2017/07/01(土) - 09:18
ヨーロッパから多くの魅力的なブランドを紹介するポディウムが、スペインのバスクに拠点を置く老舗バイクブランドのオルベアと、ドイツのスーパーハイエンドホイールブランド、ライトウェイトの展示会を開催。新モデルがお披露目される貴重な機会となった。
東京都品川区天王洲アイルにて開催されたポディウム展示会。多くのブランドを取り扱う同社は、昨年より個々のブランドにフォーカスした小規模な展示会、そして「ポディウムキャンプ」と名付けた試乗ライドイベントを行っている。今回の展示会でスポットがあてられたのは、スペインの総合バイクブランド、オルベアと、ドイツのカーボン専業ブランド、ライトウェイトの2つだ。
会場となったのは天王洲アイルの再開発に大きな影響を与えた寺田倉庫が運営するアートホール、「T-ART HALL」。オルベアとライトウェイトのバナーが掲げられた入り口から2階へと入ると、アーティスティックな空間が広がる中に、2018年のオルベア、そしてライトウェイトの新作がずらりと並べられていた。
オルベアは、昨年発表されたフラッグシップモデル、ORCA OMRを筆頭に、ORCA OMPやAVANTといったロードバイクが充実。特に目を引いたのは、鮮やかなカラーリングに彩られたシクロクロスバイク、TERRAだ。MTBも手掛ける総合ブランドであるオルベアのノウハウが込められたシクロクロスバイクは、いかにも走りそうなオーラ―を漂わせた一台だ。
あまり知られていないかもしれないが、オルベアオリジナルのオーダーシステム、”MyO”(マイオー)もブランドの魅力を底上げしている存在だ。ORCA OMRやTERRA、TTバイクのORDU OMPが対応しているこのシステムは、4つのエリアとロゴをそれぞれ好みのカラーにペイントすることが出来るというもの。会場には、MyOにてペイントされたORCA OMRが並べられ、その自由度を目で確かめることも。
「究極の回転体」という異名を持つライトウェイトは、同社初となるディスクブレーキ用フレーム、URGESTALT Discをお披露目。近年、MEILENSTEIN DISCやWEGWEISER CLINCHER DISCといったディスクブレーキ対応ホイールを立て続けに発表する流れを加速させる発表となった。
また、オルベア、ライトウェイトともに本国から担当者が来日。オルベアはロード部門の責任者ヨゼバ・アリザガ氏、営業部長のウナイ・ディエゴ氏、ライトウェイトからは営業部長のデイビッド・バーグマン氏がそれぞれのブランドについてのヒストリーやプロダクトの紹介を行った。
アリザガ氏によれば、オルベアは過去5年間で24%もロードバイクのセールスが伸びているという。中でも、ハイエンドバイクの比率が高いことが特徴で、ORCA OMRは77%もの伸びを見せているのだとか。また、ディスクブレーキバイクの伸びも顕著で、昨年比で37%も出荷台数が増加したという。
その成長要因の一つとして「女性ライダーへの対応」を進めているからだと説明する。他ブランドの多くが女性専用モデルやブランドを立ち上げる中で、オルベアはそういったモデルを用意していないことをご存じの読者も多いだろう。しかし、実際のところオルベアはラインアップの中で非常に幅広いサイズ展開をすることにより、小柄な女性ライダーにも乗りやすい自転車を用意しているのだという。
「男性と女性、2つのグループの間で、それぞれの専用ジオメトリーが必要になるほど大きな違いというものはありませんでした。」とサポートするコフィディスの男性選手とユナイテッドヘルスケアの女子選手らのデータをもとに、アリザガ氏は説明する。「ポジションの多様性でいえば、男性間でのバラツキのほうが男女間でのそれよりも大きいくらいです。なので、オルベアが用意するバイクはサイズごとにリーチとスタックが比例するように増減するジオメトリーを採用しています」と専用モデルを用意しない理由を説明した。
そして、サプライズとして新型バイクの発表も行われることに。ORCA AEROと名付けられた新バイクがお披露目され、来場者の注目を一斉に集めることに。チームからの要望を形にしたというニューマシンの詳細は、CW上でもおって発表する予定なのでお楽しみに。
一方、ライトウェイトのプレゼンテーションでは製品開発にまつわるユニークなエピソードも語られた。ここ最近ディスクブレーキホイールへの対応を急務とするライトウェイトだが、その開発時期に同郷のブレーキメーカー・マグラからテスト用ホイールの協力依頼が来たのだという。
「彼らのディスクブレーキをテストするために、用意された多くのホイールが500回ほどのフルブレーキングテストで壊れてしまったのだ、というのです。ハイエンドのホイールでも700回程度が限界だったと。ちょうどディスクブレーキホイールの開発をしていたところだったので、1セットを彼らに送りました。しばらくして彼らから連絡がきたのです。『2000回のテストを終えたが壊れる気配がない、時間がかかるが壊れるまでテストするつもりだ』と。それから時間が経ち、再び届いた連絡は『18000回のテストを行ったが、破壊は不可能だった。』とテストの中止を知らせるものだったのです」と、ライトウェイトのホイールがいかに耐久性に優れているかを物語るエピソードを披露してくれた。
また、ディスクブレーキホイールに採用される五角形の「ペンタゴンハブ」の理由も、「ローターで発生する熱がハブに伝わるとカーボンが剥離する恐れがある。万が一カーボンが剥離してしまっても、ハブボディーとかみ合っているように丸断面ではなく、五角形にしているんだ」とも。
そこまでディスクブレーキホイールへと注力するのは、ディスクブレーキにとってカーボンスポークがハブとリムを直結するライトウェイトの構造が理想的だからだと、バーグマン氏。「テンション式のスポークホイールだと、ハブで発生した制動力をリムに伝えるために、スポークがたわむというアクションが挟まります。ですがライトウェイトはすべてが一体化されており、極めてダイレクトなフィーリングを得ることが出来るのです」と説明する。
また、ライトウェイトの特徴の一つがカーボンスポーク同士の結線。その目的については「大きな理由は2つあります。1つはカーボンスポーク同士がこすれることを防ぐこと。もう1つが剛性の向上です。スポーク同士を結び付け、固定することで、スポークのしなり量を少なくすることが出来るので、結果的に剛性の向上が期待できると考えています」と語ってくれた。
うわべだけではなく、真摯に各バイクを開発するオルベア、そして走行性能だけではなく、安全性や強度といった実用面でも大きなアドバンテージを持つライトウェイトの姿勢を垣間見ることが出来る貴重な機会となった、ポディウム展示会。次回の展示会は強豪レーサーたちに愛されるフレンチブランド、タイムの予定となっている。お楽しみに。
text&photo:Naoki.YASUOKA
東京都品川区天王洲アイルにて開催されたポディウム展示会。多くのブランドを取り扱う同社は、昨年より個々のブランドにフォーカスした小規模な展示会、そして「ポディウムキャンプ」と名付けた試乗ライドイベントを行っている。今回の展示会でスポットがあてられたのは、スペインの総合バイクブランド、オルベアと、ドイツのカーボン専業ブランド、ライトウェイトの2つだ。
会場となったのは天王洲アイルの再開発に大きな影響を与えた寺田倉庫が運営するアートホール、「T-ART HALL」。オルベアとライトウェイトのバナーが掲げられた入り口から2階へと入ると、アーティスティックな空間が広がる中に、2018年のオルベア、そしてライトウェイトの新作がずらりと並べられていた。
オルベアは、昨年発表されたフラッグシップモデル、ORCA OMRを筆頭に、ORCA OMPやAVANTといったロードバイクが充実。特に目を引いたのは、鮮やかなカラーリングに彩られたシクロクロスバイク、TERRAだ。MTBも手掛ける総合ブランドであるオルベアのノウハウが込められたシクロクロスバイクは、いかにも走りそうなオーラ―を漂わせた一台だ。
あまり知られていないかもしれないが、オルベアオリジナルのオーダーシステム、”MyO”(マイオー)もブランドの魅力を底上げしている存在だ。ORCA OMRやTERRA、TTバイクのORDU OMPが対応しているこのシステムは、4つのエリアとロゴをそれぞれ好みのカラーにペイントすることが出来るというもの。会場には、MyOにてペイントされたORCA OMRが並べられ、その自由度を目で確かめることも。
「究極の回転体」という異名を持つライトウェイトは、同社初となるディスクブレーキ用フレーム、URGESTALT Discをお披露目。近年、MEILENSTEIN DISCやWEGWEISER CLINCHER DISCといったディスクブレーキ対応ホイールを立て続けに発表する流れを加速させる発表となった。
また、オルベア、ライトウェイトともに本国から担当者が来日。オルベアはロード部門の責任者ヨゼバ・アリザガ氏、営業部長のウナイ・ディエゴ氏、ライトウェイトからは営業部長のデイビッド・バーグマン氏がそれぞれのブランドについてのヒストリーやプロダクトの紹介を行った。
アリザガ氏によれば、オルベアは過去5年間で24%もロードバイクのセールスが伸びているという。中でも、ハイエンドバイクの比率が高いことが特徴で、ORCA OMRは77%もの伸びを見せているのだとか。また、ディスクブレーキバイクの伸びも顕著で、昨年比で37%も出荷台数が増加したという。
その成長要因の一つとして「女性ライダーへの対応」を進めているからだと説明する。他ブランドの多くが女性専用モデルやブランドを立ち上げる中で、オルベアはそういったモデルを用意していないことをご存じの読者も多いだろう。しかし、実際のところオルベアはラインアップの中で非常に幅広いサイズ展開をすることにより、小柄な女性ライダーにも乗りやすい自転車を用意しているのだという。
「男性と女性、2つのグループの間で、それぞれの専用ジオメトリーが必要になるほど大きな違いというものはありませんでした。」とサポートするコフィディスの男性選手とユナイテッドヘルスケアの女子選手らのデータをもとに、アリザガ氏は説明する。「ポジションの多様性でいえば、男性間でのバラツキのほうが男女間でのそれよりも大きいくらいです。なので、オルベアが用意するバイクはサイズごとにリーチとスタックが比例するように増減するジオメトリーを採用しています」と専用モデルを用意しない理由を説明した。
そして、サプライズとして新型バイクの発表も行われることに。ORCA AEROと名付けられた新バイクがお披露目され、来場者の注目を一斉に集めることに。チームからの要望を形にしたというニューマシンの詳細は、CW上でもおって発表する予定なのでお楽しみに。
一方、ライトウェイトのプレゼンテーションでは製品開発にまつわるユニークなエピソードも語られた。ここ最近ディスクブレーキホイールへの対応を急務とするライトウェイトだが、その開発時期に同郷のブレーキメーカー・マグラからテスト用ホイールの協力依頼が来たのだという。
「彼らのディスクブレーキをテストするために、用意された多くのホイールが500回ほどのフルブレーキングテストで壊れてしまったのだ、というのです。ハイエンドのホイールでも700回程度が限界だったと。ちょうどディスクブレーキホイールの開発をしていたところだったので、1セットを彼らに送りました。しばらくして彼らから連絡がきたのです。『2000回のテストを終えたが壊れる気配がない、時間がかかるが壊れるまでテストするつもりだ』と。それから時間が経ち、再び届いた連絡は『18000回のテストを行ったが、破壊は不可能だった。』とテストの中止を知らせるものだったのです」と、ライトウェイトのホイールがいかに耐久性に優れているかを物語るエピソードを披露してくれた。
また、ディスクブレーキホイールに採用される五角形の「ペンタゴンハブ」の理由も、「ローターで発生する熱がハブに伝わるとカーボンが剥離する恐れがある。万が一カーボンが剥離してしまっても、ハブボディーとかみ合っているように丸断面ではなく、五角形にしているんだ」とも。
そこまでディスクブレーキホイールへと注力するのは、ディスクブレーキにとってカーボンスポークがハブとリムを直結するライトウェイトの構造が理想的だからだと、バーグマン氏。「テンション式のスポークホイールだと、ハブで発生した制動力をリムに伝えるために、スポークがたわむというアクションが挟まります。ですがライトウェイトはすべてが一体化されており、極めてダイレクトなフィーリングを得ることが出来るのです」と説明する。
また、ライトウェイトの特徴の一つがカーボンスポーク同士の結線。その目的については「大きな理由は2つあります。1つはカーボンスポーク同士がこすれることを防ぐこと。もう1つが剛性の向上です。スポーク同士を結び付け、固定することで、スポークのしなり量を少なくすることが出来るので、結果的に剛性の向上が期待できると考えています」と語ってくれた。
うわべだけではなく、真摯に各バイクを開発するオルベア、そして走行性能だけではなく、安全性や強度といった実用面でも大きなアドバンテージを持つライトウェイトの姿勢を垣間見ることが出来る貴重な機会となった、ポディウム展示会。次回の展示会は強豪レーサーたちに愛されるフレンチブランド、タイムの予定となっている。お楽しみに。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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