アルプスとピレネー山脈の本格山岳ステージで総合争いは加熱する。3つの頂上ゴールも重要だが、それよりも合計100kmオーバーの個人タイムトライアルが重要な鍵を握る。ここでは、アルプスを行く2週目ならびにピレネーを行く3週目のコースを紹介。

7月11日(水)第10ステージ
マコン〜ベルガルド・シュル・ヴァルスリーヌ 194.5km → コースマップ

第10ステージ・コースプロフィール第10ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.今大会最初の「超級山岳ステージ」が休息日の翌日に登場する。第10ステージには、ジュラ山脈の真骨頂とも言える厳しい山岳が3つ登場。ゴール43km手前に鎮座する超級山岳グラン・コロンビエール峠は登坂距離17.4km・平均勾配7.1%で、コースディレクターのジャンフランソワ・ペシェ氏曰く「フランスで最も厳しい峠」。勾配がコンスタントに10%を超える登りはもちろんだが、テクニカルなその下りにも注意を払いたい。

なお、選手たちの多くは6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージでこのコースを走っている(155kmが重複している)。グラン・コロンビエール峠通過後、3級山岳リシュモン峠(登坂距離7.2km・平均勾配5%)を越え、山間の街ベルガルド・シュル・ヴァルスリーヌまで下ってゴール。マイヨジョーヌ争いがここから本格的に動き出す。


7月12日(木)第11ステージ
アルベールヴィル〜ラ・トゥッスイール 148km → コースマップ

第11ステージ・コースプロフィール第11ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.アルプス山脈を堪能する一日。148kmという短いステージの中に、獲得標高が5000mに達する4つの難関山岳が詰め込まれている。1992年に冬季オリンピックが開催されたアルベールヴィルを発ってすぐ、超級山岳マドレーヌ峠にアタック。選手たちの目の前には登坂距離25.3km・平均勾配6.2%という厳しい登りが待っている。

標高2000mから標高400m台まで下ると、次は標高2067mの超級山岳クロワ・ド・フェール峠(登坂距離22.4km・平均勾配6.9%)。2級山岳を経て再び標高600mまで下ると、最後は1級山岳ラ・トゥッスイール(登坂距離18km・平均勾配6.1%)を駆け上がってゴールだ。ラ・トゥッスイールはツール2度目の登場。昨年ドーフィネに組み込まれた際には“プリート”が制している。このステージでマイヨジョーヌのおおよその行方は決まるだろう。


7月13日(金)第12ステージ
サンジャン・ド・モーリエンヌ〜アノネー・ダヴェジウ 226km → コースマップ

第12ステージ・コースプロフィール第12ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ツールはアルプスを脱する。今大会最長の226kmコースは「中級山岳ステージ」に指定されている。レース序盤の1級山岳グラン・クシュロン峠(登坂距離12.5km・平均勾配6.5%)と1級山岳グラニエ峠(登坂距離9.7km・平均勾配8.6%)では、逃げ切りを懸けたアタック合戦が加熱するだろう。

何しろ、ゴールの19km手前に3級山岳が設置され、ラスト4kmからゴールまで登りが続くため、多くのスプリンターは勝負に残れない。つまり逃げ切りが決まりやすいコースレイアウト。総合争いに絡めていないパンチャーたちが血気盛んに飛び出すだろう。ツール初登場のゴール地点アノネー・ダヴェジウはもうアルプスの外。逃げ切りを決めた選手たちが、テクニカルなゴール前で熾烈な闘いを繰り広げるだろう。


7月14日(土)第13ステージ
サンポール・トロワシャトー〜ルキャプ・ダグド 217km → コースマップ

第13ステージ・コースプロフィール第13ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.7月14日はフランスの革命記念日。当然今年もフランス人選手たちがモチベーション高く優勝を目指すだろう。しかしコースは真っ平らで、かなりの確率で集団スプリントに持ち込まれる。モンクティエが優勝した2005年以降、フランス革命記念日に勝ったフランス人は出ていない。

フランス南部の平野を駆ける217kmはほぼ真っ平らで、唯一の難所はゴール23km手前の3級山岳モンサンクレール。登坂距離1.6kmの短い登りだが、平均勾配は10.2%に達する。ここで飛び出すアタッカーとスプリンターチームのマッチレースに注目。いや、この日もっと注目すべきなのは地中海から吹き付ける風かも知れない。同地域を走った2009年大会第3ステージでは、奇襲ペースアップがかかり、コンタドールを含む多くのオールラウンダーがタイムを失うという事態が発生している。


7月15日(日)第14ステージ
リムー〜フォワ 191km → コースマップ

第14ステージ・コースプロフィール第14ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.アルプスを離れ、平野の風に打ち勝ち、ツールはピレネーに到達。ピレネー初日の第14ステージは、標高1500mクラスの山岳を2つ越える。ゴール65km手前の1級山岳ポール・ド・レルス(登坂距離11.4km・平均勾配7%)と、ゴール39km手前の1級山岳ミュール・ド・ペゲール(登坂距離9.3km・平均勾配7.9%)だ。

注目はツール初登場「壁(ミュール)」の名前がつくミュール・ド・ペゲール。平均勾配は7.9%と「ツールにしては少しきつい程度」だが、頂上手前3kmの平均勾配は12%オーバー。最大勾配18%区間も登場する。ここまで快調に走っていた選手の中にも、急勾配が苦手で遅れる選手は必ずいる。この「壁」で集団が破壊されることは間違いない。頂上からゴールまでは長い下りと平坦路。小集団スプリントに持ち込まれる可能性は高い。


7月16日(月)第15ステージ
サマタン〜ポー 158.5km → コースマップ

第15ステージ・コースプロフィール第15ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.重要な山岳ステージを結ぶ典型的なトランジションステージだが、単純なフラットコースではない。ツール初登場のサマタンから、今年65回目の登場となる定番都市ポーまで、158kmの道のりは短いアップダウンの連続。ノコギリ状のコースが続き、レース終盤には3つのカテゴリー山岳が設定されている。

逃げ切りが決まってもおかしくはないコースレイアウトだが、スプリンターに残されたチャンスはこの第15ステージを含めて残り3回。エースを600mの最終ストレートで解き放つべく、スプリンターチームはここぞとばかりに集団をコントロールするだろう。そして、この頃にはマイヨヴェール候補も絞られているはず。スプリントポイントでのポイント加算が最終的なマイヨヴェール争いの鍵になる。総合上位陣にとっては英気を養うための箸休め的なステージになるだろう。


7月17日(火)休息日



7月18日(水)第16ステージ
ポー〜バニェール・ド・リュション 197km → コースマップ

第16ステージ・コースプロフィール第16ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ポーでゆったりと休息日を過ごした一行は、最終山岳決戦地であるピレネーへと向かう。登場する4つのカテゴリー山岳はいずれも名立たる難関峠。実は、この第16ステージのコースレイアウトは、2010年大会の第16ステージと全く一緒。スタートとゴールが入れ替わっているため、2年前に走ったコースを逆走することになる。

序盤のスプリントポイントまではポイント狙いのチームが指揮を執る。その後、超級山岳オービスク峠(登坂距離16.4km・平均勾配7.1%)に始まり、今大会の最高地点である超級山岳トゥールマレー峠(登坂距離19km・平均勾配7.4%)を越え、1級山岳アスパン峠(登坂距離12.4km・平均勾配4.8%)と1級山岳ペイルスルド峠(登坂距離9.5km・平均勾配6.7%)をクリア。ラスト15.5km地点のペイルスルド峠からのダウンヒルで意気揚々と飛び出す選手も出てくるだろう。


7月19日(木)第17ステージ
バニェール・ド・リュション〜ペイラギュード 143.5km → コースマップ

第17ステージ・コースプロフィール第17ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.登りと下りしかないような143.5kmの短いコースの先に、今大会最後の頂上ゴールが待っている。序盤から1級山岳を含むアップダウンの連続で、81km地点でスプリントポイントを通過後、再びレースはピレネーの奥地に向けて進路を変える。

標高1755mの超級山岳バレス峠(登坂距離11.7km・平均勾配7.7%)を越えて一旦谷底まで下り、前日に登ったペイルスルド峠を反対側(前日に下った方向)から登り返す。平均勾配7.7%のペイルスルド峠を登り終えると3km下り、そこから平均勾配7.1%の登りを3km進んでようやく1級山岳ペイラギュードの頂上が見えてくる。ゴール地点はペイラギュード頂上の1km先。大会初登場のこのスキーリゾート地でマイヨジョーヌ争いはクライマックスを迎える。


7月20日(金)第18ステージ
ブラニャック〜ブリーヴ・ラ・ガイヤルド 222.5km → コースマップ

第18ステージ・コースプロフィール第18ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.マイヨジョーヌ争いの決着は翌日の第19ステージにお任せして、レースの主導権はスプリンターたちに戻される。この日はブラニャックからパリの方向を目指して222km北上。3〜4級のカテゴリー山岳が散りばめられているため、まだチャンスを手にしていないアタッカーたちが逃げ切り目指して動くことも考えられる。

ゴール地点ブリーヴ・ラ・ガイヤルドは1998年以来の登場で、当時はマリオ・チポッリーニがステージ優勝を飾っている。山場をグルペットで乗り越えたスプリンターたちに、レースを支配するほどの力は残っているのか。そもそもロンドン五輪を見据えて多くのスプリンターたちがレースを去っていることも考えられる。マイヨヴェールならびにマイヨアポワ争いもいよいよ佳境を迎える。


7月21日(土)第19ステージ
ボヌヴァル〜シャルトル 53.5km(個人TT) → コースマップ

第19ステージ・コースプロフィール第19ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.レース時間が1時間を超える、精神と体力の限界を試すような闘い。第99代目マイヨジョーヌを決めるのは53.5kmの長距離個人タイムトライアルだ。山岳が得意なクライマー系のオールラウンダーに対し、個人TTが得意なTTスペシャリスト系のオールラウンダーが巻き返しを図る。距離が長いだけに、総合上位陣の間でも簡単に分差がつく。つまりここまでの山岳で形作られた総合成績が、最終日を前にして、大変動を来す可能性があるのだ。

ちなみに、同じ距離で行なわれたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの個人TTで、ウィギンズは1時間03分12秒の最速タイムを叩き出している。マイヨジョーヌを懸けた総合1位と2位の闘いだけでなく、総合表彰台、総合トップ10、そしてマイヨブラン(新人賞ジャージ)を懸けた闘いもここで決着。レース後、マイヨジョーヌを手にパリまでの長距離移動をこなすのは誰だろうか。


7月22日(日)第20ステージ
ランブイエ〜パリ・シャンゼリゼ 120km → コースマップ

第20ステージ・コースプロフィール第20ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ツール・ド・フランスの最終日は、決まってパリ・シャンゼリゼにゴールする平坦コース。今年は郊外のランブイエをスタート後、暖かい歓声を受けながらパリに向かってパレード走行。マイヨジョーヌチームを先頭にシャンゼリゼ通りに凱旋するのが通例だ。仮に山岳賞争いが僅差の場合は、レース前半の2つの4級山岳で決着が付く。

最後は恒例のシャンゼリゼ周回コースが設定され、1周6kmのコースを8周。よほどのトラブルが無い限り、総合成績が変動することはない。そしてほぼ確実に集団スプリントに持ち込まれる。このシャンゼリゼでの勝利は他のステージのそれとは格が違う。過去3年ここで勝っているカヴェンディッシュはシャンゼリゼ連勝記録を伸ばせるか。3週間の闘い終了後は、凱旋門をバックした栄光のマイヨジョーヌ授賞式とパレード走行が待っている。


text:Kei Tsuji
image:A.S.O.

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