5月13日から14日にかけて開催されたグランフォンド軽井沢。グルメフォンドや2日間でコースを巡るハーフ&ハーフなど様々な種目が目白のサイクリングイベントだが、2日目には大会名を冠するメインイベント「グランフォンド軽井沢」が開催された。124.1kmにも及ぶ山岳グランフォンドの様子をCW編集部の実走レポートでお届けしよう。



霧が立ち込める中、今年もグランフォンド軽井沢が始まった霧が立ち込める中、今年もグランフォンド軽井沢が始まった
中山道の宿場として古くから栄え、その標高の高さから避暑地として知られる軽井沢。明治以降には多くの外国人が訪れ、西洋の文化を伝えたこともあり、洋風の建築や食が楽しめる日本三大外国人避暑地としても有名だ。

そんな国内有数のリゾート地で開催されるのがグランフォンド軽井沢だ。GWの翌週、5月13日、14日に開催されたこの大会は、地元の美味しい特産品を頂くグルメフォンドや1泊2日でコースを辿るハーフ&ハーフなど様々な種目が盛りだくさんのサイクルイベント。その中でもメインイベントとして開催されるのが国内屈指の山岳ロングライド「グランフォンド軽井沢」だ。

距離124.1km、獲得標高2,424mというコースプロフィールを誇るグランフォンド軽井沢。そのコースは軽井沢プリンスホテルスキー場をスタートして、キャベツが有名な群馬県の高原地帯、嬬恋まで北上。その後、巷で人気の戦国武将、真田家のお城である上田城があった上田市を経由して軽井沢まで戻ってくるというレイアウト。コース中央には浅間山を据え、その麓にいくつもあるアップダウンをひたすら登っては下るという過酷なものだ。

今年から新設されたスーパーグランフォンドの一般部門チャレンジグランフォンド部隊今年から新設されたスーパーグランフォンドの一般部門チャレンジグランフォンド部隊 千葉大サイクリング部のメンバーで参加しているという千葉大サイクリング部のメンバーで参加しているという

そんなグランフォンド軽井沢であるが、CW編集部では実走取材を毎年敢行。グランツールの山岳ステージと比べても遜色ない高低差に、「今年こそ天気もあまり良くないみたいだし車両での取材にするか」というテンプレート議論はあるものの、やはり今年も実走レポートを書くこととなった。

ということでやってきたグランフォンド軽井沢。2日間通した人気のイベントということで前日にはグルメフォンドの取材をしたCW編集部はスタート地点近くの宿に宿泊。早朝6時出走という時間に合わせ、朝4時半に起床することに。準備をし宿屋のフロントに降りるとサイクルジャージを着た人多く見かける。そういった普段とは違う雰囲気に会場に行く前から気分が高まる。

外に出ると空は深い灰色に包まれた曇り。前日も雨の中のグルメフォンド開催となったこともあり、予想はしていたものの、いつ雨が降ってもおかしくはないというところだ。一応天気予報では昼以降にかけて晴れていくという予報は出ているものの、どんな取材になってしまうのか一抹に不安を覚えつつも会場に向かう。

去年に引き続きスーパーグランフォンド隊も出撃去年に引き続きスーパーグランフォンド隊も出撃 長野のご当地アイドル「パラレルドリーム」に見送られてスタート長野のご当地アイドル「パラレルドリーム」に見送られてスタート


会場に到着すると既に多くのサイクリストが集結。6時出走という事もありスタート待機列の形成が始まろうかというところであったが、出走グループはゼッケンの色で割り当てられており、早い者勝ちではない。そのためみな気持ちに余裕を持って準備を進めることが出来ているようだ。

メインステージでは長野のご当地アイドル「パラレルドリーム」が昨日に引き続き会場を盛り上げる。6月21日にメジャーデビューを控えるという彼女らは、2日間曇り気味の天候で参加者の気分が落ち込む中、何十曲も会場のBGM代わりに歌い続けてくれた今大会の盛り上げ担当だ。

アウェーの中全力で踊り歌ってくれた「パラレルドリーム」のライブが終わると続いて行われたのが開会式。ここでは大会関係者の挨拶に加え、昨年から追加された距離173.4km、獲得標高3,874mにも及ぶ「スーパーグランフォンド軽井沢」の招待ライダーが紹介された。なお今年からは「チャレンジグランフォンド軽井沢」と称して一般ライダーの参加も出来るようになっており、脚に自信のあるライダー達もハードコースを走るという。

旧軽井沢の町並みを駆け抜ける旧軽井沢の町並みを駆け抜ける 途中旧三笠ホテル前を通過する途中旧三笠ホテル前を通過する

落葉松の立ち並ぶ三笠通りを行く落葉松の立ち並ぶ三笠通りを行く 普段は自転車が通ることが出来ない「白糸ハイランドウェイ」を登る普段は自転車が通ることが出来ない「白糸ハイランドウェイ」を登る


そんな豪脚達を先頭にグランフォンド軽井沢がスタート。直前に発生しだした霧の中を30人程度のウェーブに分かれて順次出走していく。旧軽井沢の町並みを抜け、落葉松立ち並ぶ三笠通りを走り抜けると現れるのが、白糸ハイランドウェイの登り。

普段は自転車で走ることが出来ない全長9.4km、平均斜度4.2%の登りは、このグランフォンド軽井沢のためだけに特別に開放される区間だ。いつもは車でしか通れない道とあって自然豊かな登坂路を楽しみながら登りたいところだが、最大15%ほどに及ぶ激坂が参加者に襲い掛かる。

最初の500mが斜度15%にも及ぶ激坂だ最初の500mが斜度15%にも及ぶ激坂だ
開始10分で押して歩かざる得ない状況に開始10分で押して歩かざる得ない状況に 清流の脇を駆け上がる清流の脇を駆け上がる


大会公式パンフレットにも「ここで脚を使うと終日苦労する」の注意書きがあるほどで、開始10分も経っていないにも関わらずバイクを降り押し歩く人が沢山いる過酷さだ。かくいう私はメディアたる誇りを胸に全て乗車でクリアしたが、これが全ての元凶であったように思える。

そのままギアをインナーローにし登っていくと、7km地点に現れるのが草軽交通白糸の滝店。群馬県の草津温泉と軽井沢を結ぶ路線バスを運行している草軽交通の売店だ。まだ登りが終わったわけではないが一段落するため、トイレに行ったり仲間を待ったりと多くの人が休憩するポイントだ。もちろん150mほど歩くと有名な観光地「白糸の滝」があるため少し足を延ばして見に行くのも良いだろう。

コースに戻り、白糸ハイランドウェイの頂点まで登る。普段は自転車とは縁の無い有料道路の料金所をくぐり抜け、一般道に出るとそのまま第1エイドステーションまでダウンヒルだ。ここからは交通規制のない一般道となるため、普段のサイクリング通り自動車と共存しながら走ることとなる。サイクルイベントということで気持ちが高ぶり車線の中央に寄ってしまったりしまいがちだが、そこはマナーとルールを守り車も自転車も気持ち良く走れるよう注意しよう。

ここまで登ってきた記念に写真撮影だここまで登ってきた記念に写真撮影だ 途中現れる草軽交通白糸の滝店は最初の休憩スポット途中現れる草軽交通白糸の滝店は最初の休憩スポット

普段は通れない有料道路の料金所を通過普段は通れない有料道路の料金所を通過 ヨーグルトとハード系チーズを手に嬉しそうな編集部カマタヨーグルトとハード系チーズを手に嬉しそうな編集部カマタ


ウインドブレーカーを着るタイミングを失い、少し凍えながら下っていくと、待ちに待った第1エイドステーションである浅間ハイランドパークに到着。ここではバナナなどの定番補給食に加え、群馬県の川原湯温泉にある豊田乳業のヨーグルトとイタリア北部で生産されるハードチーズ、グラナ・パダーノが頂ける。

豊田乳業のヨーグルトは普通のスーパーに置いてあるような見た目だが、ぬるっとした独特の舌触りとクセの無いすっきりした甘みが特徴的な味わい。草津温泉や軽井沢のスーパーや宿で提供している地元特産品だ。

対してグラノ・パダーノはイタリア定番のハードチーズとのことで輸入品だそうだ。何故ここでイタリアからの輸入品なのか、軽井沢の洋食文化にかけているのか分からないが、とりあえずかじると硬く塩気の中に苦みがある。後で調べたらこれはおつまみとして少量を楽しんだり、おろしてパスタやピザなどにかけて食べるものらしい。ということで補給食としては疑問が湧いてしまったが、思い返せばその価値を分かっている人1人2本の制限数きっかりをお土産として背中のポケットにしまっていたように思える。

バラギ湖までの沿道にはチューリップが咲き乱れるバラギ湖までの沿道にはチューリップが咲き乱れる 天然のエイドステーションで水分補給だ天然のエイドステーションで水分補給だ

キャベツ畑を横目につまごいパノラマラインを走るキャベツ畑を横目につまごいパノラマラインを走る
価値が分からなかった庶民は貧乏性からか硬いチーズを2本とも全部ちゃんと食べ、なんか口の中が苦いなぁなんてことを思いつつ再スタート。ここからは次の登りが始まる嬬恋エリアまで下り基調の軽快なサイクリング。そして程なくすると「バラギ湖への登り」と呼ばれる嬬恋役場からパルコール嬬恋リゾートまでヒルクライムが始まる。

今大会2本目の登坂にして、これまた10km弱と長い道のりとなる「バラギ湖への登り」。白糸ハイランドウェイのような15%もの激坂はないものの、平均斜度は5.1%とじわじわと脚を削ってくる憎いレイアウトだ。

山間部を走る序盤には登り始めから約1.5km地点に湧き水が流れ出る「干俣の清水」が出現。正真正銘の天然水を補給することができ、さながら天然のエイドステーションといったところだ。更に登って行き、つまごいパノラマラインに入ると、キャベツなど嬬恋ならではの高原野菜を育てる畑が辺り一帯に広がる大パノラマが待っている。

辺り一面が畑になっている辺り一面が畑になっている
大会最高標高地点まであと少しだ大会最高標高地点まであと少しだ 登坂のあまりのキツさに苦渋の表情を浮かべる参加者登坂のあまりのキツさに苦渋の表情を浮かべる参加者


キャベツ畑を横目にペダルを回して行くと、バラギ湖に到着。霧の中に現れる美しい湖畔は幻想的な雰囲気だ。少し緩くなった勾配で一息入れ、更に登って行くとグランフォンド軽井沢の最高標高地点1,405mに到着。少し霧がかかった周囲ではあったが、みなやっとの思いで登ってきた最高地点とあって、多くの人が自転車を降り自らが登ってきた道のりを眺める。

天気の良い時には浅間山が眺望できる写真撮影スポットとしても有名な1405m地点だが、今年はあいにく霧が立ち込み、絶景はお預けとなってしまった。しかし霧の中、自転車を走らせる姿というのも、実際の辛さ以上に過酷な雰囲気を演出してくれるため、お土産話として「こんな霧の中走る過酷なライドだったんだぜ」と自慢するにはもってこいだ。

ここまで来たらお待ちかねの第2エイドステーションは目と鼻の先。ちょちょいと行程をこなして東海大学嬬恋高原研修センターに転がりこむ。建物の2階食堂に移動すると、丁度お昼時とあって、うどんと白玉あんこが用意されていた。ゴボウやニンジンといった根菜類と優しい味わいのダシが身にしみる美味しさだ。少し肌寒さを感じる高地では暖かいうどんが本当に有難い。

霧の中を進む霧の中を進む ここまで登り切ったぞ!のガッツポーズここまで登り切ったぞ!のガッツポーズ

うどんを一気にすするうどんを一気にすする うどんと白玉あんこで後半に備えよううどんと白玉あんこで後半に備えよう


またデザートの白玉あんこも見逃せない。プニプニの白玉とこしあんの組み合わせははずれの無い王道コンビで疲れた身体には抜群に効く。糖分、塩分、炭水化物とライドに必要な栄養素を蓄え、しばし居心地のいい建物内で休憩。そろそろ出発しようかと外に出ると遂にお天道様が姿を現した。

text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO


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