2016/03/15(火) - 10:01
過去最高の観客動員数21,000人を記録したシクロクロス東京。沢山のシクロクロスバイクが集まった今大会より、5台のこだわりのバイクをピックアップして紹介していきます。
須崎真也さん(Team Tamagawa)Steel Era MUDMAN
神奈川県川崎市の二子新地に店舗を構えるAbove Bike Storeのオーナーである須崎真也さんのバイクは、ショップのオリジナルブランドSteel EraのCXモデル「MUDMAN」だ。クロモリ製のこのバイクは、現ジュニア全日本王者の織田聖選手が駆った1台でもある。
「スチールとしては比較的軽量なことや、熱処理を施して硬さを出していることがMUDMANの特徴ですね。スチールは個性が出しやすいフレーム素材ですので、シートステーの根本を、スチールフレームではあまり見かけないモノステー仕様として個性を出しています。」とMUDMANについて解説する須崎さん。
「Wicked(ウィキッド)」と記されたホイールは、独自のリムを採用したショップオリジナル。
「私が使用しているリムブレーキ用リムは、ブレーキ面の強度を優先して造ったものです。30mmハイトで400gと決して軽くはありませんし、もっと軽く造ることもできます。ただ重量の分だけ品質が安定しており、またCX用タイヤでもふんどしがはみ出ないように幅を広げてあります」。
また、「ホイールの固定方法や、エンド幅の規格、スルーアクスルのアクスル径にはいくつかの規格があり、現在は過渡期と言われています。そこで、アダプターを変えることで様々な規格に対応できるハブを開発中です。」と、オリジナルのリムに続いて須崎さんはハブも開発中とのことだ。
吉田幸司さん(ニコー製作所)キャノンデール SUPER X
名古屋のプロショップ「ニコー製作所」の店長を務める傍ら、シクロクロスにも誠意参戦中という吉田幸司さん。今回のシクロクロス東京ではC4-Bで優勝を果たし見事C3への昇格を果たした吉田さんの愛車は、キャノンデールの「SUPERX」のカンチブレーキ仕様だ。ロード用の「SUPERSIX EVO」をベースに設計されたモデルで、優れた軽量性を特徴とする1台である。
吉田さんいわく「手持ちの余ったパーツで組み上げました」とのことだが、ショップ店長ならではの工夫が見て取れる。スプロケットは「体重が軽く、トルクで踏むのが得意ではないので」とのことから、歯を組み替えて16~27Tのクロスレシオ化している。
タイヤのチョイスにも工夫があり、砂区間が長いCX東京にあって、吉田さんはマッドコンディション用のIRC SERAC CX MUDをチョイス。「林の中では思い切って身体を倒せますし、サイドトレッドが詰まっているので砂の上でもコーナリンググリップを稼げるからです」とタイヤ選択の理由について語って頂いた。
鈴木太千さん(CICADA UNITED)トレック Boone 9
会場からもほど近い東京・晴海にあるトレックコンセプトストア「BEX ISOYA 晴海店」の店長を務める鈴木太千さんの愛車はもちろんトレックで、ハイエンドモデル「Boone 9」のカンチブレーキモデルを使用。Boone 9について鈴木さんは「なんと言っても快適性が高く、初めて試乗した方でも、すぐに乗り心地の良さを体感して頂けるほど。それでいて軽量で、自分のロードバイクよりも軽く仕上がってしまい、びっくりさせられました」とのこと。
カンチブレーキ仕様を選択した理由については「ディスクブレーキでなくとも充分な制動力を得ることができ、軽量で、整備しやすいからですね」。なお、ブレーキはTRPのミニVブレーキ「CX9」とし制動力を強化しつつ、レッドアルマイトで差し色としているのだそう。
「シクロクロスの楽しい雰囲気に合わせて遊んでみました」というバーテープはボントレガーのGel Cork。実際にハンドルに巻きつけるとボントレガーのbのロゴがコーヒー豆の様に見えるのが、コーヒー好きの鈴木さんのお気に入りポイントだ。
バーテープ以外もほとんどのパーツがボントレガーで統一されている。「今日のコースには良くマッチしていました」というタイヤは、チューブレスレディのハードパック用モデル「CX0 TLR」で、レースでは1.3Barで使用したとのこと。
渡邊民人さん(CICADA UNITED) Rosko
鈴木さんと同じくCICADA UNITEDに所属する渡邊民人さんのバイクは「Rosko(ロスコ)」という聞き慣れないブランドのもの。このRoskoは、セス・ロスコ氏が1人で営むハンドメイドブランドで、二ューヨーク・ブルックリンを拠点に、ロードからCX、MTB、BMXとあらゆるジャンルのバイクを制作。渡邊さんはよると、知人がSNSでシェアした画像を見て一目惚れしてしまったのがオーダーに至ったきっかけだそう。
取材した時点で国内にあるのは1台だけという希少なRosko。渡邊さんの愛車はニオビウムによって強度を高めたコロンバスのスチールパイプ「SPIRIT」で組み上げられている。アワーグラス(砂時計)型に曲げ加工されたシートステーや、滑らかな溶接ビードなど、スチール素材が持つ性能を最大限に引き出すための加工が随所に見られる。気になる乗り味は「良く進むバイクで、。少ない力でもスーッとバイクが前に出てくれます。そして泥づまりしにくいですね」とかなりのお気に入りのよう。
シフターとリアディレーラーには、そのシンプルさがハンドメイドバイクと相性バツグンのGevenalleを採用。油圧ブレーキを前提にしたというフレーム設計に合わせて、ブレーキはTRP Hylexとしている。今回のCX東京に向けてはマヴィックKSYRIUM PRO DISC ALLROADを投入したとのことだ。
辻善光さん(Team Zenko) JFF #803
元プロロードレーサーで、現在はスポーツサイクル普及活動と並行してシクロクロスやトライアスロンに取り組んでいる辻善光さん(Team Zenko)。バイクは、全日本選手権9連覇の偉業を誇る辻浦圭一さんやC1ライダーの池本真也選手が監修した東京サンエスオリジナルのアルミモデル「JFF #803」だ。
辻さんによると#803の特徴はしなやかさにあるという。
「一般的に高剛性なイメージのあるアルミ製なのですが、スチールやカーボンよりもしなやかな乗り味に仕上がっています。どんなに荒れた路面でもトラクションが逃げず、スキル面で足りない部分を補ってくれるため、周りが誰も乗車でこなせない様なキャンバーでもパワーで押し通すことができます」。
アッセンブルされるパーツは、もちろん東京サンエスのオリジナルブランドであるワンバイエス、ディズナ、グランジで固められており、ハンドルとサドルは辻さんの意見を取り入れ開発されたもの。カーボンハンドル「J-Carbon グランモンロー」は、ブラケット取り付け部の下を削いだ形状とすることで、ブラケットポジションでのホールド感を高めたことが特徴の1本。細身のフォルムが特徴的な「100ムーブサドル」は、シクロクロスにおいて腰を後ろに引いてから前へ戻す際に、座面の出っ張りが太ももにあたり、後ろ乗りしにくいと感じた経験を元にデザインされている。
photo&text:Yuya.Yamamoto
須崎真也さん(Team Tamagawa)Steel Era MUDMAN
神奈川県川崎市の二子新地に店舗を構えるAbove Bike Storeのオーナーである須崎真也さんのバイクは、ショップのオリジナルブランドSteel EraのCXモデル「MUDMAN」だ。クロモリ製のこのバイクは、現ジュニア全日本王者の織田聖選手が駆った1台でもある。
「スチールとしては比較的軽量なことや、熱処理を施して硬さを出していることがMUDMANの特徴ですね。スチールは個性が出しやすいフレーム素材ですので、シートステーの根本を、スチールフレームではあまり見かけないモノステー仕様として個性を出しています。」とMUDMANについて解説する須崎さん。
「Wicked(ウィキッド)」と記されたホイールは、独自のリムを採用したショップオリジナル。
「私が使用しているリムブレーキ用リムは、ブレーキ面の強度を優先して造ったものです。30mmハイトで400gと決して軽くはありませんし、もっと軽く造ることもできます。ただ重量の分だけ品質が安定しており、またCX用タイヤでもふんどしがはみ出ないように幅を広げてあります」。
また、「ホイールの固定方法や、エンド幅の規格、スルーアクスルのアクスル径にはいくつかの規格があり、現在は過渡期と言われています。そこで、アダプターを変えることで様々な規格に対応できるハブを開発中です。」と、オリジナルのリムに続いて須崎さんはハブも開発中とのことだ。
吉田幸司さん(ニコー製作所)キャノンデール SUPER X
名古屋のプロショップ「ニコー製作所」の店長を務める傍ら、シクロクロスにも誠意参戦中という吉田幸司さん。今回のシクロクロス東京ではC4-Bで優勝を果たし見事C3への昇格を果たした吉田さんの愛車は、キャノンデールの「SUPERX」のカンチブレーキ仕様だ。ロード用の「SUPERSIX EVO」をベースに設計されたモデルで、優れた軽量性を特徴とする1台である。
吉田さんいわく「手持ちの余ったパーツで組み上げました」とのことだが、ショップ店長ならではの工夫が見て取れる。スプロケットは「体重が軽く、トルクで踏むのが得意ではないので」とのことから、歯を組み替えて16~27Tのクロスレシオ化している。
タイヤのチョイスにも工夫があり、砂区間が長いCX東京にあって、吉田さんはマッドコンディション用のIRC SERAC CX MUDをチョイス。「林の中では思い切って身体を倒せますし、サイドトレッドが詰まっているので砂の上でもコーナリンググリップを稼げるからです」とタイヤ選択の理由について語って頂いた。
鈴木太千さん(CICADA UNITED)トレック Boone 9
会場からもほど近い東京・晴海にあるトレックコンセプトストア「BEX ISOYA 晴海店」の店長を務める鈴木太千さんの愛車はもちろんトレックで、ハイエンドモデル「Boone 9」のカンチブレーキモデルを使用。Boone 9について鈴木さんは「なんと言っても快適性が高く、初めて試乗した方でも、すぐに乗り心地の良さを体感して頂けるほど。それでいて軽量で、自分のロードバイクよりも軽く仕上がってしまい、びっくりさせられました」とのこと。
カンチブレーキ仕様を選択した理由については「ディスクブレーキでなくとも充分な制動力を得ることができ、軽量で、整備しやすいからですね」。なお、ブレーキはTRPのミニVブレーキ「CX9」とし制動力を強化しつつ、レッドアルマイトで差し色としているのだそう。
「シクロクロスの楽しい雰囲気に合わせて遊んでみました」というバーテープはボントレガーのGel Cork。実際にハンドルに巻きつけるとボントレガーのbのロゴがコーヒー豆の様に見えるのが、コーヒー好きの鈴木さんのお気に入りポイントだ。
バーテープ以外もほとんどのパーツがボントレガーで統一されている。「今日のコースには良くマッチしていました」というタイヤは、チューブレスレディのハードパック用モデル「CX0 TLR」で、レースでは1.3Barで使用したとのこと。
渡邊民人さん(CICADA UNITED) Rosko
鈴木さんと同じくCICADA UNITEDに所属する渡邊民人さんのバイクは「Rosko(ロスコ)」という聞き慣れないブランドのもの。このRoskoは、セス・ロスコ氏が1人で営むハンドメイドブランドで、二ューヨーク・ブルックリンを拠点に、ロードからCX、MTB、BMXとあらゆるジャンルのバイクを制作。渡邊さんはよると、知人がSNSでシェアした画像を見て一目惚れしてしまったのがオーダーに至ったきっかけだそう。
取材した時点で国内にあるのは1台だけという希少なRosko。渡邊さんの愛車はニオビウムによって強度を高めたコロンバスのスチールパイプ「SPIRIT」で組み上げられている。アワーグラス(砂時計)型に曲げ加工されたシートステーや、滑らかな溶接ビードなど、スチール素材が持つ性能を最大限に引き出すための加工が随所に見られる。気になる乗り味は「良く進むバイクで、。少ない力でもスーッとバイクが前に出てくれます。そして泥づまりしにくいですね」とかなりのお気に入りのよう。
シフターとリアディレーラーには、そのシンプルさがハンドメイドバイクと相性バツグンのGevenalleを採用。油圧ブレーキを前提にしたというフレーム設計に合わせて、ブレーキはTRP Hylexとしている。今回のCX東京に向けてはマヴィックKSYRIUM PRO DISC ALLROADを投入したとのことだ。
辻善光さん(Team Zenko) JFF #803
元プロロードレーサーで、現在はスポーツサイクル普及活動と並行してシクロクロスやトライアスロンに取り組んでいる辻善光さん(Team Zenko)。バイクは、全日本選手権9連覇の偉業を誇る辻浦圭一さんやC1ライダーの池本真也選手が監修した東京サンエスオリジナルのアルミモデル「JFF #803」だ。
辻さんによると#803の特徴はしなやかさにあるという。
「一般的に高剛性なイメージのあるアルミ製なのですが、スチールやカーボンよりもしなやかな乗り味に仕上がっています。どんなに荒れた路面でもトラクションが逃げず、スキル面で足りない部分を補ってくれるため、周りが誰も乗車でこなせない様なキャンバーでもパワーで押し通すことができます」。
アッセンブルされるパーツは、もちろん東京サンエスのオリジナルブランドであるワンバイエス、ディズナ、グランジで固められており、ハンドルとサドルは辻さんの意見を取り入れ開発されたもの。カーボンハンドル「J-Carbon グランモンロー」は、ブラケット取り付け部の下を削いだ形状とすることで、ブラケットポジションでのホールド感を高めたことが特徴の1本。細身のフォルムが特徴的な「100ムーブサドル」は、シクロクロスにおいて腰を後ろに引いてから前へ戻す際に、座面の出っ張りが太ももにあたり、後ろ乗りしにくいと感じた経験を元にデザインされている。
photo&text:Yuya.Yamamoto
Amazon.co.jp