クラン・モンタナの頂上ゴールに先頭で飛び込んだのは、山岳賞ジャージを着るトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)。24歳のこのTTスペシャリストの活躍によりチームコロンビアは勝率を8戦6勝に伸ばした。総合首位はタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)が4秒差で守っている。

山々に囲まれたスイスの美しい湖を進む山々に囲まれたスイスの美しい湖を進む photo:Cor Vos第73回ツール・ド・スイス最後の頂上ゴールが設定された第8ステージ。連続する3級山岳と1級山岳を越え、標高1505mのリゾート地クラン・モンタナにゴールする。翌日に最終個人タイムトライアル(以下個人TT)が控えた注目のこの山岳ステージで、序盤からラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ら4名が逃げた。

総合成績に関係の無いこの逃げは、長い平坦区間で最大6分のリード。しかしペース上がったメイン集団に、ラスト19km地点の3級山岳の上りで吸収されてしまう。

逃げ続けるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ら4名逃げ続けるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ら4名 photo:Cor Vosここからユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)やスティーブ・モラビート(スイス、アスタナ)がカウンターアタックで飛び出したが、1級山岳の上りでリクイガスとサクソバンクがペースアップするメイン集団に捉えられてフリダシに。

縮小した集団からラスト12km地点で昨年総合優勝者のロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)がアタックを仕掛けたが決まらない。その後もアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)やウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)が攻撃的な走りを見せたが決定力を欠いた。

1級山岳でメイン集団を引き続けるサクソバンク1級山岳でメイン集団を引き続けるサクソバンク photo:www.tds.ch総合上位陣がひしめく13名ほどの先頭グループは、総合2位ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)のためにフランク・シュレク(ルクセンブルク)が献身的に牽引。カンチェラーラは危機に陥ること無く1級山岳をクリアした。

やがてゴールが近づくと先頭13名によるステージ優勝争いが活発化。メンバー4名(マルティン、キルシェン、アルバジーニ、モンフォール)を揃えたチームコロンビアからは、マキシム・モンフォール(ベルギー)がラスト2kmでアタック。しかしこれは決まらず、ラスト500mでピンクの山岳賞ジャージを着たマルティンが飛び立った。

1級山岳の上りで攻撃を仕掛けるオリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)ら1級山岳の上りで攻撃を仕掛けるオリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)ら photo:www.tds.ch緩斜面をグイグイ加速するマルティンは、後続を振り切って最終ストレートへ。後方からダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)がスプリントで追い上げたが僅かに届かず、先頭を守りきったマルティンが先頭でゴールに飛び込んだ。

4日連続でチームコロンビアの選手が先頭でゴールラインを駆け抜けた。「後ろからクネゴが追い上げてきたのは分かっていた。すぐ後ろまで迫ってきたけど、何とかゴールまで先頭を守りきったんだ。昨日も同じようなアタックを繰り返したけど成功しなかった。でも今日は違った。昨日より長く待ち続けて、ラスト500mで加速したんだ。後続との距離が広がり始めたとき、ようやくステージ優勝が見えてきた」。

先頭でゴールに向かうトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)先頭でゴールに向かうトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア) photo:www.tds.ch若きTTスペシャリストとして知られるマルティンは、これまで個人TTを中心に活躍し、今シーズンはクリテリウム・アンテルナシオナル(UCI2.HC)バイエルン・ルントファート(UCI2.HC)の個人TTで優勝。しかしこの山岳ステージでの勝利を「キャリア最初のビッグな勝利」と喜ぶ。チームコロンビアは8ステージ中、驚きの6勝目。僅か2ステージしか落としていない。

マルティンは山岳賞ランキングのトップを独走中で、もう下位の選手の逆転は不可能。パリ〜ニースに続く山岳賞獲得を確定させた。

山岳賞ジャージを着るトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)がガッツポーズでゴール山岳賞ジャージを着るトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)がガッツポーズでゴール photo:www.tds.ch「明日の個人タイムトライアルでもいい走れば出来れば」。トップから39秒遅れの総合4位に浮上したマルティンは、最終個人TTに向けて抱負を語る。本来の力を発揮すれば総合表彰台獲得の可能性は高い。さらには総合優勝争いにも絡んでくる可能性も。

注目が集まっていた総合争いは、ヴァリャベッチがリーダージャージを守った。しかしカンチェラーラが、1級山岳で脱落するどころか、ステージ3位に入ってボーナスタイムを獲得。総合首位ヴァリャベッチとの総合タイム差を4秒まで詰めている。

ステージ3位に入ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)ステージ3位に入ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:www.tds.ch翌日の最終個人TTは距離39km。数十秒のタイム差はつくと思われており、カンチェラーラ有利な状況に変わりない。しかもレースの開催地はカンチェラーラの故郷ベルン。地元の声援を受けるカンチェラーラが、総合逆転、ツール・ド・スイス初総合優勝を狙う。

他にも28秒差でクロイツィゲル、39秒差でマルティン、45秒差でクレーデン、1分01秒差でウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)といったTTを得意とする有力選手たちが控えている。ハイレベルな総合争いが繰り広げられることになりそうだ。

選手コメントはチーム公式サイトより。

ツール・ド・スイス2009第8ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)4h12'31"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+02"
4位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)
5位 キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)
6位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
7位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)
9位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)
10位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)

個人総合成績
1位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)32h19'48"
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+04"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+28"
4位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)+39"
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+45"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+54"
7位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)+1'01"
8位 キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)+1'07"
9位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)+1'08"
10位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+1'12"

ポイント賞
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

中間スプリント賞
エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)

チーム総合成績
サクソバンク

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