全日本チャンピオンの竹之内悠(チームユーラシア)が2年連続で野辺山の頂点に立った。参加者640名を集めた第3回野辺山シクロクロス。ますますボリュームアップした大会の2日間を振り返る。
4時間後には決戦が始まる。日曜日夜明け前の会場 photo:Hideaki.TAKAGI
「スペシャライズド・フライオーバー」の後ろに白い八ヶ岳 photo:Kei Tsuji11月17日と18日、長野県南佐久郡南牧村野辺山の滝沢牧場で第3回野辺山シクロクロスが開催された。昨年からUCI(国際自転車競技連合)のクラス2レースとして開催されており、年々開催規模は拡大している。
3年目の今年はエントリー数が過去最高ののべ640人に。参加者だけでなく、観戦だけの来場者も多数。数字だけでも国内最大級のシクロクロスレースであり、会場には10社を超える数のシクロクロス関連メーカーの出店ブースが立ち並ぶ。飲食ブースや観戦スポットも揃っているのが人気の秘密だ。
土曜日に行なわれたクロスツーリング photo:Kei Tsuji観光牧場である滝沢牧場を駆け巡る2.5kmの周回コースはバリエーションに富んだもの。昨年国内で初めて導入された立体交差は、協賛スポンサーを得て「スペシャライズド・フライオーバー」となり、高さをアップして登場した。
牛や馬、羊が歩く観光牧場を目一杯使ったコースレイアウトで、牧草地のスラローム、舗装路の緩斜面、四輪バギー用のダートサーキット、畑の中を抜ける泥セクション、テクニックが問われる林セクションなど。
シングルスピード選手権スタート photo:Kei Tsuji1ヶ月のヨーロッパ遠征から帰ったばかりの全日本チャンピオン竹之内悠は「ベルギーのUCIクラス2のレースと比べても遜色無いレース」だと言う。「ただ、ベルギーだとスピードを繋げて行けるようなコーナーやスムーズな路面が多い。タイヤの空気圧を1.1まで下げるようなコースです。反面、日本のコースはスピードを落としてクリアするコーナーや路面の細かい『角』が多い。今日は1.5まで上げました。それでもたまに(リムを)打っていた」。
今年は2日間にわたって行なわれ、土曜日にクロスツーリングやキッズレース、シングルスピード選手権を開催。冷たい雨が降り続いたにもかかわらず、大勢の参加者が泥コースを堪能する。時間とともに路面のコンディションが変わり、まとわりつく泥によってリアディレイラーやエンドを折る参加者が続出した。
大人気のシングルスピード選手権には、アメリカから来日した招待選手も大勢参加し、ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING)が圧倒的な力で勝利した。2位にはメッセンジャー世界大会の上位常連オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO)が入る。大多数はコスチュームを着ての参加で、さながら仮装大会。ベストドレッサー賞に輝いた選手にはバニラバイシクルズのサシャ・ホワイトから長靴が贈られた。
シングルスピード選手権 2番手を走るオースティン・ホース(KING KOG/ROSKO) photo:Kei Tsuji
シングルスピード選手権ベストドレッサー賞候補者(自己申告) photo:Kei Tsuji
八ヶ岳を横目にスタート photo:Kei Tsuji
C1スタート 小坂光(宇都宮ブリッツェン)が先頭 photo:Kei Tsujiそして迎えたC1レース。日本のトップライダーや海外招待選手を含む63名の塊が矢のようにコースへと解き放たれて行く。スタートのホールショットを取ったのは小坂光(宇都宮ブリッツェン)。しかし1周目完了時には竹之内悠が単独先頭に出る。
C1 泥セクションを行く竹之内悠(チームユーラシア)ら4名 photo:Kei Tsuji「1ヶ月ヨーロッパに遠征し、7レースを走って火曜日に帰ってきました。帰国してからバタバタで、大学にも行き、ボロボロになった機材を西勉メカニックにお願いして調整してもらった。調子は決して良くなくて、スタートから全然踏めなかった。『攻めるための守り』として追いつかれることを選んだ」という竹之内。
その言葉の通り、3周目には小坂正則(スワコレーシング)と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)が合流する。
C1 先頭を走る竹之内悠(チームユーラシア) photo:Kei Tsujiこの竹之内、小坂、丸山に数秒遅れで続くのは小坂光。その後方にU23の沢田時(ブリヂストンアンカー)や前田公平(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)、中井路雅(岩井商会レーシング)、そして3年連続出場のモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland Bicycle Studio)。ほぼ最後尾からスタートしたブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING)が強力な走りで6番手まで順位を上げる。
積極的にペースを上げる小坂と丸山に対し、一時的に竹之内が遅れるシーンも。やがて先頭は小坂と竹之内の2人となり、ゴールまで2周半を残して竹之内が動く。
C1 独走のままゴールした竹之内悠(チームユーラシア) photo:Kei Tsuji「舗装路の登りとか、分かりやすいアタックポイントだと反応されてしまうので、2回目のピット手前の泥の登りでアタック。他の選手が通っていた大回りのラインではなく、直線的なラインを一つ見つけていたので、そこで仕掛けた。無理矢理小坂さんとの差を広げた感じです(竹之内)」。
こうして先頭単独となった竹之内は、そのままゴールまで駆け抜ける。全日本チャンピオンは、小坂を32秒、丸山を1分09秒引き離してゴール。野辺山シクロクロス連覇を果たした。
「日本で数少ないUCIレースはやっぱり全日本選手権と同様に勝たなければいけないレース。調子に不安を抱える自分と、調子がとても良い印象の小坂さんが一緒に走ると、『乗れている』小坂さんが限界以上の走りを見せる可能性だってあった」と、表彰台で優勝トロフィー代わりの特製カウベルを受け取った竹之内。連覇が懸かった全日本選手権まで残り3週間。今シーズンは大学出席のためヨーロッパ遠征は行なわない予定だ。
C1のトップスリーと熱い声援を送った観客たち photo:Kei Tsuji
CL1 ティナ・ブリュベッカー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) photo:Kei Tsuji同じくUCI登録レースであるCL1は、ローラ・ウィンベリー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)と豊岡英子(パナソニックレディース)の先行でスタートする。豊岡は順調にレースを進めたが、メカトラによって5番手まで順位を下げてしまう。
先頭はローラとティナ・ブリュベッカーのSPEEDVAGENコンビとなり、宮内佐季子(CLUBviento)がこれに続く。ピットでバイクを交換した豊岡はここから勢い良く追撃し、レース中盤には先頭に返り咲く。リードを奪い返した豊岡がそのままゴールまで独走した。時間差スタートのジュニアは横山航太(快レーシング)が制している。
CL1 優勝した豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji
最も人数を集めたC2のスタート 舗装路を駆け上がる photo:Kei Tsuji
レースの模様はフォトギャラリーにて!
野辺山シクロクロス2012結果
C1(8周回)
1位 竹之内悠(チームユーラシア) 1h02'54"
2位 小坂正則(スワコレーシング) +32"
3位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +1'09"
4位 小坂光(宇都宮ブリッツェン) +2'00"
5位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +2'39"
6位 ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING) +3'04"
7位 中井路雅(岩井商会レーシング) +3'46"
8位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland Bicycle Studio) +3'51"
9位 山本和弘(キャノンデールレーシング) +3'58"
10位 前田公平(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +4'10"
CL1(4周回)
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 38'42"
2位 宮内佐季子(CLUBviento) +42"
3位 ローラ・ウィンベリー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +44"
4位 ティナ・ブリュベッカー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +2'07"
5位 アレキサンドラ・バートン(Upper Echelon Fitness) +2'51"
6位 齋藤磨実(TEAM MASA+/BOMA) +3'03"
CJ(5周回)
1位 横山航太(快レーシング) 40'59"
2位 山田誉史輝(HAPPYRIDE) +2'14"
C2(5周回)
1位 オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO) 44'31"
2位 木下大輝(千葉経済大学附属高等学校) +1'11"
3位 村田隆(快レーシング) +1'29"
CM(3周回)
1位 羽鳥和重(cycleclub3UP) 29'27"
2位 中谷聡(Bridler) +07"
3位 小田島貴弘(Club SY-Nak) +11"
C3A(3周回)
1位 渡辺将大 28'09"
2位 平井啓資 +1'04"
3位 斎藤朋寛(GJ EMP) +1'13"
C3B(3周回)
1位 山田将輝(Limited846) 27'10"
2位 竹内遼 +37"
3位 栗原旭 +2'09"
C3C(3周回)
1位 ジェームス・マシャン(Champion System) 28'25"
2位 織田聖(Mistral) +1'15"
3位 チャールズ・ウィーズナー(equipe azumino) +1'55"
CL2(2周回)
1位 ハイディ・カーティス(Twin Six) 21'24"
2位 橋口陽子(TEAM轍屋) +2'42"
3位 清水朱実(bridler moon) +2'44"
CL3(2周回)
1位 今井美穂(CycleClub CX) 21'57"
2位 清水沙羅(Champion System) +2'12"
3位 菱田恵美子(ストラーダR) +2'35"
シングルスピード選手権
1位 ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING) 40'22"
2位 オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO) +1'53"
3位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland Bicycle Studio)+4'25"
text&photo:Kei Tsuji


3年目の今年はエントリー数が過去最高ののべ640人に。参加者だけでなく、観戦だけの来場者も多数。数字だけでも国内最大級のシクロクロスレースであり、会場には10社を超える数のシクロクロス関連メーカーの出店ブースが立ち並ぶ。飲食ブースや観戦スポットも揃っているのが人気の秘密だ。

牛や馬、羊が歩く観光牧場を目一杯使ったコースレイアウトで、牧草地のスラローム、舗装路の緩斜面、四輪バギー用のダートサーキット、畑の中を抜ける泥セクション、テクニックが問われる林セクションなど。

今年は2日間にわたって行なわれ、土曜日にクロスツーリングやキッズレース、シングルスピード選手権を開催。冷たい雨が降り続いたにもかかわらず、大勢の参加者が泥コースを堪能する。時間とともに路面のコンディションが変わり、まとわりつく泥によってリアディレイラーやエンドを折る参加者が続出した。
大人気のシングルスピード選手権には、アメリカから来日した招待選手も大勢参加し、ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING)が圧倒的な力で勝利した。2位にはメッセンジャー世界大会の上位常連オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO)が入る。大多数はコスチュームを着ての参加で、さながら仮装大会。ベストドレッサー賞に輝いた選手にはバニラバイシクルズのサシャ・ホワイトから長靴が贈られた。





その言葉の通り、3周目には小坂正則(スワコレーシング)と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)が合流する。

積極的にペースを上げる小坂と丸山に対し、一時的に竹之内が遅れるシーンも。やがて先頭は小坂と竹之内の2人となり、ゴールまで2周半を残して竹之内が動く。

こうして先頭単独となった竹之内は、そのままゴールまで駆け抜ける。全日本チャンピオンは、小坂を32秒、丸山を1分09秒引き離してゴール。野辺山シクロクロス連覇を果たした。
「日本で数少ないUCIレースはやっぱり全日本選手権と同様に勝たなければいけないレース。調子に不安を抱える自分と、調子がとても良い印象の小坂さんが一緒に走ると、『乗れている』小坂さんが限界以上の走りを見せる可能性だってあった」と、表彰台で優勝トロフィー代わりの特製カウベルを受け取った竹之内。連覇が懸かった全日本選手権まで残り3週間。今シーズンは大学出席のためヨーロッパ遠征は行なわない予定だ。


先頭はローラとティナ・ブリュベッカーのSPEEDVAGENコンビとなり、宮内佐季子(CLUBviento)がこれに続く。ピットでバイクを交換した豊岡はここから勢い良く追撃し、レース中盤には先頭に返り咲く。リードを奪い返した豊岡がそのままゴールまで独走した。時間差スタートのジュニアは横山航太(快レーシング)が制している。


レースの模様はフォトギャラリーにて!
野辺山シクロクロス2012結果
C1(8周回)
1位 竹之内悠(チームユーラシア) 1h02'54"
2位 小坂正則(スワコレーシング) +32"
3位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +1'09"
4位 小坂光(宇都宮ブリッツェン) +2'00"
5位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +2'39"
6位 ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING) +3'04"
7位 中井路雅(岩井商会レーシング) +3'46"
8位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland Bicycle Studio) +3'51"
9位 山本和弘(キャノンデールレーシング) +3'58"
10位 前田公平(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +4'10"
CL1(4周回)
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 38'42"
2位 宮内佐季子(CLUBviento) +42"
3位 ローラ・ウィンベリー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +44"
4位 ティナ・ブリュベッカー(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +2'07"
5位 アレキサンドラ・バートン(Upper Echelon Fitness) +2'51"
6位 齋藤磨実(TEAM MASA+/BOMA) +3'03"
CJ(5周回)
1位 横山航太(快レーシング) 40'59"
2位 山田誉史輝(HAPPYRIDE) +2'14"
C2(5周回)
1位 オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO) 44'31"
2位 木下大輝(千葉経済大学附属高等学校) +1'11"
3位 村田隆(快レーシング) +1'29"
CM(3周回)
1位 羽鳥和重(cycleclub3UP) 29'27"
2位 中谷聡(Bridler) +07"
3位 小田島貴弘(Club SY-Nak) +11"
C3A(3周回)
1位 渡辺将大 28'09"
2位 平井啓資 +1'04"
3位 斎藤朋寛(GJ EMP) +1'13"
C3B(3周回)
1位 山田将輝(Limited846) 27'10"
2位 竹内遼 +37"
3位 栗原旭 +2'09"
C3C(3周回)
1位 ジェームス・マシャン(Champion System) 28'25"
2位 織田聖(Mistral) +1'15"
3位 チャールズ・ウィーズナー(equipe azumino) +1'55"
CL2(2周回)
1位 ハイディ・カーティス(Twin Six) 21'24"
2位 橋口陽子(TEAM轍屋) +2'42"
3位 清水朱実(bridler moon) +2'44"
CL3(2周回)
1位 今井美穂(CycleClub CX) 21'57"
2位 清水沙羅(Champion System) +2'12"
3位 菱田恵美子(ストラーダR) +2'35"
シングルスピード選手権
1位 ブレナン・ウォットリ(ALL ACCESS RACING) 40'22"
2位 オースティン・ホース(KING KOG/ROSKO) +1'53"
3位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland Bicycle Studio)+4'25"
text&photo:Kei Tsuji
フォトギャラリー
リンク
Amazon.co.jp