スコールを抜けて集団スプリントに持ち込まれたツアー・オブ・ハイナン第5ステージをマレーシア人のアヌアル・マナンとハレ・サリフが見事な1、2フィニッシュで制した。この日も総合首位はジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)がキープした。

レースを待つトレンガヌのバイクレースを待つトレンガヌのバイク (c)Sonoko.TANAKAレースに関心がなく、のんびりと室内で煙草を吹かす男性レースに関心がなく、のんびりと室内で煙草を吹かす男性 (c)Sonoko.TANAKA

3選手のエスケープの末、集団スプリントに持ち込まれる

海口から澄万までの151kmで開催されたツアー・オブ・ハイナン第5ステージ。曇り空のもとでスタートを迎えたものの、ゴールに近づくとスコールのような雨に降られる悪コンディションでのレースとなった。

綿密にコースプロフィールをチェックする別府匠監督と中島康晴(愛三工業レーシングチーム)綿密にコースプロフィールをチェックする別府匠監督と中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKAカメラマンと警察とのポジション争いに笑いながらレースがスタートカメラマンと警察とのポジション争いに笑いながらレースがスタート (c)Sonoko.TANAKA

平坦区間でスプリントがかかる平坦区間でスプリントがかかる (c)Sonoko.TANAKA決定的な逃げができたのは71km地点。僅差でひしめき合う総合上位勢から、暫定6位のウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)と暫定12位のワン・メイリン(中国、中国ナショナル)に、マート・オジャヴィ(エストニア、チャンピオンシステム)を加えた3人がアタックを決めた。

3人は集団に最大で3分程度の差をつけ、2つのスプリントポイントを上位通過する。そしてボーナスタイムを獲得し、エフィムキンが4位、ワンが5位と総合順位のジャンプアップに成功する。

ゴール手前20km地点でエフィムキンが逃げ切りを狙い、単独アタックをかけるものの、すぐに後続の2人に吸収され、逃げていた3選手もゴール前5km地点で大集団に吸収された。

スプリントを制したアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ)が両手を挙げるスプリントを制したアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ)が両手を挙げる (c)Sonoko.TANAKAそして迎えたゴールスプリント。勝負の要はゴール前2.5km地点からの長く続く下り坂だった。下り坂を使ったハイスピードのままゴールになだれ込むような形で、下りはじめからいい位置をキープしていたトレンガヌのマレーシア人スプリンター、アヌアル・マナンとハレ・サリフがゴールまで先行、見事な1、2フィニッシュを飾った。


アジア屈指のスプリンター、マナンとサリフ

ステージ5位に沈んでしまったケニー・ファンヒュメル(スキル・シマノ)は「彼らはストロングというよりもスマートな勝ち方をした。最終局面で、自分の前に2人が並ぶ形だったので、前に出ることができなかったんだ」と話す。
1、2フィニッシュを飾ったアヌアル・マナン(右)とハレ・サリフ(左・マレーシア、トレンガヌ)1、2フィニッシュを飾ったアヌアル・マナン(右)とハレ・サリフ(左・マレーシア、トレンガヌ) (c)Sonoko.TANAKAマナンとサリフや韓国人選手など、強いスプリンターを多く抱えるトレンガヌは、トレインを組むものの、ゴール前では全員がエースとなって勝利をめざすスタイルが印象的だ。

マナンは「途中、激しいスコールに遭ったが、マレーシアには雨期があり、雨のレースには慣れている。だから今日の天候も味方になったし、もちろんチームメイトの動きも良かった。ハイレベルなレースで勝てたことを本当に嬉しく思うよ」と振り返る。


福島晋一率いるトレンガヌ・プロアジアのビジョン

マレーシア籍のトレンガヌは福島晋一がキャプテンを務める結成1年目のチーム。チームの大半がマレーシア人だステージ上位の表彰式ステージ上位の表彰式 (c)Sonoko.TANAKAが、日本人と韓国人選手を含む、アジアを拠点としたインターナショナルなチームとして活動している。
来季、チャンピオンシステムがアジア初のプロコンチネンタルチームとなるが、トレンガヌは2013年のプロコンチネンタル登録をめざしているという。

監督は「チームのスポンサーはトレンガヌ自治体です。自転車競技に非常に熱心で、プロコンチネンタルチームに昇格させる費用も、自治体がスポンサードする予定です。今年は1年目ながら、アジアツアーチームランキングを4位で終えました。この結果に非常に満足していますが、今後は福島選手のようなイエロージャージを狙うオールラウンダーを増やしたいと思っています。プロコンチネンタル登録をする段階になれば、ヨーロッパ人選手も入れる予定です」と話す。トレンガヌもまた、アジアの注目チームだろう。


雨のレースを終えた愛三工業レーシングチーム雨のレースを終えた愛三工業レーシングチーム (c)Sonoko.TANAKA不完全燃焼の悔しさをバネにする愛三工業

盛一大の総合順位ランクアップをねらう愛三工業レーシングチームはスプリントに絡めず、全力を出し切れずにレースを終えた。最高位は盛の28位。

別府匠監督のコメント
「レース中盤で3人の逃げに追いつこうと盛選手が追走しましたが、うまくいかなかった。最後のスプリントでも、下りの加速のままゴールに向かったので、後方にいたチームは前に上がることができませんでした。中島選手のステージ優勝はありますが、チームが本来の実力を出せたのは第1ステージ、盛選手が5位に入賞したときくらい。それ以降うまく力を発揮できないでいます。

雨に濡れてゴールした木守望(愛三工業レーシングチーム)雨に濡れてゴールした木守望(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKAチームの中心となる盛選手、綾部選手がだいぶ疲れてきているので、もっと若い選手の力を使って勝負していきたいですね。福田選手がいなくなってしまったので、彼らも自分たちがもっと動かないといけない、ということを感じています。
あとはレースを見ていると、総合上位であっても3人以下なら逃げを容認するケースが多くなっています。盛選手はトップから15秒差、スプリントポイントでボーナスタイムを稼いでも、まだ差があるので逃げが容認される可能性は高い。明日からも盛選手の逃げを試みることと、若い選手に経験を積ませることが課題です」


盛一大のコメント
スプリントで本来の力を出し切れない盛一大(愛三工業レーシングチーム)スプリントで本来の力を出し切れない盛一大(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKA「繰り上がりで着ていたアジアンリーダージャージを明日は着ないこともあり、逃げに乗れる可能性は高いと思っています。トップとは15秒差ですが、2位とは8秒、4位とは6秒差、ボーナスポイントを稼いで、可能なかぎり上位をめざしていきたいと思っています。

スプリントについては、エースであった福田選手を失ってしまったことが悔やまれますが、残ったメンバーで最大限のことをしないといけません。今回のメンバーで、トレインを組めるのは自分と綾部選手だけです。しかし、今後のことも考えて、チームは若い選手や中島選手と一緒にスプリントをする新しい形を模索しています。

ゴールに向けて、まずは新しいメンバーでスプリントの体制を作ること。うまくいかないなら、自分で前に出ます。これまでトレインを組むのが愛三のスタイルでしたが、1人でも前に上がっていくスプリントに挑戦していきたいと思っています。

まだスプリントでの結果は出ていませんが、今年は決まった展開がなく、いろいろな選手がそれぞれの展開で勝っています。そのことに、とてもチャンスを感じでいます」

表彰式を待つポディウムガールたち表彰式を待つポディウムガールたち (c)Sonoko.TANAKAイエロージャージをキープするジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)イエロージャージをキープするジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ) (c)Sonoko.TANAKA


アジアンリーダーのヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)アジアンリーダーのヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) (c)Sonoko.TANAKAツアー・オブ・ハイナン2011 第5ステージ結果
1位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ) 3h21'25"
2位 ハレ・サリフ(マレーシア、トレンガヌ)
3位 リコ・ロジャース(ニュージーランド、ジャイアント・ケンダ)
4位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)
5位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)
6位 トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)
7位 ピーター・エルディン(スイス、アトラスパーソナル・ジャクロー)
8位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)
9位 シルウェスター・ヤニシェフスキー(ポーランド、CCC・ポルサット)
10位 マルコ・コンプ(スロベニア、ジェオックス・TMC)
28位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
33位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
34位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
58位 木守望(愛三工業レーシングチーム)
81位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)


個人総合成績
1位 ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)19h02'25"
2位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)+7"
3位 アレクサンドル・シュミット(ドイツ、エディ・メルクス)
4位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)+9"
5位 ワン・メイリン(中国、中国ナショナル)+10"
6位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)+11"
7位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)+12"
8位 ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)
9位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+15" 
10位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)
33位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+29"
44位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'19"
52位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+3'53"
64位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+5'22"


山岳賞
ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)

ポイント賞
ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)

アジアンリーダー
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)

チーム総合成績
ジェオックス・TMC

photo&text:Sonoko.TANAKA