2012/04/13(金) - 12:02
パヴェ(石畳)のクラシック、パリ〜ルーベで使用されるプロ選手たちのバイクは特別仕様だ。悪路からくる振動を減衰させ、トラブルを防ぐ工夫はメカニシャンたちの腕の見せ所だ。レース前のバイクピットで徹底取材した。
パヴェ対策バイクは「ヴァーティカル・コンプライアンス」がキーワード
「北の地獄」「クラシックの女王」の異名を取るパリ〜ルーベ。荒れた石畳という、極端に過酷な路面環境に対応するべく、各チームのバイクには様々なパヴェ対策が施される。
パリ〜ルーベとロンド・ファン・フラーンデレンに向けて新型バイクを投入したのは3チーム(メーカー)。
まずトレックはレディオシャック・ニッサンのためにトレックDOMANE(ドマーネ)を、スペシャライズドは優勝候補トム・ボーネンのためにルーベSL4と思われるプロトタイプを、そしてBMCは自チームのためにグランフォンドGF-01という新モデルをそれぞれ投入した。
いずれも振動吸収性に優れた特性を持つ新型バイクだ。それぞれのコンセプトは各バイクの項目で紹介するが、その3モデルに共通する考え方は、縦方向の柔軟性を高め、路面追従性を向上させるという方針で開発されていること。3社が共通して主張する「ヴァーティカル・コンプライアンス(=Vertical Compliance)」が、パヴェ対策バイクのキーワードになる。
他にもコンフォート系の味付けがされたモデルをこのレースのために流用するチームも多く、もはやノーマルロードバイクで臨むチームは少ない。
各パーツにはタフかつ振動吸収性に優れた製品が使用される。一見すると旧型に思えるアルミ製のパイプリムはその顕著な例だろう。バーテープの2重巻は当たり前、補助ブレーキや27〜28Cの太い生ゴム&コットンのハンドメイドタイヤなどがこぞって投入されていた。
それでは各チームバイクのそれぞれのディテールまでを詳細に紹介しよう。
トム・ボーネンの優勝バイク スペシャライズド・ルーベ SL4
ロンド・ファン・フラーンデレンではTARMAC SL4を駆ったトム・ボーネン(オメガファーマ・クイックステップ)は、スペシャライズドROUVAIX(ルーベ)の新型バイクを駆る。まだ名前こそ公表されていないが、ROUVAIX SL4と考えて間違い無いだろう。
ルーベは「ゼルツ」と呼ばれる樹脂製のエラストマーを内蔵するフォークとチェーンステイが特徴的だ。SL3と違うのはゼルツを嵌合する両ステーの片側が開いていることだ。
スペシャライズドは今回ボーネンに4台の新車を用意したという。また、新型スラムREDを搭載したのはボーネンと第2エースのシャヴァネルのふたり。
サドルはスペシャライズドのCICANEという幅広いシェイプを持つものがセットされていた。
タイヤはFMB製と思われる27Cのパヴェ専用品。空気圧は5.5気圧という低圧のセッティングだ。トップチューブにはパヴェ区間の距離や難易度が記されたメモを貼り付けていた。
フアンアントニオ・フレチャのピナレロDOGMA K
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)らが乗るのはピナレロDOGMA K。ドグマ系のロングライドモデルで、KOBH 60.1から名称変更されたモデルだ。
DOGMA Kはドグマより振動吸収性を付加した設計になっており、「センチュリーライド・ジオメトリー」もやや上体が起きる設計のため、パヴェライドに適しているのだろうか。
チームスカイは昨年までリムにアンブロシオのクラシックなチューブラーリム「ネメシス」を使用する選手が多かったが、今年のチョイスはシマノC35 ホイール。タイヤにFMBのパヴェスペシャルを使用。シマノDi2を標準装備。Di2レバーフードを2重に被せているのが面白い。
ガーミン・バラクーダのサーヴェロR3
昨年覇者ヨハン・ファンスーメレンはサーヴェロR3に乗る。パリ〜ルーベに3勝(オグレディ、カンチェラーラ)した名車であるR3は振動吸収性に優れたロードモデルで、山岳でも使用される軽量性をもったオールラウン
ドな使用に対応するバイクだ。
ホイールにはマヴィック・コスミックのワンオフであるM40(開発コードネーム)カーボンディープホイールがセットされる。名前の通り40mmハイトをもつが、パヴェ専用に振動吸収性を高めたモデルだとマヴィックのスタッフは言う。
タイヤにもマヴィックのロゴがプリントされるが、おそらくは社外品。コンポはシマノ。ROTORのクランク&Qリングを使用。3Tのハンドルセット上にはガーミンのEDGE500コンピュータが搭載される。
リクイガス・キャノンデールのスーパーシックスEVO
リクイガス・キャノンデールが乗るのはスーパーシックスEVOだ。昨年までチームはコンフォートモデルであるSYNAPSE(シナプス)を駆ったが、今年はノーマルのロードモデル、スーパーシックスEVOを採用してきた。これはひとえにキャノンデールがスーパーシックスEVOに採用したマイクロサスペンションと呼ぶ「SAVE」テクノロジーによる振動吸収性能に自信を持っていることの現れだろう。
ホイールはマヴィック・キシリウムまたはコスミックカーボンを使用している。ボトルケージにエリート・チウッジ、タイヤに太いものを使用していること以外はあまりロード用セッティングと変わらない。
キャノンデールスーパーX次期モデル
結局使用されることがなかったが、リクイガス・キャノンデールのチームカーのルーフにはキャノンデールスーパーXの2013モデルがディスプレイされていた。このハイモッドカーボン仕様のシクロクロスバイクにはディスクブレーキが直付けされ、次期スーパーXがディスク仕様になることが明らかとなった。セットされたのはAvidのワイヤー引きディスクブレーキ、BB7。ホイールは29erのものを流用しているようだ。このバイクを見せるのはおそらく宣伝のためで、なぜならUCI規定によりこのバイクは2012年のロードレースで使用することができないからだ。
カチューシャのキャニオンUltimate AL
カチューシャはドイツブランドのCANYON(キャニオン)に乗る。インターネット上でユーザーに直接販売されるバイクブランドだ。
パリ〜ルーベのバイクに採用されたのはアルミフレームのUltimate ALの昨年モデルだ。薄いパイプの軽量モデルで、耐久性と振動吸収性に優れると思われるが、快適系のバイクがラインナップされていないことがチョイスの理由だろう。
ホイールはマヴィック・コスミックのワンオフであるM40(開発コードネーム)カーボンディープホイールがセットされる。ボトルケージはアルミのエリート・チウッジ。デュラエースのチェーンリングは見慣れない光沢処理のもので、チームスカイなど数チームが使用していた。次期9000系デュラエース開発に役立てるためのテストサンプルだろうか?
アージェードゥーゼルのクォータKOM EVO
クラシックで勝負に絡めないためかメカニック的な工夫が少なかったのがアージェードゥーゼルだ。通常ロードモデルのKOUTA KOM EVOに乗り、ホイールはレイノルズMV-T。タイヤにはミシュランのプロ用特別供給モデルの「サービスクルス」がセットされる。マルティン・エルミガー(スイス)のみ後輪にスペシャル品と思われるカーボンディープホイールをセットしていた。
サクソバンクのスペシャライズド・ルーベSL3
優勝候補のボーネンにはSL4が優先供給されたが、チームサクソバンクが乗るのはスペシャライズドのルーベSL3。振動吸収性に富むゼルツ樹脂をフォークとシートステーにインサートしたモデルだ。ルーベはクイックステップ時代にトム・ボーネンがパリ〜ルーベを、ステイン・デヴォルデルがロンド・ファン・フラーンデレンを制しているモデル。
ホイールにはZIPP、タイヤにFMBパリ〜ルーベを使用。
チームNetAppのSIMPLON PAVO
ドイツのプロコンチーム NetAppが駆るのはSIMPLONのPAVOというモデル。フルカーボンのNetAppチームエディションモデルだ。コンポはスラムRED、ホイールはマヴィックのコスミックのカーボン系モデルを使用する。タイヤにはFMBのパリ〜ルーベを使用。
パヴェ対策バイクは「ヴァーティカル・コンプライアンス」がキーワード
「北の地獄」「クラシックの女王」の異名を取るパリ〜ルーベ。荒れた石畳という、極端に過酷な路面環境に対応するべく、各チームのバイクには様々なパヴェ対策が施される。
パリ〜ルーベとロンド・ファン・フラーンデレンに向けて新型バイクを投入したのは3チーム(メーカー)。
まずトレックはレディオシャック・ニッサンのためにトレックDOMANE(ドマーネ)を、スペシャライズドは優勝候補トム・ボーネンのためにルーベSL4と思われるプロトタイプを、そしてBMCは自チームのためにグランフォンドGF-01という新モデルをそれぞれ投入した。
いずれも振動吸収性に優れた特性を持つ新型バイクだ。それぞれのコンセプトは各バイクの項目で紹介するが、その3モデルに共通する考え方は、縦方向の柔軟性を高め、路面追従性を向上させるという方針で開発されていること。3社が共通して主張する「ヴァーティカル・コンプライアンス(=Vertical Compliance)」が、パヴェ対策バイクのキーワードになる。
他にもコンフォート系の味付けがされたモデルをこのレースのために流用するチームも多く、もはやノーマルロードバイクで臨むチームは少ない。
各パーツにはタフかつ振動吸収性に優れた製品が使用される。一見すると旧型に思えるアルミ製のパイプリムはその顕著な例だろう。バーテープの2重巻は当たり前、補助ブレーキや27〜28Cの太い生ゴム&コットンのハンドメイドタイヤなどがこぞって投入されていた。
それでは各チームバイクのそれぞれのディテールまでを詳細に紹介しよう。
トム・ボーネンの優勝バイク スペシャライズド・ルーベ SL4
ロンド・ファン・フラーンデレンではTARMAC SL4を駆ったトム・ボーネン(オメガファーマ・クイックステップ)は、スペシャライズドROUVAIX(ルーベ)の新型バイクを駆る。まだ名前こそ公表されていないが、ROUVAIX SL4と考えて間違い無いだろう。
ルーベは「ゼルツ」と呼ばれる樹脂製のエラストマーを内蔵するフォークとチェーンステイが特徴的だ。SL3と違うのはゼルツを嵌合する両ステーの片側が開いていることだ。
スペシャライズドは今回ボーネンに4台の新車を用意したという。また、新型スラムREDを搭載したのはボーネンと第2エースのシャヴァネルのふたり。
サドルはスペシャライズドのCICANEという幅広いシェイプを持つものがセットされていた。
タイヤはFMB製と思われる27Cのパヴェ専用品。空気圧は5.5気圧という低圧のセッティングだ。トップチューブにはパヴェ区間の距離や難易度が記されたメモを貼り付けていた。
フアンアントニオ・フレチャのピナレロDOGMA K
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)らが乗るのはピナレロDOGMA K。ドグマ系のロングライドモデルで、KOBH 60.1から名称変更されたモデルだ。
DOGMA Kはドグマより振動吸収性を付加した設計になっており、「センチュリーライド・ジオメトリー」もやや上体が起きる設計のため、パヴェライドに適しているのだろうか。
チームスカイは昨年までリムにアンブロシオのクラシックなチューブラーリム「ネメシス」を使用する選手が多かったが、今年のチョイスはシマノC35 ホイール。タイヤにFMBのパヴェスペシャルを使用。シマノDi2を標準装備。Di2レバーフードを2重に被せているのが面白い。
ガーミン・バラクーダのサーヴェロR3
昨年覇者ヨハン・ファンスーメレンはサーヴェロR3に乗る。パリ〜ルーベに3勝(オグレディ、カンチェラーラ)した名車であるR3は振動吸収性に優れたロードモデルで、山岳でも使用される軽量性をもったオールラウン
ドな使用に対応するバイクだ。
ホイールにはマヴィック・コスミックのワンオフであるM40(開発コードネーム)カーボンディープホイールがセットされる。名前の通り40mmハイトをもつが、パヴェ専用に振動吸収性を高めたモデルだとマヴィックのスタッフは言う。
タイヤにもマヴィックのロゴがプリントされるが、おそらくは社外品。コンポはシマノ。ROTORのクランク&Qリングを使用。3Tのハンドルセット上にはガーミンのEDGE500コンピュータが搭載される。
リクイガス・キャノンデールのスーパーシックスEVO
リクイガス・キャノンデールが乗るのはスーパーシックスEVOだ。昨年までチームはコンフォートモデルであるSYNAPSE(シナプス)を駆ったが、今年はノーマルのロードモデル、スーパーシックスEVOを採用してきた。これはひとえにキャノンデールがスーパーシックスEVOに採用したマイクロサスペンションと呼ぶ「SAVE」テクノロジーによる振動吸収性能に自信を持っていることの現れだろう。
ホイールはマヴィック・キシリウムまたはコスミックカーボンを使用している。ボトルケージにエリート・チウッジ、タイヤに太いものを使用していること以外はあまりロード用セッティングと変わらない。
キャノンデールスーパーX次期モデル
結局使用されることがなかったが、リクイガス・キャノンデールのチームカーのルーフにはキャノンデールスーパーXの2013モデルがディスプレイされていた。このハイモッドカーボン仕様のシクロクロスバイクにはディスクブレーキが直付けされ、次期スーパーXがディスク仕様になることが明らかとなった。セットされたのはAvidのワイヤー引きディスクブレーキ、BB7。ホイールは29erのものを流用しているようだ。このバイクを見せるのはおそらく宣伝のためで、なぜならUCI規定によりこのバイクは2012年のロードレースで使用することができないからだ。
カチューシャのキャニオンUltimate AL
カチューシャはドイツブランドのCANYON(キャニオン)に乗る。インターネット上でユーザーに直接販売されるバイクブランドだ。
パリ〜ルーベのバイクに採用されたのはアルミフレームのUltimate ALの昨年モデルだ。薄いパイプの軽量モデルで、耐久性と振動吸収性に優れると思われるが、快適系のバイクがラインナップされていないことがチョイスの理由だろう。
ホイールはマヴィック・コスミックのワンオフであるM40(開発コードネーム)カーボンディープホイールがセットされる。ボトルケージはアルミのエリート・チウッジ。デュラエースのチェーンリングは見慣れない光沢処理のもので、チームスカイなど数チームが使用していた。次期9000系デュラエース開発に役立てるためのテストサンプルだろうか?
アージェードゥーゼルのクォータKOM EVO
クラシックで勝負に絡めないためかメカニック的な工夫が少なかったのがアージェードゥーゼルだ。通常ロードモデルのKOUTA KOM EVOに乗り、ホイールはレイノルズMV-T。タイヤにはミシュランのプロ用特別供給モデルの「サービスクルス」がセットされる。マルティン・エルミガー(スイス)のみ後輪にスペシャル品と思われるカーボンディープホイールをセットしていた。
サクソバンクのスペシャライズド・ルーベSL3
優勝候補のボーネンにはSL4が優先供給されたが、チームサクソバンクが乗るのはスペシャライズドのルーベSL3。振動吸収性に富むゼルツ樹脂をフォークとシートステーにインサートしたモデルだ。ルーベはクイックステップ時代にトム・ボーネンがパリ〜ルーベを、ステイン・デヴォルデルがロンド・ファン・フラーンデレンを制しているモデル。
ホイールにはZIPP、タイヤにFMBパリ〜ルーベを使用。
チームNetAppのSIMPLON PAVO
ドイツのプロコンチーム NetAppが駆るのはSIMPLONのPAVOというモデル。フルカーボンのNetAppチームエディションモデルだ。コンポはスラムRED、ホイールはマヴィックのコスミックのカーボン系モデルを使用する。タイヤにはFMBのパリ〜ルーベを使用。
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