6月30日にベルギー・リエージュで開幕する2012年ツール・ド・フランス。ベルギーで3ステージを消化後にフランスに入り、いくつかの平坦ステージを経て、スイス国境に近いヴォージュ山脈やジュラ山脈に向かう。ここでは第1回休息日前の第9ステージまでのコースを紹介。

6月30日(土)プロローグ
リエージュ(ベルギー)〜リエージュ(ベルギー)6.4km → コースマップ

プロローグ・コースプロフィールプロローグ・コースプロフィール image:A.S.O.2004年以来2度目のグランデパールを迎えるベルギー・リエージュ。ツールが国外で初日を迎えるのはこれが19回目だ。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのスタート&ゴール地点として知られる、内陸の人口19万人、ワロン地域最大の都市で99回大会が動き出す。

初日はプロローグ(短距離タイムトライアル)で、リエージュ市内を駆け抜ける6.4kmのコースは2004年大会のそれとほぼ同じ(スタート地点が後方に移動し、300m延長されている)。アヴロワ公園を発ち、ムーズ川沿いを駆け、「ラ・ドワイエンヌ」のスタート地点であるサン・ランベール広場を通過し、いくつものテクニカルコーナーを抜けてアヴロワ公園に戻る。2004年はここで平均スピード53.6km/h・6分50秒のタイムでファビアン・カンチェラーラ(スイス)が優勝。今年もハイスピードバトル必至だ。


7月1日(日)第1ステージ
リエージュ(ベルギー)〜セラン(ベルギー)198km → コースマップ

第1ステージ・コースプロフィール第1ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.グランツール前半はスプリンター向きの平坦コースが続くのが通例、だが、今年の第1ステージはピュアスプリンター向きではない。リエージュを発ち、同市の南にひろがる丘陵地帯を駆け抜けてリエージュ近郊のセランに戻る198km。登場するカテゴリー山岳は4級が5つで、マイヨアポワ狙いの選手が山岳ポイント量産目指して逃げてくるだろう。いわばアルデンヌ・クラシックさながらのコースレイアウトだ。

注目選手は地元ワロン地域の英雄ジルベール。イタリア移民が多く住む街セランに向かう平均勾配4.7%・登坂距離2.4kmの4級山岳ラ・コート・デュ・ボワ・エザルは、完全にジルベール向き。ジルベールは地元での勝利、ならびにマイヨジョーヌ獲得を狙う。チームスカイはカヴェンディッシュではなくボアッソンハーゲンで勝負してくるだろう。ツール初出場のサガンの動きからも目が離せない。


7月2日(月)第2ステージ
ヴィセ(ベルギー)〜トゥルネー(ベルギー)207.5km → コースマップ

第2ステージ・コースプロフィール第2ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.オランダとの国境に近いベルギーのヴィセを発った一行は、ベルギー国内を一路西に向かう。ゴール地点トゥルネーはフランス国境まで9kmの位置。中盤にナミュールの城塞を登る美しき4級山岳を超えるが、残りはトゥルネーに向けてほぼ真っ平ら。コースディレクターのジャンフランソワ・ペシェ氏が「完全にスプリンター向き」と銘打つ207kmの平坦ステージだ。

トレインを組んだスプリンターチームが火花を散らす。カヴェンディッシュ、グライペル、ペタッキ、ゴス、キッテル、ファラー、レンショー、そしてサガン。マイヨヴェールを狙う彼らが、最後の400mストレートを熱くする。トゥルネーは昨年ジロで落車事故死したワウテル・ウェイラントがキャリア最後の勝利を手にした場所。親友ファラーにとっては落とせないステージだ。


7月3日(火)第3ステージ
オルシー〜ブローニュ・シュル・メール 197km  → コースマップ

第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.レース4日目、ツールはフランスの土を踏む。パリ〜ルーベのパヴェ区間を有するオルシーから海に向かう197km。前半はほぼ真っ平らだが、95km地点の補給ポイントを過ぎると地形は一変。ラスト65kmの間には、実に6つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。前日に華々しいバトルを繰り広げたスプリンターたちが静まる日。第1ステージ同様、登坂力のあるパンチャーたちが主役になる。

断続して登場する急勾配の登りで集団は人数を減らすだろう。3級山岳モン・ランベール(登坂距離1.3km・平均勾配8.4%)を越えるとゴールまで残り6.5km。最後は英仏海峡に突き出たアルペルシュ岬のすぐ近く、4級山岳ブローニュ・シュル・メール(登坂距離700m・平均勾配7.4%)を駆け上がる。同じゴールが設定された2011年のフランス選手権ロードレースではシャヴァネルが優勝している。


7月4日(水)第4ステージ
アブヴィル〜ルーアン 214.5km → コースマップ

第4ステージ・コースプロフィール第4ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.風が吹けば神経をすり減らす一日になるだろう。英仏海峡を望む美しいアルバートル海岸に沿って駆ける第4ステージ。選手たちの敵は、登場する4つのカテゴリー山岳ではない。英仏海峡から吹き付ける強風である。総合狙いの選手たちは、細心の注意を払いながら、集団前方のポジションをキープして走る。中切れに伴う集団分裂によって大きくタイムを失う選手が出る可能性も。

ゴール地点はセーヌ川の畔の街ルーアン。ゴール手前で小高い丘を越えるが、ゴールスプリントには関係しないだろう。ラスト4kmからほぼ真っ平らな道が続く。今大会2度目の本格的なゴールスプリントに注目したい。パリに至るマイヨヴェール争いは、この第4ステージから始まる3連続平坦シリーズで大まかな指針が示される。


7月5日(木)第5ステージ
ルーアン〜サン・カンタン 196.5km → コースマップ

第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.カテゴリー山岳はゼロ。終着地パリの北に広がる平野をルーアンからサン・カンタンまで東進する。ほぼ真っ平らな196kmは完全にピュアスプリンター向きだ。序盤に形成される逃げグループを、スプリンターチームは鼻息を荒らげながらゴールまでに捉える。また、109km地点のスプリントポイントでは、マイヨヴェール狙いのスプリンターたちがしっかりとポイントを加算するだろう。何しろ、ゴール地点の約半分のポイントがスプリントポイント通過上位15名に与えられるのだ。

サン・カンタンに向かう直線路での、主導権を懸けた激しいポジション争いは必見。フラムルージュ(ラスト1kmアーチ)を過ぎると、ゴールまでは高低差28mの緩斜面。ラスト130mの最終ストレートで繰り広げられるパワフルなスプリント勝負に注目したい。


7月6日(金)第6ステージ
エペルネー〜メス 207.5km → コースマップ

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.第99回大会の最初の山場が近づいている。翌日から始まる山岳シリーズを前に、この第6ステージがスプリント前半戦のクライマックス。次にスプリンターたちにチャンスが回ってくるのは第12ステージ、もしくは第13ステージ。アルプスの山場である程度のスプリンターが脱落することを考えると、メンバーが揃うスプリントはこの第6ステージが最後になるかも知れない。

ゴール地点は、ルクセンブルクやドイツとの国境に近いメス。カテゴリー山岳はゴールの62km手前の4級だけであり、集団は大きな塊でメスに突入する。ラスト700mはほぼ一直線であり、トップスプリンターたちの競演となるだろう。メスがツールのゴールを迎えるのは1999年以来13年ぶり。当時はアームストロングが個人タイムトライアルで優勝してマイヨジョーヌを獲得し、初総合優勝に向けて勢いづいた。


7月7日(土)第7ステージ
トンブレンヌ〜プランシェ・デ・ベルフィーユ 199km → コースマップ

第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.スポットライトの照らす先が、スプリンターからオールラウンダーに切り替わる。第99回大会には合計3つの頂上ゴールが設定されており、その一発目がヴォージュ山脈のプランシェ・デ・ベルフィーユにゴールするこの第7ステージ。レース中盤にかけて2つの3級山岳を越え、ツール初登場の1級山岳プランシェ・デ・ベルフィーユを目指す。

標高1035mのスキーリゾートに至る山道は全長5.9kmで、アルプスやピレネーの山岳と比べるとインパクトは少ない。しかし平均勾配は8.5%で、前半から勾配が10%を超える刺激の強い登りだ。ゴール直前には最大勾配が14%まで跳ね上がる。パリで表彰台に登るオールラウンダーたちがここで脚を見せるはず。カテゴリー的には「中級山岳ステージ」だが、この日の境に総合上位の面々がガラッと変わるだろう。


7月8日(日)第8ステージ
ベルフォール〜ポラントリュイ(スイス)157.5km → コースマップ

第8ステージ・コースプロフィール第8ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ツールはジュラ山脈を駆け抜ける。「ジュラ紀」の語源である同山脈は、フランスとスイスの国境にまたがる標高1000〜1500mの山の集まり。ベルフォールをスタート後、20km地点の4級山岳を皮切りに、立て続けに7つのカテゴリー山岳を越える。距離は157.5kmと短いものの内容は濃い。

登場するのは4級、3級、2級、2級、2級、2級、そして1級山岳。いずれもツールの山岳にしては珍しく急勾配で、最後から2つめの2級山岳コート・ド・ソルシィ(登坂距離4.3km・平均勾配7.6%)で集団が絞られ、最後の1級山岳コル・ド・ラ・クロワ(登坂距離3.7km・平均勾配9.2%)で有力どころが動く。最大勾配が17%に達するコル・ド・ラ・クロワを越え、テクニカルなダウンヒルをこなし、スイスのポラントリュイにゴールする。


7月9日(月)第9ステージ
アルケ・スナン〜ブザンソン 41.5km(個人TT) → コースマップ

第9ステージ・コースプロフィール第9ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.長い1週目の最後を飾るのが、41.5kmの個人タイムトライアル。今年のツールはとにかく個人タイムトライアルの距離が長く、プロローグと第9ステージ、そして第19ステージを合計すると、「時間との闘い」の全長は101.4kmに達する。

一定間隔で世界遺産の王立製塩所前をスタートし、森の中を抜けてブザンソンまで。細かいアップダウンとコーナーを繰り返す気が抜けないコースレイアウトだ。主催者の予想優勝タイムは52分前後で、平均スピードは47.9km/h。一定ペースで淡々と走るコースではなく、リズムの変化に対応出来なければ好タイムは期待出来ない。ここでついたタイム差は最後まで尾を引くだろう。ヴォージュとジュラの山岳2連戦と個人タイムトライアルが終わると、ようやく1回目の休息日だ。


7月10日(火)休息日


text:Kei Tsuji
image:A.S.O.