富士見パノラマMTBパークで開催されたMTB Fun Meeting。出展される各ブランドのブースで、話題の製品をチェック。ゲレンデで試乗してのインプレッションをお届け。

ミヤタサイクル
MERIDA NINETY-NINE CF TEAM-D
 899,000円(完成車)

MERIDA NINETY-NINE CF TEAM-DMERIDA NINETY-NINE CF TEAM-D

MULTIVAN MERIDA BIKING TEAMが実戦で使用する、カーボンフレームとDTショックで武装したレーシングクロス
カントリーバイク。試乗後に値段を聞いたのだが、これは「よかった」。「とんでもなく値段の高いフルサス」と聞いてからだったら評価に少しは曇りが出ていたかもしれない。
何がかというとこのバイク、滅茶滅茶いいのだ。今回乗った中でナンバー1の出来栄えだった。

カーボンアウターのDT SWISS XRC100 RACE REMOTEカーボンアウターのDT SWISS XRC100 RACE REMOTE リアもカーボンのDT SWISS CARBON 38W/REMOTEリアもカーボンのDT SWISS CARBON 38W/REMOTE M.O.R.E.(Merida Optimized Ride Engineering) SuspensionM.O.R.E.(Merida Optimized Ride Engineering) Suspension


具体的に「ここが」、というのはないのだが、とにかく全体のまとまりが素晴らしく良く、ライダーを苦労なく前に進めてくれるのだ。フレーム売りもあるが、僕は完成車で見ての完璧なパッケージングの恩恵なのだと感じた。
使った経験がなく興味津々だったDT SWISS製の前後サスペンションの動きはとても絶妙で、それを支えるフレームのジオメトリーも完璧。ぼくの身体には完全にぴったり合い、リアが流れても制御し易い。旋回性、コントロール性も秀逸。
GT ザスカーの紹介で触れた、上りで一箇所ある難しいセクションをクリアできたもう1つのバイクはコイツ。
試乗車は「ちょっとこれは…」な、ミニサイクルにでも付いてそうなペダル(ピンとかなくて、とにかく滑る。ボディも小さい)でこれなのだから、例えばSPDにしたらどうなる事やら。質量の軽さが利いているのか(9.2kg/410mm 付属品別)カーボン繊維の妙が利いているのか、正直そこまでは読み取れなかったが、とにかくハイレベル。すべてが完璧だった。

財布の心配を一切しなくていいなら、このBIKEは即買うべきである。メリダはブランドとしてはとても旧くからあるが、近年のイメージアップ、進化の方向性は間違っていないという事だろう。日本では今、代理店がとても精力的に展開しているので、乗るチャンスがどこかであれば、ぜひこの素晴らしさは体感していただきたい。ちなみに今回の試乗車サイズは460mmだ。

BIG.NINE CARBON 3000-D 399,000円(完成車)

メリダ BIG.NINE CARBON 3000-Dメリダ BIG.NINE CARBON 3000-D

カーボンのリジッドフレームに29インチ径の組み合わせ。ある意味、今のクロスカントリーの主流パッケージ。ただ、試乗車は480mmサイズでとにかく大きかった。ぼくの丈からいうと、そもそも29インチBIKEとの相性は最悪なのだが、それでも頑張って乗ってみた。

様々なテクノロジーが投入されたフレームは、BBの低さを強く感じた様々なテクノロジーが投入されたフレームは、BBの低さを強く感じた 29インチBIKEはまだそれほど乗車経験がないので、自己データのストックと照らし合わせて、というのはできなかったが、上りはたしかに登る。障害物を乗り越える力はこのモデルも優れているようだ。下りの安定性も不満ない。メリダも、29インチの特性を正常進化させているようだ。
ただ逆に、平地でちょっと漕いだだけでは、減速感を強く感じた。径が大きいから、速度を乗せるまでは頑張って漕がなければならないのだ。巡航スピードがある程度で維持できて(もしくはそういうフィールド)、またそれだけの脚力・体力があれば、BIKE・ライダーともに持つパフォーマンスを発揮させてくれるだろう。

試乗後にスタッフと話したら、2013年は今のサイズ展開以上にXS(380mmぐらい)もラインナップするという。個人的に今から楽しみだ。また、スタッフ氏が言うには、メリダは今MTB界でさらに新しい潮流としてある650B規格(27.5インチ)をラインナップする予定はないという。26と29の使い分けに絞って、レース活動も商品ラインナップも展開していくようだ。

また、メリダはここ富士見パノラマと安曇野市(長野県)とに試乗車を常備しているMERIDA XPERIENCE CENTREというサービスを実施している。様々なモデルを実際のMTBフィールドで試せるもので、富士見パノラマには今回絶賛であったNINETY-NINE CF TEAM-Dがある(410mm)。安曇野には29インチの440mmが用意されている(BIG.NINE TFS 900-D)ので、こちらも興味津々である。みなさんもぜひ、足を運んでみて欲しい。

※参考リンク(PDF) MERIDA XPERIENCE CENTRE
http://www.miyatabike.com/topics/img/120704.pdf

グルーヴィーインターナショナル
FLY RACING DEFAULT
 15,540円

FLY RACING DEFAULTヘルメット カラーバリエーションFLY RACING DEFAULTヘルメット カラーバリエーション

FLY RACING DEFAULTヘルメットFLY RACING DEFAULTヘルメット モトクロスウェアやヘルメットがその筋ではかなり有名なフライレーシング。そこがリリースするMTB用のヘルメット。帽体もバイザーもデザインが秀逸で、グラフィックとそれがまた合うのが会場で目を引いた。価格とのバランスで見ても相当軽いのもポイントだ。メーカーでも、「このヘルメットの価格の3~4倍の値段で売られているカーボンヘルメットのように軽い」と謳っている。
帽体は、aerodynamic polly-alloy shellというもの。そもそもがモトクロス用ヘルメットも作っているメーカーなので、軽くて安全性がおざなりということはないだろう。他、21個のベントと取り外して洗う事ができるライナーとチックパッド、とスタンダードな仕様。
ブラック/ホワイト、レッド/ホワイト、ブラック/ブルー、ライム/ブラック/パープルの4色展開でユース用と、アダルトS、M、Lの4サイズを揃える。写真左奥は、参考展示のモトクロス用。重さはやはりそこそこになる。

Enduro Bearing XD-15 26,040円

Enduro Bearing XD-15Enduro Bearing XD-15

アンギュラーコンタクトが最大の特徴だアンギュラーコンタクトが最大の特徴だ セラミックベアリングを使用したボトムブラケット(BB)で、構造がアンギュラーコンタクトというのが最大の特徴。一般的なBBに使われるラジアルベアリング(深溝球軸受)だとペダリング時の負荷は下方向に強く掛かり、結果的に力を受けるのは下側3つ程度のベアリングボールになってしまうという。アンギュラーコンタクトはこれを解消する手法で、ボールすべてに均等に負荷が掛かり、ボール1つ1つへのストレスが減る。これで、まずベアリング自体の寿命を高めている。すべてのボールで力を受けるため、回転抵抗も均等になる。

もう1つの特徴は、モデル名にもなっている「XD-15高窒素ステンレス鋼」。レース部に使われている。この素材は、ロールスロイス製のエアバス航空機のジェットタービンにも使われているもので、高い耐荷重性能と耐腐食性能を持ち、一般的なベアリングレースに対し強度が40%向上するという。また、その素材特性からグリスアップが必要なく、結果、とてもスムーズな回転になる。展示サンプルには、シマノ製とNTN製のベアリングが用意されていたのが、それらと比べ格段に違うスムースさであり、絶品であった。均等なコンタクトと、高性能なレースの組み合わせが導き出したポテンシャルなのだろう。
メーカーでは、1年間グリスアップなしでも回転する強度および耐腐食性を維持し、今までのどのBBよりも回転し、特に高トルク時の回転性能は絶大というが、確かにこれは事実だろう。
ちなみに、このエンデューロ ベアリング社はアメリカの会社で、そもそもがベアリング屋さん。フォークリフトの部品を幅広く手掛けながら、多くのMTBで出荷時にインストールされているベアリングのかなりがここの製品という、採用率の高さと信頼性を誇る。XD-15高窒素ステンレス鋼はわざわざフランスから輸入して、専業の他社で加工してもらい、それと自社のベアリングを組み合わせる、という手間のかかりよう。その為か、常にバックオーダ状態らしい。しかし、今回体感したスムーズさは格別のもので、待たされてもぜひ使いたいと強く感じた。
今回の展示品は、JIS 73mm規格のXD-15 MTB BB Cup SETで、シマノ/スラム(付属のアダプターを使用)に対応。この他にも、PressFitBB30、BB30など、多くのラインナップを揃える。

ダートフリーク
LITEC HASSO Ti 26


LITECは、カーボンフレームで市場に新参したまだ若い日本生まれのブランド。このHASSO(ハッソ)は、その同社が新しいブロジェクトとして投入したチタン製のフレームになる。まだテスト中の状態で、今回試乗できたこの個体も、サンプル一つ目ということだ。

LITEC HASSO Ti 26LITEC HASSO Ti 26

テーパードヘッドチューブを採用テーパードヘッドチューブを採用 乗った印象としては、ボディアクションを積極的にする必要があるフレームという感じ。漫然と乗っていては駄目な雰囲気だ。この特徴はメーカーでも企図したものでもあったようで、試乗後に印象を伝えたところ、「ある意味では上級者向けのフレームになるかもしれません」とコメントをいただいた。このハッソに限らずだが、リテックは日本の山中フィールドに合わせた、自分たちが楽しめるフレーム作りを目指しているという。
カーボンとの乗り比べはしなかったが、チタン素材の効果か、鈍い振動を伝えてくれる。もちろん、不快ではないレベルでだ。

LITEC HASSO Ti 29er

こちらもサンプル一つ目の個体。ネーミングの通り、ハッソの29インチ版だ。フロントがシングルなので、スキルアップエリアの下りのみを走行した。
これはハッソに限らずなのだろうが、ホイールベースが26インチよりも伸びるので、やはり安定感がある印象。タイヤのエアボリュームもあるので、これもプラス効果に感じた。下り主体で、26インチと違いBIKE任せで乗って楽しむ使い方ができる。振動の感じは26インチと類似だった。

LITEC HASSO Ti 29erLITEC HASSO Ti 29er

サイズは26インチが13インチ、29インチが14インチ、トップ長はどちらも560mm。括りとしてはSサイズになり、今後Mサイズも展開予定で、それも含めてこれから再度図面を引き直すということだ。
ちなみにダートフリークではSaracenというブランドのBIKEも新規取り扱いを始めたのだが、残念ながら今回タイミングがどうしても合わず、試乗の機会を得られなかった。こちらの展開も期待したい。

BB周りは26インチと大きく異なるBB周りは26インチと大きく異なる 29erにはチェーンガイドを装備29erにはチェーンガイドを装備


ゴールドウィン
SCOTT Scale 40
 210,000円

SCOTT Scale 40SCOTT Scale 40

スコットはスキーのアルミ&カーボンポールでも有名な、自転車のフレーム素材ととにかく相性の良いお馴染みのメーカー。Scale(スケール)はその自慢の技術を投入したアルミ素材のクロスカントリー向けBIKEだ。このシリーズは過去に同じ40の2011年モデルと、カーボンの29インチに乗った事があり、そのどちらもがリジッドBIKEの見本的な特性を持った素晴らしいものだった。

6061 superlight custom butted tubing のフレーム6061 superlight custom butted tubing のフレーム Direct Post Mount160 採用のリアブレーキDirect Post Mount160 採用のリアブレーキ


ただ、今回は残念ながらその時の印象をちょっと変えてしまった。試乗条件が悪く、シートポストを切っていない為、僕にはサドルが高く(目一杯下げても)、更にフロントサスペンションのセッティングが出ておらず、これが足を引っ張ってしまった。フレームは今までよりも硬く感じ、それをポジションとサスペンションで補って欲しいのだが、叶わず。今までとにかく良い印象しかないBIKEなので、今度は適性状態で乗ってみたい。今回のイメージは簡単に払拭される筈だ。上りが得意なキャラクター、というのは相変わらず強く感じた事を付け加えておく。

2013モデル SCALE610、SPARK910

スコットは2013年モデルを展示していた(試乗はNG)。スケール610(368,000円)と、スパーク910(458,000円)で、スパークは日本では2013年からのニューシリーズだ。610は得意のカーボン素材を使ったフレームが特徴で、SCDS(Scott Carbon Dropout System)も投入されている。スパークは前後のサスペンションを同時にロックできる Twin Loc という新機能が投入された、耐久系BIKEになる。

2013年モデルのスコットSCALE6102013年モデルのスコットSCALE610 SPARK910もお目見えSPARK910もお目見え


また2013年からは、モデル名の数字の頭がインチ表示になる。610は26インチ、910は29インチという具合だ。
また、海外で情報が飛び交っている、スコットが出すと言われているニューサイズの650B(27.5インチ)だが、今回、スタッフからオフィシャルに「やります!」というお言葉をいただいた。日本にも入ってくるというから、こちらも楽しみだ。

Yuris
Dabomb BAREBONES 
12,810円

薄くて軽いのが特徴のフラットペダル。11mmという薄さを実現した結果、ベアリングの一部が外に出ている(黒いラバーのキャップ部)。それほど薄く作られているのだ。カラーは、黒、赤、マットブラウンの3色。マイナーチェンジモデルがあり、写真の物とは一部、仕様が異なる。

Yuris Dabomb BAREBONES 12,810円Yuris Dabomb BAREBONES 12,810円

Morewood Izimu 245,000円(フレーム+リアショック)

南アフリカ産のBIKEブランドで、存在を知った時は「何であの国で!?」と思ったが、南アフリカでMTBを楽しんでいたライダーが、自分の欲しいBIKEを作ろう、という事で興した会社という。代理店の努力もあり、日本でもかなり浸透してきた印象を受ける。

Morewood  Izimu (フレーム+リアショック)Morewood  Izimu (フレーム+リアショック)

Izimu(イジム)はそんな同社の直押し機構のダウンヒルバイク。興味はあったが、乗るのは初めてだった。
モアウッドは今年(2012年)から、ワールドカップでハナー兄弟がダウンヒルチームに加入し、その開幕戦で妹のトレーシー・ハナーが見事優勝した(開催地は奇しくも南アフリカ)。ダウンヒルバイクのもうひとつのモデル、リンク機構を持つMakuluを駆った兄のミック・ハナーは3位と、兄弟で好成績を残し、そこから「闘えるBIKE」という先入観があり、実は試乗はかなり危なかった。

代理店イチオシの、シートチューブとのクリアランス代理店イチオシの、シートチューブとのクリアランス 直押しのリアサスペンション。ユニットはフォックスDHX RC2直押しのリアサスペンション。ユニットはフォックスDHX RC2


ハナー兄弟のイメージのせいで気持ちがノッテしまい、ついつい攻めてしまう。そのため、「ヒヤッ」とする事が幾度もあった。決して楽をさせてくれるBIKEではなく、バイクと積極的に会話をして走る必要も感じた。このキャラクターは嫌いではないのだが、それなりに暴れもするので、とにかく大きなボディアクションが大切。個人的にはSPDで乗るのがいいかな、とも感じた。

また、オフロードオートバイでも言われることだが、リンクレス(直押し)は、どうしても突き上げに独特のクセがある。近年はショックの進化でかなり制御されるようになったので、ユニットのセッティングが重要になる。今回の試乗車はMサイズだし足回りは硬めのセッティング、との事だったので、調整すればまた違った一面を見せてくれるだろう。
一応、メーカー的にはIzimu(イジム)はダウンヒルを「愉しむ」、どちらかというと「ゆったりバイク」らしいのだが、優勝の実績を知ってしまうとそうはいきません。イケイケになってしまうバイクだ。




僕が気になったアイテム&試乗したBIKEのレポートは以上だが、この他にも見所は多くあり、相変わらずMTBのFun=楽しみに、Meeting=出会えるイベントだった。終日、好天に恵まれたのも良かったし、富士見パノラマに新設のスキルアップエリアのお陰で、いろいろなBIKEを積極的に試せたのも大きなプラスだった。来年もまた足を運んでみたい。
ちなみに、有料で売られる事が多いスポーツサイクルのカタログだが、こういうイベントではすべて無償でいただける。ノベルティを配っているブースもあって、3度おいしい事まちがいなしだ。


photo&report : Harumichi “Yakan” SATO
取材協力/富士見パノラマリゾート

フォトギャラリー2(Google Picasaウェブアルバム)

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