紅く色づいた山々も少し彩度を落としつつある11月の中旬、山梨県で開催された南アルプスロングライド。2日間に渡って開催されたライドイベントの中から、最も短いコースに地域の魅力を詰め込んだ「プチ・南アルプスステージ」のレポートをお届けしよう。



今日は一日楽しむぞ!今日は一日楽しむぞ! 7色のチャリたぬくんストラップが参加賞として用意された7色のチャリたぬくんストラップが参加賞として用意された

チャリたぬくんが参加者を見守るチャリたぬくんが参加者を見守る みんなでチャリたぬくんと記念撮影みんなでチャリたぬくんと記念撮影


山梨県西部を南北に流れる富士川。その流域沿いに広がる、自然豊かなエリアで開催されるロングライドイベントが南アルプスロングライドである。中部横断自動車道、増穂ICからほど近い「道の駅富士川」を中心に、北を目指す「白州・韮崎ステージ」、南部の山岳地帯でアップダウンを楽しむ「ツール・ド・富士川ステージ」など、変化に富んだロケーションを活かしたコースが用意される2日間のイベントだ。

その中でも、最も短くイージーなコースとして設定されるのが、今回レポートする「プチ・南アルプスステージステージ」だ。全長35kmというショートコースの中に、富士川エリアの絶景や地元のスイーツなどをギュギュっと詰め込み、初心者や脚力に自信のない方でも楽しむことができるように設定されたプレミアムライドである。

多くのロングライドイベントを取材してきた経験からすると、実はこういった短めのコースこそ楽しく走れることが多いもの。土曜日に2つの種目が開催されるこのイベントでは取材班も二つに分かれることとなるのだが、それとなく会話を誘導することでプチ・南アルプスステージ担当の座を手に入れることに2年連続で成功した私・ヤスオカが言うのだから間違いない。

プチ・南アルプスステージに出走した佐藤綾衣さんプチ・南アルプスステージに出走した佐藤綾衣さん 高校生の和太鼓演奏が力をくれた高校生の和太鼓演奏が力をくれた

続々とスタートしていく白州・韮崎ステージの参加者達続々とスタートしていく白州・韮崎ステージの参加者達
そんな、ちょっとした根回しをしつつ迎えた大会当日。前日の天気予報では明け方から90%の降水確率という。かなり激しい降雨を覚悟しレインウェアを詰め込んだ車で、中央道から中部横断道を経由し、大会会場へ向かう。しかし、いつまでたっても雨が降り出す様子はなく、路面もドライのまま。ひょっとして、これは降らないままなのでは?という甘い期待を抱きつつ会場へ。

車を降りると東京よりもぐっと冷え込んだ空気が刺さる。だが、幸いにも雨は一滴も落ちてきていない。この時、会場に集まった皆さん、運営スタッフ、そしてもちろん取材で来ていた僕たちの思いはきっと一つだったに違いない。「このまま降らないでいてくれ」という祈りにも似た気持ちで一つになった会場は、既に開会式の前から奇妙な一体感で満ちていた。

また、NHKの人気番組「チャリダー」の取材や、山梨県の主要なサイクリングスポットで出会うことのできる「チャリたぬくん」像がスタートゲートに設置されていたこともあり、メイン会場となった道の駅富士川は昨年よりも一際賑わいを見せているように感じる。

スタート地点では第0エイドと称してねじりがしとコーヒーが頂けるスタート地点では第0エイドと称してねじりがしとコーヒーが頂ける 佐藤さんとスタート前に記念撮影だ佐藤さんとスタート前に記念撮影だ


プチ・南アルプスステージ、スタートですプチ・南アルプスステージ、スタートです
第0エイドとして、サクサクの焼き菓子であるねじりがしとホットコーヒーが用意されるのも昨年同様。キンとした朝の冷気に、少し元気が持っていかれていたけれど、あまくてあったかいふるまいで心と身体にカロリーを再び取り戻す。走り出す準備はバッチリだ。

熱い、といえばこのイベントの開会式。主催者であるやまなしサイクルプロジェクトの青木理事のエネルギッシュな挨拶に始まり、言わずとしれた今中大介さんや2度の日本チャンピオンに輝いたプロデュアスリートのエース栗原さん、そしてチャリダーで坂バカ女子として活躍する佐藤綾衣さんらが登壇し、寒い空気を吹き飛ばすメッセージをプレゼントしてくれた。

80kmの白州・韮崎ステージへとチャレンジするみなさんを見送った後に、我ら「プチ・南アルプスステージ」もスタート。5つのグループに分かれて、35kmのショートトリップへと順次旅立っていくことに。

色とりどりののぼりに見送られてコースイン色とりどりののぼりに見送られてコースイン
グループから遅れても、サポートライダーがしっかりアシストしてくれるグループから遅れても、サポートライダーがしっかりアシストしてくれる 紅葉した並木道紅葉した並木道


このイベントの特色とも言えるのが、各グループごとにサポートライダーが複数名帯同し、しっかりとアテンドしてくれること。20名ほどのグループでは、どうしても脚力の差が生まれるけれどもグループの最後尾にはしっかりとサポートしてくれるスタッフがいるので、道に迷う心配もないし何より安心できる。

少しばかりのアップダウンを越えていくと、鮮やかなオレンジの柿が吊り下げられた干し柿製造所が。ちょうど収穫した柿を干し始める時期だったようで、総出で作業中。皮を剥かれた柿は透き通るようで、そのままかぶりつきたい色合い。2つを紐で結ぶことで、バランスをとって吊り下げていくんだと教えてくれた。このみずみずしい柿がしわしわの干し柿になるというのだから不思議なものだ。

干し柿の吊られた棚を横目に走っていく干し柿の吊られた棚を横目に走っていく
おばあちゃんに柿の結び方を教えていただきましたおばあちゃんに柿の結び方を教えていただきました 柿が収穫の季節を迎えていた柿が収穫の季節を迎えていた


おばあちゃんたちにお礼を告げ、少し走ると一つ目のエイドステーションに到着。地元で高い人気を誇る洋菓子店「清月」自慢のイタリアンロールを筆頭に、どら焼きやお饅頭、草餅など和洋のスイーツを取り揃えて参加者を待ち受けているのだ。ここまで約10kmほどと、明らかにカロリーオーバーであるが細かいことは気にせず食べるのが正解。

ふわふわのスポンジとサッパリした甘さのクリームのイタリアンロールはするりと喉を通り過ぎ、胃の中へ。スイーツを堪能し終わった人から、再びグループを結成して走り出していく。今回、ゲストライダーである佐藤綾衣さんも、このプチ・南アルプスステージに参加しており、ここで同じグループに。

イタリアンロールをほおばる佐藤さんイタリアンロールをほおばる佐藤さん こんなにも盛りだくさんのスイーツが用意されるこんなにも盛りだくさんのスイーツが用意される

スイーツでおなか一杯になり、思わずピーススイーツでおなか一杯になり、思わずピース おこさんも嬉しそうだけどお父さんはもっと嬉しそうおこさんも嬉しそうだけどお父さんはもっと嬉しそう


ここから先はフルーツ王国らしい果樹園の中をじわじわと標高を上げていく。遠くに大きなループ橋である桃花橋が見えるが、実はそこもコースの一部。しばらく行くと山側へのアプローチが現れる。斜度は8%ほどだが、距離が短い登りなので、見た目ほどはきつくない。ここでもサポートライダーがしっかりと伴走してくれることに変わりはなく、常に安心して走っていける。

ピークではいったん後続を待ち、グループごとにまとまって下っていく。つい先ほど見た桃花橋を下っていくのだが、晴れていれば富士山が見えるという絶景スポットなのだという。あいにくこの日は曇っており、富士山の美しい姿を目にすることは出来なかったが、ここまで雨が降っていないだけでも僥倖というもの、高望みは禁物だろう。と思っていたが、富士山は見えずとも霧がかった南アルプス市街の風景は非常に幻想的で、まるで山水画の世界へと迷い込んだような味わいがある。

ループ橋を目指して走っていくループ橋を目指して走っていく
登り勾配に苦しそうな表情を見せる登り勾配に苦しそうな表情を見せる この瞬間が、登りで初めて人を抜いたシーンだという佐藤さんこの瞬間が、登りで初めて人を抜いたシーンだという佐藤さん


ダイナミックに下っていくループ橋ダイナミックに下っていくループ橋
一旦標高を下げるが、ここからは再び登り区間に。序盤はじわじわと登りつつ、最後に棚田の間をクイッと駆け上がるメリハリの効いた登りとなっている。少し九十九折気味になった最後の区間を踏み切れば、後は下るだけ。この登り区間も距離は短いので、なんなら押して歩いたって全然問題ない。

ピークから少し下った先にあるのが、第2エイドとなるほたるみ館。ここでは、地域のおばあちゃんたちが腕によりをかけて作ってくれたグルメを頂くことが出来る。味噌おでんやよもぎや小麦、ゆずを使ったお饅頭、名産のフルーツを使ったジャムが乗ったクラッカーなどなど、より取り見取り。そうそう、このほたるみ館にもチャリたぬ君がいるので、記念写真は押さえておきたいところ。

ループ橋をバックにアップダウンをこなすループ橋をバックにアップダウンをこなす このコーナーを曲がり切れば後は下るだけだこのコーナーを曲がり切れば後は下るだけだ

手作りしてくれたおばあちゃんに感謝手作りしてくれたおばあちゃんに感謝 地元のフル―ツを使ったジャム 種類も豊富だ地元のフル―ツを使ったジャム 種類も豊富だ

ピンクチャリたぬくんと記念撮影は外せないピンクチャリたぬくんと記念撮影は外せない 色とりどりのジャムが乗ったクラッカー色とりどりのジャムが乗ったクラッカー


ほたるみ館でどこか懐かしの味わいを堪能したら、後はフィニッシュへと戻るだけ。下り基調で一気に距離を消化すればあっというまに道の駅富士川へと到着だ。幸いなことに、ここまで一滴も雨に降られることなく走り終えることが出来た。白州・韮崎ステージは、一時降られてしまうシーンもあったとのことで、一番「持っていた」のはプチ・南アルプスステージの参加者のみなさんだということになる。

ただ、雨に降られなかったとはいえ身体は下りで冷えてしまう。でも、会場にはあったかーい「みみ」が待っている。厚めのほうとうのような生地を三角形に折りたたんだような麺を煮込んだ「みみ」は冷えた身体がまさに求めていた一杯。次々にフィニッシュするみなさんが一口口にするたび、血色がよくなっていくようにも見えるほど。

特徴的な形状のみみ特徴的な形状のみみ 会場ではマッサージサービスも 冷えた身体をほぐしてくれた会場ではマッサージサービスも 冷えた身体をほぐしてくれた

多くの人がトークショーには集まった多くの人がトークショーには集まった 片足ペダリングに挑戦する佐藤さん キツそうである片足ペダリングに挑戦する佐藤さん キツそうである

最後はじゃんけん大会でシメ。 チャリたぬくんストラップが全色プレゼント!羨ましい…最後はじゃんけん大会でシメ。 チャリたぬくんストラップが全色プレゼント!羨ましい…
最後はゲストたちのトークショーやチャリたぬくんグッズが当たるじゃんけん大会を楽しみ、1日目はお開きに。幻想的な風景とお腹いっぱいのスイーツで、幸せに浸れる35kmのプチ・南アルプスステージは、やっぱりどんな人にもオススメできる大満足のプレミアムライドであった。

text&photo:Naoki.YASUOKA

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