2012/10/12(金) - 12:07
イタリアの競技用自転車タイヤブランド、ヴィットリアの誇る最高峰レーシングチューブラータイヤがCorsa Evo SCだ。シクロワイアード編集部によるインプレッションをお届け。
Corsa Evo SCは、供給を行うプロチームからのフィードバックによって高い名声を得たCorsa CXを強化し、2011年にモデルチェンジを受けたフラッグシップモデルのチューブラータイヤだ。商品名末尾のSCとは、Servizio Corse(レーシングサービス)のこと。つまりレースシーンでの使用を第一に開発されたピュアレーシングタイヤだ。
Corsa CXからの改良点は、プロチームからの要求に応えた特性を持たせたことと、新型のトレッドを採用したこと。もちろん製造はヴィットリアこだわりのハンドメイドによるもの。コンパウンドには新開発の「ISOグリップ」を採用し、ドライ/ウェットなど、いかなる状況においてもパフォーマンスを発揮することが追求されている。
ケーシングには高密度の320TPIを採用。ポリエステルの芯にコットンを織り入れラテックスで包む製法により、ケブラーを必要としないしなやかさと弾力を生み出すことに成功した。
レースの勝敗にも影響を及ぼすパンクのリスクを減少させるため、Corsa Evo SCには高密度のアラミド繊維を使用した新型の耐パンクベルト「PRB2.0」が装備された。この構造により、しなやかさをキープしたまま耐切断性能を従来製品に比べ約40%向上させることに成功している。これらに包み込まれるインナーチューブはしなやかなラテックス製だ。
「タイヤは太いほどに変形量が少なく、転がり抵抗を低くしグリップを増す」いう近年の考えに基づき、タイヤサイズは23cのみの設定だ。サイズを大きくし、ボリュームを増すことで乗り心地の向上も期待ができる。
こうして完成したCorsa Evo SCの重量はカタログ値で250g。超軽量タイヤではないものの、常用に不安の無い数値と言えるだろう。カラーはブラックとスキンサイドの1色のみの設定だ。
なお、2013年モデルでは25mm幅も追加される。また、モデル名が「CORSA SC」と改名されることになるという。
―インプレッション
テストではカーボン製のディープリムホイールにCorsa Evo SCを装着。Corsa Evo SCはアメ色のタイヤサイドを採用し、最新のバイクにはもちろんのこと細身のチューブのバイクにはバッチリとハマる。
トレッドは直線の溝が掘られたセンターを矢羽状のヤスリ目が囲む、ヴィットリアの伝統的なパターンだ。バルブ長は42mmなので、標準的な50mmクラスのディープリムホイールへの装着にはバルブエクステンダーが必要だ。
走り出してすぐに実感したのは、非常に滑らかでしっとりとした乗り味であること。トレッドを含めたタイヤ全体がとてもしなやかだ。通じて乗り心地も良く、路面の細やかな凹凸による衝撃をハンドルやサドルに伝えてこない。快適性はかなり高いといって良いだろう。
テスターである私の体重は60kg。徐々に空気圧を上げていっても、持ち前のしなやかさのおかげで乗り味のの変化幅は小さい。ベストな空気圧は、前7.0、後7.2ほどと感じた。
グリップに関しては従来のヴィットリアタイヤと同様で、しなりからグリップを生み出すタイプのタイヤだ。バンク中にはタイヤサイドが大きく粘るため、直進時も、コーナリングにおいても、路面に接しているトレッド面はあまり変わらないように感じる。そのために走行抵抗はやや大きく、常にペタッと路面に粘りつくような感覚はある。
しかし路面の細いギャップを吸収してくれるため接地感は常に薄れず、荒れた路面などでの安心感は非常に高い。このあたりは荒れた路面の多いヨーロッパのブランドならではといったところだろうか。グリップ性能の限界は極端に高くはないが、必要十ニ分と言ったところ。コーナーに思いっきり突っ込んでいってもブレイクするまでの範囲が広く、その周辺での挙動が穏やかなため状況を掴みやすい。
しなやかな乗り味と、抜群の衝撃吸収製を兼ね備えたCorsa Evo SCは、コントロールもしやすく、チューブラータイヤを初めて使うライダーにはかなりオススメだ。また、初めて下る峠道や、日陰のテクニカルコーナーが多い群馬CSCのようなコースでは安心感が得られるため、大きな武器となってくれるだろう。(磯部 聡)
ヴィットリアのチューブラータイヤは23Cが標準となった。Corsa Evo SCはその最高峰に座するモデルだ。ツール・ド・フランスやメジャーレースでもラボバンクやエウスカルテル・エウスカディス、ランプレ、アルゴス・シマノ、コフィディスはじめ数多くのプロチームが使用してきた。
実際、レースの現場で過去2シーズンほど「PROTOTYPE」のレターが入った23Cのタイヤを見ながら、その太さとクラシックな外観を確認していた。そのモデルが市販されることになったというわけだ。ツールを含めたトップレースでの実戦テストを経ていることは明らか。
23Cの太さ。太めのタイヤは実は走行抵抗が軽いという理論だ。ヴィットリアからの具体的な数値データの提示はないものの、それはソーラーカーなどの走行記録データが物語っている。また、エアロ形状を追求した最近のエアロホイールのリム幅が太くなっていることからも、タイヤが太くなるのは必然でもあったと思う。
私自身の個人的な体験でも、昔から太めのチューブラータイヤにメリットを感じてきた。同じブランドで違う細さのタイヤと比べると、空気量を多くでき、「空気圧の幅のストライクゾーン」が少し広くなることが気に入っている。チューブラーに関しては個人的にも長らくヴィットリアユーザーだった。
Corsa Evo SCは、乗り始めてみるとしなやかさの優れたタイヤだ。タイヤサイドがしなることで路面を捉え、クッション性に優れる素晴らしい乗り心地だ。体重67kgで、7気圧を基準に加減して乗ってみた。
パターンがクラシックなことから従来のヴィットリアの天然ゴム的なコンパウンドかと思いきや、コンパウンド自体も進化している感触がある。かつての製品に比べると少し硬めになった印象はあるものの、コンパウンド自体でもグリップする性能が向上しているように感じる。
少し乗ってひと皮剥ければ、グイグイと路面に喰いついてくれる安心感がある。荒れた路面でも細かい振動を吸収してくれるので、乗り心地は非常にいい。この快適性という性能では他社のタイヤを含めた中で最高ランクに位置すると思う。
かつてのヴィットリアのタイヤは雨など濡れた路面にやや弱いという印象があった。それは他社のハイグリップ系タイヤが雨天時の性能をかなり上げてきているからの相対評価なのだが、今回のテスト期間に雨のグランフォンドを走ったが、安心感が大きく増している印象があった。もちろん限界まで攻めることはできないのだが、意図的に滑らせようとしても限界点は高かった。これはコンパウンドの進化した点だと感じる。
また、太さがあるので、そういった路面状況に空気圧を下げて対応するにも、タイヤのキャパが非常に大きい。空気圧を下げても腰砕けすること無く使用できるのは従来からのヴィットリアのタイヤの美点だが、23Cになったことでその点はより有利になる。そういう意味でトータル的に悪コンディションに対応できる能力も相当に高いと感じた。
ナチュラルなスキンサイドはメーカーが謳うように「レトロな外観」だが、最新バイクに取り付けてもとくに古臭い印象はない。それはプロレースの現場で多く使用されているからこそだろう。(綾野 真)
ヴィットリア Corsa Evo SC
■仕 様:チューブラー
■サイズ:700×23c
■重 量:250g
■ケーシング:320TPI
■プロテクション:PRB2.0
■バルブ長:42mm
■価 格:10,893円(税込)
text:So.Iosbe
photo:Makoto.Ayano
Corsa Evo SCは、供給を行うプロチームからのフィードバックによって高い名声を得たCorsa CXを強化し、2011年にモデルチェンジを受けたフラッグシップモデルのチューブラータイヤだ。商品名末尾のSCとは、Servizio Corse(レーシングサービス)のこと。つまりレースシーンでの使用を第一に開発されたピュアレーシングタイヤだ。
Corsa CXからの改良点は、プロチームからの要求に応えた特性を持たせたことと、新型のトレッドを採用したこと。もちろん製造はヴィットリアこだわりのハンドメイドによるもの。コンパウンドには新開発の「ISOグリップ」を採用し、ドライ/ウェットなど、いかなる状況においてもパフォーマンスを発揮することが追求されている。
ケーシングには高密度の320TPIを採用。ポリエステルの芯にコットンを織り入れラテックスで包む製法により、ケブラーを必要としないしなやかさと弾力を生み出すことに成功した。
レースの勝敗にも影響を及ぼすパンクのリスクを減少させるため、Corsa Evo SCには高密度のアラミド繊維を使用した新型の耐パンクベルト「PRB2.0」が装備された。この構造により、しなやかさをキープしたまま耐切断性能を従来製品に比べ約40%向上させることに成功している。これらに包み込まれるインナーチューブはしなやかなラテックス製だ。
「タイヤは太いほどに変形量が少なく、転がり抵抗を低くしグリップを増す」いう近年の考えに基づき、タイヤサイズは23cのみの設定だ。サイズを大きくし、ボリュームを増すことで乗り心地の向上も期待ができる。
こうして完成したCorsa Evo SCの重量はカタログ値で250g。超軽量タイヤではないものの、常用に不安の無い数値と言えるだろう。カラーはブラックとスキンサイドの1色のみの設定だ。
なお、2013年モデルでは25mm幅も追加される。また、モデル名が「CORSA SC」と改名されることになるという。
―インプレッション
テストではカーボン製のディープリムホイールにCorsa Evo SCを装着。Corsa Evo SCはアメ色のタイヤサイドを採用し、最新のバイクにはもちろんのこと細身のチューブのバイクにはバッチリとハマる。
トレッドは直線の溝が掘られたセンターを矢羽状のヤスリ目が囲む、ヴィットリアの伝統的なパターンだ。バルブ長は42mmなので、標準的な50mmクラスのディープリムホイールへの装着にはバルブエクステンダーが必要だ。
走り出してすぐに実感したのは、非常に滑らかでしっとりとした乗り味であること。トレッドを含めたタイヤ全体がとてもしなやかだ。通じて乗り心地も良く、路面の細やかな凹凸による衝撃をハンドルやサドルに伝えてこない。快適性はかなり高いといって良いだろう。
テスターである私の体重は60kg。徐々に空気圧を上げていっても、持ち前のしなやかさのおかげで乗り味のの変化幅は小さい。ベストな空気圧は、前7.0、後7.2ほどと感じた。
グリップに関しては従来のヴィットリアタイヤと同様で、しなりからグリップを生み出すタイプのタイヤだ。バンク中にはタイヤサイドが大きく粘るため、直進時も、コーナリングにおいても、路面に接しているトレッド面はあまり変わらないように感じる。そのために走行抵抗はやや大きく、常にペタッと路面に粘りつくような感覚はある。
しかし路面の細いギャップを吸収してくれるため接地感は常に薄れず、荒れた路面などでの安心感は非常に高い。このあたりは荒れた路面の多いヨーロッパのブランドならではといったところだろうか。グリップ性能の限界は極端に高くはないが、必要十ニ分と言ったところ。コーナーに思いっきり突っ込んでいってもブレイクするまでの範囲が広く、その周辺での挙動が穏やかなため状況を掴みやすい。
しなやかな乗り味と、抜群の衝撃吸収製を兼ね備えたCorsa Evo SCは、コントロールもしやすく、チューブラータイヤを初めて使うライダーにはかなりオススメだ。また、初めて下る峠道や、日陰のテクニカルコーナーが多い群馬CSCのようなコースでは安心感が得られるため、大きな武器となってくれるだろう。(磯部 聡)
ヴィットリアのチューブラータイヤは23Cが標準となった。Corsa Evo SCはその最高峰に座するモデルだ。ツール・ド・フランスやメジャーレースでもラボバンクやエウスカルテル・エウスカディス、ランプレ、アルゴス・シマノ、コフィディスはじめ数多くのプロチームが使用してきた。
実際、レースの現場で過去2シーズンほど「PROTOTYPE」のレターが入った23Cのタイヤを見ながら、その太さとクラシックな外観を確認していた。そのモデルが市販されることになったというわけだ。ツールを含めたトップレースでの実戦テストを経ていることは明らか。
23Cの太さ。太めのタイヤは実は走行抵抗が軽いという理論だ。ヴィットリアからの具体的な数値データの提示はないものの、それはソーラーカーなどの走行記録データが物語っている。また、エアロ形状を追求した最近のエアロホイールのリム幅が太くなっていることからも、タイヤが太くなるのは必然でもあったと思う。
私自身の個人的な体験でも、昔から太めのチューブラータイヤにメリットを感じてきた。同じブランドで違う細さのタイヤと比べると、空気量を多くでき、「空気圧の幅のストライクゾーン」が少し広くなることが気に入っている。チューブラーに関しては個人的にも長らくヴィットリアユーザーだった。
Corsa Evo SCは、乗り始めてみるとしなやかさの優れたタイヤだ。タイヤサイドがしなることで路面を捉え、クッション性に優れる素晴らしい乗り心地だ。体重67kgで、7気圧を基準に加減して乗ってみた。
パターンがクラシックなことから従来のヴィットリアの天然ゴム的なコンパウンドかと思いきや、コンパウンド自体も進化している感触がある。かつての製品に比べると少し硬めになった印象はあるものの、コンパウンド自体でもグリップする性能が向上しているように感じる。
少し乗ってひと皮剥ければ、グイグイと路面に喰いついてくれる安心感がある。荒れた路面でも細かい振動を吸収してくれるので、乗り心地は非常にいい。この快適性という性能では他社のタイヤを含めた中で最高ランクに位置すると思う。
かつてのヴィットリアのタイヤは雨など濡れた路面にやや弱いという印象があった。それは他社のハイグリップ系タイヤが雨天時の性能をかなり上げてきているからの相対評価なのだが、今回のテスト期間に雨のグランフォンドを走ったが、安心感が大きく増している印象があった。もちろん限界まで攻めることはできないのだが、意図的に滑らせようとしても限界点は高かった。これはコンパウンドの進化した点だと感じる。
また、太さがあるので、そういった路面状況に空気圧を下げて対応するにも、タイヤのキャパが非常に大きい。空気圧を下げても腰砕けすること無く使用できるのは従来からのヴィットリアのタイヤの美点だが、23Cになったことでその点はより有利になる。そういう意味でトータル的に悪コンディションに対応できる能力も相当に高いと感じた。
ナチュラルなスキンサイドはメーカーが謳うように「レトロな外観」だが、最新バイクに取り付けてもとくに古臭い印象はない。それはプロレースの現場で多く使用されているからこそだろう。(綾野 真)
ヴィットリア Corsa Evo SC
■仕 様:チューブラー
■サイズ:700×23c
■重 量:250g
■ケーシング:320TPI
■プロテクション:PRB2.0
■バルブ長:42mm
■価 格:10,893円(税込)
text:So.Iosbe
photo:Makoto.Ayano
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