2014/07/27(日) - 09:59
梅雨明けを目前に控えた海の日の7月21日(月・祝)、静岡県伊豆市修善寺にある日本サイクルスポーツセンター5kmサーキットにて、”第17回CSC5時間耐久チームサイクルロードレース”が開催された。夏らしい太陽が照りつけるなか全121チームが、自転車専用サーキットを駆け抜けた。
夏の強い陽射しのもと開催された「第17回CSC5時間耐久チームサイクルロードレース」は、通称「CSC5時間ロード」と呼ばれ、今回で17回目を迎える老舗イベント。タイトルで「チーム」と謳っているものの1人で走りきるソロ部門も用意された門戸が広いエンデューロレースだ。
舞台となった”日本サイクルスポーツセンター(通称CSC)”は、サイクルスポーツの普及を目的として1965年に開設され、ロード、MTB、トラックなど様々な競技向けのコースを有する施設だ。サーキットに加えて、サイクルコースターや流水プールなどアトラクションも併設され、ファミリーからも親しまれている。
静岡県伊豆市修善寺に位置する日本CSCは、東名高速道路と伊豆縦貫自動車道を使えば、都内や東海地区からアクセスしやすい場所にある。ちなみに、伊豆・修善寺は夏目漱石や芥川龍之介ら近代文学を代表する文豪も訪れた温泉地。レース前後に宿泊して観光を楽しむのも良いだろう。
昨年に引き続き、今大会も海の日の7月21日に開催された。海の日とは7月の第3月曜日が休日となる国民の祝日のひとつで、この3連休から夏休みに入る小中学校や高校が多いそう。ちなみに、施行されたのは1996年で今年で18回目を迎える祝日だ。
走行コースはプロロードレーサー達が数多くの名レースを繰り広げてきたロード用5kmサーキット。その特徴は、ほぼ全ての区間がアップダウンのみで構成され、最大斜度は10%、下り最大斜度は12%という走り応えが十二分にあるコースプロフィールにある。道幅がたっぷり取られているため、スピード差があるライダーが混走しても安全に追い抜きやすくなっている。
大会には地元静岡や東海、関東から121チーム、368名が集まった。参加者を見てみると学校の仲間やショップの仲間などのチームがほとんどで、のんびりとしたアットホームな雰囲気が取材する我々に伝わってくる。成績上位を狙う強豪チームはローラー台でアップを、そうでないチームは談笑しながらストレッチをしてケガのないよう準備を行っていた。
スタート時刻は暑さ対策として昨年より1時間早くなった、午前9時。ジリジリと気温が上がり始めた所でレースが始まる。結果を求める熱量の高いライダーたちを先頭に全てのチームがスタートラインを切り、最初の上り坂を駆け上がっていく。
ちなみに、この大会の一風変わった特徴は、隣接する競輪学校の教官たちが伴走オートバイ、それも普段ペーサー練習で使っている車両!を走らせることだ。後部に選手の前輪が当たっても大丈夫なローラーとメガホンを備えた大排気量のバイクは、いかにも「モノホン」な凄みがあってカッコいい。休憩中の教官さんを捕まえて話を聞いてみた。
―お疲れ様です!お揃いのバイクで格好いいですね。
普段はバンクでしか使わないから、今日みたいにロードコースを走らせたら簡単にステップ擦っちゃうよ(笑)。でもこのイベント以外には使わないから良い機会だね。
―このバイクを使ってどんな普段はどんなコーチングをしているんですか?
最高速度で引っ張る練習とか、ある程度の距離で先行して、このバイクを目標に追い込みのタイミングを覚える練習とか様々。スピードや距離感を養う練習に使っているよ。
―競輪のトップ選手はどのくらいのスピードで走れるんですか?
ある程度力のある選手だったら52×13ギアで90km/hくらい一定時間を踏める。このバイクならぴったり張り付けるので、とても良い練習になるんだ。
―へぇ、一度やってみたいものです。
今から牽いてあげようか?生徒の訓練みたいに「オラ走れ!」「遅れんなこの○×△□…!!」とか声掛けてあげますよ(笑)。
―ひえ~、結構です!
アップダウンしかないコースを1周しないうちに集団はバラバラになり、ライダーたちは思い思いのスピードで激しい起伏をこなしはじめる展開に。1周目の終わりから「まだ交代できないの!?」とピットに声をかけるライダーも。しかし、その方の顔に笑顔を見て取れたのは私だけだろうか。コースのキツさを楽しんでいるようだ。
スタートから30分でピットが開かれ、第一走者たちが次々と帰ってくる。仲間が待つピットに到着する第一走者の多くは「思ったよりもキツい!」と声をあげていたが、やはり、ここでも笑顔で苦しいということを告げており、参加者はライディングを純粋に楽しんでいると感じさせられる場面だった。
ピットレーンではレーン内での追い抜き禁止などのアナウンスが繰り返し行われ、接触事故が多いピットエリアでの安全管理が徹底されていた。ルールを破るとペナルティが与えられるとのことだったが、ペナルティを受けたチームはいなかったようだ。
気温が上がり始めた10時頃、最初の登り区間のシャワーポイントで放水が始まると、続々とライダー達が火照った体を冷やすためにシャワーの中に飛び込んでくる。思わず「ク~ッ!」と声を上げるライダーも。水で元気を取り戻したライダー達は頂上に向けてダンシングで駆け抜けていく。同時に放水され始めたピットエリアのシャワーポイントも走り終えた参加者たちが続々とやってきて、ジャージごと体を冷やし疲れを癒していた。
今回、ブースを展開していたのは景品としてエナジーバーを数多く提供していたゼータトレーディングやホイールの貸出をしていたゴキソ、パーリーの試乗車を用意していたRGTエンタープライズ、日本に再上陸を果たすバイクブランドのウィンスペースだ。
さらに、機材のブースに加えて、無線機の貸出を行っていた地元の企業のむせんZone24や、昨年に引き続きメカニックサービスを提供していた沼津のプロショップナカムラのブースが展開され、待機中の参加者が多く訪れた。
お昼が近くなるとピットエリアに煙が上がり始める。先着10チーム限定に用意されたバーベキューPITでお昼ごはんの準備が始まっていたのだ。用意された食材セットの他にも自分たちで持ち込んで、BBQを盛り上げていたチームも。家族連れのチームではお子さんが美味しそうにお肉を頬張る姿が微笑ましかった。
ホームストレート脇にある管制塔ではコース上に設置されたカメラの映像をチェックしており、万が一、落車があった際も素早く情報を察知できる体制が取られていた。アクシデントの情報はMCを通して走行するライダーにすぐさま伝えられるなど、安心感のある運営であると感じさせられた。
レース中に吹いた風は観戦者にとっては体を冷やす恵みの風となったが、走行する選手にとっては進行を阻む向かい風となってしまった。風が正面から吹き付ける中、四苦八苦しながらも走り続ける選手たちは向かい風も含めたレースを楽しんでいるようだった。そんな中、先頭集団は協力してローテ―ションを回しながら辛い場面を乗り越える。
競技終了時間が近づいてくると表彰台を狙うチームの最終走者がローラー台でアップを始めたり、熱の入った応援が繰り広げられた。そしてピットクローズ。観戦者たちがホームストレート脇にビッシリと詰めかけ、エールを送る。中には時間内に戻れなかったライダーもいたようだ。
総合優勝のBeach Racingをはじめ、数多くのチームが魂心のガッツポーズを繰り出したり、チームメイトに手を振りながらゴール。5時間を共に戦ったチームメイトを暖かく迎え、ほとんどの参加者が笑顔でレースを終える姿を見ると、耐久レースもいいなあと感じさせられた。
終始イベントの雰囲気はのんびりしており、参加者たちは思い思いに5時間ロードを楽しんでいた。ゆったりとした空気となっている理由を「走行に夢中になれるよう特別にステージイベントは行わないから」と日本CSCの藤井さんは言う。スケジューリングがされておらず、慌ただしく動かなくてもよいイベント運営がマイペースでのんびりとした雰囲気を作っていたようだ。
日本CSCの5kmコースは通常営業日でも走れるが、100人を超す集団で走れるのはこのイベントならでは。ぜひ来年も海の日での開催を予定しているらしいので、参加したい人は今からスケジュールを空けておくのもいいだろう。
text:Gakuto.Fujiwara
photo:So.Isobe Gakuto.Fujiwara
夏の強い陽射しのもと開催された「第17回CSC5時間耐久チームサイクルロードレース」は、通称「CSC5時間ロード」と呼ばれ、今回で17回目を迎える老舗イベント。タイトルで「チーム」と謳っているものの1人で走りきるソロ部門も用意された門戸が広いエンデューロレースだ。
舞台となった”日本サイクルスポーツセンター(通称CSC)”は、サイクルスポーツの普及を目的として1965年に開設され、ロード、MTB、トラックなど様々な競技向けのコースを有する施設だ。サーキットに加えて、サイクルコースターや流水プールなどアトラクションも併設され、ファミリーからも親しまれている。
静岡県伊豆市修善寺に位置する日本CSCは、東名高速道路と伊豆縦貫自動車道を使えば、都内や東海地区からアクセスしやすい場所にある。ちなみに、伊豆・修善寺は夏目漱石や芥川龍之介ら近代文学を代表する文豪も訪れた温泉地。レース前後に宿泊して観光を楽しむのも良いだろう。
昨年に引き続き、今大会も海の日の7月21日に開催された。海の日とは7月の第3月曜日が休日となる国民の祝日のひとつで、この3連休から夏休みに入る小中学校や高校が多いそう。ちなみに、施行されたのは1996年で今年で18回目を迎える祝日だ。
走行コースはプロロードレーサー達が数多くの名レースを繰り広げてきたロード用5kmサーキット。その特徴は、ほぼ全ての区間がアップダウンのみで構成され、最大斜度は10%、下り最大斜度は12%という走り応えが十二分にあるコースプロフィールにある。道幅がたっぷり取られているため、スピード差があるライダーが混走しても安全に追い抜きやすくなっている。
大会には地元静岡や東海、関東から121チーム、368名が集まった。参加者を見てみると学校の仲間やショップの仲間などのチームがほとんどで、のんびりとしたアットホームな雰囲気が取材する我々に伝わってくる。成績上位を狙う強豪チームはローラー台でアップを、そうでないチームは談笑しながらストレッチをしてケガのないよう準備を行っていた。
スタート時刻は暑さ対策として昨年より1時間早くなった、午前9時。ジリジリと気温が上がり始めた所でレースが始まる。結果を求める熱量の高いライダーたちを先頭に全てのチームがスタートラインを切り、最初の上り坂を駆け上がっていく。
ちなみに、この大会の一風変わった特徴は、隣接する競輪学校の教官たちが伴走オートバイ、それも普段ペーサー練習で使っている車両!を走らせることだ。後部に選手の前輪が当たっても大丈夫なローラーとメガホンを備えた大排気量のバイクは、いかにも「モノホン」な凄みがあってカッコいい。休憩中の教官さんを捕まえて話を聞いてみた。
―お疲れ様です!お揃いのバイクで格好いいですね。
普段はバンクでしか使わないから、今日みたいにロードコースを走らせたら簡単にステップ擦っちゃうよ(笑)。でもこのイベント以外には使わないから良い機会だね。
―このバイクを使ってどんな普段はどんなコーチングをしているんですか?
最高速度で引っ張る練習とか、ある程度の距離で先行して、このバイクを目標に追い込みのタイミングを覚える練習とか様々。スピードや距離感を養う練習に使っているよ。
―競輪のトップ選手はどのくらいのスピードで走れるんですか?
ある程度力のある選手だったら52×13ギアで90km/hくらい一定時間を踏める。このバイクならぴったり張り付けるので、とても良い練習になるんだ。
―へぇ、一度やってみたいものです。
今から牽いてあげようか?生徒の訓練みたいに「オラ走れ!」「遅れんなこの○×△□…!!」とか声掛けてあげますよ(笑)。
―ひえ~、結構です!
アップダウンしかないコースを1周しないうちに集団はバラバラになり、ライダーたちは思い思いのスピードで激しい起伏をこなしはじめる展開に。1周目の終わりから「まだ交代できないの!?」とピットに声をかけるライダーも。しかし、その方の顔に笑顔を見て取れたのは私だけだろうか。コースのキツさを楽しんでいるようだ。
スタートから30分でピットが開かれ、第一走者たちが次々と帰ってくる。仲間が待つピットに到着する第一走者の多くは「思ったよりもキツい!」と声をあげていたが、やはり、ここでも笑顔で苦しいということを告げており、参加者はライディングを純粋に楽しんでいると感じさせられる場面だった。
ピットレーンではレーン内での追い抜き禁止などのアナウンスが繰り返し行われ、接触事故が多いピットエリアでの安全管理が徹底されていた。ルールを破るとペナルティが与えられるとのことだったが、ペナルティを受けたチームはいなかったようだ。
気温が上がり始めた10時頃、最初の登り区間のシャワーポイントで放水が始まると、続々とライダー達が火照った体を冷やすためにシャワーの中に飛び込んでくる。思わず「ク~ッ!」と声を上げるライダーも。水で元気を取り戻したライダー達は頂上に向けてダンシングで駆け抜けていく。同時に放水され始めたピットエリアのシャワーポイントも走り終えた参加者たちが続々とやってきて、ジャージごと体を冷やし疲れを癒していた。
今回、ブースを展開していたのは景品としてエナジーバーを数多く提供していたゼータトレーディングやホイールの貸出をしていたゴキソ、パーリーの試乗車を用意していたRGTエンタープライズ、日本に再上陸を果たすバイクブランドのウィンスペースだ。
さらに、機材のブースに加えて、無線機の貸出を行っていた地元の企業のむせんZone24や、昨年に引き続きメカニックサービスを提供していた沼津のプロショップナカムラのブースが展開され、待機中の参加者が多く訪れた。
お昼が近くなるとピットエリアに煙が上がり始める。先着10チーム限定に用意されたバーベキューPITでお昼ごはんの準備が始まっていたのだ。用意された食材セットの他にも自分たちで持ち込んで、BBQを盛り上げていたチームも。家族連れのチームではお子さんが美味しそうにお肉を頬張る姿が微笑ましかった。
ホームストレート脇にある管制塔ではコース上に設置されたカメラの映像をチェックしており、万が一、落車があった際も素早く情報を察知できる体制が取られていた。アクシデントの情報はMCを通して走行するライダーにすぐさま伝えられるなど、安心感のある運営であると感じさせられた。
レース中に吹いた風は観戦者にとっては体を冷やす恵みの風となったが、走行する選手にとっては進行を阻む向かい風となってしまった。風が正面から吹き付ける中、四苦八苦しながらも走り続ける選手たちは向かい風も含めたレースを楽しんでいるようだった。そんな中、先頭集団は協力してローテ―ションを回しながら辛い場面を乗り越える。
競技終了時間が近づいてくると表彰台を狙うチームの最終走者がローラー台でアップを始めたり、熱の入った応援が繰り広げられた。そしてピットクローズ。観戦者たちがホームストレート脇にビッシリと詰めかけ、エールを送る。中には時間内に戻れなかったライダーもいたようだ。
総合優勝のBeach Racingをはじめ、数多くのチームが魂心のガッツポーズを繰り出したり、チームメイトに手を振りながらゴール。5時間を共に戦ったチームメイトを暖かく迎え、ほとんどの参加者が笑顔でレースを終える姿を見ると、耐久レースもいいなあと感じさせられた。
終始イベントの雰囲気はのんびりしており、参加者たちは思い思いに5時間ロードを楽しんでいた。ゆったりとした空気となっている理由を「走行に夢中になれるよう特別にステージイベントは行わないから」と日本CSCの藤井さんは言う。スケジューリングがされておらず、慌ただしく動かなくてもよいイベント運営がマイペースでのんびりとした雰囲気を作っていたようだ。
日本CSCの5kmコースは通常営業日でも走れるが、100人を超す集団で走れるのはこのイベントならでは。ぜひ来年も海の日での開催を予定しているらしいので、参加したい人は今からスケジュールを空けておくのもいいだろう。
text:Gakuto.Fujiwara
photo:So.Isobe Gakuto.Fujiwara
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