名を配置。班別のミーティングを済ませたら、11時にいよいよ出発だ。

この日のコースは、地下鉄外苑前駅近くのバイクフォーラム青山を出発し、永田町から桜田門~大手町~竹橋~千鳥ケ淵~半蔵門と皇居をまわり、四谷から赤坂御用地北側を通ってバイクフォーラムへ戻る、10数kmのルートだ。




参加者14人に対して豪華講師が6人もつくとは、太っ腹な企画です参加者14人に対して豪華講師が6人もつくとは、太っ腹な企画です バイクフォーラム青山を出発バイクフォーラム青山を出発


出発から約20分、桜田門の前の広場でいちど自転車を降りて全員集合する。講師からのポジョションのアドバイスタイムだ。心地よい暖かな日差しのなか、講師と参加者たちの輪があちこちにできる。

「横に揺れないで踏めるようにしたいんですけど…」
「どうも、引き足が使えてないんじゃないかって思うんです…」

熱心なやりとりが聞こえてくる。答える選手たちもじっくり丁寧に説明しているのは、まさにこの人数ならでは。ポジションだけでなく、集団での走り方やストレッチなど、幅広いアドバイスを受けている参加者たち。みんな、この貴重な機会に聞きもらしのないように、と一生懸命だ。

桜田門で。「サドルの高さはね…」みんな真剣です桜田門で。「サドルの高さはね…」みんな真剣です 桜田門で。ストレッチや乗り方のアドバイスも桜田門で。ストレッチや乗り方のアドバイスも


「サドルの調整、まずは高さと前後からですね…」
「冬はどうしても身体がちぢこまるから、気温が上がってくると身体がのびて、サドルの感じが違ってくるので、少し上げたり」
「ストレッチは大事。冬は身体の末端が冷えてるから、あったまったから、ってガッと踏んじゃうと、バキバキっといっちゃうんですよね」
「使い捨てカイロを背中に貼っておくと、それだけでも身体の柔軟性が増してきますよ」
「引き足、引くって意識しちゃうと回転がスムーズにいかないから、ギアを軽くしてスムーズに回した方が効率がいいんじゃないかなあ?」
「集団で走るときは、3人ぐらい前の人の肩を見て、距離感をつかんでいくといいです」

まだまだ話は尽きない様子だが、出発予定時刻となり、全員で記念撮影後にまた出発。
皇居をまわり、迎賓館付近を経てバイクフォーラム青山へ戻ると、今度は室内に置かれたローラーを使っての個別チェックだ。アーレンを片手に、参加者の愛車のサドルやハンドルを手慣れた様子でテキパキと調整しながらの講師らのアドバイスは、より一層細やかなものに。

みんなで記念撮影みんなで記念撮影
「こうだとハンドルを引くっていうことができないじゃないですか? もうちょっと長いステムのほうがいいかもしれませんね。そうすると遠く感じるかもしれないので、STIレバーの位置も、もう少し上がるかもしれませんね…」
別のグループからは「あー、ほんとにこれだけで全然違いますねー」という感心した声が上がる。
「ほんの少ししかいじってないんですけど…」
「いじるときは、必ずミリ単位で調整しましょう。自転車には毎日乗ったほうがいいですね。1~2週間乗って違和感がなければ大丈夫。」
「基本を頭に入れて、いい感じだな、って、その人に合ったところに調整していけばいいんです…」

うなずきながら講師の話を聞いていたのは、「60kmぐらい走るようになって、もうちょっと長い距離を走りたいなと思って参加しました」という都内在住の樫尾清明さん(50)。
「肩が痛いという症状があったので、サドルの位置を後方に数mmずらして、重心を後ろにしました。後ろにさがって遠のいた分、ハンドルの角度を少し上げてもらいました。まだ乗ってみないと分からないですけど、山本選手に調整してもらって、どう変わるかが楽しみです」。

ローラー台でじっくりポジションチェックローラー台でじっくりポジションチェック 根拠のしっかりしたプロの意見はありがたい限りです根拠のしっかりしたプロの意見はありがたい限りです


安心して全てお任せも有りですね安心して全てお任せも有りですね 「サドルの位置を変えて楽になりました、もう全然違いますね。フィッティングや乗り方をプロに聞けるこんな機会がユーザーになかなかないので、すごく貴重だと思います。自己流で『これがいい』と言い合っているのとは全然違う。基本性能を知らずに、自分が必要とする以上にパーツにお金をかけ過ぎちゃうことが多いと思うんですが、まずはそこをやりきってからの話かなと思います。来た甲斐ありました!」
自己流なのでプロに見てもらおうと、埼玉から参加した渡(わたり)光弘さん(40)は満足そうに語ってくれた。

自分の番が終わった参加者たちも、ほかの人の自転車の調整の様子をデジカメで撮ったり、皆とても熱心だ。そして何より、講師たちが自転車と真剣に”対話”して調整していくその集中した様子からは、ああ、本当にみんな自転車が大好きなんだなあ…ということが伝わってくる。

もしかしたら、この空気のなかで選手たちが言葉以外で語っている「何か幸せなものへの確信」を目撃して帰ることも、とても大きな収穫なのかもしれない。

終了は14時。最後に藤野監督が「ポジションひとつで、快適だったり、障害になったりします。より快適に楽しく乗れるよう、競技される方にはステップアップに、自転車に乗るひとつの材料として今日の内容を組み込んでいただけばありがたいです」と挨拶。このイベントを締めくくった。

ブリヂストンサイクル販売企画部の浦野篤さんによれば、
「今回は非常に好評で、ありがたいことに募集を始めてすぐ満席となりました。選手が一般のユーザーと接して教えるスタイルの講習会は今後もやりたいです。初級編のポジションの講習は定期的にできたらと思っています。

上級者向けの内容も考えていますし、栄養士さんもいるので、食事やサプリメントの摂りかたの講習も企画中です。レースシーズン中は、週末は選手のスケジュール的に難しい面もありますが、平日夜に実技なしで開催するなどの形も可能かもしれません。やり方を工夫して、月1回ぐらい何かできないか検討しています」とのこと。

スタッフと講師のみなさん。お疲れさまでした!スタッフと講師のみなさん。お疲れさまでした!

自転車のハード面ばかりでなく、ソフト面からもサポートしてくれるイベントがまた期待できそうだ。今後の企画については、バイクフォーラム青山のwebをマメにチェックしてほしい。次にこんなゴージャスな体験ができるのは、あなたかもしれない。

写真とレポート:佐藤有子
text&photo : Yuko SATO

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