2012/09/04(火) - 09:04
ロンドンパラリンピック自転車トラック競技最終日の9月2日、大城竜之/パイロット伊藤保文のペアはスプリント〔男子B〕に出場。1kmTTのタイムでは格上の顔ぶれのなか4強に残り、惜しくもメダルは逃すも4位と健闘。強豪を相手に、観客を魅了する巧みなレースを展開した。
■勝負の鍵は老練なパイロットたち
ついにブロンズマッチに進出した日本。上位4組の顔ぶれをみると、まず格上の脚を持つ英国の2ペア、アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーンとニール・ファキー/バーニー・ストーリー、それからスプリントのうまさでは定評のあるパイロットを擁するポルト/ビラヌエバ(スペイン)、そして大城ペアだ。このなかに日本が入っているだけでも、歴史的なできごとと言っていいかもしれない。出場は7組で、経験豊富なパイロットたちが上位に顔を揃える。
視覚障害クラスのスプリントでは、パイロットの状況判断が勝負の鍵となる。この種目の経験はほとんどなかった伊藤がパイロットとして初めてこの種目で世界の強豪たちと闘った2011年3月のイタリア・モンティキアリでのUCIパラサイクリングトラック世界選手権では、「手も足も出ずにひねられた」状態だった。
そのレース後に、「最初は『ちょっと障害者の方のお手伝いができれば』という気持ちでパイロットを引き受けたが、これは健常者のナショナルチームと同じように本気で腹をすえてやらないと…と衝撃を受けた。たいへんなことを始めてしまったことに気がついた」と語っていた伊藤。
ロンドンまでの月日で練習を重ねた大城/伊藤ペアは、ビラヌエバと互角に美しい勝負ができるまでになっていた。
■魅せるレースを繰り広げた日本チーム
予選のハロンは5位と、まずは最強ペアとの対戦は避けられた。いい組み合わせで準々決勝へ。相手はオランダのリネ・オウシュト/パトリック・ボスのペア。今年2月ロサンゼルスでのUCIパラサイクリングトラック世界選手権でも大城ペアが準決勝で対戦し2本取られた、手応えのある相手だ。伊豆ベロドロームでの合宿を重ね、室内バンクを走り込んだ大城ペアは、巧みにオランダのペアを抑えまず1本先取。続く1本も先着するが、禁止されている最終200mでの走行ライン変更をしたため日本ペアは降格に。勝負は3本目に持ち越されるが、3本目も日本が勝ち準決勝へと駒を進めた。
準決勝には4組が勝ち上がり、日本はアンソニー/マクリーン組と対戦。この準決勝の勝者2組がゴールドマッチへ、敗者2組がブロンズマッチへと進む。大城ペアは男子B1クラス最強の脚を持つこのペア相手に健闘するも2本を取られ、3、4位決定戦へ。
日本が銅メダルを賭けた最後の戦いの相手は、ポルト/ビラヌエバ組。彼らは、先行する相手が内周を気にしているうちに背後で第4コーナーのカントを上がり、一気に駆け下ろして抜き去るなど、鮮やかな技を次々に繰り出してくるペアだ。彼らを相手に日本は互角に近い闘いぶりを見せ、最後は脚で負けてしまったものの、おおいに魅せるレースを展開した。
1本目は僅差でほぼ同着だったが、日本はブルーバンド走行で降格、スペインの勝利となる。2本目は途中で日本が外周の手すりに触れたとしてピストルが鳴り再発走に。再発走後の2本目、交錯するラインを巧みにかわしながら進んでいた2台だが、スペインペアは最終周回のバックストレッチ付近でアウトから日本を追い抜くとそのまま大きく差を広げてゆき、表彰台への切符は彼らのものとなった。
トラックの華、スプリントという種目に必要なのは、戦略、経験、脚力、持久力など総合的な力なのだということがよくわかるハイレベルなレース。それを展開した4台のうち1台が日本だったことは感慨深い。今のパラサイクリング日本チームは、次世代の選手層の育成についてはまだ模索中という状態だが、いずれこのクラスの後進が現れたとき、この大城ペアの積んできた経験は、日本にとって非常に貴重な財産になることを予感させた。
優勝はカップス/マクリーン。前日DNFにならず1kmTTを走っていたら何秒を刻んでいたのかと思わずにいられない見事な脚で、フィニッシュラインを駆け抜けた。
銀はファキー/ストーリー。自国のスターたちの勝利に会場はひときわ大きな拍手を送った。
トラックはこの日で全競技を終了、続くロード競技は9月5日から4日間の日程で行われる。
▼スプリント〔男子B〕予選 200mTT
1位 アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーン(英国)10秒050(世界記録)
2位 ニール・ファキー/バーニー・ストーリー(英国)10秒165
3位 ホセ エンリケ・ポルト/ホセ アントニオ・ビラヌエバ(スペイン)10秒458
5位 大城竜之/伊藤保文 10秒639
▼スプリント〔男子B〕最終順位
1位 アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーン(英国)
2位 ニール・ファキー/バーニー・ストーリー(英国)
3位 ホセ エンリケ・ポルト/ホセ アントニオ・ビラヌエバ(スペイン)
4位 大城竜之/伊藤保文
Photo&Text Yuko SATO
■勝負の鍵は老練なパイロットたち
ついにブロンズマッチに進出した日本。上位4組の顔ぶれをみると、まず格上の脚を持つ英国の2ペア、アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーンとニール・ファキー/バーニー・ストーリー、それからスプリントのうまさでは定評のあるパイロットを擁するポルト/ビラヌエバ(スペイン)、そして大城ペアだ。このなかに日本が入っているだけでも、歴史的なできごとと言っていいかもしれない。出場は7組で、経験豊富なパイロットたちが上位に顔を揃える。
視覚障害クラスのスプリントでは、パイロットの状況判断が勝負の鍵となる。この種目の経験はほとんどなかった伊藤がパイロットとして初めてこの種目で世界の強豪たちと闘った2011年3月のイタリア・モンティキアリでのUCIパラサイクリングトラック世界選手権では、「手も足も出ずにひねられた」状態だった。
そのレース後に、「最初は『ちょっと障害者の方のお手伝いができれば』という気持ちでパイロットを引き受けたが、これは健常者のナショナルチームと同じように本気で腹をすえてやらないと…と衝撃を受けた。たいへんなことを始めてしまったことに気がついた」と語っていた伊藤。
ロンドンまでの月日で練習を重ねた大城/伊藤ペアは、ビラヌエバと互角に美しい勝負ができるまでになっていた。
■魅せるレースを繰り広げた日本チーム
予選のハロンは5位と、まずは最強ペアとの対戦は避けられた。いい組み合わせで準々決勝へ。相手はオランダのリネ・オウシュト/パトリック・ボスのペア。今年2月ロサンゼルスでのUCIパラサイクリングトラック世界選手権でも大城ペアが準決勝で対戦し2本取られた、手応えのある相手だ。伊豆ベロドロームでの合宿を重ね、室内バンクを走り込んだ大城ペアは、巧みにオランダのペアを抑えまず1本先取。続く1本も先着するが、禁止されている最終200mでの走行ライン変更をしたため日本ペアは降格に。勝負は3本目に持ち越されるが、3本目も日本が勝ち準決勝へと駒を進めた。
準決勝には4組が勝ち上がり、日本はアンソニー/マクリーン組と対戦。この準決勝の勝者2組がゴールドマッチへ、敗者2組がブロンズマッチへと進む。大城ペアは男子B1クラス最強の脚を持つこのペア相手に健闘するも2本を取られ、3、4位決定戦へ。
日本が銅メダルを賭けた最後の戦いの相手は、ポルト/ビラヌエバ組。彼らは、先行する相手が内周を気にしているうちに背後で第4コーナーのカントを上がり、一気に駆け下ろして抜き去るなど、鮮やかな技を次々に繰り出してくるペアだ。彼らを相手に日本は互角に近い闘いぶりを見せ、最後は脚で負けてしまったものの、おおいに魅せるレースを展開した。
1本目は僅差でほぼ同着だったが、日本はブルーバンド走行で降格、スペインの勝利となる。2本目は途中で日本が外周の手すりに触れたとしてピストルが鳴り再発走に。再発走後の2本目、交錯するラインを巧みにかわしながら進んでいた2台だが、スペインペアは最終周回のバックストレッチ付近でアウトから日本を追い抜くとそのまま大きく差を広げてゆき、表彰台への切符は彼らのものとなった。
トラックの華、スプリントという種目に必要なのは、戦略、経験、脚力、持久力など総合的な力なのだということがよくわかるハイレベルなレース。それを展開した4台のうち1台が日本だったことは感慨深い。今のパラサイクリング日本チームは、次世代の選手層の育成についてはまだ模索中という状態だが、いずれこのクラスの後進が現れたとき、この大城ペアの積んできた経験は、日本にとって非常に貴重な財産になることを予感させた。
優勝はカップス/マクリーン。前日DNFにならず1kmTTを走っていたら何秒を刻んでいたのかと思わずにいられない見事な脚で、フィニッシュラインを駆け抜けた。
銀はファキー/ストーリー。自国のスターたちの勝利に会場はひときわ大きな拍手を送った。
トラックはこの日で全競技を終了、続くロード競技は9月5日から4日間の日程で行われる。
▼スプリント〔男子B〕予選 200mTT
1位 アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーン(英国)10秒050(世界記録)
2位 ニール・ファキー/バーニー・ストーリー(英国)10秒165
3位 ホセ エンリケ・ポルト/ホセ アントニオ・ビラヌエバ(スペイン)10秒458
5位 大城竜之/伊藤保文 10秒639
▼スプリント〔男子B〕最終順位
1位 アンソニー・カップス/クレイグ・マクリーン(英国)
2位 ニール・ファキー/バーニー・ストーリー(英国)
3位 ホセ エンリケ・ポルト/ホセ アントニオ・ビラヌエバ(スペイン)
4位 大城竜之/伊藤保文
Photo&Text Yuko SATO