2012/04/24(火) - 06:30
4月24日から29日までの6日間、スイス西部のロマンディ地方を舞台に、第66回ツール・ド・ロマンディが開催される。ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスを見据える選手たちが揃うこの大会に、アルデンヌ・クラシックを走り終えた全日本チャンピオンの別府史之(グリーンエッジ)も出場する。
スイス西部を舞台にした本格ステージレース
UCIワールドツアーに組み込まれているツール・ド・ロマンディが初開催されたのは、今から65年前の1947年。以降、毎年欠かさず開催されており、今年で開催66回目を迎える。
ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれたスイスには、4つの言語圏が存在する。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つが公用語とされており、フランス語(厳密に言うとスイスフランス語)が第一公用語として話されているのが今回の舞台、同国西部のロマンディ地方だ。
スイスアルプスの本格山岳は登場しない代わりに、一帯に広がるジュラ山脈の峠が多くコースに組み込まれるのが特徴。2012年は、初日と最終日が個人タイムトライアルで、4つのロードステージが行なわれる。
下り基調のコースで行なわれるローザンヌのプロローグ(短距離個人タイムトライアル)は、超ハイスピードな闘い必至。主催者が見積もった予想スピードは60km/h。リーダージャージ獲得を目指す選手たちが、約3分20秒にわたって全力疾走する。
翌日からのロードステージに、頂上ゴールは一つも設定されていない。しかし第2〜4ステージの平均獲得標高は2000mオーバー。第3ステージの獲得標高は1550mだが、ゴール直前に標高差170m程度の登りが設定されているため、総合が動く可能性は大いに有る。
最も難易度が高いのは、最終日前日の第4ステージ。標高1400mクラスの1級山岳が3つ組み込まれており、しかも終盤に連続してカテゴリー2級、1級、1級の山岳が続く。ゴール22km手前に位置する1級山岳サンマルタンの登り、もしくはテクニカルな下りで、決定的な動きが生まれるだろう。
そして最終日は、スキーリゾート地として名高いクランモンタナの山岳個人タイムトライアル。標高差410mの1級山岳を含むコースで総合争いは決着する。
ツール・ド・ロマンディ2012ステージリスト
4月24日(火)プロローグ ローザンヌ〜ローザンヌ 3.34km(個人TT)
4月25日(水)第1ステージ モルジュ〜ラ・ショー・ド・フォン 184.5km
4月26日(木)第2ステージ モンベリアール(フランス)〜ムーティエ 149.1km
4月27日(金)第3ステージ ラ・ヌーヴヴィル〜シャルメ 157.6km
4月28日(土)第4ステージ ブル〜シオン 184km
4月29日(日)第5ステージ モンタナ・ヴィレッジ〜クラン・モンタナ 16.5km(山岳個人TT)
エヴァンスやウィギンズ、クロイツィゲルらが顔を揃える
ツール・ド・ロマンディの閉幕から僅か1週間で、グランツール第1戦ジロ・デ・イタリアが開幕する。そのジロや7月のツール・ド・フランスに照準を合わすオールラウンダーが、毎年ロマンディに集結。今年もマイヨジョーヌ候補と呼べる選手たちが揃った。
山岳でタイムを守り、そして個人TTでリードを広げる走りで、昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は2度目の総合優勝を果たした。
今年エヴァンスはクリテリウム・アンテルナシオナルで総合優勝したものの、鼻炎の影響でアムステル・ゴールドレースを途中リタイアし、フレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを欠場。大会連覇に暗雲が立ち込めている。
そのエヴァンスと7月のツールでマイヨジョーヌを巡って争うことになるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位のクリス・フルーム(イギリス)や、2010年大会の個人TTで優勝しているリッチー・ポルト(オーストラリア)を引き連れての出場。ベストメンバーに近い布陣であり、さながらのツールの予行演習だ。
アルデンヌで2勝を飾った好調アスタナは、2009年大会覇者のロマン・クロイツィゲル(チェコ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)の二枚看板で挑む。2008年大会覇者のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)は、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)のアシストに回る可能性も。
カチューシャは、バルベルデ失格によって繰り上げで2010年大会の総合優勝に輝いたサイモン・スピラック(スロベニア)や、デニス・メンショフ(ロシア)、そして昨年リーダージャージを着たパヴェル・ブラット(ロシア)が揃う。
リクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)が出場。3度目のマリアローザ獲得を狙うと公言しているバッソだが、今シーズンは序盤から明らかに精彩を欠いている。ここで結果を残さなければ後がない。
昨年総合トップ10に2人を送り込み、チーム総合成績トップに輝いたガーミン・バラクーダは、ライダー・ヘジダル(カナダ)、ダニエル・マーティン(アイルランド)、デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ)、そして昨年新人賞アンドリュー・タランスキー(アメリカ)という強力な布陣だ。昨年プロローグで優勝したジョナタン・カストロビエホ(スペイン)は、エウスカルテルからモビスタージャージに衣替えしての出場。エウスカルテルはイゴール・アントン(スペイン)がエースを担う。
比較的難易度の低いステージで、ゴールスプリントに持ち込まれれば、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)の独壇場か。登りで集団が絞られた場合は、マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)やアラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)がステージ優勝に絡んでくるだろう。
ジロに向け、ロマンディで勢いをつけたい別府史之
別府史之(グリーンエッジ)は、2007年大会第3ステージで2位に入っている。ディスカバリーチャンネルに所属し、全日本チャンピオンジャージを着た当時24歳のフミは、逃げ切りのゴールスプリントで競り合った。
あれから5年、再び全日本チャンピオンのフミがロマンディに挑む。ロマンディの出場は2年連続5度目。なお、週末に全日本選手権が開催されるため、このロマンディでフミの全日本チャンピオンジャージは見納めとなる。
日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを走り、その日のうちにスイスに向けて移動。フランスで一泊し、開幕前日の月曜日にフミは現地ローザンヌに入った。移動の長さによる寝不足がありながらも、疲れているわけではないと話す。「パイスバスコの出場をキャンセルしたから、他の選手よりも距離を走れていない。だから、ジロに向けて距離を稼げるので(ロマンディは)ちょうど良いレースだと思っている」。
結成一年目ながら、今シーズンここまで11勝を飾っているグリーンエッジ。しかしエースが活躍することで、フミがアシストとして働く機会は必然的に増える。「フレーシュとリエージュでは、レースの前半からチーム仕事をこなし、やるだけのことをやってバイクを降りた。でも自分としての走りが出来ていないから、フラストレーションが貯まっています」。
今回グリーンエッジからは昨年総合6位のピーター・ウェーニング(オランダ)が出場するが、膝の故障明けのため、総合に絡むような走りは期待出来ない。スプリンターのデーヴィスを中心に、チームはステージ優勝狙いにフォーカスするだろう。「今回は誰か一人をエースに立てるメンバー構成ではないから、チャンスを見つけて走りたい。厳しいコースが多いけど、逆に言えば(スプリンターが残れないので)チャンスは多い。ジロの前に調子づくような走りをしたいです」。
text&photo:Kei Tsuji in Lausanne, Switzerland
スイス西部を舞台にした本格ステージレース
UCIワールドツアーに組み込まれているツール・ド・ロマンディが初開催されたのは、今から65年前の1947年。以降、毎年欠かさず開催されており、今年で開催66回目を迎える。
ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれたスイスには、4つの言語圏が存在する。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つが公用語とされており、フランス語(厳密に言うとスイスフランス語)が第一公用語として話されているのが今回の舞台、同国西部のロマンディ地方だ。
スイスアルプスの本格山岳は登場しない代わりに、一帯に広がるジュラ山脈の峠が多くコースに組み込まれるのが特徴。2012年は、初日と最終日が個人タイムトライアルで、4つのロードステージが行なわれる。
下り基調のコースで行なわれるローザンヌのプロローグ(短距離個人タイムトライアル)は、超ハイスピードな闘い必至。主催者が見積もった予想スピードは60km/h。リーダージャージ獲得を目指す選手たちが、約3分20秒にわたって全力疾走する。
翌日からのロードステージに、頂上ゴールは一つも設定されていない。しかし第2〜4ステージの平均獲得標高は2000mオーバー。第3ステージの獲得標高は1550mだが、ゴール直前に標高差170m程度の登りが設定されているため、総合が動く可能性は大いに有る。
最も難易度が高いのは、最終日前日の第4ステージ。標高1400mクラスの1級山岳が3つ組み込まれており、しかも終盤に連続してカテゴリー2級、1級、1級の山岳が続く。ゴール22km手前に位置する1級山岳サンマルタンの登り、もしくはテクニカルな下りで、決定的な動きが生まれるだろう。
そして最終日は、スキーリゾート地として名高いクランモンタナの山岳個人タイムトライアル。標高差410mの1級山岳を含むコースで総合争いは決着する。
ツール・ド・ロマンディ2012ステージリスト
4月24日(火)プロローグ ローザンヌ〜ローザンヌ 3.34km(個人TT)
4月25日(水)第1ステージ モルジュ〜ラ・ショー・ド・フォン 184.5km
4月26日(木)第2ステージ モンベリアール(フランス)〜ムーティエ 149.1km
4月27日(金)第3ステージ ラ・ヌーヴヴィル〜シャルメ 157.6km
4月28日(土)第4ステージ ブル〜シオン 184km
4月29日(日)第5ステージ モンタナ・ヴィレッジ〜クラン・モンタナ 16.5km(山岳個人TT)
エヴァンスやウィギンズ、クロイツィゲルらが顔を揃える
ツール・ド・ロマンディの閉幕から僅か1週間で、グランツール第1戦ジロ・デ・イタリアが開幕する。そのジロや7月のツール・ド・フランスに照準を合わすオールラウンダーが、毎年ロマンディに集結。今年もマイヨジョーヌ候補と呼べる選手たちが揃った。
山岳でタイムを守り、そして個人TTでリードを広げる走りで、昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は2度目の総合優勝を果たした。
今年エヴァンスはクリテリウム・アンテルナシオナルで総合優勝したものの、鼻炎の影響でアムステル・ゴールドレースを途中リタイアし、フレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを欠場。大会連覇に暗雲が立ち込めている。
そのエヴァンスと7月のツールでマイヨジョーヌを巡って争うことになるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位のクリス・フルーム(イギリス)や、2010年大会の個人TTで優勝しているリッチー・ポルト(オーストラリア)を引き連れての出場。ベストメンバーに近い布陣であり、さながらのツールの予行演習だ。
アルデンヌで2勝を飾った好調アスタナは、2009年大会覇者のロマン・クロイツィゲル(チェコ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)の二枚看板で挑む。2008年大会覇者のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)は、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)のアシストに回る可能性も。
カチューシャは、バルベルデ失格によって繰り上げで2010年大会の総合優勝に輝いたサイモン・スピラック(スロベニア)や、デニス・メンショフ(ロシア)、そして昨年リーダージャージを着たパヴェル・ブラット(ロシア)が揃う。
リクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)が出場。3度目のマリアローザ獲得を狙うと公言しているバッソだが、今シーズンは序盤から明らかに精彩を欠いている。ここで結果を残さなければ後がない。
昨年総合トップ10に2人を送り込み、チーム総合成績トップに輝いたガーミン・バラクーダは、ライダー・ヘジダル(カナダ)、ダニエル・マーティン(アイルランド)、デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ)、そして昨年新人賞アンドリュー・タランスキー(アメリカ)という強力な布陣だ。昨年プロローグで優勝したジョナタン・カストロビエホ(スペイン)は、エウスカルテルからモビスタージャージに衣替えしての出場。エウスカルテルはイゴール・アントン(スペイン)がエースを担う。
比較的難易度の低いステージで、ゴールスプリントに持ち込まれれば、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)の独壇場か。登りで集団が絞られた場合は、マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)やアラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)がステージ優勝に絡んでくるだろう。
ジロに向け、ロマンディで勢いをつけたい別府史之
別府史之(グリーンエッジ)は、2007年大会第3ステージで2位に入っている。ディスカバリーチャンネルに所属し、全日本チャンピオンジャージを着た当時24歳のフミは、逃げ切りのゴールスプリントで競り合った。
あれから5年、再び全日本チャンピオンのフミがロマンディに挑む。ロマンディの出場は2年連続5度目。なお、週末に全日本選手権が開催されるため、このロマンディでフミの全日本チャンピオンジャージは見納めとなる。
日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを走り、その日のうちにスイスに向けて移動。フランスで一泊し、開幕前日の月曜日にフミは現地ローザンヌに入った。移動の長さによる寝不足がありながらも、疲れているわけではないと話す。「パイスバスコの出場をキャンセルしたから、他の選手よりも距離を走れていない。だから、ジロに向けて距離を稼げるので(ロマンディは)ちょうど良いレースだと思っている」。
結成一年目ながら、今シーズンここまで11勝を飾っているグリーンエッジ。しかしエースが活躍することで、フミがアシストとして働く機会は必然的に増える。「フレーシュとリエージュでは、レースの前半からチーム仕事をこなし、やるだけのことをやってバイクを降りた。でも自分としての走りが出来ていないから、フラストレーションが貯まっています」。
今回グリーンエッジからは昨年総合6位のピーター・ウェーニング(オランダ)が出場するが、膝の故障明けのため、総合に絡むような走りは期待出来ない。スプリンターのデーヴィスを中心に、チームはステージ優勝狙いにフォーカスするだろう。「今回は誰か一人をエースに立てるメンバー構成ではないから、チャンスを見つけて走りたい。厳しいコースが多いけど、逆に言えば(スプリンターが残れないので)チャンスは多い。ジロの前に調子づくような走りをしたいです」。
text&photo:Kei Tsuji in Lausanne, Switzerland
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