2012/08/28(火) - 13:59
今年も昨年に続き快晴となった全日本マウンテンサイクリングin乗鞍。アマチュアヒルクライマー達にとって最高の栄冠であるチャンピオンクラスで優勝を飾ったのは森本誠(MAX SPEED97)。森本は昨年は振るわなかったが、一昨年までに乗鞍3連覇をした実力を証明する復活の勝利だ。
8月26日に長野県松本市で行われた全日本マウンテンサイクリングin乗鞍は、標高2720mと国内の道路における最高標高地点を有する乗鞍エコーラインを登るヒルクライムレースだ。松本市の乗鞍高原観光センターから、長野・岐阜県境に至るまでの間の全長20.5km、獲得標高差1260mの山岳を舞台に闘われる。とくにチャンピオンクラスの闘いは壮絶で、ステータスも高い。チャンピオン男女のレポートをお届けする。
最後まで展開のもつれたチャンピオンクラス
国内最強のアマチュアヒルクラマーを決定するチャンピオンクラスには、今年も全国の有力クライマーが集結。昨年の覇者でプロロード選手である長沼隆行(VAXレーシング)は、チームの参加形態の変更により出場せず。
今年度、これまでのJCA全日本ヒルクライムシリーズ戦の結果は、「日本の蔵王ヒルクライム・エコ」と「矢島カップ Mt.鳥海バイシクルクラシック」は森正(宮川医療少年院デュアスロンクラブ)が、そして「ツール・ド・美ヶ原高原自転車レース大会」は乾友行(Team ARI)が勝利している。
そして森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形でJPT登録)。昨年は不調に苦しんだものの、今年になってから「Jプロツアー第7戦富士山ヒルクライム」で2位。そして「Jプロツアー第8戦 東日本ロードクラシック」では5位とコンディションを上げて乗鞍に臨んだ。
ヒルクライムレースで上位に入る矢部周作(haikala design lab & THE善峯)は左手首の骨折が完治しないまま参加。またMt.富士ヒルクライム優勝の田崎友康(F(t)Racing)や、高岡亮寛・宮崎新一(共にイナーメ・アイランド信濃山形)と国内トップクラスの選手がスタートラインに並んだ。
7時のチャンピオンクラススタートから50分程。頂上から見える場所に姿を現したのは横一線に並んだ森本と田崎。その後ろにやや遅れて乾の3人だった。
勝負はスプリント勝負に持ち込まれ、残り50m地点から森本が田崎の前に出て決着。優勝タイムは56分16秒859で、森本自身が持つ55分08秒の大会記録更新は来年以降に持ち越された。
3人が語るレース展開
森本 「スタートは乾さんのアタックから始まりました。このままではまずいと思って追いついて、後ろが追いついてパックになり、乾さんのペースでローテーションを回してました。中間地点を過ぎてから乾さんがまた牽きだして、旧コンクリート坂からの強烈なペースアップで集団が崩壊。僕は乾さんの後ろ3m辺りで食らいつきました。すごくキツかった」
田崎 「そこでは集団が崩壊してバラバラになって、3番手集団が4・5人いる形に」
森本・田崎 「森、田崎、矢部、宮崎、ハシケンさん(ファンライド)かな」
森本 「位ヶ原までのヘアピンコーナーでは、乾さんのコーナーでのアタックが強烈で、僕はなんとか緩斜面では追いつくような展開でした。これだと後ろの集団が追いつきやすい。でもペースがきつくて乾さんから離れられないジレンマがあって。その内に後ろの人数が大きくなってきてヤバいなぁと」
田崎 「後ろの集団は矢部さんのペースアップが効果的で、集団がタレそうになるとペースアップしていました」
森本 「あとで矢部さんに聞いたら先頭に追いついたらスプリントを狙っていたそうです。アウターギアがあるのは矢部さんだけなので」
田崎 「私は大雪渓の手前で集団から飛び出し、前に追いついて先頭は3人に。最後は2人でした。最後のスプリントに自信はあったのですが、残り250mから何度かスプリントをかけ、残り50mで一度森本さんを前に行かせてから勝負しようとしましたが駄目でした。標高が高いので苦しくなって仕掛けるのが早すぎだったんです」
森本 「しかし、レースでこんな辛い展開は初めてでした」
乾 「僕は金曜日の雨の試走で風邪を引いしまい、朝から熱がありました(笑)」
森本 「乾さんはそんな感じは全くしませんでしたよ。乾さんとは何度かレースをしましたが、こんなに苦しめられたことはなかった。今回のレースはホントにきつかったです」
女子は全日本選手権ロードレースで3位になるなど、ロードレースでも結果を残す金子広美が1時間8分38.476秒のタイムを叩き出し総合で勝利。矢沢みつみの持つ1時間8分10秒のコースレコードの更新を狙ったが、今回は及ばず。来年以降のタイム更新に大きく期待が持たれるところだ。
チャンピオンクラス優勝:森本誠(MAX SPEED97)のバイク
森本誠のバイクはフェルトのF1で、自身が勤めるGOKISO(ゴキソ)のハブを使ったホイールをアッセンブル。ゴキソは愛知県にある精密機械を製作する近藤機械製作所の自転車パーツブランドだ。チタン材を削り出し軽量化を施したスペシャル仕様のハブで、軽量に仕上がっているという。高精度(P5クラス)のベアリングをF/R各4個使い、森本自身で組み付けたハブとのこと。バイクの重量は5.7kg。フロントギアはシングル、サドルはax-lightness。
ロードレーサー女子A優勝:金子広美のバイク
金子広美はロードレースでも使用しているGDRのメテオスピートを駆る。無理な軽量化は行わず、フロントギアはダブル仕様のまま。コンポーネントはシマノだが、カンパニョーロのレバーを組み合わせる点がトピックス。パワー計測はSRM、ブレーキは東京サンエスの展開するパーツブランド、onebyEsuのライトオンライトブレーキを使用する。
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍2012 チャンピオンクラス結果
1位 森本誠(MAX SPEED97) 56:16.859
2位 田崎友康(F(t)Racing) 56:23.921
3位 乾友行(Team ARI) 56:44.437
4位 森正(宮川医療少年デュアスロンチーム)56:44.437
5位 矢部周作(haikala design lab & THE善峯)56:50.446
6位 足立智弘 0:57:12.54
7位 宮崎新一 0:57:15.05
8位 村山利男 0:57:27.39
9位 高岡亮寛 0:57:28.65
10位 本柳隆志 0:57:52.94
ロードレーサー:女子A結果
1位 金子広美 1:08:38.476
2位 市東章代 1:16:55.308
3位 上田順子 1:18:07.364
4位 小島由起子(なるしまフレンド)1:20:16.032
5位 山崎愛美 1:22:39.751
6位 湯川紘世(Team Sakatani 近農サイクOB)1:24:04.862
7位 石井理会 1:24:25.153
8位 相野田静香(club GROW)1:25:32.402
9位 志村恵実(たかだフレンド)1:25:40.555
10位 氷高知紗 1:27:03.924
text&photo:Akihiro.NAKAO
8月26日に長野県松本市で行われた全日本マウンテンサイクリングin乗鞍は、標高2720mと国内の道路における最高標高地点を有する乗鞍エコーラインを登るヒルクライムレースだ。松本市の乗鞍高原観光センターから、長野・岐阜県境に至るまでの間の全長20.5km、獲得標高差1260mの山岳を舞台に闘われる。とくにチャンピオンクラスの闘いは壮絶で、ステータスも高い。チャンピオン男女のレポートをお届けする。
最後まで展開のもつれたチャンピオンクラス
国内最強のアマチュアヒルクラマーを決定するチャンピオンクラスには、今年も全国の有力クライマーが集結。昨年の覇者でプロロード選手である長沼隆行(VAXレーシング)は、チームの参加形態の変更により出場せず。
今年度、これまでのJCA全日本ヒルクライムシリーズ戦の結果は、「日本の蔵王ヒルクライム・エコ」と「矢島カップ Mt.鳥海バイシクルクラシック」は森正(宮川医療少年院デュアスロンクラブ)が、そして「ツール・ド・美ヶ原高原自転車レース大会」は乾友行(Team ARI)が勝利している。
そして森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形でJPT登録)。昨年は不調に苦しんだものの、今年になってから「Jプロツアー第7戦富士山ヒルクライム」で2位。そして「Jプロツアー第8戦 東日本ロードクラシック」では5位とコンディションを上げて乗鞍に臨んだ。
ヒルクライムレースで上位に入る矢部周作(haikala design lab & THE善峯)は左手首の骨折が完治しないまま参加。またMt.富士ヒルクライム優勝の田崎友康(F(t)Racing)や、高岡亮寛・宮崎新一(共にイナーメ・アイランド信濃山形)と国内トップクラスの選手がスタートラインに並んだ。
7時のチャンピオンクラススタートから50分程。頂上から見える場所に姿を現したのは横一線に並んだ森本と田崎。その後ろにやや遅れて乾の3人だった。
勝負はスプリント勝負に持ち込まれ、残り50m地点から森本が田崎の前に出て決着。優勝タイムは56分16秒859で、森本自身が持つ55分08秒の大会記録更新は来年以降に持ち越された。
3人が語るレース展開
森本 「スタートは乾さんのアタックから始まりました。このままではまずいと思って追いついて、後ろが追いついてパックになり、乾さんのペースでローテーションを回してました。中間地点を過ぎてから乾さんがまた牽きだして、旧コンクリート坂からの強烈なペースアップで集団が崩壊。僕は乾さんの後ろ3m辺りで食らいつきました。すごくキツかった」
田崎 「そこでは集団が崩壊してバラバラになって、3番手集団が4・5人いる形に」
森本・田崎 「森、田崎、矢部、宮崎、ハシケンさん(ファンライド)かな」
森本 「位ヶ原までのヘアピンコーナーでは、乾さんのコーナーでのアタックが強烈で、僕はなんとか緩斜面では追いつくような展開でした。これだと後ろの集団が追いつきやすい。でもペースがきつくて乾さんから離れられないジレンマがあって。その内に後ろの人数が大きくなってきてヤバいなぁと」
田崎 「後ろの集団は矢部さんのペースアップが効果的で、集団がタレそうになるとペースアップしていました」
森本 「あとで矢部さんに聞いたら先頭に追いついたらスプリントを狙っていたそうです。アウターギアがあるのは矢部さんだけなので」
田崎 「私は大雪渓の手前で集団から飛び出し、前に追いついて先頭は3人に。最後は2人でした。最後のスプリントに自信はあったのですが、残り250mから何度かスプリントをかけ、残り50mで一度森本さんを前に行かせてから勝負しようとしましたが駄目でした。標高が高いので苦しくなって仕掛けるのが早すぎだったんです」
森本 「しかし、レースでこんな辛い展開は初めてでした」
乾 「僕は金曜日の雨の試走で風邪を引いしまい、朝から熱がありました(笑)」
森本 「乾さんはそんな感じは全くしませんでしたよ。乾さんとは何度かレースをしましたが、こんなに苦しめられたことはなかった。今回のレースはホントにきつかったです」
女子は全日本選手権ロードレースで3位になるなど、ロードレースでも結果を残す金子広美が1時間8分38.476秒のタイムを叩き出し総合で勝利。矢沢みつみの持つ1時間8分10秒のコースレコードの更新を狙ったが、今回は及ばず。来年以降のタイム更新に大きく期待が持たれるところだ。
チャンピオンクラス優勝:森本誠(MAX SPEED97)のバイク
森本誠のバイクはフェルトのF1で、自身が勤めるGOKISO(ゴキソ)のハブを使ったホイールをアッセンブル。ゴキソは愛知県にある精密機械を製作する近藤機械製作所の自転車パーツブランドだ。チタン材を削り出し軽量化を施したスペシャル仕様のハブで、軽量に仕上がっているという。高精度(P5クラス)のベアリングをF/R各4個使い、森本自身で組み付けたハブとのこと。バイクの重量は5.7kg。フロントギアはシングル、サドルはax-lightness。
ロードレーサー女子A優勝:金子広美のバイク
金子広美はロードレースでも使用しているGDRのメテオスピートを駆る。無理な軽量化は行わず、フロントギアはダブル仕様のまま。コンポーネントはシマノだが、カンパニョーロのレバーを組み合わせる点がトピックス。パワー計測はSRM、ブレーキは東京サンエスの展開するパーツブランド、onebyEsuのライトオンライトブレーキを使用する。
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍2012 チャンピオンクラス結果
1位 森本誠(MAX SPEED97) 56:16.859
2位 田崎友康(F(t)Racing) 56:23.921
3位 乾友行(Team ARI) 56:44.437
4位 森正(宮川医療少年デュアスロンチーム)56:44.437
5位 矢部周作(haikala design lab & THE善峯)56:50.446
6位 足立智弘 0:57:12.54
7位 宮崎新一 0:57:15.05
8位 村山利男 0:57:27.39
9位 高岡亮寛 0:57:28.65
10位 本柳隆志 0:57:52.94
ロードレーサー:女子A結果
1位 金子広美 1:08:38.476
2位 市東章代 1:16:55.308
3位 上田順子 1:18:07.364
4位 小島由起子(なるしまフレンド)1:20:16.032
5位 山崎愛美 1:22:39.751
6位 湯川紘世(Team Sakatani 近農サイクOB)1:24:04.862
7位 石井理会 1:24:25.153
8位 相野田静香(club GROW)1:25:32.402
9位 志村恵実(たかだフレンド)1:25:40.555
10位 氷高知紗 1:27:03.924
text&photo:Akihiro.NAKAO
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