2012/08/24(金) - 11:42
8月23日、フランス国境に近いハカの街を見下ろす3級山岳フエルテ・デル・ラピタンで再び総合争いが勃発。チームスカイの強力なペースアップがライバルたちを苦しめる中、マイヨロホのロドリゲスが先行し、コンタドールが遅れるというスリリングな展開に持ち込まれた。
ブエルタはフランス国境にまたがるピレネー山脈に近づく。とは言っても、登場する山岳はラスト25km手前に限定されており、それまではひたすらフラットだ。
まずは3%ほどの緩い勾配が続く3級山岳オロエル峠をラスト13km地点でクリア。そこから一旦下り、アラゴン州の都市ハカを通過後、標高1050mの丘の上に位置する3級山岳フエルテ・デル・ラピタン(ラピタン城塞)を駆け上がる。
いずれもカテゴリーは低いが、最後の3級山岳フエルテ・デル・ラピタンは8%ほどの勾配が続くパンチの効いたもの。13のコーナーが続く九十九折りで、最大勾配は14%に達する。ハイペースで淡々と登る「ディーゼルタイプ」の選手ではなく、爆発力を備えたパンチャー系クライマーに有利なレイアウトだ。
この日の逃げは10km地点で決まる。ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、ヨースト・ファンレイエン(オランダ、ロット・ベリソル)、クリストフ・ファンデワール(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン・シャープ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)という、オランダ&ベルギーを代表する選手5名がメイン集団から飛び出した。
中でも注目は今年ジロのステルヴィオ頂上ゴールを制し、総合3位に入ったデヘントの存在。気温が常に35度を超えるような暑さの中、デヘントらは最大3分30秒のリードを得て逃げる。メイン集団はマイヨロホ擁するカチューシャの他、モビスターがコントロールを担った。
やがて3級山岳オロエル峠が近づくと、サクソバンク・ティンコフバンクがメイン集団のペースアップを開始する。勾配の緩い登りをハイスピードで進む集団は徐々に細分化。チームスカイもこれに加わると、逃げグループのリードはまもなく1分を割り込む。
脚の違いを見せたデヘントが粘りの走りで3級山岳オロエル峠を先頭通過。しかし、50秒遅れで頂上を通過したメイン集団に、ゴールまで5kmを残してデヘントは吸収される。50名ほどに絞られたメイン集団が3級山岳フエルテ・デル・ラピタンの九十九折りに突入した。
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)に続いて、チームスカイのセルジオルイス・エナオモントーヤとリゴベルト・ウランのコロンビアンコンビがメイン集団のペースアップを図ると、コーナー毎に人数が減って行く。イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)やバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)は相次いで脱落。
チームスカイのハイペース牽引はラスト1kmのアーチを潜ってもなお続き、ラスト500mでウランが更にもう一段ペースを上げる。そのウランに発射される形で、フルームがラスト400mでアタックした。
フルームに食らいついたのはロドリゲスのみ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)はダンシングで自分のペースを保つのがやっと。急勾配の登りでスプリント体勢に入ったロドリゲスが、フルームを振り切って先頭に立つ。
軽やかなスプリントで突き進んだロドリゲスは、フルームを5秒、バルベルデを10秒、そしてコンタドールを18秒引き離してゴール。ボーナスタイム12秒も上乗せすることに成功し、マイヨロホのリードを更に広げた。
フルームから10秒、コンタドールから35秒リードしてマイヨロホを着るロドリゲスは「登りの頂上ゴールというより、登りスプリントの闘いだった。クリス・フルームを徹底的にマークしたので、後方で何が起こっていたのか、コンタドールに何が起こったのか分からない。すでにツールで強さを見せつけていたので、フルームの今日の走りには驚かなかった。彼は勝ちにきている」と、ライバルたちの動きを警戒する。
「でも僕も調子は良い。(総合3位に入った)ジロと同等のコンディションで、強いチームを味方に付けている。ブエルタはまだまだ長いし、強力なライバルたちが後ろに控えているけど、今のポジションには満足だ」。
ロドリゲスは春先のフレーシュ・ワロンヌや、ジロ第10ステージのアッシジ頂上ゴール、同第17ステージ・難関山岳ステージも制しており、これがシーズン7勝目。コンビナーダ(複合賞ジャージ)も守り、ポイント賞2位に浮上している。
選手コメントはレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第6ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h15'56"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +05"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +10"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +18"
5位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +19"
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +20"
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +25"
8位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム) +27"
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +28"
10位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +32"
108位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +9'42"
敢闘賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 21h45'06"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +10"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +35"
4位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +43"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +53"
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +54"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'04"
8位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'12"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +1'17"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、モビスター) +1'34"
109位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +31'27"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 51pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 45pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 41pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 16pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 11pts
3位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) 11pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 8pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 11pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 15pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 65h38'13"
2位 ラボバンク +1'09"
3位 アージェードゥーゼル +3'38"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
ブエルタはフランス国境にまたがるピレネー山脈に近づく。とは言っても、登場する山岳はラスト25km手前に限定されており、それまではひたすらフラットだ。
まずは3%ほどの緩い勾配が続く3級山岳オロエル峠をラスト13km地点でクリア。そこから一旦下り、アラゴン州の都市ハカを通過後、標高1050mの丘の上に位置する3級山岳フエルテ・デル・ラピタン(ラピタン城塞)を駆け上がる。
いずれもカテゴリーは低いが、最後の3級山岳フエルテ・デル・ラピタンは8%ほどの勾配が続くパンチの効いたもの。13のコーナーが続く九十九折りで、最大勾配は14%に達する。ハイペースで淡々と登る「ディーゼルタイプ」の選手ではなく、爆発力を備えたパンチャー系クライマーに有利なレイアウトだ。
この日の逃げは10km地点で決まる。ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、ヨースト・ファンレイエン(オランダ、ロット・ベリソル)、クリストフ・ファンデワール(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン・シャープ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)という、オランダ&ベルギーを代表する選手5名がメイン集団から飛び出した。
中でも注目は今年ジロのステルヴィオ頂上ゴールを制し、総合3位に入ったデヘントの存在。気温が常に35度を超えるような暑さの中、デヘントらは最大3分30秒のリードを得て逃げる。メイン集団はマイヨロホ擁するカチューシャの他、モビスターがコントロールを担った。
やがて3級山岳オロエル峠が近づくと、サクソバンク・ティンコフバンクがメイン集団のペースアップを開始する。勾配の緩い登りをハイスピードで進む集団は徐々に細分化。チームスカイもこれに加わると、逃げグループのリードはまもなく1分を割り込む。
脚の違いを見せたデヘントが粘りの走りで3級山岳オロエル峠を先頭通過。しかし、50秒遅れで頂上を通過したメイン集団に、ゴールまで5kmを残してデヘントは吸収される。50名ほどに絞られたメイン集団が3級山岳フエルテ・デル・ラピタンの九十九折りに突入した。
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)に続いて、チームスカイのセルジオルイス・エナオモントーヤとリゴベルト・ウランのコロンビアンコンビがメイン集団のペースアップを図ると、コーナー毎に人数が減って行く。イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)やバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)は相次いで脱落。
チームスカイのハイペース牽引はラスト1kmのアーチを潜ってもなお続き、ラスト500mでウランが更にもう一段ペースを上げる。そのウランに発射される形で、フルームがラスト400mでアタックした。
フルームに食らいついたのはロドリゲスのみ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)はダンシングで自分のペースを保つのがやっと。急勾配の登りでスプリント体勢に入ったロドリゲスが、フルームを振り切って先頭に立つ。
軽やかなスプリントで突き進んだロドリゲスは、フルームを5秒、バルベルデを10秒、そしてコンタドールを18秒引き離してゴール。ボーナスタイム12秒も上乗せすることに成功し、マイヨロホのリードを更に広げた。
フルームから10秒、コンタドールから35秒リードしてマイヨロホを着るロドリゲスは「登りの頂上ゴールというより、登りスプリントの闘いだった。クリス・フルームを徹底的にマークしたので、後方で何が起こっていたのか、コンタドールに何が起こったのか分からない。すでにツールで強さを見せつけていたので、フルームの今日の走りには驚かなかった。彼は勝ちにきている」と、ライバルたちの動きを警戒する。
「でも僕も調子は良い。(総合3位に入った)ジロと同等のコンディションで、強いチームを味方に付けている。ブエルタはまだまだ長いし、強力なライバルたちが後ろに控えているけど、今のポジションには満足だ」。
ロドリゲスは春先のフレーシュ・ワロンヌや、ジロ第10ステージのアッシジ頂上ゴール、同第17ステージ・難関山岳ステージも制しており、これがシーズン7勝目。コンビナーダ(複合賞ジャージ)も守り、ポイント賞2位に浮上している。
選手コメントはレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第6ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h15'56"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +05"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +10"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +18"
5位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +19"
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +20"
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +25"
8位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム) +27"
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +28"
10位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +32"
108位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +9'42"
敢闘賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 21h45'06"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +10"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +35"
4位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +43"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +53"
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +54"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'04"
8位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'12"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +1'17"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、モビスター) +1'34"
109位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +31'27"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 51pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 45pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 41pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 16pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 11pts
3位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) 11pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 8pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 11pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 15pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 65h38'13"
2位 ラボバンク +1'09"
3位 アージェードゥーゼル +3'38"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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