2016/01/25(月) - 09:23
2015年の締めくくりレースとして開催された東京ワンダーレース。都内のサイクリストであれば参加しなければもったいない!ということで、我々編集部も急きょ参戦することに。ヘタレ藤原を筆頭に、山本、安岡の参戦記をお届けします。
出版関係ほどではないにしろ、年末進行が慌ただしいのは私達シクロワイアード編集部員も同じ。だが、そうはいっても一年を締めくくるのに何かイベントに出場したい。さて、冬場のレースといえばシクロクロス、そしてクリテリウムである。シクロクロスはこのまえ秋ヶ瀬バイクロアに出たばかりだし、ちょっと趣向を変えたいなと思っていたところに、東京ワンダーレースが今年も開催されるという連絡が舞い込んできた。
「ワンダーレース、走りやすいし良いレースだよ。みんなで出るには良いんじゃない?」とは昨年も出場していた安岡先輩。ちなみにこの男、昨年のレースであろうことかエントリークラスにエントリーし優勝するという空気の読めなさを発揮していたチートボーイである。しかもビギナークラスにもエントリーしていて3位入賞していたとか。敢えてもう何も言うまい。
しかし、今年はあまり乗っておらず、自己最高体重をマークしているというが、なぜか本人は昨年並みに走れるつもりらしい。「今年は、ミドルとビギナーで走ってみようかな。」厳しい現実が待っていることも知らず、のんきなものである。
そこに食いついたのが山本先輩と僕の二人だ。昨年の大磯クリテの雪辱を晴らすべく、今年こそはと勢い込んで参加を表明する僕たち。しかし、「じゃあ、みんなでミドルかビギナーに出る?」と安岡先輩が言うと、「いや、ミドルはちょっと……。」「ぼくはエントリークラスで……。」といきなり大人しくなってしまう。安岡先輩の謎の楽観もいかがなものかと思うが、もう少し僕たちも自信を持ってもいいのではないだろうか。
かくして、安岡先輩と山本先輩がビギナー、藤原がエントリーに申し込むことに。はてさて、どうなることやら……。
さて、迎えた大会当日。都内からアクセス良好ということもあり、秋ヶ瀬のような遅刻者はいない。安岡先輩なんかは、自転車で10分程度のところに住んでいるのだから当然と言えば当然である。受付を済ませて、朝一番の出走となるビギナークラスに参加する2人はいそいそと支度している。2組に分かれているので、厳密にいえば朝2番目のレースであるが。
ビギナー1組の様子を見ながら、安岡先輩が「去年は10周中9周逃げて3位だったんだよなー、今年も逃げちゃう?」などと言いだす。しかし、腹の出方を見ている限り、今年はそう上手く事は運ばないのでは?という当たり前の感想しか思い浮かばない。大体エントリーした時からさらにあのお腹は成長しているような……。
一方こちらは、すこし痩せたらしい山本先輩。「けっこう今年は走れてるんで、任せといてくださいよ!」と自信満々な様子。しかし僕は知っている。その体重減は晩御飯を食べないという無謀な減量計画によるものだと。無駄に脂肪を蓄えた安岡先輩と、無茶なダイエットに挑んだ山本先輩。好対照な二人が挑むビギナークラス2組がいよいよスタートだ。
ビギナー1組に比べると、レースは少し速いペース。「逃げちゃおっかな―」なんて言っていた安岡先輩も、集団中ほどで大人しくしているようだ。ただ、気になるのがスタジアムの外周道路から出てくるクランクの立ち上がり。ホームストレートでほとんど踏まず、ずぶずぶと後方に下がっていく様子を見ていると、いつ千切れるのか?と期待して、いや、心配になってしまう。一方山本先輩はきちんと集団について走っているようで、やはりカラダのキレが良さそうだ。
なんでこんなに位置を下げながらも毎周千切れないのか。そう不思議に思っていたところ、ヘアピンで写真を撮っていた時に答えに気が付いた。クランクからヘアピンまで、約300mほどの距離がある中で集団は一気にペースを上げて、トップスピードに上げてから、50mほど手前からだらだらと減速しつつヘアピンに差し掛かるという動き。一方安岡先輩は加速をおさえながらじわじわとトップスピードに持っていき、ヘアピンの直前までそのスピードを維持し一気にブレーキングしてからコーナーに入るという走り方。この走り方によって、集団最後尾から先頭付近まで一気にポジションを上げていたのだ。
良く言えばクレバー、率直にいえばセコい走りである。しかし、脚の消耗を抑えつつ集団に残るには一番効率の良い走り方であるのは間違いない。うーん、フィジカルが弱っていても走りようはあるのだと、妙な感心をしてしまう。ちょっと真似してみてもいいかもしれないけれど、コーナーであそこまで突っ込む自信は無いので大人しくしておこうと思いなおす。
そんなことを考えているうちに、残り1周回。一気に集団のペースが上がっていく中、二人とも食らいついている。普段は僕のことをいじめてくるろくでもない先輩たちだけど、こういうときは少しカッコよく見えたり。ただ、残念ながら勝つことはできず、安岡先輩が7位、山本先輩が11位という結果。惜しいなー、なんて思っていたら走り終わった二人が何やら言い合いをしている。
「なんであそこで踏まなかったんですか!?」「いや、ちゃうねん。あえて中切れを演出することで他の人に脚を使わせようという作戦で……。」「そんな姑息なことしてるから負けるんですよ。」「う、うっせー!」どうやら、バックストレートで発生したペースアップを意図的に安岡先輩が分断したようである。そこで他の人に追わせることで脚を使わせて漁夫の利をゲット!と考えていたようだが、自分自身の脚が思ったより残っておらず、そのままズブズブ沈んでいったということのようだ。
聞いているだけで憐憫の情を催してしまう情けなさである。そんな小細工に走るとはどれだけ脚に自信がなかったのだろうか。そして、その安岡先輩に負けてしまう山本先輩は最早立つ瀬がない。少し前にカッコよく見えた二人の印象はもはやストップ安である。
そんな考えが顔に出ていたのだろうか、二人がこちらをみてニヤニヤしている。「なんか、かなり自信あるみたいだけど今回は前の大磯クリテみたいに、いきなり千切られるとかないよね?」「もちろんですよ。ピリオドの向こう側を見せてやります。」ととりあえず大きく出てみる僕。しかし、果たして僕が太刀打ちできるのか今から不安でいっぱいである。
エントリークラスの召集が始まったあたりで、僕の緊張はMAX。いや、今年はヒルクライムにも挑戦したし、シクロクロスも何度も参加しているんだから、成長しているはず。あの二人の嫌な期待を良い意味で裏切ってやりたい!そんな気持ちでスタートしていく。とはいえ、8周中6周はニュートラル走行。なんとなく集団の雰囲気を観察しながら周回を重ねていく。
そして、リアルスタートが目前となった6周目からだんだんとペースが上がっていき、スタジアム外周道路をでるあたりでは完全なレースペースに。そんな、まだ心の準備が出来ていないのに!話が違う!なんて思いながら、必死でついていこうとするも、クランクをクリアする時に減速し過ぎて早速千切られてしまい、いつのまにやら一人旅に……。後から来た人達にもコーナーのたびに千切られてしまい、どんどんと順位を下げてしまう。
この状況はマズイ。二人が僕をあざ笑う姿が瞼の裏にチラついてしまう。シクロクロスで培ったと思ってきたコーナーリングテクニックは、ロードレースには活かせないのか。それとも僕がヘタレなだけなのだろうか。磯部教官が両方上手いことを考えると、後者の可能性が限りなく高いけれど、今は前者を言い訳にするしかない。
失意のうちにゴールした僕を2人が迎えてくれる。どんな辛辣なコメントが浴びせられるのだろうかと、身構えていた僕に投げかけられたのは、意外にも労いの言葉だった。「お疲れさん!結構ペースの上げ下げが大きかったから、落車せずに帰ってこれただけでも良かったよ。」え、二人ってこんな良い人だっけ。ジェットコースターの様に揺れ動く二人への僕の評価。
しかし、二人を見直しかけた僕に続く言葉が突き刺さる。「ホントホント、ここで怪我でもされた日には僕らが迷惑被る訳だし。」「そうそう、コーナーがヘタクソなんだから、藤原が突っ込むと危ないと思ってたんだよね。熱くならなくて良かったよ。いや、熱くなれる前に千切られたのかもしれないけど。」「「アハハハハハ」」酷い、酷過ぎる。こんな二人を一瞬でも信じた僕が馬鹿だった。
走り納めのレースを気持ちよく〆てやろうと思っていた僕の目論見はあえなく崩壊。2015年も、不甲斐ない走りで終えてしまうこととなってしまった。今年こそはイジワルな先輩達を見返してやる!決意も新たにした僕は、次なるレースを探して、スポーツエントリーを開くのであった。
出版関係ほどではないにしろ、年末進行が慌ただしいのは私達シクロワイアード編集部員も同じ。だが、そうはいっても一年を締めくくるのに何かイベントに出場したい。さて、冬場のレースといえばシクロクロス、そしてクリテリウムである。シクロクロスはこのまえ秋ヶ瀬バイクロアに出たばかりだし、ちょっと趣向を変えたいなと思っていたところに、東京ワンダーレースが今年も開催されるという連絡が舞い込んできた。
「ワンダーレース、走りやすいし良いレースだよ。みんなで出るには良いんじゃない?」とは昨年も出場していた安岡先輩。ちなみにこの男、昨年のレースであろうことかエントリークラスにエントリーし優勝するという空気の読めなさを発揮していたチートボーイである。しかもビギナークラスにもエントリーしていて3位入賞していたとか。敢えてもう何も言うまい。
しかし、今年はあまり乗っておらず、自己最高体重をマークしているというが、なぜか本人は昨年並みに走れるつもりらしい。「今年は、ミドルとビギナーで走ってみようかな。」厳しい現実が待っていることも知らず、のんきなものである。
そこに食いついたのが山本先輩と僕の二人だ。昨年の大磯クリテの雪辱を晴らすべく、今年こそはと勢い込んで参加を表明する僕たち。しかし、「じゃあ、みんなでミドルかビギナーに出る?」と安岡先輩が言うと、「いや、ミドルはちょっと……。」「ぼくはエントリークラスで……。」といきなり大人しくなってしまう。安岡先輩の謎の楽観もいかがなものかと思うが、もう少し僕たちも自信を持ってもいいのではないだろうか。
かくして、安岡先輩と山本先輩がビギナー、藤原がエントリーに申し込むことに。はてさて、どうなることやら……。
さて、迎えた大会当日。都内からアクセス良好ということもあり、秋ヶ瀬のような遅刻者はいない。安岡先輩なんかは、自転車で10分程度のところに住んでいるのだから当然と言えば当然である。受付を済ませて、朝一番の出走となるビギナークラスに参加する2人はいそいそと支度している。2組に分かれているので、厳密にいえば朝2番目のレースであるが。
ビギナー1組の様子を見ながら、安岡先輩が「去年は10周中9周逃げて3位だったんだよなー、今年も逃げちゃう?」などと言いだす。しかし、腹の出方を見ている限り、今年はそう上手く事は運ばないのでは?という当たり前の感想しか思い浮かばない。大体エントリーした時からさらにあのお腹は成長しているような……。
一方こちらは、すこし痩せたらしい山本先輩。「けっこう今年は走れてるんで、任せといてくださいよ!」と自信満々な様子。しかし僕は知っている。その体重減は晩御飯を食べないという無謀な減量計画によるものだと。無駄に脂肪を蓄えた安岡先輩と、無茶なダイエットに挑んだ山本先輩。好対照な二人が挑むビギナークラス2組がいよいよスタートだ。
ビギナー1組に比べると、レースは少し速いペース。「逃げちゃおっかな―」なんて言っていた安岡先輩も、集団中ほどで大人しくしているようだ。ただ、気になるのがスタジアムの外周道路から出てくるクランクの立ち上がり。ホームストレートでほとんど踏まず、ずぶずぶと後方に下がっていく様子を見ていると、いつ千切れるのか?と期待して、いや、心配になってしまう。一方山本先輩はきちんと集団について走っているようで、やはりカラダのキレが良さそうだ。
なんでこんなに位置を下げながらも毎周千切れないのか。そう不思議に思っていたところ、ヘアピンで写真を撮っていた時に答えに気が付いた。クランクからヘアピンまで、約300mほどの距離がある中で集団は一気にペースを上げて、トップスピードに上げてから、50mほど手前からだらだらと減速しつつヘアピンに差し掛かるという動き。一方安岡先輩は加速をおさえながらじわじわとトップスピードに持っていき、ヘアピンの直前までそのスピードを維持し一気にブレーキングしてからコーナーに入るという走り方。この走り方によって、集団最後尾から先頭付近まで一気にポジションを上げていたのだ。
良く言えばクレバー、率直にいえばセコい走りである。しかし、脚の消耗を抑えつつ集団に残るには一番効率の良い走り方であるのは間違いない。うーん、フィジカルが弱っていても走りようはあるのだと、妙な感心をしてしまう。ちょっと真似してみてもいいかもしれないけれど、コーナーであそこまで突っ込む自信は無いので大人しくしておこうと思いなおす。
そんなことを考えているうちに、残り1周回。一気に集団のペースが上がっていく中、二人とも食らいついている。普段は僕のことをいじめてくるろくでもない先輩たちだけど、こういうときは少しカッコよく見えたり。ただ、残念ながら勝つことはできず、安岡先輩が7位、山本先輩が11位という結果。惜しいなー、なんて思っていたら走り終わった二人が何やら言い合いをしている。
「なんであそこで踏まなかったんですか!?」「いや、ちゃうねん。あえて中切れを演出することで他の人に脚を使わせようという作戦で……。」「そんな姑息なことしてるから負けるんですよ。」「う、うっせー!」どうやら、バックストレートで発生したペースアップを意図的に安岡先輩が分断したようである。そこで他の人に追わせることで脚を使わせて漁夫の利をゲット!と考えていたようだが、自分自身の脚が思ったより残っておらず、そのままズブズブ沈んでいったということのようだ。
聞いているだけで憐憫の情を催してしまう情けなさである。そんな小細工に走るとはどれだけ脚に自信がなかったのだろうか。そして、その安岡先輩に負けてしまう山本先輩は最早立つ瀬がない。少し前にカッコよく見えた二人の印象はもはやストップ安である。
そんな考えが顔に出ていたのだろうか、二人がこちらをみてニヤニヤしている。「なんか、かなり自信あるみたいだけど今回は前の大磯クリテみたいに、いきなり千切られるとかないよね?」「もちろんですよ。ピリオドの向こう側を見せてやります。」ととりあえず大きく出てみる僕。しかし、果たして僕が太刀打ちできるのか今から不安でいっぱいである。
エントリークラスの召集が始まったあたりで、僕の緊張はMAX。いや、今年はヒルクライムにも挑戦したし、シクロクロスも何度も参加しているんだから、成長しているはず。あの二人の嫌な期待を良い意味で裏切ってやりたい!そんな気持ちでスタートしていく。とはいえ、8周中6周はニュートラル走行。なんとなく集団の雰囲気を観察しながら周回を重ねていく。
そして、リアルスタートが目前となった6周目からだんだんとペースが上がっていき、スタジアム外周道路をでるあたりでは完全なレースペースに。そんな、まだ心の準備が出来ていないのに!話が違う!なんて思いながら、必死でついていこうとするも、クランクをクリアする時に減速し過ぎて早速千切られてしまい、いつのまにやら一人旅に……。後から来た人達にもコーナーのたびに千切られてしまい、どんどんと順位を下げてしまう。
この状況はマズイ。二人が僕をあざ笑う姿が瞼の裏にチラついてしまう。シクロクロスで培ったと思ってきたコーナーリングテクニックは、ロードレースには活かせないのか。それとも僕がヘタレなだけなのだろうか。磯部教官が両方上手いことを考えると、後者の可能性が限りなく高いけれど、今は前者を言い訳にするしかない。
失意のうちにゴールした僕を2人が迎えてくれる。どんな辛辣なコメントが浴びせられるのだろうかと、身構えていた僕に投げかけられたのは、意外にも労いの言葉だった。「お疲れさん!結構ペースの上げ下げが大きかったから、落車せずに帰ってこれただけでも良かったよ。」え、二人ってこんな良い人だっけ。ジェットコースターの様に揺れ動く二人への僕の評価。
しかし、二人を見直しかけた僕に続く言葉が突き刺さる。「ホントホント、ここで怪我でもされた日には僕らが迷惑被る訳だし。」「そうそう、コーナーがヘタクソなんだから、藤原が突っ込むと危ないと思ってたんだよね。熱くならなくて良かったよ。いや、熱くなれる前に千切られたのかもしれないけど。」「「アハハハハハ」」酷い、酷過ぎる。こんな二人を一瞬でも信じた僕が馬鹿だった。
走り納めのレースを気持ちよく〆てやろうと思っていた僕の目論見はあえなく崩壊。2015年も、不甲斐ない走りで終えてしまうこととなってしまった。今年こそはイジワルな先輩達を見返してやる!決意も新たにした僕は、次なるレースを探して、スポーツエントリーを開くのであった。
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