2012/07/15(日) - 15:03
7月14日、キャトーズ・ジュイエ。フランス革命記念日にして土曜日。南フランスでも人気の海のエリアに向かうとあって、バカンス渋滞は必至。
ロット・ベリソルの朝のチームバスでのミーティング風景 (c)CorVosこの日、プレスやチーム関係者に出された指示は一刻も早くゴールに向かうこと。そのため通常迂回路を通る大型車両などもレースコースの通過が認められ、チームバスも選手たちの出発前に南下を始めた。
いったんコースを外れるとどこも渋滞。朝からあちこちで祭典が開催される様子を目の当たりにする。
南フランスの海でバカンス中の観客が沿道に詰めかけた (c)CorVosこの日も長いレース。そして響き渡る蝉の鳴き声がプロバンス地方に入ったことを感じさせる。幸い曇り空で気温が低め。いつもの熱気のような暑さはないが、海が近づくに連れて地中海特有のミストラルが吹き付ける。乾いた丘の上には大型扇風機のような風力発電のファンが連なり、凄い音で回り続けている。そう、風は今日のレースを左右する要因だ。2009年のラ・グランモットに向かうステージで集団が分裂してコンタドールが後方に取り残されたように。
「ユイの坂より厳しい」モンサンクレール
セテの街からモンサンクレールの登りに続く道 (c)Makoto.AYANO今はラジオ実況解説者のローラン・ジャラベールは、この日最後の3級山岳モンサンクレールのことを「フレーシュ・ワロンヌに登場するユイの坂より厳しい」と表現する。ゴール前23㎞に登場するこの坂がスパイス。そしてその後の吹きさらしの横風区間が、逃げ切るにはやっかい。上りで絞られる集団によるスプリントという見方が有力。
セテの街を貫く坂、モンサンクレール。海沿いの港から上るこの丘の街の小道は、後半にかけて勾配を増し、頂上付近は急な直登。なるほど実感としてユイの壁よりキツイことは確か。ミディ・リブルを走ったエヴァンスやウィギンズを含む選手たちはこの上りのことを知っている。
そして多くのバカンス観客たちが選手の到着を待った。ゴール地点のルキャプ・ダグドにかけてこの一帯はヌーディストビーチで有名だが、残念ながら観客にそういった人はいない。
2番手でモンサンクレールの登りをこなすジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) (c)Makoto.AYANO
メイン集団の先頭で上るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) (c)Makoto.AYANOモンサンクレールの急勾配をあえぎながら上る選手たち。ミカエル・モルコフ(サクソバンク・ティンコフ)を先頭に、続くカデル・エヴァンス(BMCレーシング)の引くメイン集団が登ってくる。エヴァンスはあまりにも観客の多い区間で加速。この動きで集団が絞りこまれた。下りも落下するような急勾配。
メイン集団でモンサンクレールを上る 新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO1.6kmの上りの中ほどで、あっさりと遅れたのはマーク・カヴェンディッシュ(チームスカイ)。アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)も頂上までに集団から遅れるが、粘り、下ってからの海岸線でチームメイトにアシストされ先頭集団に復帰を果たす。
新城幸也(ユーロップカー)はピエール・ロランらとこの集団でクリア。絞られた集団でのスプリントにユキヤへの期待が高まるが、ゴールまでの吹きさらしで中切れが発生。ユキヤは後方グループに取り残されたロランを引き上げるアシスト仕事にまわり、ゴールスプリントには参加できなかった。ロランは総合9位をキープすることができた。
「上れるスプリンター」グライペルの勝利
チームメイトに引かれたアンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)がスプリントに臨む (c)CorVosマイヨジョーヌのブラドレー・ウィギンズ(チームスカイ)がゴール前の最終コーナーでチームメイトのエドヴァルド・ボアッソンハーゲンを牽引するという驚くべき光景。しかしグライペルは迫ったペーター・サガン(リクイガス・キャノンデール)もパワーでねじ伏せた。寸差で敗れたサガンは「彼のほうが僕よりも早くバイクを投げた。仕方ないね。彼はやったよ。おめでとう」。
第4、5ステージに続く3勝目。サガンと並んで二人目のステージ優勝3勝のハットトリック達成者になったグライペル。アレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ)とミカエル・アルバジーニ(オリカ・グリーンエッジ)が前方で逃げる一方で、チームメイトに牽引されて先頭グループ復帰を果たした。モンサンクレールで脱落するも、遅れを最小限にとどめたことが大きな勝因だ。先頭には5人のチームメイトがいた。
ツール3勝目の雄叫びを上げるアンドレ・グライペル(ロット・ベリソル) (c)CorVosグライペルは言う。「最後の25kmには苦しんだ。最後の上りでは集団の最後尾から2番目だったんだ。集団に戻るために戦わなければならなかった。チームはすごい仕事をしてくれた。ツールではたった1勝でも最高にハッピーなのに、信じられないぐらい素晴らしい。モンサンクレールの上りがフィニッシュの近くにあってのこの勝利は特別だ」。
ゴール前でボアッツソンハーゲンを引く驚くべきリードアウトを見せたウィギンズ。自らの危険回避のため、そして連日アシストをしてくれる「エディ」の勝利のために少しでもお返しをしたいとの働きだった。
最終コーナーへの道はテクニカルで、最後の300mには180度ターンのハイスピード下りコーナーがあった。チームはできるかぎり先頭で突っ込むことを朝のミーティングの時点で決めていたという。
「ああいったケースでは集団前方だろうと20番目や30番目にいようと労力は変わらない。ムダな労力ではなかったよ。エディを単に助けるつもりだった。なんらかの形で恩返ししたかったんだ。でもグライペルは最速であることを再び証明したね」とウィギンズ。
2度めの敢闘賞、5年前に亡くした父に捧げるモルコフのアタック
先頭でモンサンクレールの登りにかかるミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ) (c)Makoto.AYANOラスト40kmの単独逃げを敢行し、再び敢闘賞を獲得したモルコフ。5年前のこの日に亡くした父に捧げるアタックだった。モルコフはその父に自転車を教わり、選手になった。
「このアタックで父への尊敬の念を表したかった。一生懸命に頑張った。父のことを一日中考えて走ったことが、ガソリンになった。一緒に逃げた選手たちがもっと強くて、最後の坂も一緒に登れればよかったけど、ペースが遅すぎたんだ。だから自分のペースで行ったほうがチャンスがあると思った。最後はすごいパワーを絞り出したけど、十分でなかった。でもこのパフォーマンスには満足しているよ」。
カヴェンディッシュのロンドン五輪の勝利は懐疑的?
グライペルがモンサンクレールの上りで集団に残る力を見せた一方、遅れを喫したカヴェンディッシュ。アシスト役のアイゼルは、この日逃げに乗ったことでモンサンクレールではカヴより早くに遅れ、サポートには回らなかった。
上りで遅れ、単独となったマーク・カヴェンディッシュ(チームスカイ) (c)Makoto.AYANO
ツールで2年連続5勝、ここまでのツールで21勝を挙げているカヴの今年の勝利はまだ1勝。そしてツール閉幕6日後に開催されるロンドン・オリンピックに向けて不安要素が出てきた。ロンドン五輪ロードコースにはボックス・ヒルの坂がある。カヴはその対策のために身体を絞り、体重を落としてきた。しかしこの日、モンサンクレールを集団では登れず、グライペルよりずっと早く脱落してしまった。上りに入るまでの街中で中切れした可能性もあるが。そして今日も罰金を食らった。コミュニケには「コミッセールに対して悪態をついた」とある。これが遅れの原因?
モンサンクレールの上りで集団から遅れだすマーク・カヴェンディッシュ(チームスカイ) (c)CorVos五輪ではボックスヒルの坂を9回登る。この坂を試走したカヴは、コースの印象について次のように話していた。ツール開幕前、6月19日のことだ。
「ボックスヒルがツールにあったらカテゴリー(級)はつかないだろうね。一回登るのは級無し、4回登れば級、丘を感じ始める。6,7回は、うーん、で9回はイエス。それは山だ!」。
そしてボックスヒル対策でトレーニング方法を変え、体重を落とした。
「ツールではステージ優勝する。しかし5勝はしないだろう。僕はスプリントで苦しむ。でもかつての僕のようなスプリンターは五輪のフィニッシュに残れない」。
この日のレースの朝8時、カヴはツィッターで「今日は朝が早いなあ、でも山がないからレースではリラックスできる。たぶんスプリントだ」とつぶやき、コースの研究はできていなかった。それにしても登れたグライペルと登れなかったカブ。ロンドン五輪ロードで9回のボックスヒルを越えてピュアスプリンターが残るなら、現時点ではグライペルのほうが可能性が大きそうだ。
photo&text:Makoto.AYANO
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「ユイの坂より厳しい」モンサンクレール
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セテの街を貫く坂、モンサンクレール。海沿いの港から上るこの丘の街の小道は、後半にかけて勾配を増し、頂上付近は急な直登。なるほど実感としてユイの壁よりキツイことは確か。ミディ・リブルを走ったエヴァンスやウィギンズを含む選手たちはこの上りのことを知っている。
そして多くのバカンス観客たちが選手の到着を待った。ゴール地点のルキャプ・ダグドにかけてこの一帯はヌーディストビーチで有名だが、残念ながら観客にそういった人はいない。
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新城幸也(ユーロップカー)はピエール・ロランらとこの集団でクリア。絞られた集団でのスプリントにユキヤへの期待が高まるが、ゴールまでの吹きさらしで中切れが発生。ユキヤは後方グループに取り残されたロランを引き上げるアシスト仕事にまわり、ゴールスプリントには参加できなかった。ロランは総合9位をキープすることができた。
「上れるスプリンター」グライペルの勝利
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「ああいったケースでは集団前方だろうと20番目や30番目にいようと労力は変わらない。ムダな労力ではなかったよ。エディを単に助けるつもりだった。なんらかの形で恩返ししたかったんだ。でもグライペルは最速であることを再び証明したね」とウィギンズ。
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カヴェンディッシュのロンドン五輪の勝利は懐疑的?
グライペルがモンサンクレールの上りで集団に残る力を見せた一方、遅れを喫したカヴェンディッシュ。アシスト役のアイゼルは、この日逃げに乗ったことでモンサンクレールではカヴより早くに遅れ、サポートには回らなかった。
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ツールで2年連続5勝、ここまでのツールで21勝を挙げているカヴの今年の勝利はまだ1勝。そしてツール閉幕6日後に開催されるロンドン・オリンピックに向けて不安要素が出てきた。ロンドン五輪ロードコースにはボックス・ヒルの坂がある。カヴはその対策のために身体を絞り、体重を落としてきた。しかしこの日、モンサンクレールを集団では登れず、グライペルよりずっと早く脱落してしまった。上りに入るまでの街中で中切れした可能性もあるが。そして今日も罰金を食らった。コミュニケには「コミッセールに対して悪態をついた」とある。これが遅れの原因?
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「ボックスヒルがツールにあったらカテゴリー(級)はつかないだろうね。一回登るのは級無し、4回登れば級、丘を感じ始める。6,7回は、うーん、で9回はイエス。それは山だ!」。
そしてボックスヒル対策でトレーニング方法を変え、体重を落とした。
「ツールではステージ優勝する。しかし5勝はしないだろう。僕はスプリントで苦しむ。でもかつての僕のようなスプリンターは五輪のフィニッシュに残れない」。
この日のレースの朝8時、カヴはツィッターで「今日は朝が早いなあ、でも山がないからレースではリラックスできる。たぶんスプリントだ」とつぶやき、コースの研究はできていなかった。それにしても登れたグライペルと登れなかったカブ。ロンドン五輪ロードで9回のボックスヒルを越えてピュアスプリンターが残るなら、現時点ではグライペルのほうが可能性が大きそうだ。
photo&text:Makoto.AYANO
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