2012/04/30(月) - 02:24
4月29日、ツール・ド・ロマンディはスイス有数のリゾート地であるクランモンタナで幕を閉じた。本格的な山岳を含む16.24kmの山岳個人タイムトライアルで、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が最速タイムをマーク。前日に奪われたリーダージャージを狙い通り奪い返した。
クランモンタナの街を駆け抜ける photo:Kei Tsuji氷河が作り出した雄大なローヌ谷(U字谷)の北側、背後に白い山並みが迫る標高1400mほどの高原に、この日の舞台クランモンタナはある。
世界的に有名なゴルフ場クラン・シュル・シエールや、セレブの別荘が建ち並ぶ。高級リゾート地として知られており、冬はスキー、そして夏はハイキングやマウンテンバイキングの拠点となる。
ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がTTで使用したピナレロ photo:Kei Tsujiロマンディの総合争いを決するのは、そんなクランモンタナの街を発着する山岳個人タイムトライアル。標高1257mをスタートし、一旦標高1102mまで下がり、そこから平均勾配9%オーバーの1級山岳アミオナ(標高1512m)を登り、山道のワインディングを経て標高1488mのクランモンタナ中心部にゴールする。
登りっぱなしではなく、かといって平坦区間が長いわけでもない。しかも谷に沿って強風が常時吹いている。ディスクホイール付きのフル装備TTバイクで走る選手もチラホラ見られたが、大半の選手たちがノーマルバイクでレースに挑んだ。
青い空にスイス国旗が映える photo:Kei Tsuji最も注目が集まったのは、総合2位ウィギンズと総合1位ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)の闘い。前日の第4ステージでボーナスタイムを獲得したLLサンチェスが、9秒のリードをもってウィギンズを迎え撃つ。
ノーマルバイクにアタッチメントでDHバーを付け、簡易TTバイクポジションで走ったウィギンズ。1級山岳の登り口でチェーンを落とすトラブルに見舞われたが、落ち着いてペースを取り戻し、28分56秒のファーステストタイムを叩き出す。
最終走者のLLサンチェスは、苦い表情を浮かべながら1分23秒遅れでゴール。最終日までもつれた総合争いは、ウィギンズの圧勝に終わった。
28分56秒のトップタイムで優勝したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
僅か0.7秒差の2位に入ったアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei Tsuji軽いステップで機嫌良く記者会見に登場したウィギンズは「チェーンが落ちたとき、落ち着いて対処した自分を誇らしく思う。数年前だったら、子どもみたいにバイクを沿道に放り投げていたと思う。自分にとって次に繋がる良いテストだった」と笑顔で話す。
ウィギンズから1分23秒遅れでゴールするルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Kei Tsuji当然、記者からは7月のツール・ド・フランスに関する質問が飛ぶ。「冬に厳しいトレーニングを積んだ成果が出ている。満足しているし、これから先のレースでもそのトレーニングが効力を発揮すると思っている。だけど、7月に向けてまだまだやるべきことは山ほどある。今日の走りを見る限り、エヴァンスはまだ本調子ではないけど、彼は彼のプログラムで動いている。あくまでも自分のプログラムにそって調整するまでだ」とウィギンズ。
総合表彰台、左から2位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)、優勝ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)、3位ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) photo:Kei Tsujiパリ〜ニースに続くUCIワールドツアーのステージレース制覇。UCIワールドツアーランキングでは5位に浮上している。まだまだ4月という早い時期だが、ウィギンズがマイヨジョーヌに向けた調整の点でライバルたちの一歩先を走っているのは間違いない。
そしてそのウィギンズの活躍を支えたリッチー・ポルト(オーストラリア)がステージ3位、マイケル・ロジャース(オーストラリア)がステージ7位に。チームスカイは断トツでチーム総合成績トップに輝いた。ウィギンズの頼れるアシスト2人は、ジロをパスしてツールに集中する。
この日一番のサプライズは、23歳のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)がウィギンズと0.7秒差のステージ2位に入ったことだろう。新人賞ジャージを着るタランスキーは、2分前にスタートした新人賞2位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ラボバンク)を捕まえんばかりの力走を見せた。
2010年に全米U23タイムトライアルチャンピオンに輝き、アモーレ・エ・ヴィータを経て昨年からチームガーミンに所属するタランスキー。2年連続のロマンディ新人賞ジャージ獲得で、総合順位を昨年の9位から2位に上昇させている。ガーミンを代表するオールラウンダーとしてブレイクする日は近いだろう。
「トレーニングと割り切って走ります」と話す別府史之(グリーンエッジ)は完全なノーマルバイクで出走。ステージ118位、総合99位で1週間のレースを終えている。別府はレース後すぐに電車でフランスに帰宅。数日間フランスの自宅で過ごし、ジロ・デ・イタリアの開幕地デンマークに向かう。ジロに向けて良い手応えを掴んだ様子だ。
スタート前にローラー台でアップする別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
ステージ118位のタイムで最終日を終えた別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
期待されたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はステージ40位・1分45秒差に終わる photo:Kei Tsuji
イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)はステージ53位・2分07秒差に終わり、ジロを前に不安を残す photo:Kei Tsuji
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ロマンディ2012第5ステージ結果
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 28'56"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +00"
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +16"
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +22"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +40"
6位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール) +41"
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ) +42"
8位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット) +52"
9位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +53"
10位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +54"
22位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +1'23"
118位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +4'09"
個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 18h05'40"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +12"
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +36"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +45"
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ) +50"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +59"
7位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール) +1'03"
8位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +1'13"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +1'14"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +1'15"
99位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +29'11"
スプリント賞
ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)
山岳賞
ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)
新人賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
チーム総合成績
チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Crans Montana, Switzerland
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世界的に有名なゴルフ場クラン・シュル・シエールや、セレブの別荘が建ち並ぶ。高級リゾート地として知られており、冬はスキー、そして夏はハイキングやマウンテンバイキングの拠点となる。
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登りっぱなしではなく、かといって平坦区間が長いわけでもない。しかも谷に沿って強風が常時吹いている。ディスクホイール付きのフル装備TTバイクで走る選手もチラホラ見られたが、大半の選手たちがノーマルバイクでレースに挑んだ。
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ノーマルバイクにアタッチメントでDHバーを付け、簡易TTバイクポジションで走ったウィギンズ。1級山岳の登り口でチェーンを落とすトラブルに見舞われたが、落ち着いてペースを取り戻し、28分56秒のファーステストタイムを叩き出す。
最終走者のLLサンチェスは、苦い表情を浮かべながら1分23秒遅れでゴール。最終日までもつれた総合争いは、ウィギンズの圧勝に終わった。
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そしてそのウィギンズの活躍を支えたリッチー・ポルト(オーストラリア)がステージ3位、マイケル・ロジャース(オーストラリア)がステージ7位に。チームスカイは断トツでチーム総合成績トップに輝いた。ウィギンズの頼れるアシスト2人は、ジロをパスしてツールに集中する。
この日一番のサプライズは、23歳のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)がウィギンズと0.7秒差のステージ2位に入ったことだろう。新人賞ジャージを着るタランスキーは、2分前にスタートした新人賞2位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ラボバンク)を捕まえんばかりの力走を見せた。
2010年に全米U23タイムトライアルチャンピオンに輝き、アモーレ・エ・ヴィータを経て昨年からチームガーミンに所属するタランスキー。2年連続のロマンディ新人賞ジャージ獲得で、総合順位を昨年の9位から2位に上昇させている。ガーミンを代表するオールラウンダーとしてブレイクする日は近いだろう。
「トレーニングと割り切って走ります」と話す別府史之(グリーンエッジ)は完全なノーマルバイクで出走。ステージ118位、総合99位で1週間のレースを終えている。別府はレース後すぐに電車でフランスに帰宅。数日間フランスの自宅で過ごし、ジロ・デ・イタリアの開幕地デンマークに向かう。ジロに向けて良い手応えを掴んだ様子だ。
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レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ロマンディ2012第5ステージ結果
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 28'56"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +00"
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +16"
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +22"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +40"
6位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール) +41"
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ) +42"
8位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット) +52"
9位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +53"
10位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +54"
22位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +1'23"
118位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +4'09"
個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 18h05'40"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +12"
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +36"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +45"
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ) +50"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +59"
7位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール) +1'03"
8位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +1'13"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +1'14"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +1'15"
99位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +29'11"
スプリント賞
ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)
山岳賞
ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)
新人賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
チーム総合成績
チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Crans Montana, Switzerland
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