2016/05/07(土) - 08:51
春らしい陽気のもと、多くのサイクリストが集まった「宇都宮サイクルピクニック」。宇都宮ブリッツェンや那須ブラーゼンなど地元チームのサポートで、栃木の自然を楽しんだ1日の様子をレポートしよう。
ゴールデンウィーク初日となる4月29日。栃木県宇都宮市ろまんちっく村には、多くのサイクリストが集結した。今年で8回目となる大会は、例年人気が増しておりここ数年は定員に達するまでの時間がどんどんと短くなっている人気大会である。
圏央道の開通もあり、編集部のある東京西部からのアクセスも格段に向上した。東北道宇都宮ICを出て5分で会場となる「ろまんちっく村」に到着。6時半の開場に合わせて、続々と自転車を積んだ車や自走組の皆さんが会場へと集まってくる。
前日までの予報では朝方まで続くとされた雨もすっかりと上がって、突き抜けるような青い空が参加者を出迎えてくれた。しかし雨が降らなかった代わりと言ってはなんだが、強い北風が吹きつけており、スタート前の挨拶でも「ディープリムを使っている方は注意してくださいね」と注意をうながす一幕も。
スタートラインにずらりと並ぶのはこの大会をサポートするプロライダーの選手たち。地元・宇都宮ブリッツェンに加え、那須ブラーゼン、またライブガーデン・ビチステンレの針谷千紗子選手など、大勢の選手が参加者をサポートしてくれるのだ。彼らと交流しながらサイクリングを楽しめるというのが、この大会の最も大きな魅力である。
最長コースとなる110kmコースが8時ちょうどにスタートを切る。10人程度のパックごとにどんどんと走りだす皆さん。最初の数kmこそ少し車通りが多いものの、気がつくと田圃の中を貫く農道へ。田植えの時期まっただ中ということもあり、水が張られた田圃と遠くに見える山々の風景はいかにも日本的な風景である。
ずーっと続く平坦で開けた道はいきなり車が飛び出す心配も無く、まさに自転車を楽しむには最高の環境。しかし、今年は少し厳しいコースになってしまった。そう、風である。会場へ向かう高速道路でもハンドルが取られてしまうほどの強風は大会が始まってからも止むことなく、自転車乗りたちに襲いかかったのだ。
平坦なはずなのに、どれだけ頑張っても25km/hを出すのがせいぜい。20km/hあたりの速度でふらふらしながら、第一エイドへ向けて北へと走り続ける。単純な向かい風ならばともかく、横風もかなり辛いものがある。交通規制があるレースイベントではないので、プロレースのようにエシュロンを組むわけにもいかず、それぞれが耐えるしかないのだ。
風と格闘しながら、なんとか鬼怒川を渡ると待ちに待った第1エイドに到着。最初のエイドということもあり、沢山のサイクリストが休憩をとっている。あちこちから聞こえてくるのは、「風強かったね」「まるで峠かと思った」「久しぶりに平地でインナーに入れた」なんて会話。皆さんかなりエネルギーを使ってしまったようだ。
ここでは2種類のお饅頭と、わかめや肉みそなどの4種類のおにぎり、そして瑞々しいトマトが振る舞われる。ちなみに私は鮎おにぎりをチョイス。鬼怒川といえばの鮎を炊き込みご飯にして握られた一品は、「香魚」という別名の通りとても豊かな香りを楽しめるご馳走だった。解禁まであと1カ月、釣り人にとっては待ち遠しい季節だろう。
さて、カロリーを補充したら次のエイドへ出発。第1エイドはコースのほぼ最北端にあり、吹いてくるのは北風。つまり、ここからは追い風区間ということだ。これまでの苦労が嘘だったかのようにスイスイと距離を稼いでいく。殆ど漕がなくとも進んでいくほどで、あっという間に次のエイドへ到着。
2つ目の梵天エイドでは、栃木名物「とちおとめ」が目玉。練乳をたっぷりとかけていただくと、甘酸っぱさが口に広がっていく。ちなみに宇都宮ブリッツェンの鈴木真理選手は練乳が大好きで、「練乳王子」という二つ名を持っているほどなんだとか。
グルメが充実しているのも、宇都宮サイクルピクニックの特色。この後につづく第3エイドでは宇都宮名物である餃子が登場。水餃子としてスープと共に振る舞われ、サイクリスト皆が舌鼓を打った。続く第4エイドでは、レモンジャムやシナモンパウダーなど、さまざまなフレーバーを味わえるおからドーナツが、第5エイドではコーンポタージュが振る舞われるなど、どのエイドステーションでも心づくしの振る舞いが迎えてくれた。
さて、一旦ろまんちっく村の前を通りすぎると、仏像や灯籠などで有名な大谷石の産地である大谷へ。切り出された跡が残る岩山の間を進んでいくと、巨大な磨崖仏「大谷平和観音」が姿を見せる。全長28mの石仏の迫力には圧倒されるばかりだ。
大谷を過ぎると、110kmコースのハイライトである鶴カントリーと古賀志林道へ。ジャパンカップで選手達が味わう登りを、実際に自分の脚で体験できるのだ。古賀志林道には「サイピク山岳賞」として計測区間が設けられ、区間タイムによっては表彰される可能性もある。
上のほうまで見渡すことができるつづら折れ区間を過ぎれば、後は150mくらいの直登をこなすだけだ。頂上付近では、先に登り終えていた人たちが大きな声援を送ってくれる。その声に押されるように最後に一踏みすれば、古賀志林道制覇だ。
慎重に下りをこなせば、後はゴール地点まで戻るだけ。向かい風区間となるので、適度に先頭交代しながら走っていくグループもちらほら。初対面の人同士でも、協力しあってゴールを目指せばいつの間にか仲間意識が生まれてくる事も自転車の良い所である。
110kmの旅を終えた参加者たちが帰ってきた会場には様々な催しが用意されている。地元食材がたっぷりの「ブリッツェンバーガー」をはじめとしたフードエリアには、お腹を空かせた皆さんが行列を作り、ブリッツェンとブラーゼンの選手たちやブリッツェンフェアリー自転車競技部によるトークショーに耳を傾ける。最後には、豪華賞品が当たる大じゃんけん大会で楽しかった一日は終わり。ろまんちっく村の中にある温泉で汗を流して帰路につけば、最高のゴールデンウィークの始まりだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA
ゴールデンウィーク初日となる4月29日。栃木県宇都宮市ろまんちっく村には、多くのサイクリストが集結した。今年で8回目となる大会は、例年人気が増しておりここ数年は定員に達するまでの時間がどんどんと短くなっている人気大会である。
圏央道の開通もあり、編集部のある東京西部からのアクセスも格段に向上した。東北道宇都宮ICを出て5分で会場となる「ろまんちっく村」に到着。6時半の開場に合わせて、続々と自転車を積んだ車や自走組の皆さんが会場へと集まってくる。
前日までの予報では朝方まで続くとされた雨もすっかりと上がって、突き抜けるような青い空が参加者を出迎えてくれた。しかし雨が降らなかった代わりと言ってはなんだが、強い北風が吹きつけており、スタート前の挨拶でも「ディープリムを使っている方は注意してくださいね」と注意をうながす一幕も。
スタートラインにずらりと並ぶのはこの大会をサポートするプロライダーの選手たち。地元・宇都宮ブリッツェンに加え、那須ブラーゼン、またライブガーデン・ビチステンレの針谷千紗子選手など、大勢の選手が参加者をサポートしてくれるのだ。彼らと交流しながらサイクリングを楽しめるというのが、この大会の最も大きな魅力である。
最長コースとなる110kmコースが8時ちょうどにスタートを切る。10人程度のパックごとにどんどんと走りだす皆さん。最初の数kmこそ少し車通りが多いものの、気がつくと田圃の中を貫く農道へ。田植えの時期まっただ中ということもあり、水が張られた田圃と遠くに見える山々の風景はいかにも日本的な風景である。
ずーっと続く平坦で開けた道はいきなり車が飛び出す心配も無く、まさに自転車を楽しむには最高の環境。しかし、今年は少し厳しいコースになってしまった。そう、風である。会場へ向かう高速道路でもハンドルが取られてしまうほどの強風は大会が始まってからも止むことなく、自転車乗りたちに襲いかかったのだ。
平坦なはずなのに、どれだけ頑張っても25km/hを出すのがせいぜい。20km/hあたりの速度でふらふらしながら、第一エイドへ向けて北へと走り続ける。単純な向かい風ならばともかく、横風もかなり辛いものがある。交通規制があるレースイベントではないので、プロレースのようにエシュロンを組むわけにもいかず、それぞれが耐えるしかないのだ。
風と格闘しながら、なんとか鬼怒川を渡ると待ちに待った第1エイドに到着。最初のエイドということもあり、沢山のサイクリストが休憩をとっている。あちこちから聞こえてくるのは、「風強かったね」「まるで峠かと思った」「久しぶりに平地でインナーに入れた」なんて会話。皆さんかなりエネルギーを使ってしまったようだ。
ここでは2種類のお饅頭と、わかめや肉みそなどの4種類のおにぎり、そして瑞々しいトマトが振る舞われる。ちなみに私は鮎おにぎりをチョイス。鬼怒川といえばの鮎を炊き込みご飯にして握られた一品は、「香魚」という別名の通りとても豊かな香りを楽しめるご馳走だった。解禁まであと1カ月、釣り人にとっては待ち遠しい季節だろう。
さて、カロリーを補充したら次のエイドへ出発。第1エイドはコースのほぼ最北端にあり、吹いてくるのは北風。つまり、ここからは追い風区間ということだ。これまでの苦労が嘘だったかのようにスイスイと距離を稼いでいく。殆ど漕がなくとも進んでいくほどで、あっという間に次のエイドへ到着。
2つ目の梵天エイドでは、栃木名物「とちおとめ」が目玉。練乳をたっぷりとかけていただくと、甘酸っぱさが口に広がっていく。ちなみに宇都宮ブリッツェンの鈴木真理選手は練乳が大好きで、「練乳王子」という二つ名を持っているほどなんだとか。
グルメが充実しているのも、宇都宮サイクルピクニックの特色。この後につづく第3エイドでは宇都宮名物である餃子が登場。水餃子としてスープと共に振る舞われ、サイクリスト皆が舌鼓を打った。続く第4エイドでは、レモンジャムやシナモンパウダーなど、さまざまなフレーバーを味わえるおからドーナツが、第5エイドではコーンポタージュが振る舞われるなど、どのエイドステーションでも心づくしの振る舞いが迎えてくれた。
さて、一旦ろまんちっく村の前を通りすぎると、仏像や灯籠などで有名な大谷石の産地である大谷へ。切り出された跡が残る岩山の間を進んでいくと、巨大な磨崖仏「大谷平和観音」が姿を見せる。全長28mの石仏の迫力には圧倒されるばかりだ。
大谷を過ぎると、110kmコースのハイライトである鶴カントリーと古賀志林道へ。ジャパンカップで選手達が味わう登りを、実際に自分の脚で体験できるのだ。古賀志林道には「サイピク山岳賞」として計測区間が設けられ、区間タイムによっては表彰される可能性もある。
上のほうまで見渡すことができるつづら折れ区間を過ぎれば、後は150mくらいの直登をこなすだけだ。頂上付近では、先に登り終えていた人たちが大きな声援を送ってくれる。その声に押されるように最後に一踏みすれば、古賀志林道制覇だ。
慎重に下りをこなせば、後はゴール地点まで戻るだけ。向かい風区間となるので、適度に先頭交代しながら走っていくグループもちらほら。初対面の人同士でも、協力しあってゴールを目指せばいつの間にか仲間意識が生まれてくる事も自転車の良い所である。
110kmの旅を終えた参加者たちが帰ってきた会場には様々な催しが用意されている。地元食材がたっぷりの「ブリッツェンバーガー」をはじめとしたフードエリアには、お腹を空かせた皆さんが行列を作り、ブリッツェンとブラーゼンの選手たちやブリッツェンフェアリー自転車競技部によるトークショーに耳を傾ける。最後には、豪華賞品が当たる大じゃんけん大会で楽しかった一日は終わり。ろまんちっく村の中にある温泉で汗を流して帰路につけば、最高のゴールデンウィークの始まりだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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