2018/02/26(月) - 09:05
区切りの年となった今年のシクロクロス東京。例年になく観客を集めた同大会をレポートするとともに、国内シクロクロスの盛り上がりを牽引してきたCX東京を取り仕切る、チャンピオンシステムの棈木(アベキ)亮二代表へのインタビューをお届けしよう。
東京はお台場エリアの北側、普段は散歩やランニング、デートやレジャースポットとしてゆったりとした時間が流れるお台場海浜公園が、年に一度白熱した自転車レース会場に変わるシクロクロス東京開催日。今年は2月10・11日に行われ、2日間ともに最高気温15度に迫る暖かな天候に恵まれる。2012年から続く同大会も東京オリンピック開催の影響で来年、再来年は開催されないことが決定しており、ひとまず今年で一旦区切りということになった。
初回大会は4000人ほどの動員だったというが、国内最大の都市型シクロクロスイベントとして定着した近年は2万人を超えるほどの動員数を記録するまでに成長した。もちろん今年も例外ではなく、多くの参加者と観客が詰めかけることに。首都高「台場」インターやりんかい線「東京テレポート駅」、ゆりかもめ「お台場海浜公園駅」からアクセスもよく足を運びやすい開催地であったことも、ここまでイベントが大きくなった要因の一つと言えるだろう。
過去を振り返れば、大寒波が東京を襲った4年前は雪景色の中開催されたり、山本和弘(現キャノンデール・ジャパン勤務)のプロ最終レースとなったり、ザック・マクドナルド、ジェレミー・パワーズ、スティーブ・シェネルといった海外強豪選手と国内トップ選手の激しいバトルが繰り広げられたりと、毎年様々なドラマが生まれてきたのがこの大会だ。
毎年コースを変更しているのも特徴で、一度として同じコースレイアウトであったことはない。今年は第1回大会ぶりとなる北側に伸びるロングサンドのレイアウトが復活となり、乗車が難しいエリアかつランでも体力を奪われるとあって多くの参加者を苦しめていた。
またキッズレースやエンデューロレースのカテゴリーも設けられ、シリアスなレースだけでない側面もイベントの盛り上げに一役買ってきた。特に昨年から新設されたサンドスイッチエンデューロは、砂浜のラン区間で参加者がみな苦しい表情を見せるため、観客としてもつい大きな声で応援したくなる。コスプレライダーも数多く、それぞれのパフォーマンスが会場の笑いを誘うのもシクロクロス東京の定番と言えるだろう。
もちろん同イベントを語る上で外せないのが豊富なブース出展。大会公式グッズとして今年は”砂”の文字をあしらったホーロー製のマグカップやカウベル等を用意。某大会グッズのオマージュ(笑)とお店の人も言ってしまうデザインだが、「マグカップはそのまま火にもかけられるので、シクロクロスでの遠征やキャンプにも良いですよ」とのこと。
ジャイアントやフェルト、メリダ、フォーカスといったバイクブランドブースではシクロクロスバイクの試乗車をこぞって並べる。ダートとなった専用の試乗コースも用意されるため、各社のCXバイクを存分に試せる貴重な機会となったことだろう。またジロやレイク、ノースウェーブといったブランドはシューズの試着を行っており、来場者はそれぞれのサイズ感や履き心地をチェックしていた。
ステージイベントとしては竹之内悠(東洋フレーム)と織田聖、前田公平(ともに弱虫ペダルサイクリングチーム)の3選手によるトークショーが初日に開かれた。「世界選手権では試走の時から海外選手は涼しい顔して追い抜いていくんですよ。向こうは流して走っているのに、僕らはマックス追い込んでやっと同じくらい。そりゃもう速くて、世界のレベルに驚かされますね」と海外遠征帰りの赤裸々なトークが飛び交っていた。
2日目のレース終了後にはAJOCCのJCXシリーズ王者として小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と今井美穂(CO2bicycle)が表彰されるとともに、壇上ではRapha Japan代表であり、野辺山シクロクロスを主催するAJOCC理事長の矢野大介氏とチャンピオンシステム代表の棈木亮二氏があいさつ。日本のシクロクロス発展に向けて熱意を燃やすコメントを聞くことができた。
特に棈木代表はシクロクロス東京の仕掛け人として思い入れのある同イベントだけに、その歴史を噛みしめるかのような表情が印象的であった。シクロワイアードではイベント終了後に棈木代表にインタビューを実施。区切りとなる同イベントへの想いを語っていただいた。
チャンピオンシステムジャパン 棈木亮二代表インタビュー
― まず今年のシクロクロス東京を振り返ってみていかがでしたか
例年と違って今年は海外招待選手が参戦しないという点はありましたが、それ以外はいつも通りのイベント内容で、CX東京らしい盛り上がりを見せられたと思います。特に1日目は参加者のエントリーもすぐに埋まってしまう盛況ぶりでしたし、来場者も過去最高レベルにたくさんの人にお越しいただけて、非常に良い雰囲気でしたね。
2日目は海外勢がいないことでやや客足が鈍いかなと感じるところではありましたが、CL1と男子エリートが控えた午後にかけて一気に観客の数が増えました。国内選手が一堂に会したJCXシリーズ最終戦として、白熱した走りを皆さん間近で見られたことと思います。2日間とも天気に恵まれたことも幸いでしたね。
コースも例年通りでは面白くないと、初回に戻って砂のストレート区間を延長してみました。CX東京と言えば”砂”ということで、砂の上でバイクを操る楽しさを味わってもらえたらと思ったのですが、皆さんいかがだったでしょう。加えてコーナーを少なめに設定することで乗車率を上げ、スムーズにレースを楽しんでもらえるよう工夫してみました。実際男子エリートはかなりの高速レースで見応えがあったのではないでしょうか。
― 7年間続いたCX東京ですが、どういった想いでこのイベントを開催してきましたか
初回から一貫して目指してきたことは、魅せるショーレースにしたいと言うことでした。自転車という一般的にはマイナーな競技、その中でもさらにマイナーなシクロクロスという種目でどれだけ多くの観客を動員できるか、非常に難題で毎年試行錯誤の繰り返しでした。
目標とするところは野球やサッカーのようなメジャースポーツと同じように注目してもらうことでしたが、残念ながらそのレベルに到達することはできませんでしたね。その点は非常に悔しく思います。ですが、国内の自転車レースイベントで見れば、ジャパンカップロードレースやさいたまクリテリウム等のビッグイベントに次ぐ動員数を記録できたことは誇りに思います。シクロクロスでここまで出来たと考えれば大成功と言えるでしょう。
イベントを拡大させていくには、いかに外に向かってアピールできるかが重要だと考えます。大会の2・3年目にはテレビ東京やJ SPORTSともスポンサー協力を得て、レース中継が行えたことは大いに意義のあるものでした。そういった大きなメディアを巻き込んでイベントを開催していくことで、より自転車レースの価値を高めていきたいですよね。
また昨年から登場したサンドスイッチエンデューロも評価が良く、さらに工夫をしていけばもっと面白くなるだろうなと考えていたところです。とりあえず、参加者が走って楽しい、観客が見て楽しいという大会にここまで持ってこれたことは満足しています。
― CX東京は一度区切りとなってしまいますが今後の展望をお聞かせ下さい
すぐに代わりの大会となる新しいイベントを立ち上げるかと言えば、そうではありません。ひとまずは、どうやったら盛り上がるイベントが作れるか、本場ヨーロッパのレースを参考に我々も勉強していく期間に充てたいと考えています。CX東京を終わらせないでほしいという声は大いにありますし、3年後の再開も検討はしていきますが、まだ何とも言えませんね。
単純にレースイベントを起こすだけではなく、キッチリ継続できてヒットに繋がるような何か大きなファクターやアイデアが必要だと思っているんです。もちろん運営のためのスポンサー獲得や情報発信のためのメディアとの連携等も欠かすことはできず、課題は山積みですね。
AJOCCとしては、来季のJCXシリーズ最終戦はシクロクロス東京に代わり別大会に設定されることになります。今後もJCXシリーズの精度を上げ、UCIレースを増やして世界を目指す道を作りながら、普及大会を増やし底辺の拡大を促進していきます。AJOCCの目標は、多くのレース参加、観戦から世界に通じる才能あふれる選手が育つこと。今後もシクロクロスレースを観る、参加するで一人でも多くの人が楽しめるAJOCCにしていきたいと考えています。
またチャンピオンシステムとしては幕張でのスターライトクロスのウェイトが大きくなりますね。こちらのテコ入れをして、よりイベントのブランド化を図っていきたいと考えています。ただ、何をやるにしても多くのお客さんに観てもらって感動を作る、そういうイベントを目指していきます。矢野口にオープンしたCROSS COFFEEもそうですが、なにか新しい試みで自転車業界をさらに盛り上げていきたいですね。
text&interview:Yuto.Murata
photo:CW編集部
東京はお台場エリアの北側、普段は散歩やランニング、デートやレジャースポットとしてゆったりとした時間が流れるお台場海浜公園が、年に一度白熱した自転車レース会場に変わるシクロクロス東京開催日。今年は2月10・11日に行われ、2日間ともに最高気温15度に迫る暖かな天候に恵まれる。2012年から続く同大会も東京オリンピック開催の影響で来年、再来年は開催されないことが決定しており、ひとまず今年で一旦区切りということになった。
初回大会は4000人ほどの動員だったというが、国内最大の都市型シクロクロスイベントとして定着した近年は2万人を超えるほどの動員数を記録するまでに成長した。もちろん今年も例外ではなく、多くの参加者と観客が詰めかけることに。首都高「台場」インターやりんかい線「東京テレポート駅」、ゆりかもめ「お台場海浜公園駅」からアクセスもよく足を運びやすい開催地であったことも、ここまでイベントが大きくなった要因の一つと言えるだろう。
過去を振り返れば、大寒波が東京を襲った4年前は雪景色の中開催されたり、山本和弘(現キャノンデール・ジャパン勤務)のプロ最終レースとなったり、ザック・マクドナルド、ジェレミー・パワーズ、スティーブ・シェネルといった海外強豪選手と国内トップ選手の激しいバトルが繰り広げられたりと、毎年様々なドラマが生まれてきたのがこの大会だ。
毎年コースを変更しているのも特徴で、一度として同じコースレイアウトであったことはない。今年は第1回大会ぶりとなる北側に伸びるロングサンドのレイアウトが復活となり、乗車が難しいエリアかつランでも体力を奪われるとあって多くの参加者を苦しめていた。
またキッズレースやエンデューロレースのカテゴリーも設けられ、シリアスなレースだけでない側面もイベントの盛り上げに一役買ってきた。特に昨年から新設されたサンドスイッチエンデューロは、砂浜のラン区間で参加者がみな苦しい表情を見せるため、観客としてもつい大きな声で応援したくなる。コスプレライダーも数多く、それぞれのパフォーマンスが会場の笑いを誘うのもシクロクロス東京の定番と言えるだろう。
もちろん同イベントを語る上で外せないのが豊富なブース出展。大会公式グッズとして今年は”砂”の文字をあしらったホーロー製のマグカップやカウベル等を用意。某大会グッズのオマージュ(笑)とお店の人も言ってしまうデザインだが、「マグカップはそのまま火にもかけられるので、シクロクロスでの遠征やキャンプにも良いですよ」とのこと。
ジャイアントやフェルト、メリダ、フォーカスといったバイクブランドブースではシクロクロスバイクの試乗車をこぞって並べる。ダートとなった専用の試乗コースも用意されるため、各社のCXバイクを存分に試せる貴重な機会となったことだろう。またジロやレイク、ノースウェーブといったブランドはシューズの試着を行っており、来場者はそれぞれのサイズ感や履き心地をチェックしていた。
ステージイベントとしては竹之内悠(東洋フレーム)と織田聖、前田公平(ともに弱虫ペダルサイクリングチーム)の3選手によるトークショーが初日に開かれた。「世界選手権では試走の時から海外選手は涼しい顔して追い抜いていくんですよ。向こうは流して走っているのに、僕らはマックス追い込んでやっと同じくらい。そりゃもう速くて、世界のレベルに驚かされますね」と海外遠征帰りの赤裸々なトークが飛び交っていた。
2日目のレース終了後にはAJOCCのJCXシリーズ王者として小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と今井美穂(CO2bicycle)が表彰されるとともに、壇上ではRapha Japan代表であり、野辺山シクロクロスを主催するAJOCC理事長の矢野大介氏とチャンピオンシステム代表の棈木亮二氏があいさつ。日本のシクロクロス発展に向けて熱意を燃やすコメントを聞くことができた。
特に棈木代表はシクロクロス東京の仕掛け人として思い入れのある同イベントだけに、その歴史を噛みしめるかのような表情が印象的であった。シクロワイアードではイベント終了後に棈木代表にインタビューを実施。区切りとなる同イベントへの想いを語っていただいた。
チャンピオンシステムジャパン 棈木亮二代表インタビュー
― まず今年のシクロクロス東京を振り返ってみていかがでしたか
例年と違って今年は海外招待選手が参戦しないという点はありましたが、それ以外はいつも通りのイベント内容で、CX東京らしい盛り上がりを見せられたと思います。特に1日目は参加者のエントリーもすぐに埋まってしまう盛況ぶりでしたし、来場者も過去最高レベルにたくさんの人にお越しいただけて、非常に良い雰囲気でしたね。
2日目は海外勢がいないことでやや客足が鈍いかなと感じるところではありましたが、CL1と男子エリートが控えた午後にかけて一気に観客の数が増えました。国内選手が一堂に会したJCXシリーズ最終戦として、白熱した走りを皆さん間近で見られたことと思います。2日間とも天気に恵まれたことも幸いでしたね。
コースも例年通りでは面白くないと、初回に戻って砂のストレート区間を延長してみました。CX東京と言えば”砂”ということで、砂の上でバイクを操る楽しさを味わってもらえたらと思ったのですが、皆さんいかがだったでしょう。加えてコーナーを少なめに設定することで乗車率を上げ、スムーズにレースを楽しんでもらえるよう工夫してみました。実際男子エリートはかなりの高速レースで見応えがあったのではないでしょうか。
― 7年間続いたCX東京ですが、どういった想いでこのイベントを開催してきましたか
初回から一貫して目指してきたことは、魅せるショーレースにしたいと言うことでした。自転車という一般的にはマイナーな競技、その中でもさらにマイナーなシクロクロスという種目でどれだけ多くの観客を動員できるか、非常に難題で毎年試行錯誤の繰り返しでした。
目標とするところは野球やサッカーのようなメジャースポーツと同じように注目してもらうことでしたが、残念ながらそのレベルに到達することはできませんでしたね。その点は非常に悔しく思います。ですが、国内の自転車レースイベントで見れば、ジャパンカップロードレースやさいたまクリテリウム等のビッグイベントに次ぐ動員数を記録できたことは誇りに思います。シクロクロスでここまで出来たと考えれば大成功と言えるでしょう。
イベントを拡大させていくには、いかに外に向かってアピールできるかが重要だと考えます。大会の2・3年目にはテレビ東京やJ SPORTSともスポンサー協力を得て、レース中継が行えたことは大いに意義のあるものでした。そういった大きなメディアを巻き込んでイベントを開催していくことで、より自転車レースの価値を高めていきたいですよね。
また昨年から登場したサンドスイッチエンデューロも評価が良く、さらに工夫をしていけばもっと面白くなるだろうなと考えていたところです。とりあえず、参加者が走って楽しい、観客が見て楽しいという大会にここまで持ってこれたことは満足しています。
― CX東京は一度区切りとなってしまいますが今後の展望をお聞かせ下さい
すぐに代わりの大会となる新しいイベントを立ち上げるかと言えば、そうではありません。ひとまずは、どうやったら盛り上がるイベントが作れるか、本場ヨーロッパのレースを参考に我々も勉強していく期間に充てたいと考えています。CX東京を終わらせないでほしいという声は大いにありますし、3年後の再開も検討はしていきますが、まだ何とも言えませんね。
単純にレースイベントを起こすだけではなく、キッチリ継続できてヒットに繋がるような何か大きなファクターやアイデアが必要だと思っているんです。もちろん運営のためのスポンサー獲得や情報発信のためのメディアとの連携等も欠かすことはできず、課題は山積みですね。
AJOCCとしては、来季のJCXシリーズ最終戦はシクロクロス東京に代わり別大会に設定されることになります。今後もJCXシリーズの精度を上げ、UCIレースを増やして世界を目指す道を作りながら、普及大会を増やし底辺の拡大を促進していきます。AJOCCの目標は、多くのレース参加、観戦から世界に通じる才能あふれる選手が育つこと。今後もシクロクロスレースを観る、参加するで一人でも多くの人が楽しめるAJOCCにしていきたいと考えています。
またチャンピオンシステムとしては幕張でのスターライトクロスのウェイトが大きくなりますね。こちらのテコ入れをして、よりイベントのブランド化を図っていきたいと考えています。ただ、何をやるにしても多くのお客さんに観てもらって感動を作る、そういうイベントを目指していきます。矢野口にオープンしたCROSS COFFEEもそうですが、なにか新しい試みで自転車業界をさらに盛り上げていきたいですね。
text&interview:Yuto.Murata
photo:CW編集部
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