2011年10月9日、フランス中部で第105回パリ〜トゥール(UCI1.HC)が開催される。世界選手権で優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がアルカンシェルデビューを飾るこの大会。昨年5位に入った新城幸也(ユーロップカー)の活躍に期待したい。

名物グラモン大通りがトラム工事により短縮

パリ〜トゥール2011コースマップパリ〜トゥール2011コースマップ image:ASOパリ〜トゥールは今年で開催105回目を迎える伝統のワンデークラシック。2005年に発足したUCIプロツアーカレンダーに組み込まれていたが、UCIとレース主催者ASOの確執の影響で2008年にHC(超級)クラスに格下げされた。しかしその格式は依然として高い。

今年のスタート地点は、パリ南西100kmに位置するヴォーヴ。そこから世界遺産のロワール渓谷を南に向かい、最後はトゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。

一見完全なるスプリンター向きのクラシックだが、過去には何度も逃げ切りが決まっている。その秘密はラスト15kmを切ってから連続する細かなアップダウンにある。

昨年初登場の「ボーソレイユ」の登りをラスト10km地点でクリアし、休む間もなくラスト7km地点で「レパン(長さ500m・最大勾配8%)」が登場。いずれもスプリンターがパワーで乗り切れる短い上りだが、毎年ここで堰を切ったようにアタックが掛かる。

パリ〜トゥール2011ラスト13kmプロフィールパリ〜トゥール2011ラスト13kmプロフィール image:ASOこれらの短い登りでどれだけ集団を引き離したとしても、決定的なリードは奪えない。しかしトゥール郊外特有の曲がりくねった細いコースが少人数の逃げグループに味方する。大集団は縦に長く伸びてしまい、追撃モードに入りにくい。そのため少人数で逃げる選手にもチャンスがあるのだ。

「レース終盤に連続する上り」「細く曲がりくねったコース」「ゴールまでの距離」という3つの要素が絶妙に絡み合い、逃げ切りと集団スプリントの際どいマッチレースが繰り広げられる。

ゴール地点はトゥールのグラモン大通り。「牽制しながらも逃げる選手と猛烈な勢いで追い上げる大集団のバトル」を演出する3kmの直線路が名物だが、今年はトラム敷設工事の影響で、直線路が600mに短縮された。「ボーソレイユ」と「レパン」の登りからゴールまでの距離も短縮されており、昨年比で逃げ切りの可能性はちょっとばかし上がっている。


フレイレ連覇?ジルベール復権?カヴの虹色ウィン?そして新城は?

世界選手権で優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)世界選手権で優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Riccardo ScanferlaUCIワールドツアーレースではないため、地元のUCIコンチネンタルチームも参加可能。今年はUCIプロ14チームとUCIプロコンチネンタル10チーム、さらにUCIコンチネンタル1チームを加えた合計25チームが出場する。

ロード世界選手権で優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)は、このパリ〜トゥールでアルカンシェルを初披露する。これまでパリ〜トゥールでは成績を残していないが、コースレイアウト的にカヴ向きのワンデークラシックと言える。

昨年の集団スプリントで先頭に立つオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)、後方に新城幸也の姿も昨年の集団スプリントで先頭に立つオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)、後方に新城幸也の姿も photo:Cor VosそしてHTC・ハイロードは1軍を送り込む。世界選手権2位のマシュー・ゴス(オーストラリア)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ)、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)という強力なバックアップを得て、カヴがパリ〜トゥール初制覇を目指す。

昨年大集団によるスプリントで優勝したのはオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)。今年は連覇を狙うが、世界選手権では9位に沈んでおり、そのコンディションには疑問が残る。なお、現在35歳のフレイレは2012年も現役を続行することを決めている。

今年のワンデークラシックで勝ちまくっているフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)今年のワンデークラシックで勝ちまくっているフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Kei Tsuji集団スプリントに持ち込まれた場合は、2007年大会で優勝しているアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)や、落車で世界選手権連覇の夢が潰えたトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)、ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)、ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)らが勝負に絡んでくるだろう。

これらのスプリンターに対して、終盤の登りで攻撃を仕掛け、劇的なエンディングを演出するのがアタッカーたち。その中でも注目は、2008年と2009年に優勝しているフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)だろう。

落車によって世界選手権の勝負に絡めなかった新城幸也(ユーロップカー)落車によって世界選手権の勝負に絡めなかった新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji登りでアタックを仕掛け、少人数でのスプリントで勝利するのがジルベールの王道的勝ちパターン。仮にジルベールが勝てば、過去に4名しか達成していない大会3勝メンバーに仲間入りする。

他にもシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)や、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)らの動きに注目。彼らの強烈なアタックが、集団を粉砕するだろう。

日本からは唯一新城幸也(ユーロップカー)が出場する。昨年世界選手権で9位に入り、そしてこのパリ〜トゥールの集団スプリントで5位に食い込んだユキヤ。今年は好コンディションで世界選手権に挑みながらも、落車でチャンスを逃している。このパリ〜トゥールでその鬱憤を晴らしてほしい。

過去10年のパリ〜トゥール優勝者
2010年 オスカル・フレイレ(スペイン)スプリント
2009年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2008年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2007年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)スプリント
2006年 フレデリック・ゲドン(フランス)逃げ切り
2005年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2004年 エリック・デッケル(オランダ)逃げ切り
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2002年 ヤコブ・ピール(デンマーク)逃げ切り
2001年 リシャール・ヴィランク(フランス)逃げ切り
2000年 アンドレア・タフィ(イタリア)逃げ切り

text:Kei Tsuji
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