11月3日、信州シクロクロス第3戦となる飯山大会が国内唯一のナイターレースとして開催された。C1は小坂親子の一騎打ちとなり、最終周回で仕掛けた息子の光が勝利。各カテゴリーの参加者は珍しい夜のレースをそれぞれに楽しんだ。

序盤に先頭パックを形成した小坂親子と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)序盤に先頭パックを形成した小坂親子と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Yufta Omataアメリカのシクロクロスシーズンの始まりを告げるCross Vegasなど、ナイターのシクロクロスレースは国外ではよく知られているが、国内での開催は近年では初。最近のシクロクロスブームを受けてか、シクロクロスの老舗である信州シクロクロスからこうした革新的なレースが登場するあたり、興味深いところ。

照明に照らされた運動公園内がレース会場だ照明に照らされた運動公園内がレース会場だ photo:Yufta Omataほとんどの選手がナイターシクロクロスレースに初参加。最初のレースであるC3が始まるまでの間に設定された試走では見えていたシングルトラックのラインも、時間が経つにつれ暗闇に溶け込んでいく。C3のスタート時には黄昏だった飯山の空も、ゴールする頃には完全に真っ暗に。完全に闇の中で行なわれたC2のレースを経て、C1のスタートが切られる。

ナイター照明に選手が浮かび上がるナイター照明に選手が浮かび上がる photo:Yufta Omataこの日のC1に顔を見せたのは、前週の安曇野大会でデットヒートを繰り広げた小坂正則(スワコレーシング)と丸山 厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)や、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、そして前週のMTBクロスカントリーJシリーズで2位に入りシリーズチャンプに輝いた斉藤亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)ら。

実力者らが揃ったカテゴリー1は、日も沈み気温もぐっと下がった19時10分に号砲。1周目から小坂親子、丸山の3人が先頭パックを形成。4位には中間森太郎(チーム埼玉県人)、5位に斉藤、6位に唯一のジュニア枠で出走する山田誉史輝(HAPPYRIDE)がそれぞれ間を置いて続く。

コーナーのテクニック、平坦路での加速、スリッピーンなシングルトラックの下り、長い階段での担ぎなど、シクロクロスのあらゆる要素をコンパクトに詰め込んだコース。ライダーを照らすのはハイコントラストのナイター照明。しかし林の中のシングルトラックではこの強い光が路面のディティールを奪う。ライダーは通常以上の集中力をもってテクニカルセクションをこなしていく。

激坂セクションを越えていく先頭の3名激坂セクションを越えていく先頭の3名 photo:Yufta Omataレース中盤まで先頭が3人のままだったが、やがて丸山が脱落。飯山ナイターレースは、小坂正則・光による親子対決の様相を呈す。お互いが先頭に出る積極的な走りで丸山との差を開いていき、マッチレースのまま最終周に。斉藤をかわす好走を見せた山田は、ジュニアの競技時間の規定により40分でレースを終了している。

最終周で勝負を仕掛けたのは光。シングルトラックの下りを勝負どころに定め、そこで開いた差をそのまま維持して独走での勝利に持ち込んだ。正則は8秒差でゴール。2分25秒差の3位に丸山、4位の中間までが同一周回ゴールという、厳しい展開のレースとなった。

中盤以降、レースは小坂親子のマッチレースに中盤以降、レースは小坂親子のマッチレースに photo:Yufta OmataC3は十代の選手たちの活躍が目立ち、山田将輝(Limited846)が勝負強さを見せ優勝。C2は安藤広行(Salata Bianca Kobe Esquina)が接戦を制して昇格を決めた。L1は宮内佐季子(CLUB viento)が危なげなく勝利し、ホストレースとなる全日本選手権に向けて弾みをつけた。

闇夜の中のレースとあって参加者たちには戸惑いもあったようだが、昨年から評判の高いコースレイアウトと相まって走って楽しく観て楽しい、シクロクロスレースとして今後の可能性を感じさせるレースとなった。今回のナイターレースの発起人である小林輝紀さんはこう語る。

単独3位で小坂親子を追う丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)単独3位で小坂親子を追う丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Yufta Omata「もともとはロードの選手として走っていて、その後マウンテンバイクに転向して自転車競技をしてきたのですが、地元の飯山に戻ってきた時に、ここは自転車に恵まれた環境だと気づいたんです。これまでこの地でクリテリウムやヒルクライムを開催してきましたが、シクロクロスは今年で2回目。三船雅彦、辻浦圭一からもコースに好評価をもらい、モチベーションが高くなって『ナイターレースをしよう!』と言ってしまったんですね。

8秒差をつけて優勝した小坂光(宇都宮ブリッツェン)8秒差をつけて優勝した小坂光(宇都宮ブリッツェン) photo:Yufta Omataここはクロスカントリースキーのワールドカップが開催できるだけの設備が整っているんです。飯山市に全面的に協力してもらって開催にこぎつけました。走った選手や観ている人にも大変だったかもしれませんが、これぞ思い通り、狙った通り。来年もナイターレースはやりたいと思っています。1回2回で終わりにするのではなく、しっかり地元にシクロクロスが認知されるように続けていきたいですね」

優勝の小坂光のコメント
「試走の段階からシングルトラックの下りは上手く走れる手応えがありました。レースでも最終周回でリズムよく行けばそこで差をつけられると思っていたので、前半からこのセクションに入る前には極力前にいるように意識して走りました。今シーズンも全日本選手権で勝つことが最大の目標になるので、この一ヶ月レースを重ねて調子を上げていきたいと思っています。信州霧ヶ峰、野辺山、関西マイアミとセレクションレースを走り、12月2日の上山田に出てから全日本選手に臨む予定です」


信州シクロクロス2012-2013 第3戦飯山結果
C1
1位 小坂光(宇都宮ブリッツェン)1h00'50"
2位 小坂正則(スワコレーシング)+08"
3位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)+2'25"

C2
1位 安藤広行(Salata Bianca Kobe Esquina)45'44"
2位 岩波信二(CORSA YAMANASHI)+01"
3位 小俣雄風太(八ヶ岳CYCLOCLOSS CLUB)+40"

C3
1位 山田将輝(Limited846)32'19"
2位 竹内遼(Team GORILLA)+15"
3位 西田尚平(国際自然環境アウトドア専門学校)+48"

CL1
1位 宮内佐季子(CLUB viento)51'46"
2位 吉田千春子(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB) -1LAP
3位 相野田静香 (club GROW) -1LAP

CL2
1位 藤森なおみ(チーム宝塚線)32'48"
2位 堀澤陽花(Team GORILLA)+4'01"
3位 矢野麻利(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)+5'50"

Masters
1位 清水達也(bridler moon) 0:36:55
2位 渡辺誠一 (八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB) -1LAP
3位 横山直樹 (快レーシング) -1LAP

キッズ
1位 堀澤咲月(Team GORILLA)
2位 上埜達郎 (Team GORILLA)
3位 矢野咲帆 (八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)


text&photo:Yufta Omata