興隆から文昌まで、海南島の東部を北上する161kmで開催されたツアー・オブ・ハイナン第3ステージ。レースの中盤に3人に逃げができたが、残り10kmで集団に吸収され、集団スプリントの末、スキル・シマノのトム・フィーラースとケニー・ファンヒュメルが1、2フィニッシュを飾った。

ホテルからスタート地点に向かう選手たち。朝から南国の日差しが降り注ぐホテルからスタート地点に向かう選手たち。朝から南国の日差しが降り注ぐ (c)Sonoko.TANAKAツアー・オブ・ハイナン第3ステージがスタートツアー・オブ・ハイナン第3ステージがスタート (c)Sonoko.TANAKA

ファンヒュメルがフィーラースをアシスト

昨年ツアー・オブ・ハイナンでステージ4勝を飾っているファンヒュメルがフィーラースをアシストする形での勝利だった。ケニーは「自分は今季かぎりでチームを去ることが決まっている。だから、今大会のエースはフィーラースであって、できるかぎり彼をアシストするのが自分の仕事になる。もちろんチャンスがあれば、狙いに行くよ!」とコメントした。

スプリントを制したトム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)が両手を挙げるスプリントを制したトム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)が両手を挙げる (c)Sonoko.TANAKA

表彰を待つスキル・シマノの2選手表彰を待つスキル・シマノの2選手 (c)Sonoko.TANAKAリーダージャージはジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)が2位のヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)に2秒プラスし、7秒差でキープ。コンチネンタルチームながら、山岳賞ジャージを着るチームメイトのジュリアン・アントマルシュと合わせて、非常に健闘している印象だ。しかし、連日のレースコントロールによる疲労に加え、7人の選手枠ながら、チームはすでに4人になっていることなど、最終日までジャージを維持するためには不安要素も多い。


盛一大が10位でフィニッシュ、総合7位に浮上

ステージ上位の表彰式ステージ上位の表彰式 (c)Sonoko.TANAKA愛三工業レーシングチームは、スタートから100km地点付近、風の強いカーブで福田真平と木守望が落車する。木守はレースに復帰できたが、福田は起き上がれずに病院に搬送。鎖骨骨折と診断され、レースから離れることになった(ケガを負っているものの、本人はとても元気という情報)。

そして綾部勇成と盛一大のベテランコンビでゴールスプリントに挑むものの、前方の選手が横一線に広がってしまったため、思うようなラインが取れず、全力を出し切れずに盛が10位、綾部が11位という結果でレースを終えた。盛は中間スプリントでボーナスポイントを獲得したため、総合順位を7位に上げた。


ステージ10位でフィニッシュした盛一大(愛三工業レーシングチーム)ステージ10位でフィニッシュした盛一大(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKA盛一大のコメント
「今回は各チームがトレインを組んでゴールに向けて加速する形ではなく、なかなか加速せずにゴール手前で一斉にスプリントがかかる形でした。この先もこの形が多くなるかも知れません。愛三チームはトレインを組むほうが得意なので、自分たちのトレインを組んで、うまく前に出て行きたいと思います。今日のスプリントでは、前方の選手があまり伸びて(加速して)いないように感じました。もし前に出ることができれば、上位に食い込む可能性は高いと思います」

別府匠監督のコメント
「今大会でエーススプリンターを務める福田選手を失ってしまったことは、チームにとって非常に残念なことです。戦力としても痛手ですし、これまでチームのエーススプリンターは西谷泰治選手でしたが、今回は若い福田選手を中心とした形で経験を積みたかったです…。

明日からは、ステージ優勝と盛選手の総合順位のために、チーム一丸となってスプリントに集中しようと思っています。スプリントポイントとゴール、どちらも狙っていきます!」


綾部勇成インタビュー「常に上をめざす気持ちを大切に!」

暑いレースを終えた綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)暑いレースを終えた綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKA昨日のステージ優勝から一転して、悪運に見舞われてしまった愛三工業レーシングチームだが、チームはいい雰囲気でレースに臨めている。チームの年長選手であり、キャプテンの綾部勇成選手に話を伺った。

-- 今年、好成績が目立ちますが、何かチームに変化はありますか?

「2009年からアジアツアーに参戦していますが、今年はより明確にアジアツアーチームランキング1位という目標を掲げるようになりました。ポイントを稼ぐために自分は何をしないといけないのか?ということを各選手が考えていますし、チームとしては強い共通意識をもってレースに挑めています。

監督が別府さんに代わったことで、選手と監督の距離が近くなりました。去年まで一緒に走っていたということもありますし、個人的には中学生の頃から知っている仲です。監督とキャプテンという立場ながら、近い距離で意見交換ができますし、考えていることがわかるので、監督が言うことを若い選手に伝えるフォローもできています。

しかし、新体制になって1年目なので、たくさんの失敗を経験しているのも事実です。来年、2年目になって、今年できなかったことが改善されれば、もっといい結果が付いてくると思っています。
あとは今年は震災の影響でレース数が減ったこともあり、練習量が増えました。自主的に選手が集まって、合宿をする機会も増えたことも良かったと思います」

-- 具体的にどのような練習をしていますか?

「この大会の前は、3日間のステージレースを想定するようなやり方で、スプリント重視、距離重視、山岳重視などのメニューを3日間ずつこなしました。どうやったら強度を上げられるか?ということを考えて、自分たちのやり方で試行錯誤しながらメニューを組んでいます」

-- チーム在籍6年目、年長の立場になって、若い選手に何を求めていますか?

「自分が伊藤や木守と同じ年代だった頃は、ヨーロッパに行きたい、もっと上のカテゴリーで走りたい、という気持ちでいっぱいでした。彼らは最初からアジアで国際レースを走る環境にいますが、アジアは確かにレベルも上がってきているとはいえ、自転車競技の頂点ではありません。チームはヨーロッパで走る前のステップとして、いまはアジアで走っていますが、選手がこのチームに留まる必要はありません。さらに上をめざす気持ちを大切にしてほしいと思います。

-- この先の目標は?

「アジアツアー上位もめざしますが、まずはロンドン五輪に向けて、ロードとトラック中距離と代表選手をチームから出すこと、また五輪で好成績を残すことが来年の前半に向けての目標になります。そしてチャンスがあるなら、自分自身のキャリアとして、ヨーロッパや上のカテゴリーに挑戦したいといつも思っています」





ツアー・オブ・ハイナン第3ステージ結果

1位 トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ) 3h53'30"
2位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)
3位 ハレ・サリフ(マレーシア、トレンガヌ)
4位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
5位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ)
6位 マート・オジャヴィー(エストニア、チャンピオンシステム)
7位 ファルスコール・マーテン(オランダ、タイプ1)
8位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)
9位 リコ・ロジャース(ニュージーランド、ジャイアント・ケンダ)
10位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
11位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
16位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
49位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
81位 木守望(愛三工業レーシングチーム)
DNF 福田真平(愛三工業レーシングチーム)

個人総合成績
1位 ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)11h50'38"
2位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)+7"
3位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)+11"
4位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)+12"
5位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)+13"
6位 ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)
7位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+15" 
8位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)
9位 クリスティアン・ポース(ルクセンブルク、ディフェールダンジュ)+16"
10位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)
35位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+29"
46位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'19"
55位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+3'53"
71位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+5'22"

山岳賞
ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)

ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)

アジアンリーダー
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)

チーム総合成績
スキル・シマノ

photo&report:Sonoko.TANAKA