2015/08/01(土) - 09:16
7月初旬、横浜にてピナレロの2016年モデル展示会が開催された。サスペンション搭載のエンデュランスレースマシン「DOGMA K8-S」、DOGMA F8のディスクブレーキ仕様、DOGMA F8の血統を色濃く受け継いだ「GAN」シリーズなどの新モデルを筆頭に全ラインナップが一堂に会した展示会の模様をお伝えしよう。
東日本を代表する港町であり、国際色豊かな街並みが広がる神奈川県は横浜にて開催された今年のピナレロ新モデル展示会。会場に一歩脚を踏み入れれば、約50台ほどはあろうかというピナレロのフルラインアップ/フルカラーが迎え入れてくれた。
この展示会へは2016モデルの案内役としてピナレロ本社のセールスマネージャーであるルチアーノ・フサポーリ氏が来日。東日本を中心としたショップのスタッフや、関係者たちとの交流を深めた。またピナレロジャパン初めての試みとして、小売店向け展示会の閉場後にエンドユーザー向けの展示会を開催したこともトピックス。開場時間を20分早めるほどの盛況ぶりで、広々としたホールが来場者で満杯になるなど、いかにピナレロが日本で愛されているのかを示す結果に。上級者から初心者まで幅広い層のサイクリストが脚を運んだ。
さて、今年も大人気となることが予想されるピナレロのラインアップの中でも、特に大きな注目を集めているのが「GAN」シリーズだろう。誰もが羨むハイエンド「DOGMA F8」の登場から僅か1年ながら、その血統を色濃く受け継いでおり、関係者も入念に話題のモデルをチェックしていた。
GANシリーズについて「DOGMA F8の成功があったからこそ、リリースすることができました」と語るのはルチアーノさん。「DOGMA F8は確かに高性能で、世界中から高い評価を得ているのは間違いないのですが、それ故に高価で誰しもが乗れるわけでもないことも事実。そこで、もっと手軽に最新のテクノロジーを味わってもらいたいと考え、GANシリーズを開発しました」と続ける。国内ではピナレロを駆るチームスカイの人気が高く、あこがれの選手たちのマシンと同じデザインのバイクとあれば、大人気となることは必須だ(GANの詳細はこちらから)。
その一方でPRINCE、RAZHA、NEROと2つの湾曲を持つ「ONDA」フォーク&シートステーを搭載した3モデルを引き続きラインアップ。これは、よりイタリアンバイクらしい曲線美を好むユーザーからの声を受けてのものだそう。ただ、これと同じように「昔のバイクをまた作ってほしい」という声がピナレロには多く寄せられるそうだが、リバイバルをすることは絶対にないとのこと。筆者の個人的な話にはなるが学生時代にあこがれていたものの高価でとても手を出せなかったマグネシウム製DOGMAを再販してくれないかなと思っていただけにちょっぴり残念。
そして、拡充された女性用モデル「EZ-Fit」にも注目が。昨今の弱虫ペダル人気も手伝って、ショップの店頭では女性用モデルの需要が非常に高く、ピナレロ指名買いという女性エンドユーザーも少なくないそう。GANシリーズの3グレードにPRINCEとRAZHAを加えた5モデル展開と豊富で、幅広いニーズに対応する豊富なラインアップはピナレロの女性人気をさらに高めることになりそうだ。
ユーザーの声に則したバイクラインアップの一方で、レースシーンへの積極的な機材サポートもピナレロが高い人気を得てきた理由の一つ。直近では6月にアワーレコード新記録を樹立したブラドレー・ウィギンズのバイクもピナレロ製であった。この「Bolide HR」と名付けられたウィギンズ専用マシンには「驚くべき開発エピソードが沢山あります」とルチアーノさんは語る。
ピナレロは90年代初頭からTTバイクの開発に注力しつづけており、ミゲル・インデュラインのエスパーダやヤン・ウルリッヒのパリジーナなどの歴史的な名作TTバイクを生み出してきた。想像できる通り、スペシャルバイクは市販されることもなく、開発費を回収することはできないそうだが、ルチアーノさんは「レーシングブランドとしての地位を高め続けるため、そして自らの技術を高めるためには重要なことなのです」という。
ちなみに「Bolide HR」の開発に要した時間はわずかに6ヶ月だが、その根本にはこれまで培ってきた経験やノウハウ、ベースとなったBolideのタイムトライアルモデルの優れた空力性能があったそう。同時に既存の技術に囚われないユニークな試みも行われた。その一つがコンピューターシミュレーションで、挑戦の舞台となったロンドンのリーヴァレー・ヴェロパークをコンピューター上で図面化し、流体力学的な解析を実施。これによりエアロダイナミクスを極限まで追求することに成功した。
そしてもう一つの新しい試みが3Dプリンターの活用だ。今回の挑戦に向けてピナレロは世界に10台もないという、最新鋭の3Dプリンターを導入し、ウィギンズのライディングポジションに最適化したワンオフのハンドルをチタン製ハンドルを作成。「カーボンは型が必要なことから何度も作りなおすわけには行きませんが、3Dプリンターであれば細部を調整して作りなおしても、比較的コスト的も時間的もかかりません」というのが、この取り組みの理由だ。すでに3Dプリンターの新たな活用法についての研究もピナレロの社内ではスタートしているそう。(その他のBolide HRに関する詳細はこちらから)
TTバイク同様にピナレロが注力してきたもうのが、ディスクブレーキ仕様のロードバイクだ。この秋からプロレースで試験的に導入されるというタイミングで、ピナレロがリリースしたのが「DOGMA F8 DISC」と「GAN DISC」という2モデルである。今回の展示会でも、そう遠くないであろうロードディスクの普及にむけて、ショップ関係者の皆さんも、入念にチェックしたり、ディスカッションしたりという光景が見られた。
この2モデルに共通するのが、キャリパーブレーキ仕様との差異が少ないということだ。というのも、従来のフラッグシップである「DOGMA 65.1」はディスクブレーキの強い制動力に対応すべく、キャリパーブレーキ仕様から大幅なモデファイを行っていた。この変化については「シマノが発表した新規格『Flatmount』を採用することで、差異を抑えることができました。強化したのはチェーンステーぐらいですね」とルチアーノさんは解説。
またディスクブレーキロードの現状については、「フレームとパーツの開発が別々に行われており、お互いに理想とする所に違うが故に標準規格が上手く定まらないのでしょう」と分析。本格的な普及は標準規格が確立されてきてからというのがピナレロの見解だ。
ディスクブレーキ仕様と同じく、DOGMAの派生モデルとして誕生したのが「K8-S」。MTBの様にリンクを設けるわけではなく、素材のしなりを利用したリアのサスペンション機構は、カーボンに精通するピナレロだからこそで成し得たものといえるだろう。ルチアーノさんは快適性だけではないバーサタイルな走行性能に自信を見せる。
「春のクラシックでデビューしましたが、石畳だけが得意という分けではありません。ジロ・デ・イタリアでは比較的舗装の粗い南部が舞台のステージでチームスカイの数名のライダーが使用しました。十分に軽く、そしてエアロ性能も高いことからあらゆるシチュエーションに対応してくれますね。」
更にDOGMA F8で培ったテクノロジーを活かした新モデルの登場により厚みを増したピナレロ。「ぜひテストライドで性能を体感してほしい。そうすることで、ピナレロがもつ優位性がわかっていただけるはずです」という2016ラインアップは順次デリバリーが開始されている。
text&photo:Yuya.Yamamoto
東日本を代表する港町であり、国際色豊かな街並みが広がる神奈川県は横浜にて開催された今年のピナレロ新モデル展示会。会場に一歩脚を踏み入れれば、約50台ほどはあろうかというピナレロのフルラインアップ/フルカラーが迎え入れてくれた。
この展示会へは2016モデルの案内役としてピナレロ本社のセールスマネージャーであるルチアーノ・フサポーリ氏が来日。東日本を中心としたショップのスタッフや、関係者たちとの交流を深めた。またピナレロジャパン初めての試みとして、小売店向け展示会の閉場後にエンドユーザー向けの展示会を開催したこともトピックス。開場時間を20分早めるほどの盛況ぶりで、広々としたホールが来場者で満杯になるなど、いかにピナレロが日本で愛されているのかを示す結果に。上級者から初心者まで幅広い層のサイクリストが脚を運んだ。
さて、今年も大人気となることが予想されるピナレロのラインアップの中でも、特に大きな注目を集めているのが「GAN」シリーズだろう。誰もが羨むハイエンド「DOGMA F8」の登場から僅か1年ながら、その血統を色濃く受け継いでおり、関係者も入念に話題のモデルをチェックしていた。
GANシリーズについて「DOGMA F8の成功があったからこそ、リリースすることができました」と語るのはルチアーノさん。「DOGMA F8は確かに高性能で、世界中から高い評価を得ているのは間違いないのですが、それ故に高価で誰しもが乗れるわけでもないことも事実。そこで、もっと手軽に最新のテクノロジーを味わってもらいたいと考え、GANシリーズを開発しました」と続ける。国内ではピナレロを駆るチームスカイの人気が高く、あこがれの選手たちのマシンと同じデザインのバイクとあれば、大人気となることは必須だ(GANの詳細はこちらから)。
その一方でPRINCE、RAZHA、NEROと2つの湾曲を持つ「ONDA」フォーク&シートステーを搭載した3モデルを引き続きラインアップ。これは、よりイタリアンバイクらしい曲線美を好むユーザーからの声を受けてのものだそう。ただ、これと同じように「昔のバイクをまた作ってほしい」という声がピナレロには多く寄せられるそうだが、リバイバルをすることは絶対にないとのこと。筆者の個人的な話にはなるが学生時代にあこがれていたものの高価でとても手を出せなかったマグネシウム製DOGMAを再販してくれないかなと思っていただけにちょっぴり残念。
そして、拡充された女性用モデル「EZ-Fit」にも注目が。昨今の弱虫ペダル人気も手伝って、ショップの店頭では女性用モデルの需要が非常に高く、ピナレロ指名買いという女性エンドユーザーも少なくないそう。GANシリーズの3グレードにPRINCEとRAZHAを加えた5モデル展開と豊富で、幅広いニーズに対応する豊富なラインアップはピナレロの女性人気をさらに高めることになりそうだ。
ユーザーの声に則したバイクラインアップの一方で、レースシーンへの積極的な機材サポートもピナレロが高い人気を得てきた理由の一つ。直近では6月にアワーレコード新記録を樹立したブラドレー・ウィギンズのバイクもピナレロ製であった。この「Bolide HR」と名付けられたウィギンズ専用マシンには「驚くべき開発エピソードが沢山あります」とルチアーノさんは語る。
ピナレロは90年代初頭からTTバイクの開発に注力しつづけており、ミゲル・インデュラインのエスパーダやヤン・ウルリッヒのパリジーナなどの歴史的な名作TTバイクを生み出してきた。想像できる通り、スペシャルバイクは市販されることもなく、開発費を回収することはできないそうだが、ルチアーノさんは「レーシングブランドとしての地位を高め続けるため、そして自らの技術を高めるためには重要なことなのです」という。
ちなみに「Bolide HR」の開発に要した時間はわずかに6ヶ月だが、その根本にはこれまで培ってきた経験やノウハウ、ベースとなったBolideのタイムトライアルモデルの優れた空力性能があったそう。同時に既存の技術に囚われないユニークな試みも行われた。その一つがコンピューターシミュレーションで、挑戦の舞台となったロンドンのリーヴァレー・ヴェロパークをコンピューター上で図面化し、流体力学的な解析を実施。これによりエアロダイナミクスを極限まで追求することに成功した。
そしてもう一つの新しい試みが3Dプリンターの活用だ。今回の挑戦に向けてピナレロは世界に10台もないという、最新鋭の3Dプリンターを導入し、ウィギンズのライディングポジションに最適化したワンオフのハンドルをチタン製ハンドルを作成。「カーボンは型が必要なことから何度も作りなおすわけには行きませんが、3Dプリンターであれば細部を調整して作りなおしても、比較的コスト的も時間的もかかりません」というのが、この取り組みの理由だ。すでに3Dプリンターの新たな活用法についての研究もピナレロの社内ではスタートしているそう。(その他のBolide HRに関する詳細はこちらから)
TTバイク同様にピナレロが注力してきたもうのが、ディスクブレーキ仕様のロードバイクだ。この秋からプロレースで試験的に導入されるというタイミングで、ピナレロがリリースしたのが「DOGMA F8 DISC」と「GAN DISC」という2モデルである。今回の展示会でも、そう遠くないであろうロードディスクの普及にむけて、ショップ関係者の皆さんも、入念にチェックしたり、ディスカッションしたりという光景が見られた。
この2モデルに共通するのが、キャリパーブレーキ仕様との差異が少ないということだ。というのも、従来のフラッグシップである「DOGMA 65.1」はディスクブレーキの強い制動力に対応すべく、キャリパーブレーキ仕様から大幅なモデファイを行っていた。この変化については「シマノが発表した新規格『Flatmount』を採用することで、差異を抑えることができました。強化したのはチェーンステーぐらいですね」とルチアーノさんは解説。
またディスクブレーキロードの現状については、「フレームとパーツの開発が別々に行われており、お互いに理想とする所に違うが故に標準規格が上手く定まらないのでしょう」と分析。本格的な普及は標準規格が確立されてきてからというのがピナレロの見解だ。
ディスクブレーキ仕様と同じく、DOGMAの派生モデルとして誕生したのが「K8-S」。MTBの様にリンクを設けるわけではなく、素材のしなりを利用したリアのサスペンション機構は、カーボンに精通するピナレロだからこそで成し得たものといえるだろう。ルチアーノさんは快適性だけではないバーサタイルな走行性能に自信を見せる。
「春のクラシックでデビューしましたが、石畳だけが得意という分けではありません。ジロ・デ・イタリアでは比較的舗装の粗い南部が舞台のステージでチームスカイの数名のライダーが使用しました。十分に軽く、そしてエアロ性能も高いことからあらゆるシチュエーションに対応してくれますね。」
更にDOGMA F8で培ったテクノロジーを活かした新モデルの登場により厚みを増したピナレロ。「ぜひテストライドで性能を体感してほしい。そうすることで、ピナレロがもつ優位性がわかっていただけるはずです」という2016ラインアップは順次デリバリーが開始されている。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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