9名の逃げ切りが決まったツール・ド・スイス(UCIプロツアー)第4ステージ。熾烈なスプリント争いを制したマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)が今シーズン3勝目を飾った。同じく逃げに乗ったタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)がリーダージャージに袖を通している。

雪が残る標高2108mの超級山岳ゴッタルド峠を進む雪が残る標高2108mの超級山岳ゴッタルド峠を進む photo:Cor Vos第4ステージはレース前半に超級山岳ゴッタルド峠(標高2108m)、後半に2級山岳サッテルエック峠(標高1190m)を越える197kmの山岳コースで行なわれた。

レース序盤、ゴッタルド峠に向かう長い上りで集団から飛び出したのは、山岳賞ジャージを着るトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)や総合優勝候補アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)を含む26名。沿道に分厚い雪の壁が残る気温9度のゴッタルド峠頂上は、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)が先頭で通過し、マルティンがこれに続いた。

超級山岳ゴッタルド峠の雪の壁とリーダージャージのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)超級山岳ゴッタルド峠の雪の壁とリーダージャージのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosメイン集団を最大3分引き離したこの大きな逃げグループは、この日最後の難所サッテルエック峠で崩壊し、テクニカルな下りで9名に再編成。総合5位につけていたマルティンは脱落した。

9名の逃げグループは、サクソバンク(Aシュレクとブレシェル)、アージェードゥーゼル(ヴァリャベッチとAエフィムキン)、ミルラム(Pベリトスとローレッガー)が2人ずつ送り込み、メイン集団とのタイム差を保ちながらハイスピードでゴールに向かった。

雪が残る標高2108mの超級山岳ゴッタルド峠を進む、路面は石畳雪が残る標高2108mの超級山岳ゴッタルド峠を進む、路面は石畳 photo:Cor Vosメイン集団はチームコロンビアやコフィディス、フランセーズデジューが懸命にペースを上げ、ラスト20kmで3分あったタイム差はラスト10kmで2分に。9名の逃げ切りが濃厚になると、先頭ではステージ優勝に加えてリーダージャージ争いも加熱し始めた。

サクソバンクはAシュレクでリーダージャージ、ブレシェルでステージ優勝を狙う作戦に出た。スタート時点で、総合28位ヴァリャベッチと総合34位Aシュレクの総合タイム差は3秒。終盤に設定された2つのスプリントポイントを先頭で通過したAシュレクがボーナスタイム6秒を獲得して暫定トップに。

美しい湖を背に2級山岳サッテルエック峠に向かう美しい湖を背に2級山岳サッテルエック峠に向かう photo:Cor Vosゴールが近づくとヴァリャベッチやローレッガーがアタックを繰り返したが成功せず、最後は9名によるスプリント勝負に持ち込まれ、ラスト200mで加速したヴァリャベッチをイグリンスキーが抜き、追い上げたブレシェルとバイクを投げ込んでゴール。僅差で先着したブレシェルが片手を挙げた。

優勝したブレシェルは「差を詰めようとしたラスト400mで脚が痙攣を始めて、最後まで勝てるかどうか確信はなかった。最大のライバルだったイグリンスキーがラスト200mで仕掛けて、何とかそれに反応し、辛うじてゴール直前で追い抜くことができた」と、僅差での勝利を喜ぶ。

スプリントを制したマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)が手を挙げるスプリントを制したマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)が手を挙げる photo:Cor Vos「完璧なシナリオはアンディ(シュレク)とグスタフ(ラーション)と3人で逃げに乗って、力を温存しながら総合成績も狙うことだった。最後の2級山岳は食らいつくことに必死だったよ」と語るブレシェルは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ最終ステージで集団スプリントを制し、ロード世界選手権では銅メダルを獲得している。

今シーズンはボルタ・ア・カタルーニャツール・ド・ルクセンブルクでのステージ優勝に続く3勝目。クラシックレースを走れるスプリンターとして知られ、今シーズンのロンド・ファン・フラーンデレンで6位、パリ〜ルーベで10位(2007年は14位)に入っている。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に祝福されるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に祝福されるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosメイン集団が1分以上遅れてゴールしたため、リーダージャージはステージ3位に入ってボーナスタイムを獲得したヴァリャベッチの手に移った。昨年ランプレからアージェードゥーゼルに移籍したヴァリャベッチはグランツールでコンスタントに総合20位以上の成績を残すステージレーサー。昨年ツールでは総合9位。先日閉幕したジロでも総合9位に入っている。

総合で2秒差の2位につけているAシュレクは、スプリントポイント連取に伴ってスプリント賞ジャージを獲得。リーダージャージには手が届かなかったが、真の総合ライバルたち(クロイツィゲルやクレーデン)らからリードを奪うことには成功した。

リーダージャージを獲得したタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)リーダージャージを獲得したタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) photo:Cor VosサクソバンクはカンチェラーラのリーダージャージをAシュレクに継承できなかったが、キム・アンデルセン監督は「ジャージを明け渡したことは問題じゃない。アンディとマッティは一日中逃げて疲労が残っているし、これから数日間はレース状況をコントロールせずに済む」と、問題視していない。

昨年スイスで山岳賞トップに輝いたイグリンスキーは、この日の超級山岳で25ポイント獲得し、山岳賞2位につけている。しかしブレシェルに僅差で敗れたことで失意のどん底。「今日は勝つ必要があった。スピードのあるブレシェルがシュレクのために力を使っていたから、今日は勝てると思った。絶好のチャンスだったのに、最後の数メートルでブレシェルが復活したんだ。今日はあまり眠れそうにない。今日は勝ちたかった。もう最後の勝利は1年も前(ツール・ド・ロマンディのステージ優勝&総合9位)だ」。イグリンスキーはツール・ド・熊野でステージ3連勝&総合優勝に輝いたヴァレンティンの兄。自身も2002年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)で総合4位に入っている。

選手コメントは各チームウェブサイトより。

ツール・ド・スイス2009第4ステージ結果
1位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)5h01'34"
2位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
3位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)
4位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
5位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)
6位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
7位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)
8位 トーマス・ローレッガー(オーストリア、ミルラム)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、フジ・セルヴェット)+05"
10位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)+1'03"

個人総合成績
1位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)13h27'57"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+02"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)+11"
4位 トーマス・ローレッガー(オーストリア、ミルラム)+13"
5位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)+14"
6位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+20"
7位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、フジ・セルヴェット)+34"
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+42"
9位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)+42"
10位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+45"

ポイント賞
オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

中間スプリント賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)

チーム総合成績
サクソバンク

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