アタックに次ぐアタック。逃げては吸収を繰り返し、集団は最終ストレートへと入った。緩やかなコーナーを抜け、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が先頭でスプリントを開始する。ヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)が先着した。

15時50分、スタートが切られる15時50分、スタートが切られる photo:Kei Tsuji宇都宮の目抜き通りを駆けるジャパンカップクリテリウム。開催3年目を迎える今年も、市中心部を貫く宇都宮大通りを規制した1周1.55kmのコースが用意された。

競輪場からの短い移動区間を経て周回コースに登場した選手たちを待っていたのは、沿道に詰めかけた4万人の観客たち。秋晴れの暖かな太陽が傾き、ビルの影が長く伸び始めた午後3時50分、3周のパレード走行を終えた74名の選手たちがスタートを切った。

宇都宮大通りを駆ける宇都宮大通りを駆ける photo:Kei Tsuji合計20周・31kmのレースは、スタート直後から激しい動きを見せる。5周回毎に設定されたスプリント賞狙いの動きも加わり、1周目からアタックの応酬に。

積極的に動いたのは阿部嵩之(シマノレーシング)やクリスティアン・メイヤー(カナダ、ガーミン・シャープ)、そしてジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO)。しかし決定的な動きは生まれず、スプリント賞が懸かった5周回目に突入する。

宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)がここを先頭で通過し、詰めかけた観客を沸かせた。

常に集団前方で展開する別府史之(オリカ・グリーンエッジ)常に集団前方で展開する別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiクリテリウム・スペシャルチームから出場したテオ・ボス(オランダ)とロビー・マキュアンクリテリウム・スペシャルチームから出場したテオ・ボス(オランダ)とロビー・マキュアン photo:Kei Tsuji
宇都宮大通りを駆け抜ける宇都宮大通りを駆け抜ける photo:Kei Tsuji

右膝負傷中のダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が逃げる右膝負傷中のダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が逃げる photo:Kei Tsuji7周目に入ると、来日直前に右膝を6針縫ったダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やマッズ・クリステンセン(デンマーク、サクソバンク・ティンコフバンク)、窪木一茂(日本ナショナルチーム)、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)、小森亮平(チームNIPPO)、畑中勇介(シマノレーシング)がメイン集団から抜け出して先行。ここから一人で飛び出した窪木が10周目のスプリント賞を獲得する。

先頭で3つ目のスプリント賞に向かう初山翔(宇都宮ブリッツェン)先頭で3つ目のスプリント賞に向かう初山翔(宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsuji逃げが一旦吸収されると、今度は初山翔(宇都宮ブリッツェン)、阿部嵩之、メイヤーらがアタック。

ディフェンディングチャンピオンのスティール・ヴォンホフ(オーストラリア)擁するガーミン・シャープがメイン集団をまとめあげ、逃げとのタイム差を計りながら周回を重ねていく。2010年のジャパンカップ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が献身的にメイン集団を率いた。

こうして迎えた15周目のスプリント賞は、初山翔が先頭通過。メイン集団のスピードは一向に落ちず、最後まで粘ったメイヤーがメイン集団に引き戻されると、レースは更にスピードを上げてラスト2周に突入する。

逃げグループを形成するラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)やネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)逃げグループを形成するラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)やネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ) photo:Kei Tsujiするとネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)、ラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)、ウェズリー・サルツバージャー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ライアン・アンダーソン(カナダ、スパイダーテック)がカウンターアタック。脚の揃った4名が数秒のリードを保った状態で最終周回の鐘を聞く。

リクイガス・キャノンデールやサクソバンク・ティンコフバンクが集団前方に入り乱れる中、先頭のハースらは吸収。ラスト600mの最終コーナーで発生した落車によって集団は縦に伸び、集団前方の選手たちがスプリント体制へと入って行く。

ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が牽引するメイン集団ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が牽引するメイン集団 photo:Kei Tsuji

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)とヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)を先頭に立ち上がる別府史之(オリカ・グリーンエッジ)とヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)を先頭に立ち上がる photo:Kei Tsujiゴールまで距離を残してライアン・ロス(カナダ、スパイダーテック)が先行したが、その後方からマリチャが発進。別府史之とロビー・マキュアン(オーストラリア、クリテリウム・スペシャルチーム)が後方からマリチャを追撃する展開に。

緩いコーナーを先頭で立ち上がったマリチャに、スプリントで対抗した別府史之とマキュアン。緩斜面でも伸び続けたマリチャが、後続を振り切ってゴールした。レース時間は41分51秒で、平均スピードは44.4km/h。

右端のヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)が抜け出す右端のヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)が抜け出す photo:Kei Tsuji「もともとチームはジョナサン(キャントウェル)のスプリント狙いだった。でもチームメイトたちがポジションを失ってしまい、最終周回に入ってから自分がスプリントすることになった。最終コーナーを良いポジションで抜けて、そこからカナダチャンピオンがアタック。『これだ!』と思ってその動きに反応して、そこからスプリントに持ち込んだんだ。かなり長めのスプリントで、しかもゴール前が登りというキツいシチュエーションだったけど、なんとか先頭を守りきった」と、3代目クリテリウムチャンピオンに輝いたマリチャ。

スプリントで別府史之を破ったヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)スプリントで別府史之を破ったヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Kei Tsujiポーランド出身の25歳マリチャ(本人による正式な発音はマリチュ)は、2010年にチームサクソバンクでプロデビュー。登りや独走を得意とする選手であり、キャリア初のスプリント勝利を驚く。「自分はオールラウンダータイプの選手で、これまでの勝利パターンは独走ばっかりだった。だから集団スプリントで勝つのは初めてで、自分の新しい境地を見つけた気分。シーズンの最後の最後に勝利出来て本当に嬉しいよ」。

日本人歴代最高位となる2位をマークした別府史之は「先頭の彼(マリチャ)は最後までタレなかった」と悔やむが、翌日のジャパンカップ本戦に向けてその調子の良さをアピール。現役を引退しながらも、このクリテリウムのために数ヶ月トレーニングを積んだというマキュアンが3位に入り、表彰台に登った。

また、このクリテリウムを最後に現役を引退する廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)が「世界のスプリントで闘ってみたい」という意気込みの通り、9位という好成績をマーク。「土井さんのおかげで一気に集団先頭まで上がれた」という窪木一茂が、スプリント賞に加えて10位という成績を残している。

クリテリウムを制したサクソバンク・ティンコフバンクの選手たち、左から宮澤崇史、クリステンセン、マイカ、キャントウェル、マリチャクリテリウムを制したサクソバンク・ティンコフバンクの選手たち、左から宮澤崇史、クリステンセン、マイカ、キャントウェル、マリチャ photo:Kei Tsuji2位に入った別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が報道陣に囲まれる2位に入った別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が報道陣に囲まれる photo:Kei Tsuji
クリテリウム表彰台、左から別府史之、マリチャ、マキュアンクリテリウム表彰台、左から別府史之、マリチャ、マキュアン photo:Kei Tsujiスプリント賞獲得者、左から宮澤崇史、窪木一茂、初山翔スプリント賞獲得者、左から宮澤崇史、窪木一茂、初山翔 photo:Kei Tsuji


その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!



ジャパンカップ2012クリテリウム
1位 ヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)    41'51"
2位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、クリテリウム・スペシャルチーム)
4位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
5位 ルーク・デーヴィソン(オーストラリア、バジェットフォークリフツ)
6位 ブラッド・ハフ(アメリカ、ジェリーベリーサイクリング)
7位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
8位 ライアン・アンダーソン(カナダ、スパイダーテック・パワードバイC10)
9位 廣瀬佳正(日本、宇都宮ブリッツェン)
10位 窪木一茂(日本、日本ナショナルチーム)

スプリント賞
5周目 宮澤崇史(日本、サクソバンク・ティンコフバンク)
10周目 窪木一茂(日本、日本ナショナルチーム)
15周目 初山翔(日本、宇都宮ブリッツェン)

text&photo:Kei Tsuji
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