2012年2月8日、ツアー・オブ・カタール(UCI2.HC)第2ステージで清水都貴(ブリヂストンアンカー)が逃げを試みた。最後は風によって形成された精鋭グループによるスプリント勝負に持ち込まれ、フィーラースやカンチェラーラを力で下したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が勝利した。

スタート前のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)とトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)スタート前のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)とトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.カタール4日目は、アルザヒーラからカタール半島北部のマディナ・アルシャマルまでの147.5km。最後は海に近いマディナ・アルシャマルの13km周回コースを2周する。

ここまでの3ステージと比較して強い風が吹いたこの日、スタート直後の横風区間で早速ビッグチームのペースアップが始まる。一時的に集団が分裂するほどのスピードの中、33kmでアタックを成功させたのは清水都貴(ブリヂストンアンカー)とラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)。この2人の逃げが決まったことで、集団はようやくスピードを落とした。

ゴールデンジャージのトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)も集団ペースアップに加わるゴールデンジャージのトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)も集団ペースアップに加わる photo:A.S.O.レース最初の1時間の平均スピードは52.1km/h。清水とバクのリードは57km地点で最大7分をマークする。81km地点のスプリントポイントはバクが先頭通過、清水が2番手通過した。

しかしガーミン・バラクーダやオメガファーマ・クイックステップがコントロールするメイン集団はレース後半にかけてペースを上げ、104km地点で清水を、そして112km地点でバクを飲み込んでいく。

逃げるラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)と清水都貴(ブリヂストンアンカー)逃げるラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)と清水都貴(ブリヂストンアンカー) photo:A.S.O.ゴール地点マディナ・アルシャマルの周回コースは道が細く、そして進行方向がコロコロと変わる。道幅のある高速道路から横風吹く狭い道に入るポイントで、集団はペースアップ。ここでゴールデンジャージを着るボーネンを含む40名弱が飛び出した。

全日本チャンピオンの別府史之(グリーンエッジ)は当時の状況を「道幅のある高速道路区間は向かい風。その先は道が狭くてさらに横風だったので、40名ほどしか先頭に残れなかった。そこからゴールまで横風で、後続集団もいくつかに分裂するほどでした。追走したものの先頭は速かった」と振り返る。

メイン集団をコントロールするガーミン・バラクーダとオメガファーマ・クイックステップメイン集団をコントロールするガーミン・バラクーダとオメガファーマ・クイックステップ photo:A.S.O.ボーネンを含む先頭集団は、後続を1分引き離して周回コースを駆け抜ける。そしてゴールまで5kmを残した横風区間で、先頭集団からファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)がアタック。このハイスピードな展開によって先頭集団は粉砕される。

カンチェラーラのアタックに真っ先に反応したアダム・ブライス(イギリス、BMCレーシングチーム)は、荒れた路面によるパンクで後退。その他にも、好位置につけていたバーデン・クック(オーストラリア、グリーンエッジ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)らがパンクの餌食となる。

点在する要塞を通り抜けていく点在する要塞を通り抜けていく photo:A.S.O.第2集団で走っていたフミは「石ころが転がり、地面に穴が空いていて落車やパンクが多発した。第2グループで走っていたものの、ラスト6kmで落車に巻き込まれそうになって遅れてしまった」と語る。

やがてカンチェラーラには、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)とトム・フィーラース(オランダ、プロジェクト1t4i)、そしてオメガファーマ・クイックステップのボーネン、ステーグマン、マースが合流。横風の中、さながら北のクラシック前哨戦のような闘いが繰り広げられる。

4名でのスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)4名でのスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.マースが離脱し、最後はステーグマンに連れられたボーネンとカンチェラーラを先頭にスプリントがスタート。フィーラースも加わったが、それまでチームメイトに守られて走ったボーネンの加速が大きく上回り、余裕のVサインでゴールラインを駆け抜けた。

ボーネンは今大会2勝目、そしてカタール通算20勝目。総合におけるライバルが軒並み遅れたため、総合でのリードを30秒以上に広げている。まさに「砂漠の王者」と呼ぶに相応しい活躍ぶりを見せる。

フミは1分45秒遅れでゴール。フミは「調子よく踏めてるしコンディションはいい感じ。自分にとっては調整&トレーニングレースだけど、うまくチームメイトとも連携がとれて仕事もこなせています。引き続き、残り2ステージも楽しみたい」と意気込む。合計71kmにわたって逃げた清水都貴をはじめとするブリヂストンアンカーの西薗良太、井上和郎、吉田隼人は、6分38秒遅れの集団でゴールした。

レース内容はレース公式サイトより。

ツアー・オブ・カタール2012第4ステージ結果
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)   3h03'14"
2位 トム・フィーラース(オランダ、プロジェクト1t4i)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
4位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
5位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)  +04"
6位 ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)    +11"
7位 ヨアン・オフルド(フランス、FDJ・ビッグマット)           +14"
8位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
10位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)            +36"
51位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                 +1'45"
106位 西薗良太(日本、ブリヂストンアンカー)              +6'38"
110位 井上和郎(日本、ブリヂストンアンカー)
115位 清水都貴(日本、ブリヂストンアンカー)
116位 吉田隼人(日本、ブリヂストンアンカー)

個人総合成績
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)  9h50'50"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)        +31"
3位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)        +34"
4位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) +36"
5位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)        +45"
6位 トム・フィーラース(オランダ、プロジェクト1t4i)         +1'00"
7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) +1'06"
8位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)  +1'09"
9位 アイディス・クルオピス(リトアニア、グリーンエッジ)       +1'10"
10位 アダム・ブライス(イギリス、BMCレーシングチーム)        +1'14"
59位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                 +3'52"
103位 清水都貴(日本、ブリヂストンアンカー)             +9'38"
116位 井上和郎(日本、ブリヂストンアンカー)             +20'26"
117位 吉田隼人(日本、ブリヂストンアンカー)             +20'57"
119位 西薗良太(日本、ブリヂストンアンカー)             +22'02"

ポイント賞
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)

チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O.
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