2012/12/08(土) - 09:11
シュワルべがリリースしたクロクロス用チューブラータイヤ「レーシングラルフHT 700×33C」をインプレッションする。シュワルベのMTBタイヤのテクノロジーを生かしたハンドメイドによる本格レーシングモデルだ。
クロスカントリー用MTBタイヤで定番として好評を博している「レーシングラルフ」の名前を冠したシクロクロス用 700X33Cタイヤ、シュワルベ レーシングラルフHT 700×33C は、MTBタイヤのレーシングラルフの特徴である低く連続したブロックパターンを採用している。MTBタイヤでは、乾いた路面はもちろん、湿った路面においてもスムーズで扱い易く優れた性能を発揮。「Uブロック」と呼ぶその特徴的なサイドノブによって、バイクを傾けた際の限界が分かりやすく、適度なしなやかさを持ったケーシングがしっかりと路面に追従すると定評がある。
MTBタイヤのこれらの要素をもとに、シクロクロス用として軽量にまとめ上げたのが「レーシングラルフHT 」だ。タイヤサイズはUCIレギュレーションに適合した700×33Cサイズとなる。
ディテール(チューブラーバージョン)
クリンチャーバージョンも用意されるが、シクロクロスレースに本格的に取り組むレーサーに向けたチューブラータイヤを今回はテストした。ハンドメイドの名のとおり、高い技能を持った職人達によって1本1本丁寧に作られるレース用タイヤだ。
ラテックスチューブを内蔵し、しなやかさを備える。ドライ〜ウェット路面までオールマイティに活躍するコンペティションタイヤだ。
このタイヤを過去シクロクロス日本代表選手となった経歴を持つおなじみ鈴木祐一(Rise Ride)に、レースで実際に使用したフィーリングをつづってもらった。
インプレッション by 鈴木祐一(Rise Ride)
30㎜前後の細めのタイヤでオフロードをハイスピードで駆け抜けるシクロクロス。レース用として長い時代、シクロクロスタイヤの頂点と君臨してきたのは、しなやかなコットンやセタなどの高級天然素材をケーシングに用いたハンドメイドチューブラータイヤでした。
同じオフロードを走るマウンテンバイクと比較すると、サスペンションも無く、ほとんどのパーツがロード用であり、唯一ブレーキが泥詰まり対策のためカンティブレーキを使いロードレーサーを原型としていたシクロクロスバイクは、タイヤの性能がそれらのハンドメイドチューブラータイヤでも十分な性能「でした」。
しかし、近年はホイールやフレームにカーボン素材を使ってシクロクロス専用品として製品開発されることが増え、機材の進化は他ジャンル同様に進んでいます。ディスクブレーキの登場もひとつの転換点だと思います。ならばタイヤもそれらに合わせた高い性能のものが求められてきたという事をシュワルベは感じてこのタイヤの開発に着手したのだと思います。
今回のインプレッションは実際のレースでテストする機会に恵まれました。レースはドライコンディションだったGPミストラル第3戦と、マッドコンディションだった野辺山シクロクロスの2戦。
「新時代のCXバイクの性能にマッチした総合性能をもつレーシングタイヤだ」
このタイヤは公称では「2気圧まで空気圧を落とせる」とされていますが、これはメーカー側が推奨できる値としてある程度タイヤが外れないマージンを取ったもので、実際には2気圧以下、テクニックのあるトップライダーの場合は状況によっては1気圧近くまでの超低圧で使うことが前提のはず。リムセメントによる接着のため、低圧での使用は自己責任の部分と言えるだろう。
レースで使った印象はズバリ、「今まで経験したことのないシクロクロスレーシングタイヤ」だと言えます。グリップ力、ブレーキング性能、軽さ、路面追従性、乗り心地…シクロクロスレーシングタイヤに求められるその全てで、いままでのタイヤを凌駕する性能を持っていると感じました。
なかでもグリップ性能は一番驚かされたポイントです。
コーナーリングでのグリップ性能では、今まで“ケーシングのしなやかさ+空気圧”で路面との接地面を稼ぎタイヤをグリップさせる方法が一般的でしたが、レーシングラルフはこの二つの要素に、ロードやMTBタイヤの開発で培ったコンパウンドのグリップ力という要素と、MTBタイヤでも定評のある高性能なブロックパターンという2つの要素を加えてグリップを稼いでいる印象です。
GPミストラル第3戦のようなドライコンディションでは、コンパウンドが路面とのグリップを稼ぎ、野辺山シクロクロスのようなマッドコンディションではブロックパターンがしっかりと路面を捉えているフィーリングがありました。
ブレーキング時のグリップ性能も同様に、“ヨレることのないブロックパターン+コンパウンドによる高グリップ力+路面をしっかりと捉えることのできるしなやかなケーシング”に適した空気圧を加えることにより、レーシングスピードでもブレーキング性能が格段に向上していました。コーナーギリギリまでブレーキを我慢する走りが可能になって、平均速度の向上につながりました。
“しなやかさ+空気圧”という2つの要素によってグリップ力を稼いでいた今までのシクロクロスタイヤから、さらにプラスして“ブロックパターン+コンパウンド”という4つの要素が高次元で組み合わされることでグリップを稼いでいるレーシングラルフHTは、どんなライダーが乗ってもその次元の高さを感じ取れる性能を持っています。
これほどまでに高性能なグリップ力はレースで大きな武器になると思います。とくに数年前より競技で使用できるようになったディスクブレーキのもつストッピングパワーやコントロール性能の安定感を、より高いレベルで引き出してくれるのではないでしょうか。
言い換えれば、近年シクロクロス専用に開発されたフレームやパーツ類、ディスクブレーキなどの新時代シクロクロスパーツで組み上げられたレースバイクの性能を十分に発揮させることができる新時代のシクロクロスタイヤだと感じました。
商品の性格的には、シクロクロスというニッチ市場のなかでもさらにレーサーだけが対象というコアな商品です。おまけに価格も高い。ともすると販売側は売れない場合のリスクを恐れて輸入を渋らざるをえない商品とも言えます。しかしこの高性能を強く求める層は確実に存在しますから、ディストリビューターさんにはぜひ積極的な輸入をお願いしたいと思います。
シュワルベ RACING RALPH HT
700×33Cチューブラー
重量:395g
Pace Star
¥14,490(税込)
1月末入荷予定
クロスカントリー用MTBタイヤで定番として好評を博している「レーシングラルフ」の名前を冠したシクロクロス用 700X33Cタイヤ、シュワルベ レーシングラルフHT 700×33C は、MTBタイヤのレーシングラルフの特徴である低く連続したブロックパターンを採用している。MTBタイヤでは、乾いた路面はもちろん、湿った路面においてもスムーズで扱い易く優れた性能を発揮。「Uブロック」と呼ぶその特徴的なサイドノブによって、バイクを傾けた際の限界が分かりやすく、適度なしなやかさを持ったケーシングがしっかりと路面に追従すると定評がある。
MTBタイヤのこれらの要素をもとに、シクロクロス用として軽量にまとめ上げたのが「レーシングラルフHT 」だ。タイヤサイズはUCIレギュレーションに適合した700×33Cサイズとなる。
ディテール(チューブラーバージョン)
クリンチャーバージョンも用意されるが、シクロクロスレースに本格的に取り組むレーサーに向けたチューブラータイヤを今回はテストした。ハンドメイドの名のとおり、高い技能を持った職人達によって1本1本丁寧に作られるレース用タイヤだ。
ラテックスチューブを内蔵し、しなやかさを備える。ドライ〜ウェット路面までオールマイティに活躍するコンペティションタイヤだ。
このタイヤを過去シクロクロス日本代表選手となった経歴を持つおなじみ鈴木祐一(Rise Ride)に、レースで実際に使用したフィーリングをつづってもらった。
インプレッション by 鈴木祐一(Rise Ride)
30㎜前後の細めのタイヤでオフロードをハイスピードで駆け抜けるシクロクロス。レース用として長い時代、シクロクロスタイヤの頂点と君臨してきたのは、しなやかなコットンやセタなどの高級天然素材をケーシングに用いたハンドメイドチューブラータイヤでした。
同じオフロードを走るマウンテンバイクと比較すると、サスペンションも無く、ほとんどのパーツがロード用であり、唯一ブレーキが泥詰まり対策のためカンティブレーキを使いロードレーサーを原型としていたシクロクロスバイクは、タイヤの性能がそれらのハンドメイドチューブラータイヤでも十分な性能「でした」。
しかし、近年はホイールやフレームにカーボン素材を使ってシクロクロス専用品として製品開発されることが増え、機材の進化は他ジャンル同様に進んでいます。ディスクブレーキの登場もひとつの転換点だと思います。ならばタイヤもそれらに合わせた高い性能のものが求められてきたという事をシュワルベは感じてこのタイヤの開発に着手したのだと思います。
今回のインプレッションは実際のレースでテストする機会に恵まれました。レースはドライコンディションだったGPミストラル第3戦と、マッドコンディションだった野辺山シクロクロスの2戦。
「新時代のCXバイクの性能にマッチした総合性能をもつレーシングタイヤだ」
このタイヤは公称では「2気圧まで空気圧を落とせる」とされていますが、これはメーカー側が推奨できる値としてある程度タイヤが外れないマージンを取ったもので、実際には2気圧以下、テクニックのあるトップライダーの場合は状況によっては1気圧近くまでの超低圧で使うことが前提のはず。リムセメントによる接着のため、低圧での使用は自己責任の部分と言えるだろう。
レースで使った印象はズバリ、「今まで経験したことのないシクロクロスレーシングタイヤ」だと言えます。グリップ力、ブレーキング性能、軽さ、路面追従性、乗り心地…シクロクロスレーシングタイヤに求められるその全てで、いままでのタイヤを凌駕する性能を持っていると感じました。
なかでもグリップ性能は一番驚かされたポイントです。
コーナーリングでのグリップ性能では、今まで“ケーシングのしなやかさ+空気圧”で路面との接地面を稼ぎタイヤをグリップさせる方法が一般的でしたが、レーシングラルフはこの二つの要素に、ロードやMTBタイヤの開発で培ったコンパウンドのグリップ力という要素と、MTBタイヤでも定評のある高性能なブロックパターンという2つの要素を加えてグリップを稼いでいる印象です。
GPミストラル第3戦のようなドライコンディションでは、コンパウンドが路面とのグリップを稼ぎ、野辺山シクロクロスのようなマッドコンディションではブロックパターンがしっかりと路面を捉えているフィーリングがありました。
ブレーキング時のグリップ性能も同様に、“ヨレることのないブロックパターン+コンパウンドによる高グリップ力+路面をしっかりと捉えることのできるしなやかなケーシング”に適した空気圧を加えることにより、レーシングスピードでもブレーキング性能が格段に向上していました。コーナーギリギリまでブレーキを我慢する走りが可能になって、平均速度の向上につながりました。
“しなやかさ+空気圧”という2つの要素によってグリップ力を稼いでいた今までのシクロクロスタイヤから、さらにプラスして“ブロックパターン+コンパウンド”という4つの要素が高次元で組み合わされることでグリップを稼いでいるレーシングラルフHTは、どんなライダーが乗ってもその次元の高さを感じ取れる性能を持っています。
これほどまでに高性能なグリップ力はレースで大きな武器になると思います。とくに数年前より競技で使用できるようになったディスクブレーキのもつストッピングパワーやコントロール性能の安定感を、より高いレベルで引き出してくれるのではないでしょうか。
言い換えれば、近年シクロクロス専用に開発されたフレームやパーツ類、ディスクブレーキなどの新時代シクロクロスパーツで組み上げられたレースバイクの性能を十分に発揮させることができる新時代のシクロクロスタイヤだと感じました。
商品の性格的には、シクロクロスというニッチ市場のなかでもさらにレーサーだけが対象というコアな商品です。おまけに価格も高い。ともすると販売側は売れない場合のリスクを恐れて輸入を渋らざるをえない商品とも言えます。しかしこの高性能を強く求める層は確実に存在しますから、ディストリビューターさんにはぜひ積極的な輸入をお願いしたいと思います。
シュワルベ RACING RALPH HT
700×33Cチューブラー
重量:395g
Pace Star
¥14,490(税込)
1月末入荷予定
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