2017/10/14(土) - 09:06
山形県高畠町を起点に、周辺の4市町を舞台として開催されたグル麺ライド。4つのご当地麺を求めて、全国から500名が集まった、初開催のロングライドイベントの様子をレポートしましょう。
黄金色に染まる東北の道を駆け抜けた グル麺ライド2017
東京から山形新幹線で米沢へ、そして在来線へ乗り換えて2駅の高畠駅へ。西洋風のお城のような装飾が特徴的な駅舎の下で、輪行してきた自転車を組み立てる。他にも同じように自転車を組む人がちらほら。東京から約3時間、「グル麺ライド」へ参加するために集まったサイクリストだ。
「グル麺ライド」とは山形県と宮城県にまたがる4つの市町を舞台に、今年初開催となるロングライドイベント。約120㎞、獲得標高1,500mの走り応えのあるコースと、それぞれの地域のご当地「麺」を味わうというコンセプト、また地元出身の土井雪広選手が登場するユニークなストーリー仕立てのPVも相まって、初回大会ながらも何かと話題になっていたイベントだ。
スタート会場は高畠町の文化ホールまほら
朝顔が参加者を見守ってくれていた
土井雪広選手のファンが集まったチームも参加
各地で様々なロングライドイベントが開催され、その魅力を競い合っている2017年。世はまさにロングライド戦国時代の様相を呈している中で、グル麺ライドは初回大会ながらも定員に達したという。しかも、なんと沖縄からの参加者までいるのだとか。そんな前評判に高い期待を抱きつつ、山形新幹線へ愛車と共に乗り込んだ。
標準軌の台車に在来線の特急サイズの車体を載せている、いわゆる「ミニ新幹線」方式のため、座席は左右に2列ずつの配置となっているため、輪行時にはデッキに用意されたスキー板などを置く荷物置き場を利用すると邪魔になりづらいはず。秋田新幹線なども同じミニ新幹線なので、覚えておくといいだろう。
エイドステーションでスタンプを押してもらうカードをゲット
スタート前に皆さんで一枚!
10人くらいのグループでスタートしていく
さて、そんなこんなで米沢に前泊。もちろん夕食は米沢牛に舌鼓を打ち、そのとろける甘さに悶絶。どうせ明日は120kmも走るのだから、と〆にカレーまで注文し、山形の夜を満喫して翌日の大会当日を迎えることに。ちなみに私が編集部に入ってから一番充実した取材前夜だったことをここに記しておこう。
幸せに包まれた翌朝、スタート会場となる高畠町文化ホールまほらへ。朝早くから、既に多くのサイクリストが集まり、出走準備を整えている。受付では、ゼッケンと合わせてスタンプカードをゲット。このカードに各エイドでスタンプを押してもらい、それぞれの「グル麺」と引き換えてもらうという、今大会きっての重要書類である。なので、バックポケットでシオシオにならないように、ツール缶へと厳重に収納することに。
田園風景の中を行く
メカトラブルが起きてもサポートライダーがいてくれるので安心だ
まつたけ山へ向かっていく
もう少しで山頂ですよ!
ピークには悪魔おじさんが!
スタート前には前述のプロモーションビデオに出演していた美女ライダーことモデルの大浦育子さんも登場、その美貌で参加者の皆さんからツーショットをお願いされることしばし。ちょっとした撮影会の様になっているのをお手伝いなんかしていると、スタート時刻がやってくる。
15人くらいの小グループごとで、4つの麺をもとめて走り出していく。グループごとにサポートライダーがついてくれているので、トラブルの際も安心できるはず。高畠の町を通り過ぎると、早速一つ目の登りへ突入。日本でも珍しく誰でも松茸狩りを楽しめる「稲子まつたけ山」を登っていく。ちなみに自転車乗りも朝が早いけれど、松茸狩りはもっと早起きが必要とのことだ。
下り途中で見つけたのは日本の原風景ともいえそうな景色だった
山形の道路の横は彩りに満ちている
朝もやがかかる山々
豊かに実った稲穂の海の横を行く
少し色づき始めた山の中を息を荒げながら登っていく。3kmほどとそこまで長い登りではないのでペースを守って登れば、ピークはすぐそこだ。山頂には日本全国のロングライドイベントに出没する日本版悪魔おじさんの応援に力をもらって最後の一踏み。下りの途中には、いかにも日本の原風景といったパノラマが広がり、思わず立ち止まって写真を撮る方も。爽快な下りをこなせば、道はしばらく平坦基調に。
辺り一面に広がるのは、黄金色に色づき始めた田圃。降り注ぐ朝陽によって、きらきら輝く稲穂に美しさと食欲を感じてしまう。無性におにぎりが食べたくなった私の目の前に現れるのは宮城県へと繋がる二つ目の坂。整備されバイパス然とした七ヶ宿街道を使い県境を越えていく。
宮城県へ向かって標高を上げていく
片側交通規制がかけられており、暗いトンネルでも安心だ
サポートライダーがペースを作ってくれる
ループ橋からは走ってきたエリアを見下ろすことができた
5kmほどで距離としてはこの大会で最も長い登りとなる七ヶ宿街道のヒルクライム。とはいえ全体的に勾配は緩やかなのでビギナーでも全く問題なく登れるはず。途中にはループ橋も登場し、眼下に高畠町の街並みを望みつつ走っていく。山形県と宮城県を結ぶ主要な国道ということもあり、途中には長めのトンネルが3つ登場するのだが、なんとその3つ全てに片側交通規制がかけられているのには驚いた。
やはり暗いトンネル、しかも登り勾配で長いとあっては走りなれたサイクリストにとっても恐ろしく感じるもの。むしろベテランライダーほど普段はそういった危険箇所を通らないルーティングをしているだけに、この配慮はありがたく感じるハズ。もちろん、ビギナーにとっては言わずもがなだろう。
七ヶ宿へようこそ!
最初の休憩ポイント くらけんcafeへ到着
瑞々しい林檎が待っていました
古民家を利用したくらけんcafe
トンネルの前に形成された自動車の列に対して、すこし申し訳なさを感じつつもテールライトを点灯し、トンネルを走っていく。普段なら神経を張りつめるトンネル区間を、今日この日だけは自転車専用レーンの様に気兼ねなく走り、出口をくぐるとそこは宮城県。
県境の街、七ヶ宿町を貫く国道は緩やかな下り基調で、程よいトルクをペダルに感じつつどんどん距離を消化していく。スタートから大体1時間半ほど経ち、そろそろ小腹が空いてきたかな?というときに、一つ目の休憩ポイントが姿を現した。国道沿いの古民家カフェ「くらけんcafe」では、瑞々しい林檎とあったかいコーヒーが用意され、ここまでの登りで削られた体力をリカバーできる。
秋らしいコスモスの花の横を走り抜ける
農業用の重機とすれ違うシーンも
茅葺の古民家の前を通っていく
おばあちゃんたちが応援してくれる、東京から来たんですよ、と言うと喜んでくれるのだ。ただ東京から来ただけなのに。それだけなのに。
ほっと一息ついたところで気を取り直し、再度出発。目指すは10kmほど先の第一エイド(この大会では麺がでるのがエイドステーションなのだ)、道の駅七ヶ宿である。白石川の流れを右手に見つつ、七ヶ宿街道をしばらく行けば、お待ちかねの第一エイドに到着だ。
宮城県の水がめとして建設された七ヶ宿ダムを一望できる道の駅で、スタンプカードに一つ目のスタンプを押してもらったら、いよいよお待ちかねの「グル麺」とご対面!このエイドで用意されているのは、七ヶ宿名物の蕎麦。町内にはいくつもの蕎麦屋が並んでいるのを走りながら見てきたのと、結構お腹が減ってきたのとで期待感はマックス。
第1エイドの道の駅七ヶ宿
でも、一方で「そうはいっても、まあサイクリング大会の蕎麦でしょ……、そんな大したものは出てこないだろう」と、ついついネガティブにもなってしまう。だって、何百人もの蕎麦を大量に用意するとなったら、手間も掛かる打ち立て蕎麦が用意される可能性は限りなくゼロである。
そんな相反する感情に苛まれながら、地元のお姉さんから手渡された蕎麦を見れば、これがおいしそうなこと。しっかりとエッジが立った切り口、蕎麦粉に自信のある郷土蕎麦らしい太めの麺で口にする前から期待大。さて、つゆに付けていただくと、太麺らしい噛み応えのあるコシと口いっぱいに広がる蕎麦粉の香りが最高のコンビネーションを演じてくれる。つゆの塩分を気にせずに頂けるのは、ここまで走ってきたサイクリストならではの恩恵でもある。蕎麦がでるロングライドイベントは多くあるけれど、ナンバーワンの蕎麦でございました。
こちらがグル麺第一号、七ヶ宿の蕎麦である
栄えある一つ目のスタンプをゲット!
うまーい!こちらのお二方も思わず笑顔に
正直、この蕎麦を食べてしまったら、残る3つのエイドで供される予定のグル麺たちへかかる期待は否が応でも上がろうというもの。次のエイドではどんな麺が待っているのか、居ても立っても居られなくなり、次のエイドヘとペダルを回し始めるのであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka

東京から山形新幹線で米沢へ、そして在来線へ乗り換えて2駅の高畠駅へ。西洋風のお城のような装飾が特徴的な駅舎の下で、輪行してきた自転車を組み立てる。他にも同じように自転車を組む人がちらほら。東京から約3時間、「グル麺ライド」へ参加するために集まったサイクリストだ。
「グル麺ライド」とは山形県と宮城県にまたがる4つの市町を舞台に、今年初開催となるロングライドイベント。約120㎞、獲得標高1,500mの走り応えのあるコースと、それぞれの地域のご当地「麺」を味わうというコンセプト、また地元出身の土井雪広選手が登場するユニークなストーリー仕立てのPVも相まって、初回大会ながらも何かと話題になっていたイベントだ。



各地で様々なロングライドイベントが開催され、その魅力を競い合っている2017年。世はまさにロングライド戦国時代の様相を呈している中で、グル麺ライドは初回大会ながらも定員に達したという。しかも、なんと沖縄からの参加者までいるのだとか。そんな前評判に高い期待を抱きつつ、山形新幹線へ愛車と共に乗り込んだ。
標準軌の台車に在来線の特急サイズの車体を載せている、いわゆる「ミニ新幹線」方式のため、座席は左右に2列ずつの配置となっているため、輪行時にはデッキに用意されたスキー板などを置く荷物置き場を利用すると邪魔になりづらいはず。秋田新幹線なども同じミニ新幹線なので、覚えておくといいだろう。



さて、そんなこんなで米沢に前泊。もちろん夕食は米沢牛に舌鼓を打ち、そのとろける甘さに悶絶。どうせ明日は120kmも走るのだから、と〆にカレーまで注文し、山形の夜を満喫して翌日の大会当日を迎えることに。ちなみに私が編集部に入ってから一番充実した取材前夜だったことをここに記しておこう。
幸せに包まれた翌朝、スタート会場となる高畠町文化ホールまほらへ。朝早くから、既に多くのサイクリストが集まり、出走準備を整えている。受付では、ゼッケンと合わせてスタンプカードをゲット。このカードに各エイドでスタンプを押してもらい、それぞれの「グル麺」と引き換えてもらうという、今大会きっての重要書類である。なので、バックポケットでシオシオにならないように、ツール缶へと厳重に収納することに。





スタート前には前述のプロモーションビデオに出演していた美女ライダーことモデルの大浦育子さんも登場、その美貌で参加者の皆さんからツーショットをお願いされることしばし。ちょっとした撮影会の様になっているのをお手伝いなんかしていると、スタート時刻がやってくる。
15人くらいの小グループごとで、4つの麺をもとめて走り出していく。グループごとにサポートライダーがついてくれているので、トラブルの際も安心できるはず。高畠の町を通り過ぎると、早速一つ目の登りへ突入。日本でも珍しく誰でも松茸狩りを楽しめる「稲子まつたけ山」を登っていく。ちなみに自転車乗りも朝が早いけれど、松茸狩りはもっと早起きが必要とのことだ。




少し色づき始めた山の中を息を荒げながら登っていく。3kmほどとそこまで長い登りではないのでペースを守って登れば、ピークはすぐそこだ。山頂には日本全国のロングライドイベントに出没する日本版悪魔おじさんの応援に力をもらって最後の一踏み。下りの途中には、いかにも日本の原風景といったパノラマが広がり、思わず立ち止まって写真を撮る方も。爽快な下りをこなせば、道はしばらく平坦基調に。
辺り一面に広がるのは、黄金色に色づき始めた田圃。降り注ぐ朝陽によって、きらきら輝く稲穂に美しさと食欲を感じてしまう。無性におにぎりが食べたくなった私の目の前に現れるのは宮城県へと繋がる二つ目の坂。整備されバイパス然とした七ヶ宿街道を使い県境を越えていく。




5kmほどで距離としてはこの大会で最も長い登りとなる七ヶ宿街道のヒルクライム。とはいえ全体的に勾配は緩やかなのでビギナーでも全く問題なく登れるはず。途中にはループ橋も登場し、眼下に高畠町の街並みを望みつつ走っていく。山形県と宮城県を結ぶ主要な国道ということもあり、途中には長めのトンネルが3つ登場するのだが、なんとその3つ全てに片側交通規制がかけられているのには驚いた。
やはり暗いトンネル、しかも登り勾配で長いとあっては走りなれたサイクリストにとっても恐ろしく感じるもの。むしろベテランライダーほど普段はそういった危険箇所を通らないルーティングをしているだけに、この配慮はありがたく感じるハズ。もちろん、ビギナーにとっては言わずもがなだろう。




トンネルの前に形成された自動車の列に対して、すこし申し訳なさを感じつつもテールライトを点灯し、トンネルを走っていく。普段なら神経を張りつめるトンネル区間を、今日この日だけは自転車専用レーンの様に気兼ねなく走り、出口をくぐるとそこは宮城県。
県境の街、七ヶ宿町を貫く国道は緩やかな下り基調で、程よいトルクをペダルに感じつつどんどん距離を消化していく。スタートから大体1時間半ほど経ち、そろそろ小腹が空いてきたかな?というときに、一つ目の休憩ポイントが姿を現した。国道沿いの古民家カフェ「くらけんcafe」では、瑞々しい林檎とあったかいコーヒーが用意され、ここまでの登りで削られた体力をリカバーできる。




ほっと一息ついたところで気を取り直し、再度出発。目指すは10kmほど先の第一エイド(この大会では麺がでるのがエイドステーションなのだ)、道の駅七ヶ宿である。白石川の流れを右手に見つつ、七ヶ宿街道をしばらく行けば、お待ちかねの第一エイドに到着だ。
宮城県の水がめとして建設された七ヶ宿ダムを一望できる道の駅で、スタンプカードに一つ目のスタンプを押してもらったら、いよいよお待ちかねの「グル麺」とご対面!このエイドで用意されているのは、七ヶ宿名物の蕎麦。町内にはいくつもの蕎麦屋が並んでいるのを走りながら見てきたのと、結構お腹が減ってきたのとで期待感はマックス。

でも、一方で「そうはいっても、まあサイクリング大会の蕎麦でしょ……、そんな大したものは出てこないだろう」と、ついついネガティブにもなってしまう。だって、何百人もの蕎麦を大量に用意するとなったら、手間も掛かる打ち立て蕎麦が用意される可能性は限りなくゼロである。
そんな相反する感情に苛まれながら、地元のお姉さんから手渡された蕎麦を見れば、これがおいしそうなこと。しっかりとエッジが立った切り口、蕎麦粉に自信のある郷土蕎麦らしい太めの麺で口にする前から期待大。さて、つゆに付けていただくと、太麺らしい噛み応えのあるコシと口いっぱいに広がる蕎麦粉の香りが最高のコンビネーションを演じてくれる。つゆの塩分を気にせずに頂けるのは、ここまで走ってきたサイクリストならではの恩恵でもある。蕎麦がでるロングライドイベントは多くあるけれど、ナンバーワンの蕎麦でございました。



正直、この蕎麦を食べてしまったら、残る3つのエイドで供される予定のグル麺たちへかかる期待は否が応でも上がろうというもの。次のエイドではどんな麺が待っているのか、居ても立っても居られなくなり、次のエイドヘとペダルを回し始めるのであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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