2015/11/23(月) - 09:58
11月14日(土)に神奈川県横須賀市のY-HEART地区を舞台として開催された、老舗自転車イベント「メリダ・ミヤタカップ」。大会が始まって以来はじめての試みとしてMTBとロードレース同時開催となった、アットホームなイベントの様子を紹介しよう。
29年めを迎える老舗自転車イベント「メリダ・ミヤタカップ」。今まではロードはロードイベントとして、MTBはMTBイベントとして別々に開催してきたこの大会が、今年初めてMTBとロード併催となった。11月14日(土)に神奈川県横須賀市のY-HEART地区を舞台として開催された。
Y-HEARTとは何?という方も多いはずだ。もちろん私もその1人だった。Y-HEART地区というのは、横浜横須賀道路の衣笠ICすぐ脇の森林地帯。ただの森ではなく、神奈川県が東京オリンピックへ向けてナショナルチーム用のトレーニングセンターを誘致する計画の立候補地である。
現在も東京にナショナルトレーニングセンターはあるが、それは屋内競技が中心の施設となっているという。そこで自転車競技をはじめ、ラグビーやサッカーなどに使用できる屋外用のトレーニング場所として立候補したのがY-HEART地区である。東名高速や第2京浜、第3京浜、首都高湾岸線と言った主要高速道路から、下道に降りず会場至近までアプローチできる、アクセスの良さも参加者には嬉しいポイントだろう。
このイベントのために、もともと森林地帯であったところを開発し、MTBコースを造成したという。ちなみに今後MTB常設コースとなる可能性があるとのことだ。コースのレイアウトはメイン会場をスタートすると、一気に谷を降りテクニカルなセクションへ突入する。そして、谷間から駆け上がるというテクニックと体力の両方を問われる走りごたえのある1周2.5km。
大会のホストライダーとしてマルチバン・メリダ・バイキングチームからガン・リタ ダールが来日。アルカンシェルに身を包んだXCマラソン女子の世界チャンピオンは、物腰が柔らかくキッズライダー達と積極的に交流を図ってくれる優しいお姉さんという感じだ。そして、ミヤタ・メリダ・バイキングチームの小野寺健、松尾純はMTBに、宇都宮ブリッツェンの鈴木譲、大久保陣がロードに参加した。
さて、当日は天気予報のとおり、朝から雨が降っては上がっての繰り返し。ピットエリアではテントやタープが立ち並び、さながらキャンプ村のように。各チームが身体を濡らさないように工夫をしていたようだ。この日のスタートレースとなる、スポーツ男子、ビギナー男子、女子は幸いにも雨は小康状態のなかスタートしていった。
そのあとには、参加する子どもたち親御さん全員が白熱するキッズレースが開幕する。雨もしっかりと降り始めてしまい、スタート前には風邪を引かせまいと子どもを守る親御さん達によるパラソルと防寒着のサポートが入る。その光景はエリートのレース前?と見間違えるほど圧巻だ。
どのレースでもガチンコのバトルが繰り広げられ、ゴール後には悔し泣きするアツいレーサーの姿も。キッズレースはほんわかとする印象を持っていただけに、その本気度には圧倒させられてしまった。それでもガン・リタが催行日でサポートした小学校低学年や補助輪あり、なしクラスは、会場全体が勝ち負けよりも全員に頑張れといったような空気で包まれていた。選手の親たちは本気なようでしたが…
そして、メリダ・ミヤタカップならではの種目「親子スプリント」が始まる。フルコースを2周するこのレースは、親子がペアとなり、1周めは子どもが先頭に立ち親を引っ張っていく。そして、2周めに入り発射された親御さんがバトルを展開するというもの。子どもたちの熱い走りに魅せられた親たちがギラギラした目をさせながらレースする様子も圧巻だ。
ミヤタ・メリダ・バイキングチームに加入してから毎年ホストライダーとして参加している小野寺、松尾両選手は「ファミリー層がとても多く、和気あいあいとMTBを楽しみながら、いい思い出を作ってくれているのかな」と感じているという。まさに、このファミリーレースが、選手2人が感じるメリダ・ミヤタカップを象徴しているようだと感じさせられた。
この日の主役はもちろん参加者の皆さんだが、ガン・リタ ダールと国内のエリートレーサーたちによるエキシビジョンレースにも注目が集まった。レースにはもちろん小野寺健や松尾純、昨年のMTB XC全日本選手権で優勝した與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)らエリートライダーたちが顔を揃えた。
最初の周回はペースメーカーがつくためパレードランのようになる予定だったが、そのペースメーカーを務めた和光ケミカルの山本挑さんが、かなりのハイペースで走行。いきなりレースのような厳しい展開にレースの解説を務めてくれたミヤタ・メリダ バイキングチーム監督の山路篤さんや会場にいた全員がビックリ!
選手たちはあっという間に谷までくだり、茂みに消えたと思ったら、すぐに終盤の登りに姿を現す。登りでもスピードが一段階も違う様子に観客たちは「あれ?もう帰ってきたの?」とか「おおお…!」と驚きの声が漏れ出てしまっていた。
レースはというと中盤まで先頭グループで走っていた小野寺健がパンクを喫してしまい脱落。1周めからのハイスピードな展開は周回を重ねるごとにエスカレートしていき、先頭から次々と選手がこぼれ落ちていく。そのなか、昨年のMTB XC全日本チャンピオンの武井きょうすけはペースを維持し、後続を突き放して先頭でフィニッシュを切った。
国内でもトップレベルのレースを目の当たりにして盛り上がった後には、この日最大のレースである3時間エンデューロがスタートする。レースが進行するに連れて掘り起こされていった路面は泥々に。ジャージや顔を泥まみれにしながら、駆けていく様子を見ると楽しそう。
バンピーなくだりでは跳ねるリアタイヤをコントロールしながら、ジェットコースターで落ちるかのようなスピードで飛んで行くライダー。安全第一でゆっくりと下っていくライダー。走り方は人それぞれだけれど、後ろから追い越すときは声をかけながら抜いていくなど、選手たちが自ら安全な走行をしていたのが印象的だった。
ピットエリアのテント村にはガスコンロを持ち込んで、おしるこを炊いているチームも。キャンプのようなアウトドアのような雰囲気もいい感じ。どこのチームも和気あいあいとした空気で、仲間を待つ間ものんびりとした時間を過ごしていた。
さて、MTBの3時間エンデューロがスタートする30分前、同時開催されていたロードの3時間エンデューロがスタートしていた。ロードは平均斜度5%の上り坂を500m登り、その後平坦と下り坂が1300m続く1周約1.8kmのハイスピードコースが用意された。一部10%を越える上り坂もあり、参加者たちを苦しめる。
ロードには午前中にはXCレースを走ったライダーも参加しており、メリダ・ミヤタカップが1つのイベントでMTBとロードどちらも楽しめる稀有なイベントとなったことを実感させられた。こちらもタープが立ち並び、万全の雨天対策をしてきたチームが多く、雨の中でものんびりと選手が来るのを待っていた。
雨で路面はスリッピーになっている状況。イベント前に宇都宮ブリッツェンの大久保と鈴木両選手、GMの広瀬佳正さんによる、初心者もとい誰でも参加可能な走行講習会が開かれたためか、くだりで無茶に飛ばすライダーも少なく安全にレースを楽しんでいる。
そして、メリダ・ミヤタカップの大きな特徴でもあるのがメリダとミヤタサイクルの試乗車が数多く用意されていること。MTBはBIG.NINEやBIG.SEVENなど定番のクロスカントリーをはじめとする各種バイクが揃っており、ロードはSCULTURAを中心に試乗車が並べられていた。これらのバイクは全てレースでも使用できるという大盤振る舞いとなっており、試す方も多かったようだ。
マヴィックブースではCROSSMAX SLの試乗ホイールを用意していたりと、メリダのバイク試乗とあわせて自分の機材と比べることができる絶好の機会となった。ワコーズブースではいつも通り洗車サービスを行いながら、メンテナンスの仕方をレクチャー。大規模なイベントのブースよりもじっくり詳しく各ブースで聞くことができるのもメリダ・ミヤタカップならでは。
MTBはMTB。ロードはロード。それぞれがそれぞれ楽しんでいるとあっという間に3時間が経過してしまい、レースが終わってしまう。終了後には各レースの表彰式が行われるが、表彰対象の多さには驚きを隠せなかった。MTB3時間エンデューロだけ切り取ってみても、JCF登録チームとキッズ、ファミリー、女子、男子、男女混合と数多い。もちろん個人種目でも表彰対象が多いので、誰でもポディウムに乗るチャンスがあるのがメリダ・ミヤタカップのいいところ。
今年はあいにくの雨模様となってしまったが、雨ならば雨なりの楽しみ方ができたのではないだろうか。今年のメリダ・ミヤタカップは泥々になりながらも笑顔で走っていく姿を、雨にも負けずロードを攻めていく姿を見ると、みなさんが自転車のことを好きであることが伝わってくるイベントであった。
text&photo:Gakuto"ヘタレ"Fujiwara
29年めを迎える老舗自転車イベント「メリダ・ミヤタカップ」。今まではロードはロードイベントとして、MTBはMTBイベントとして別々に開催してきたこの大会が、今年初めてMTBとロード併催となった。11月14日(土)に神奈川県横須賀市のY-HEART地区を舞台として開催された。
Y-HEARTとは何?という方も多いはずだ。もちろん私もその1人だった。Y-HEART地区というのは、横浜横須賀道路の衣笠ICすぐ脇の森林地帯。ただの森ではなく、神奈川県が東京オリンピックへ向けてナショナルチーム用のトレーニングセンターを誘致する計画の立候補地である。
現在も東京にナショナルトレーニングセンターはあるが、それは屋内競技が中心の施設となっているという。そこで自転車競技をはじめ、ラグビーやサッカーなどに使用できる屋外用のトレーニング場所として立候補したのがY-HEART地区である。東名高速や第2京浜、第3京浜、首都高湾岸線と言った主要高速道路から、下道に降りず会場至近までアプローチできる、アクセスの良さも参加者には嬉しいポイントだろう。
このイベントのために、もともと森林地帯であったところを開発し、MTBコースを造成したという。ちなみに今後MTB常設コースとなる可能性があるとのことだ。コースのレイアウトはメイン会場をスタートすると、一気に谷を降りテクニカルなセクションへ突入する。そして、谷間から駆け上がるというテクニックと体力の両方を問われる走りごたえのある1周2.5km。
大会のホストライダーとしてマルチバン・メリダ・バイキングチームからガン・リタ ダールが来日。アルカンシェルに身を包んだXCマラソン女子の世界チャンピオンは、物腰が柔らかくキッズライダー達と積極的に交流を図ってくれる優しいお姉さんという感じだ。そして、ミヤタ・メリダ・バイキングチームの小野寺健、松尾純はMTBに、宇都宮ブリッツェンの鈴木譲、大久保陣がロードに参加した。
さて、当日は天気予報のとおり、朝から雨が降っては上がっての繰り返し。ピットエリアではテントやタープが立ち並び、さながらキャンプ村のように。各チームが身体を濡らさないように工夫をしていたようだ。この日のスタートレースとなる、スポーツ男子、ビギナー男子、女子は幸いにも雨は小康状態のなかスタートしていった。
そのあとには、参加する子どもたち親御さん全員が白熱するキッズレースが開幕する。雨もしっかりと降り始めてしまい、スタート前には風邪を引かせまいと子どもを守る親御さん達によるパラソルと防寒着のサポートが入る。その光景はエリートのレース前?と見間違えるほど圧巻だ。
どのレースでもガチンコのバトルが繰り広げられ、ゴール後には悔し泣きするアツいレーサーの姿も。キッズレースはほんわかとする印象を持っていただけに、その本気度には圧倒させられてしまった。それでもガン・リタが催行日でサポートした小学校低学年や補助輪あり、なしクラスは、会場全体が勝ち負けよりも全員に頑張れといったような空気で包まれていた。選手の親たちは本気なようでしたが…
そして、メリダ・ミヤタカップならではの種目「親子スプリント」が始まる。フルコースを2周するこのレースは、親子がペアとなり、1周めは子どもが先頭に立ち親を引っ張っていく。そして、2周めに入り発射された親御さんがバトルを展開するというもの。子どもたちの熱い走りに魅せられた親たちがギラギラした目をさせながらレースする様子も圧巻だ。
ミヤタ・メリダ・バイキングチームに加入してから毎年ホストライダーとして参加している小野寺、松尾両選手は「ファミリー層がとても多く、和気あいあいとMTBを楽しみながら、いい思い出を作ってくれているのかな」と感じているという。まさに、このファミリーレースが、選手2人が感じるメリダ・ミヤタカップを象徴しているようだと感じさせられた。
この日の主役はもちろん参加者の皆さんだが、ガン・リタ ダールと国内のエリートレーサーたちによるエキシビジョンレースにも注目が集まった。レースにはもちろん小野寺健や松尾純、昨年のMTB XC全日本選手権で優勝した與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)らエリートライダーたちが顔を揃えた。
最初の周回はペースメーカーがつくためパレードランのようになる予定だったが、そのペースメーカーを務めた和光ケミカルの山本挑さんが、かなりのハイペースで走行。いきなりレースのような厳しい展開にレースの解説を務めてくれたミヤタ・メリダ バイキングチーム監督の山路篤さんや会場にいた全員がビックリ!
選手たちはあっという間に谷までくだり、茂みに消えたと思ったら、すぐに終盤の登りに姿を現す。登りでもスピードが一段階も違う様子に観客たちは「あれ?もう帰ってきたの?」とか「おおお…!」と驚きの声が漏れ出てしまっていた。
レースはというと中盤まで先頭グループで走っていた小野寺健がパンクを喫してしまい脱落。1周めからのハイスピードな展開は周回を重ねるごとにエスカレートしていき、先頭から次々と選手がこぼれ落ちていく。そのなか、昨年のMTB XC全日本チャンピオンの武井きょうすけはペースを維持し、後続を突き放して先頭でフィニッシュを切った。
国内でもトップレベルのレースを目の当たりにして盛り上がった後には、この日最大のレースである3時間エンデューロがスタートする。レースが進行するに連れて掘り起こされていった路面は泥々に。ジャージや顔を泥まみれにしながら、駆けていく様子を見ると楽しそう。
バンピーなくだりでは跳ねるリアタイヤをコントロールしながら、ジェットコースターで落ちるかのようなスピードで飛んで行くライダー。安全第一でゆっくりと下っていくライダー。走り方は人それぞれだけれど、後ろから追い越すときは声をかけながら抜いていくなど、選手たちが自ら安全な走行をしていたのが印象的だった。
ピットエリアのテント村にはガスコンロを持ち込んで、おしるこを炊いているチームも。キャンプのようなアウトドアのような雰囲気もいい感じ。どこのチームも和気あいあいとした空気で、仲間を待つ間ものんびりとした時間を過ごしていた。
さて、MTBの3時間エンデューロがスタートする30分前、同時開催されていたロードの3時間エンデューロがスタートしていた。ロードは平均斜度5%の上り坂を500m登り、その後平坦と下り坂が1300m続く1周約1.8kmのハイスピードコースが用意された。一部10%を越える上り坂もあり、参加者たちを苦しめる。
ロードには午前中にはXCレースを走ったライダーも参加しており、メリダ・ミヤタカップが1つのイベントでMTBとロードどちらも楽しめる稀有なイベントとなったことを実感させられた。こちらもタープが立ち並び、万全の雨天対策をしてきたチームが多く、雨の中でものんびりと選手が来るのを待っていた。
雨で路面はスリッピーになっている状況。イベント前に宇都宮ブリッツェンの大久保と鈴木両選手、GMの広瀬佳正さんによる、初心者もとい誰でも参加可能な走行講習会が開かれたためか、くだりで無茶に飛ばすライダーも少なく安全にレースを楽しんでいる。
そして、メリダ・ミヤタカップの大きな特徴でもあるのがメリダとミヤタサイクルの試乗車が数多く用意されていること。MTBはBIG.NINEやBIG.SEVENなど定番のクロスカントリーをはじめとする各種バイクが揃っており、ロードはSCULTURAを中心に試乗車が並べられていた。これらのバイクは全てレースでも使用できるという大盤振る舞いとなっており、試す方も多かったようだ。
マヴィックブースではCROSSMAX SLの試乗ホイールを用意していたりと、メリダのバイク試乗とあわせて自分の機材と比べることができる絶好の機会となった。ワコーズブースではいつも通り洗車サービスを行いながら、メンテナンスの仕方をレクチャー。大規模なイベントのブースよりもじっくり詳しく各ブースで聞くことができるのもメリダ・ミヤタカップならでは。
MTBはMTB。ロードはロード。それぞれがそれぞれ楽しんでいるとあっという間に3時間が経過してしまい、レースが終わってしまう。終了後には各レースの表彰式が行われるが、表彰対象の多さには驚きを隠せなかった。MTB3時間エンデューロだけ切り取ってみても、JCF登録チームとキッズ、ファミリー、女子、男子、男女混合と数多い。もちろん個人種目でも表彰対象が多いので、誰でもポディウムに乗るチャンスがあるのがメリダ・ミヤタカップのいいところ。
今年はあいにくの雨模様となってしまったが、雨ならば雨なりの楽しみ方ができたのではないだろうか。今年のメリダ・ミヤタカップは泥々になりながらも笑顔で走っていく姿を、雨にも負けずロードを攻めていく姿を見ると、みなさんが自転車のことを好きであることが伝わってくるイベントであった。
text&photo:Gakuto"ヘタレ"Fujiwara
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