2017/02/19(日) - 09:04
1月中旬に開催された、美ら島オキナワセンチュリーラン。2000人近いサイクリストが集まった大会翌日の月曜日に恩納村でアフターサイクリングが行われた。地元を知り尽くしたサイクリングガイドによる、マル秘スポットが盛りだくさんのゆったり充実サイクリングの様子をレポート。
多くの人が集まった年始の定番ライド 美ら島オキナワセンチュリーラン 冬の寒さを逃れ、多くの人が2017年初となるロングライドを楽しんだ美ら島オキナワセンチュリーラン。沖縄の景色とグルメを思う存分満喫した一日となったが、やはり長い距離を走ることもあって、一つ一つのスポットを深く掘り下げて知ることは難しいもの。
でも、実はすいすいと走り抜けてしまったコースのすぐそばに、沖縄ならではの絶景スポットや歴史ある名所がたくさん散りばめられている。本大会では見過ごされがちなそれらのスポットに光を当ててくれるアフターライドが恩納村と名護市で開催された。名護市で行われた羽地ライドの様子はこちらのレポートから。
多くのサイクリストがやんばるを駆け抜けた大会の翌日。メイン会場となった恩納村コミュニティセンターからほど近い、恩納村ふれあい体験学習センターに20名ほどのサイクリストが集まった。時折小雨がぱらついているが、天気予報では回復傾向ということで、天気が楽しいライドに水を差すことはなさそう。昨日は強かった風もおとなしくなっており、まったり走るには最高の天気になりそうだ。
ジャイアントのアドベンチャークロスバイク、GRAVIERがレンタサイクルとして用意された
まずは簡単なブリーフィングから
牛が放牧されている横を走る
今回唯一の上り坂
集合場所には、ジャイアントのアドバンチャー系クロスバイクであるGRAVIERがレンタルバイクとして用意されており、アフターライドだけに参加する人でも気軽に走れるような配慮も。3名のサイクリングガイドが、走り方などについて簡単な注意事項を説明してくれ、さっそく出発である。
少し走っていくと、水路沿いの草原に牛が放牧されている。沖縄といえば、石垣牛や宮古牛などブランド和牛の生産地。肉を美味しく食べる文化が根付いており、飲み会の〆は麺類やごはんものではなく、ステーキを食べる人も多いんだとか。そんな豆知識を聞いたりしつつ、のんびりと走っていく。
沖縄電磁波技術センターのフェーズドアレイレーダーの下で
え、そんなところ入っていくんですか?という驚きの入り口。ガイドされなければ絶対わからない
その先には、こんな絶景スポットが
ちょっとした坂を上り、サトウキビ畑の間を走り抜けると巨大な白い球体が現れる。その正体は気象現象を精確に計測するためのレーダードーム。現在沖縄電磁波技術センターとして気象予測に役立っているこの施設、昔は米軍のレーダー基地であったという。
そんな説明を聞きおわり、次の目的地へ向かうのかと思いきや、ガイドさんがずんずんと森に分け入っていく。どうやら本命はこの施設ではなく、アダンのトンネルの向こう側にあるらしい。緑で作られた隧道をくぐり抜けると、沖縄らしいビーチが目の前に。
遠浅の海に広がる砂浜、そしてその先端に奇岩が折り重なるダイナミックな景観が迎えてくれるここは「アポガマ」と呼ばれるダイビングスポットで、映画やドラマの撮影にも使われたことがある名所なんだとか。ちなみに、名前の由来はというと若い男女が約束(アポ)して会った洞穴(ガマ)という、ちょっとロマンチックなもの。そんな由来を示すように、ハート型に削れた岩があり、恋人たちの人気スポットでもあるんだとか。
ウドゥイガマに向けて降りていく
沖縄ならではの植物に興味津々
ウドゥイガマの中は意外に広いのだ
ひとしきり風景を楽しんで、次のスポットへ向けて移動。といっても500mほど進んでまたストップ。またも脇道をかき分けていった先には、洞窟がぽっかりと口を開けている。岩の足場をそろりそろりと降りていくあたりで、「ビンディングシューズではなくスニーカーでご参加ください」というツアーの注意書きの真意を悟った。
さて、足場を下り終えると中には意外に広い空間が広がっていた。天井も高く、面積も大人が20人は車座になることができるほどで、今回のツアーの参加者が全員入ってもまだ余裕があるくらいだ。ウドゥイ(踊り)ガマと呼ばれるこの洞窟は、昔のお祭りで踊る演目を練習した場所だという。確かに天然のホールのようになっているし、こっそり練習するにはもってこい。
未舗装路区間も現れる。レンタサイクルのチョイスに納得
草原の上で海風にあたりながらくつろぐ
万座毛にて記念撮影!
ガイドの名城さんが石碑に刻まれた歌を唄いあげる
朗々とした旋律に聞きほれる
お次に向かうは万座毛。多くの観光客でにぎわう有名スポットだが、地元ガイドさんの先導のもと普段は入れない裏側に入ることができた。万の人が座ることができるほど広い草原(毛)という意味で名付けられた万座毛の芝生の上でしばし寛いだ後、恩納ナビーの歌碑のもとへ。
「恩納ナビー」とは18世紀に活躍した沖縄の女流歌人で、時の琉球王「尚敬王」が恩納村にやってきたときに詠んだ歌が刻まれた石碑が設置されているのだ。それだけなら「ふむふむ」で終わっているところだが、一味違うのがこのツアー。ガイドさんがおもむろに三線を取り出したと思えば、朗々とその歌を歌いあげてくれたのだ。どこか懐かしいような旋律が胸を打つ。なんと今日ガイドを務めてくれた名城さんは、沖縄県立芸術大学出身で琉球古典音楽を専門に学ばれていたという経歴の持ち主。なるほど納得である。
村唯一の酒蔵、恩納酒造所
発酵する過程を観察できる、まるで沸騰しているかのように泡立っていた
4メートル以上はあろうかという貯蔵タンク、ここで泡盛の古酒が造られる
瓶に詰め終わった泡盛を梱包する
甕に詰められて販売される
目と耳で恩納村の歴史を感じたとくれば、次は舌でしょう、ということで泡盛の酒蔵である「恩納酒造所」へ。といっても、見学だけで飲みはしていないので悪しからず(笑)。昔ながらの手法を変えずに醸造される泡盛の工場を社長自らご案内いただく。
ちょうど仕込み中の泡盛を見学する機会に恵まれたのだが、まるで沸騰しているかのようにボコボコと泡立っている様子はなかなかのインパクト。泡盛を寝かせてまろやかな古酒にするための貯蔵タンクも、見上げていると首が痛くなるほどの高さ。また、工場内のいたるところに黒く付着しているのは黒麹菌だとか。そんなに漂っているのか!と軽く衝撃を受けてみたり。サポートカーが帯同していることもあり、ここでお土産の泡盛を購入してもゴールまで運んでくれるのだから、心置きなく買い込める(笑)。
地元のお母さんによる、沖縄ならではのお昼ご飯
皆さんどんどんいただきます
満腹になったあとは、名城さんによる三線コンサートで〆 なんて贅沢なサイクリングなんだ
そして、最後は海沿いの高台にて再度絶景を味わってから、恩納村ふれあい体験学習センターへと帰着した私たちを待っていたのは、嬉しい手作りお昼ごはん。地元の料理名人のおかあさんたちが腕によりをかけて作ってくれた、アーサー汁やモズクの天ぷら、パパイアチャンプルーにじゅーしーが机にずらり。気づけば時間はお昼を過ぎており、お腹はかなりぺこぺこ。優しい味付けが、昨日からの疲れを引きずる身にはとても食べやすくて、ついついおかわりしてしまった。
そんな滋味豊かなお昼ごはんで満腹になった後は、名城さんによる三線コンサートも開かれ、やんややんやの大喝采。目で、耳で、舌で恩納村の魅力を味わうことができるアフターサイクリング。走った距離こそ短いけれど、「沖縄を走る」という意味では、センチュリーランに負けず劣らずの濃密で贅沢なライドであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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でも、実はすいすいと走り抜けてしまったコースのすぐそばに、沖縄ならではの絶景スポットや歴史ある名所がたくさん散りばめられている。本大会では見過ごされがちなそれらのスポットに光を当ててくれるアフターライドが恩納村と名護市で開催された。名護市で行われた羽地ライドの様子はこちらのレポートから。
多くのサイクリストがやんばるを駆け抜けた大会の翌日。メイン会場となった恩納村コミュニティセンターからほど近い、恩納村ふれあい体験学習センターに20名ほどのサイクリストが集まった。時折小雨がぱらついているが、天気予報では回復傾向ということで、天気が楽しいライドに水を差すことはなさそう。昨日は強かった風もおとなしくなっており、まったり走るには最高の天気になりそうだ。
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少し走っていくと、水路沿いの草原に牛が放牧されている。沖縄といえば、石垣牛や宮古牛などブランド和牛の生産地。肉を美味しく食べる文化が根付いており、飲み会の〆は麺類やごはんものではなく、ステーキを食べる人も多いんだとか。そんな豆知識を聞いたりしつつ、のんびりと走っていく。
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そんな説明を聞きおわり、次の目的地へ向かうのかと思いきや、ガイドさんがずんずんと森に分け入っていく。どうやら本命はこの施設ではなく、アダンのトンネルの向こう側にあるらしい。緑で作られた隧道をくぐり抜けると、沖縄らしいビーチが目の前に。
遠浅の海に広がる砂浜、そしてその先端に奇岩が折り重なるダイナミックな景観が迎えてくれるここは「アポガマ」と呼ばれるダイビングスポットで、映画やドラマの撮影にも使われたことがある名所なんだとか。ちなみに、名前の由来はというと若い男女が約束(アポ)して会った洞穴(ガマ)という、ちょっとロマンチックなもの。そんな由来を示すように、ハート型に削れた岩があり、恋人たちの人気スポットでもあるんだとか。
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さて、足場を下り終えると中には意外に広い空間が広がっていた。天井も高く、面積も大人が20人は車座になることができるほどで、今回のツアーの参加者が全員入ってもまだ余裕があるくらいだ。ウドゥイ(踊り)ガマと呼ばれるこの洞窟は、昔のお祭りで踊る演目を練習した場所だという。確かに天然のホールのようになっているし、こっそり練習するにはもってこい。
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「恩納ナビー」とは18世紀に活躍した沖縄の女流歌人で、時の琉球王「尚敬王」が恩納村にやってきたときに詠んだ歌が刻まれた石碑が設置されているのだ。それだけなら「ふむふむ」で終わっているところだが、一味違うのがこのツアー。ガイドさんがおもむろに三線を取り出したと思えば、朗々とその歌を歌いあげてくれたのだ。どこか懐かしいような旋律が胸を打つ。なんと今日ガイドを務めてくれた名城さんは、沖縄県立芸術大学出身で琉球古典音楽を専門に学ばれていたという経歴の持ち主。なるほど納得である。
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ちょうど仕込み中の泡盛を見学する機会に恵まれたのだが、まるで沸騰しているかのようにボコボコと泡立っている様子はなかなかのインパクト。泡盛を寝かせてまろやかな古酒にするための貯蔵タンクも、見上げていると首が痛くなるほどの高さ。また、工場内のいたるところに黒く付着しているのは黒麹菌だとか。そんなに漂っているのか!と軽く衝撃を受けてみたり。サポートカーが帯同していることもあり、ここでお土産の泡盛を購入してもゴールまで運んでくれるのだから、心置きなく買い込める(笑)。
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そして、最後は海沿いの高台にて再度絶景を味わってから、恩納村ふれあい体験学習センターへと帰着した私たちを待っていたのは、嬉しい手作りお昼ごはん。地元の料理名人のおかあさんたちが腕によりをかけて作ってくれた、アーサー汁やモズクの天ぷら、パパイアチャンプルーにじゅーしーが机にずらり。気づけば時間はお昼を過ぎており、お腹はかなりぺこぺこ。優しい味付けが、昨日からの疲れを引きずる身にはとても食べやすくて、ついついおかわりしてしまった。
そんな滋味豊かなお昼ごはんで満腹になった後は、名城さんによる三線コンサートも開かれ、やんややんやの大喝采。目で、耳で、舌で恩納村の魅力を味わうことができるアフターサイクリング。走った距離こそ短いけれど、「沖縄を走る」という意味では、センチュリーランに負けず劣らずの濃密で贅沢なライドであった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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