2017/12/04(月) - 09:12
紅く色づいた山々も少し彩度を落としつつある11月の中旬、山梨県で開催された南アルプスロングライド。2日間に渡って開催されたライドイベントの中から、最も短いコースに地域の魅力を詰め込んだ「プチ・南アルプスステージ」のレポートをお届けしよう。
山梨県西部を南北に流れる富士川。その流域沿いに広がる、自然豊かなエリアで開催されるロングライドイベントが南アルプスロングライドである。中部横断自動車道、増穂ICからほど近い「道の駅富士川」を中心に、北を目指す「白州・韮崎ステージ」、南部の山岳地帯でアップダウンを楽しむ「ツール・ド・富士川ステージ」など、変化に富んだロケーションを活かしたコースが用意される2日間のイベントだ。
その中でも、最も短くイージーなコースとして設定されるのが、今回レポートする「プチ・南アルプスステージステージ」だ。全長35kmというショートコースの中に、富士川エリアの絶景や地元のスイーツなどをギュギュっと詰め込み、初心者や脚力に自信のない方でも楽しむことができるように設定されたプレミアムライドである。
多くのロングライドイベントを取材してきた経験からすると、実はこういった短めのコースこそ楽しく走れることが多いもの。土曜日に2つの種目が開催されるこのイベントでは取材班も二つに分かれることとなるのだが、それとなく会話を誘導することでプチ・南アルプスステージ担当の座を手に入れることに2年連続で成功した私・ヤスオカが言うのだから間違いない。
そんな、ちょっとした根回しをしつつ迎えた大会当日。前日の天気予報では明け方から90%の降水確率という。かなり激しい降雨を覚悟しレインウェアを詰め込んだ車で、中央道から中部横断道を経由し、大会会場へ向かう。しかし、いつまでたっても雨が降り出す様子はなく、路面もドライのまま。ひょっとして、これは降らないままなのでは?という甘い期待を抱きつつ会場へ。
車を降りると東京よりもぐっと冷え込んだ空気が刺さる。だが、幸いにも雨は一滴も落ちてきていない。この時、会場に集まった皆さん、運営スタッフ、そしてもちろん取材で来ていた僕たちの思いはきっと一つだったに違いない。「このまま降らないでいてくれ」という祈りにも似た気持ちで一つになった会場は、既に開会式の前から奇妙な一体感で満ちていた。
また、NHKの人気番組「チャリダー」の取材や、山梨県の主要なサイクリングスポットで出会うことのできる「チャリたぬくん」像がスタートゲートに設置されていたこともあり、メイン会場となった道の駅富士川は昨年よりも一際賑わいを見せているように感じる。
第0エイドとして、サクサクの焼き菓子であるねじりがしとホットコーヒーが用意されるのも昨年同様。キンとした朝の冷気に、少し元気が持っていかれていたけれど、あまくてあったかいふるまいで心と身体にカロリーを再び取り戻す。走り出す準備はバッチリだ。
熱い、といえばこのイベントの開会式。主催者であるやまなしサイクルプロジェクトの青木理事のエネルギッシュな挨拶に始まり、言わずとしれた今中大介さんや2度の日本チャンピオンに輝いたプロデュアスリートのエース栗原さん、そしてチャリダーで坂バカ女子として活躍する佐藤綾衣さんらが登壇し、寒い空気を吹き飛ばすメッセージをプレゼントしてくれた。
80kmの白州・韮崎ステージへとチャレンジするみなさんを見送った後に、我ら「プチ・南アルプスステージ」もスタート。5つのグループに分かれて、35kmのショートトリップへと順次旅立っていくことに。
このイベントの特色とも言えるのが、各グループごとにサポートライダーが複数名帯同し、しっかりとアテンドしてくれること。20名ほどのグループでは、どうしても脚力の差が生まれるけれどもグループの最後尾にはしっかりとサポートしてくれるスタッフがいるので、道に迷う心配もないし何より安心できる。
少しばかりのアップダウンを越えていくと、鮮やかなオレンジの柿が吊り下げられた干し柿製造所が。ちょうど収穫した柿を干し始める時期だったようで、総出で作業中。皮を剥かれた柿は透き通るようで、そのままかぶりつきたい色合い。2つを紐で結ぶことで、バランスをとって吊り下げていくんだと教えてくれた。このみずみずしい柿がしわしわの干し柿になるというのだから不思議なものだ。
おばあちゃんたちにお礼を告げ、少し走ると一つ目のエイドステーションに到着。地元で高い人気を誇る洋菓子店「清月」自慢のイタリアンロールを筆頭に、どら焼きやお饅頭、草餅など和洋のスイーツを取り揃えて参加者を待ち受けているのだ。ここまで約10kmほどと、明らかにカロリーオーバーであるが細かいことは気にせず食べるのが正解。
ふわふわのスポンジとサッパリした甘さのクリームのイタリアンロールはするりと喉を通り過ぎ、胃の中へ。スイーツを堪能し終わった人から、再びグループを結成して走り出していく。今回、ゲストライダーである佐藤綾衣さんも、このプチ・南アルプスステージに参加しており、ここで同じグループに。
ここから先はフルーツ王国らしい果樹園の中をじわじわと標高を上げていく。遠くに大きなループ橋である桃花橋が見えるが、実はそこもコースの一部。しばらく行くと山側へのアプローチが現れる。斜度は8%ほどだが、距離が短い登りなので、見た目ほどはきつくない。ここでもサポートライダーがしっかりと伴走してくれることに変わりはなく、常に安心して走っていける。
ピークではいったん後続を待ち、グループごとにまとまって下っていく。つい先ほど見た桃花橋を下っていくのだが、晴れていれば富士山が見えるという絶景スポットなのだという。あいにくこの日は曇っており、富士山の美しい姿を目にすることは出来なかったが、ここまで雨が降っていないだけでも僥倖というもの、高望みは禁物だろう。と思っていたが、富士山は見えずとも霧がかった南アルプス市街の風景は非常に幻想的で、まるで山水画の世界へと迷い込んだような味わいがある。
一旦標高を下げるが、ここからは再び登り区間に。序盤はじわじわと登りつつ、最後に棚田の間をクイッと駆け上がるメリハリの効いた登りとなっている。少し九十九折気味になった最後の区間を踏み切れば、後は下るだけ。この登り区間も距離は短いので、なんなら押して歩いたって全然問題ない。
ピークから少し下った先にあるのが、第2エイドとなるほたるみ館。ここでは、地域のおばあちゃんたちが腕によりをかけて作ってくれたグルメを頂くことが出来る。味噌おでんやよもぎや小麦、ゆずを使ったお饅頭、名産のフルーツを使ったジャムが乗ったクラッカーなどなど、より取り見取り。そうそう、このほたるみ館にもチャリたぬ君がいるので、記念写真は押さえておきたいところ。
ほたるみ館でどこか懐かしの味わいを堪能したら、後はフィニッシュへと戻るだけ。下り基調で一気に距離を消化すればあっというまに道の駅富士川へと到着だ。幸いなことに、ここまで一滴も雨に降られることなく走り終えることが出来た。白州・韮崎ステージは、一時降られてしまうシーンもあったとのことで、一番「持っていた」のはプチ・南アルプスステージの参加者のみなさんだということになる。
ただ、雨に降られなかったとはいえ身体は下りで冷えてしまう。でも、会場にはあったかーい「みみ」が待っている。厚めのほうとうのような生地を三角形に折りたたんだような麺を煮込んだ「みみ」は冷えた身体がまさに求めていた一杯。次々にフィニッシュするみなさんが一口口にするたび、血色がよくなっていくようにも見えるほど。
最後はゲストたちのトークショーやチャリたぬくんグッズが当たるじゃんけん大会を楽しみ、1日目はお開きに。幻想的な風景とお腹いっぱいのスイーツで、幸せに浸れる35kmのプチ・南アルプスステージは、やっぱりどんな人にもオススメできる大満足のプレミアムライドであった。
text&photo:Naoki.YASUOKA
山梨県西部を南北に流れる富士川。その流域沿いに広がる、自然豊かなエリアで開催されるロングライドイベントが南アルプスロングライドである。中部横断自動車道、増穂ICからほど近い「道の駅富士川」を中心に、北を目指す「白州・韮崎ステージ」、南部の山岳地帯でアップダウンを楽しむ「ツール・ド・富士川ステージ」など、変化に富んだロケーションを活かしたコースが用意される2日間のイベントだ。
その中でも、最も短くイージーなコースとして設定されるのが、今回レポートする「プチ・南アルプスステージステージ」だ。全長35kmというショートコースの中に、富士川エリアの絶景や地元のスイーツなどをギュギュっと詰め込み、初心者や脚力に自信のない方でも楽しむことができるように設定されたプレミアムライドである。
多くのロングライドイベントを取材してきた経験からすると、実はこういった短めのコースこそ楽しく走れることが多いもの。土曜日に2つの種目が開催されるこのイベントでは取材班も二つに分かれることとなるのだが、それとなく会話を誘導することでプチ・南アルプスステージ担当の座を手に入れることに2年連続で成功した私・ヤスオカが言うのだから間違いない。
そんな、ちょっとした根回しをしつつ迎えた大会当日。前日の天気予報では明け方から90%の降水確率という。かなり激しい降雨を覚悟しレインウェアを詰め込んだ車で、中央道から中部横断道を経由し、大会会場へ向かう。しかし、いつまでたっても雨が降り出す様子はなく、路面もドライのまま。ひょっとして、これは降らないままなのでは?という甘い期待を抱きつつ会場へ。
車を降りると東京よりもぐっと冷え込んだ空気が刺さる。だが、幸いにも雨は一滴も落ちてきていない。この時、会場に集まった皆さん、運営スタッフ、そしてもちろん取材で来ていた僕たちの思いはきっと一つだったに違いない。「このまま降らないでいてくれ」という祈りにも似た気持ちで一つになった会場は、既に開会式の前から奇妙な一体感で満ちていた。
また、NHKの人気番組「チャリダー」の取材や、山梨県の主要なサイクリングスポットで出会うことのできる「チャリたぬくん」像がスタートゲートに設置されていたこともあり、メイン会場となった道の駅富士川は昨年よりも一際賑わいを見せているように感じる。
第0エイドとして、サクサクの焼き菓子であるねじりがしとホットコーヒーが用意されるのも昨年同様。キンとした朝の冷気に、少し元気が持っていかれていたけれど、あまくてあったかいふるまいで心と身体にカロリーを再び取り戻す。走り出す準備はバッチリだ。
熱い、といえばこのイベントの開会式。主催者であるやまなしサイクルプロジェクトの青木理事のエネルギッシュな挨拶に始まり、言わずとしれた今中大介さんや2度の日本チャンピオンに輝いたプロデュアスリートのエース栗原さん、そしてチャリダーで坂バカ女子として活躍する佐藤綾衣さんらが登壇し、寒い空気を吹き飛ばすメッセージをプレゼントしてくれた。
80kmの白州・韮崎ステージへとチャレンジするみなさんを見送った後に、我ら「プチ・南アルプスステージ」もスタート。5つのグループに分かれて、35kmのショートトリップへと順次旅立っていくことに。
このイベントの特色とも言えるのが、各グループごとにサポートライダーが複数名帯同し、しっかりとアテンドしてくれること。20名ほどのグループでは、どうしても脚力の差が生まれるけれどもグループの最後尾にはしっかりとサポートしてくれるスタッフがいるので、道に迷う心配もないし何より安心できる。
少しばかりのアップダウンを越えていくと、鮮やかなオレンジの柿が吊り下げられた干し柿製造所が。ちょうど収穫した柿を干し始める時期だったようで、総出で作業中。皮を剥かれた柿は透き通るようで、そのままかぶりつきたい色合い。2つを紐で結ぶことで、バランスをとって吊り下げていくんだと教えてくれた。このみずみずしい柿がしわしわの干し柿になるというのだから不思議なものだ。
おばあちゃんたちにお礼を告げ、少し走ると一つ目のエイドステーションに到着。地元で高い人気を誇る洋菓子店「清月」自慢のイタリアンロールを筆頭に、どら焼きやお饅頭、草餅など和洋のスイーツを取り揃えて参加者を待ち受けているのだ。ここまで約10kmほどと、明らかにカロリーオーバーであるが細かいことは気にせず食べるのが正解。
ふわふわのスポンジとサッパリした甘さのクリームのイタリアンロールはするりと喉を通り過ぎ、胃の中へ。スイーツを堪能し終わった人から、再びグループを結成して走り出していく。今回、ゲストライダーである佐藤綾衣さんも、このプチ・南アルプスステージに参加しており、ここで同じグループに。
ここから先はフルーツ王国らしい果樹園の中をじわじわと標高を上げていく。遠くに大きなループ橋である桃花橋が見えるが、実はそこもコースの一部。しばらく行くと山側へのアプローチが現れる。斜度は8%ほどだが、距離が短い登りなので、見た目ほどはきつくない。ここでもサポートライダーがしっかりと伴走してくれることに変わりはなく、常に安心して走っていける。
ピークではいったん後続を待ち、グループごとにまとまって下っていく。つい先ほど見た桃花橋を下っていくのだが、晴れていれば富士山が見えるという絶景スポットなのだという。あいにくこの日は曇っており、富士山の美しい姿を目にすることは出来なかったが、ここまで雨が降っていないだけでも僥倖というもの、高望みは禁物だろう。と思っていたが、富士山は見えずとも霧がかった南アルプス市街の風景は非常に幻想的で、まるで山水画の世界へと迷い込んだような味わいがある。
一旦標高を下げるが、ここからは再び登り区間に。序盤はじわじわと登りつつ、最後に棚田の間をクイッと駆け上がるメリハリの効いた登りとなっている。少し九十九折気味になった最後の区間を踏み切れば、後は下るだけ。この登り区間も距離は短いので、なんなら押して歩いたって全然問題ない。
ピークから少し下った先にあるのが、第2エイドとなるほたるみ館。ここでは、地域のおばあちゃんたちが腕によりをかけて作ってくれたグルメを頂くことが出来る。味噌おでんやよもぎや小麦、ゆずを使ったお饅頭、名産のフルーツを使ったジャムが乗ったクラッカーなどなど、より取り見取り。そうそう、このほたるみ館にもチャリたぬ君がいるので、記念写真は押さえておきたいところ。
ほたるみ館でどこか懐かしの味わいを堪能したら、後はフィニッシュへと戻るだけ。下り基調で一気に距離を消化すればあっというまに道の駅富士川へと到着だ。幸いなことに、ここまで一滴も雨に降られることなく走り終えることが出来た。白州・韮崎ステージは、一時降られてしまうシーンもあったとのことで、一番「持っていた」のはプチ・南アルプスステージの参加者のみなさんだということになる。
ただ、雨に降られなかったとはいえ身体は下りで冷えてしまう。でも、会場にはあったかーい「みみ」が待っている。厚めのほうとうのような生地を三角形に折りたたんだような麺を煮込んだ「みみ」は冷えた身体がまさに求めていた一杯。次々にフィニッシュするみなさんが一口口にするたび、血色がよくなっていくようにも見えるほど。
最後はゲストたちのトークショーやチャリたぬくんグッズが当たるじゃんけん大会を楽しみ、1日目はお開きに。幻想的な風景とお腹いっぱいのスイーツで、幸せに浸れる35kmのプチ・南アルプスステージは、やっぱりどんな人にもオススメできる大満足のプレミアムライドであった。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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