2015/11/09(月) - 09:43
10月10日、長野県白馬村岩岳にて開催されたSSWC2015ことシングルスピード世界選手権(大会のレポートはコチラ!)。大会も独特なら、前夜祭もユニーク。今回はそんな前日の様子を紹介しよう。
来年の開催国を決めるイベントが行われる前夜祭パーティも、SSWCという『お祭り』の一部だ。そのパーティでは、海外参加者をもてなしたい! と全力を尽くした日本SSer(シングルスピーダー)のウィットあふれる余興が際立っていた。2020年五輪に向けた『日本ならではのセンス良いおもてなし』のヒントがここに!
SSWC2015で最も印象的だったのは、海外からのライダーにも日本ならではの体験を提供したい、という運営スタッフの心遣いが表れていたことだ。SSWC文化では、前夜祭も大きな楽しみの一つ。 入り口では開催地である白馬の日本酒『白馬錦』とコラボした、SSWC2015のオリジナル枡(マス)が配られた。このウェルカム グッズからして、どんなパーティになるのか、想像がつこうというものだ。
このパーティで大きな存在感をかもしだしていた(しかもエントリー開始前から、登録を催促してきたという)のが、ジョー・マレーという世界MTBにおける伝説的な人物である。
ジョー・マレーは、近代的なMTBの前時代に活躍したライダーであり、フレームビルダーだ。 1980年代を代表する伝説的なXCレーサーであり、1985年に打ち立てたNORBA(全米MTB協会)レース15連勝という記録は、未だ打ち破られていない。ライダーを引退したのちはKONA、VOODOOといったブランドのフレームをデザインして名を馳せ、今もクロモリバイクブランド、SENDERO(スペイン語でトレールという意味)フレームをこっそり手がける。当年とって52歳。
パーティ開会の合図となったのは、日本ならではの『酒樽の鏡開き』。白馬錦の酒樽を開いたのは左から
・北澤肯=SSWCを日本に招致した張本人。Alternative Bike Shop主幹
・カール・デッカー=ジャイアントレーシングの『渋い』XCライダー、SSWC2008 アメリカ/ナパ大会の優勝者
・ジョー・マレー=先の方
・池田祐樹=マラソン系MTB種目の世界トッププロライダー、2015SSWCアンバサダーでもある
・アンガス・エドモンド=(2013年イタリア大会のチャンピオン)
であった。
配られた桝の中にはもちろん白馬錦がなみなみと注がれる。食べ放題にフリービアー、 食べ物も 単なるケータリングではなく、たこ焼きや日本そばといった日本ならではの食が多く並ぶ。
このSSWC実行委員長であり、日本にSS文化を持ち込んだその人と言える、北澤肯氏はレース後に「僕はシングルスピードに出会わなければ、こんなにたくさんビールを飲むこともなかった」と自嘲気味に語っているが、2013年イタリアでのSSWCから始めた招致活動から2年、日本で実現したのはひとえに北澤氏の情熱と先見の明によるものだ。
さて、次回の開催国を決めるディサイダーゲームへの参加国は南アフリカ、アメリカ、ベルギー、オーストラリアの4国。ゲームの内容は全部で4つ、そのうち3つがこの前夜祭で行われた。
1)豆をハシでつまんで移すゲーム
2)二人羽織でシュークリームとレッドブルを飲み干す
3)制限時間内にバイクでホッピングしてその回数を競う
最初の2つは、古くから愛でられてきた日本ならではのパーティゲーム。上品さとコミカルさを備えたセンスあふれる日本SSWCチームのおもてなしの心である。やることは冗談ぽいのだが、開催招致となると各国代表にも気合が入る。応援と酒の勢いもあって他の国を邪魔する、『アンフェア』に感じる行為も見られたが、それもしかたないじゃん、という『なんでもあり』が、繰り返すがSSWCの持ち味だ。
それでは二人羽織の模様を動画にてお届けしよう。
ちなみにディサイダーゲーム決勝は次の日のサイクルサッカー、であった。サドルとペダルを取り外し、バイクにまたがりボールを足で蹴るサッカーだ。決勝に進んだのはベルギーとオーストラリア。前夜のパーティでの結果と『盛り上がりと情熱』を加味した決勝進出である。その結果2016年の開催地は、オーストラリアとなった。
宴たけなわの中に、日本芸術同士のコラボレーションがあった。地元で活躍する和太鼓チーム『信州小谷太鼓』による伝統的日本音楽と、SSWCの優勝者にタトゥを彫る刺青師、初代 正志氏による日本画のライブペインティングである。流れるような太鼓の旋律がお腹に響き、墨の匂いも心地よい。巨大な半紙に目の前で描かれていく、SSWC2015のモチーフである雷神は、そのサイズから素人目には想像できなかったほど、緻密で美しい仕上がりである。
この前夜祭を締めくくるライブペインティングは、その場のオークションにて$1200で落札。その全額が長野白馬地域での地震からの復興支援に寄付されることになった。
その後、皆の手に渡り、白馬の地酒『白馬錦』で酔いの回った参加者たちは、枡を一つ一つ積み上げていった。そしてパーティの最後には大きく輪になり「ワンギア、ワンワールド」を体現する。アメリカからの参加者は「とにかくエキゾチックだ。日本以外ではできない体験と食べ物だらけだ。異文化体験というのはこういうことを言うんだね」と、その感動を表していた。
日本が世界に誇れるものはなんだろう。日本ならではの体験とはなんだろう。それを考え尽くし、海外からの参加者を出迎えた日本SSerの気持ちが、この前夜のパーティに現れていた。2020年に控えた東京五輪にも、日本を知らない多くの方が訪れることだろう。そのための、ウィットに富んだおもてなし方法のヒントが、SSWC2015にあった。
Text: Koichiro Nakamura
来年の開催国を決めるイベントが行われる前夜祭パーティも、SSWCという『お祭り』の一部だ。そのパーティでは、海外参加者をもてなしたい! と全力を尽くした日本SSer(シングルスピーダー)のウィットあふれる余興が際立っていた。2020年五輪に向けた『日本ならではのセンス良いおもてなし』のヒントがここに!
SSWC2015で最も印象的だったのは、海外からのライダーにも日本ならではの体験を提供したい、という運営スタッフの心遣いが表れていたことだ。SSWC文化では、前夜祭も大きな楽しみの一つ。 入り口では開催地である白馬の日本酒『白馬錦』とコラボした、SSWC2015のオリジナル枡(マス)が配られた。このウェルカム グッズからして、どんなパーティになるのか、想像がつこうというものだ。
このパーティで大きな存在感をかもしだしていた(しかもエントリー開始前から、登録を催促してきたという)のが、ジョー・マレーという世界MTBにおける伝説的な人物である。
ジョー・マレーは、近代的なMTBの前時代に活躍したライダーであり、フレームビルダーだ。 1980年代を代表する伝説的なXCレーサーであり、1985年に打ち立てたNORBA(全米MTB協会)レース15連勝という記録は、未だ打ち破られていない。ライダーを引退したのちはKONA、VOODOOといったブランドのフレームをデザインして名を馳せ、今もクロモリバイクブランド、SENDERO(スペイン語でトレールという意味)フレームをこっそり手がける。当年とって52歳。
パーティ開会の合図となったのは、日本ならではの『酒樽の鏡開き』。白馬錦の酒樽を開いたのは左から
・北澤肯=SSWCを日本に招致した張本人。Alternative Bike Shop主幹
・カール・デッカー=ジャイアントレーシングの『渋い』XCライダー、SSWC2008 アメリカ/ナパ大会の優勝者
・ジョー・マレー=先の方
・池田祐樹=マラソン系MTB種目の世界トッププロライダー、2015SSWCアンバサダーでもある
・アンガス・エドモンド=(2013年イタリア大会のチャンピオン)
であった。
配られた桝の中にはもちろん白馬錦がなみなみと注がれる。食べ放題にフリービアー、 食べ物も 単なるケータリングではなく、たこ焼きや日本そばといった日本ならではの食が多く並ぶ。
このSSWC実行委員長であり、日本にSS文化を持ち込んだその人と言える、北澤肯氏はレース後に「僕はシングルスピードに出会わなければ、こんなにたくさんビールを飲むこともなかった」と自嘲気味に語っているが、2013年イタリアでのSSWCから始めた招致活動から2年、日本で実現したのはひとえに北澤氏の情熱と先見の明によるものだ。
さて、次回の開催国を決めるディサイダーゲームへの参加国は南アフリカ、アメリカ、ベルギー、オーストラリアの4国。ゲームの内容は全部で4つ、そのうち3つがこの前夜祭で行われた。
1)豆をハシでつまんで移すゲーム
2)二人羽織でシュークリームとレッドブルを飲み干す
3)制限時間内にバイクでホッピングしてその回数を競う
最初の2つは、古くから愛でられてきた日本ならではのパーティゲーム。上品さとコミカルさを備えたセンスあふれる日本SSWCチームのおもてなしの心である。やることは冗談ぽいのだが、開催招致となると各国代表にも気合が入る。応援と酒の勢いもあって他の国を邪魔する、『アンフェア』に感じる行為も見られたが、それもしかたないじゃん、という『なんでもあり』が、繰り返すがSSWCの持ち味だ。
それでは二人羽織の模様を動画にてお届けしよう。
ちなみにディサイダーゲーム決勝は次の日のサイクルサッカー、であった。サドルとペダルを取り外し、バイクにまたがりボールを足で蹴るサッカーだ。決勝に進んだのはベルギーとオーストラリア。前夜のパーティでの結果と『盛り上がりと情熱』を加味した決勝進出である。その結果2016年の開催地は、オーストラリアとなった。
宴たけなわの中に、日本芸術同士のコラボレーションがあった。地元で活躍する和太鼓チーム『信州小谷太鼓』による伝統的日本音楽と、SSWCの優勝者にタトゥを彫る刺青師、初代 正志氏による日本画のライブペインティングである。流れるような太鼓の旋律がお腹に響き、墨の匂いも心地よい。巨大な半紙に目の前で描かれていく、SSWC2015のモチーフである雷神は、そのサイズから素人目には想像できなかったほど、緻密で美しい仕上がりである。
この前夜祭を締めくくるライブペインティングは、その場のオークションにて$1200で落札。その全額が長野白馬地域での地震からの復興支援に寄付されることになった。
その後、皆の手に渡り、白馬の地酒『白馬錦』で酔いの回った参加者たちは、枡を一つ一つ積み上げていった。そしてパーティの最後には大きく輪になり「ワンギア、ワンワールド」を体現する。アメリカからの参加者は「とにかくエキゾチックだ。日本以外ではできない体験と食べ物だらけだ。異文化体験というのはこういうことを言うんだね」と、その感動を表していた。
日本が世界に誇れるものはなんだろう。日本ならではの体験とはなんだろう。それを考え尽くし、海外からの参加者を出迎えた日本SSerの気持ちが、この前夜のパーティに現れていた。2020年に控えた東京五輪にも、日本を知らない多くの方が訪れることだろう。そのための、ウィットに富んだおもてなし方法のヒントが、SSWC2015にあった。
Text: Koichiro Nakamura
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