中国で初めて開催されているツアー・オブ・北京。UCIと提携するGCP(グローバル・サイクリング・プロモーション)の完全バックアップによる開催だが、いったいどのようなレースになるのだろう? レースの真の姿を現地からレポートしていこう。

“本当”に開幕したツアー・オブ・北京

アジア初のUCIワールドツアークラスのレースがいよいよ開幕した。レースカレンダーに組み込まれた当初は何も詳細が発表されず、「本当に開催されるのか?」なんて噂された今大会だったが、無事に開幕を迎えることになった。

鳥の巣スタジアム前に設置されたポディウム。たくさんの人がいるが、皆IDを首に下げた関係者たち鳥の巣スタジアム前に設置されたポディウム。たくさんの人がいるが、皆IDを首に下げた関係者たち photo:Sonoko Tanakaスタート前、鳥の巣スタジアム前で笑顔を見せる選手スタート前、鳥の巣スタジアム前で笑顔を見せる選手 photo:Sonoko Tanaka


「すべての人にとって初めての試みになる」と強調したUCIのパット・マックエイド会長。そう、100年以上も続いているツール・ド・フランスにだって、トラブルは付きもの。したがって初開催のツアー・オブ・北京がどのようなレースになるかは、いい意味でも予測不可能というわけだ。もちろん安全が保証された上での開催だが...。レース開催においてはすでに4年間の契約がなされているが、アジアとヨーロッパをつなぐ画期的な大会になることを期待しよう。

ライトアップされた鳥の巣スタジアム。ツアー・オブ・北京をイメージした自転車のオブジェができたライトアップされた鳥の巣スタジアム。ツアー・オブ・北京をイメージした自転車のオブジェができた photo:Sonoko Tanakaオリンピック公園がレースの拠点

レースの拠点となるのは、北京北部のオリンピック公園。北京五輪のメイン会場、鳥の巣スタジアム(国家スタジアム)の周りで第1ステージの個人タイムトライアルは開催された。第2ステージのスタート、最終ステージのゴールもスタジアム前に設置される。

2008年の北京五輪から3年が経つが、いまでも多くの観光客で賑わい、当時の熱気を感じることができるエリアになっている。ちなみに沿道では、ミッキーマウスなど有名キャラクターを真似た着ぐるみたちが観光客を出迎えてくれる。一時期話題となった、偽物キャラクターのテーマパークを彷彿させる光景だ……。

お尻にゼッケンを付けてもらう選手。ほのぼのとした空気が流れるお尻にゼッケンを付けてもらう選手。ほのぼのとした空気が流れる photo:Sonoko Tanakaカップ麺で昼食をとるチームスカイのスタッフたち。味は「悪くはないよ」とのことカップ麺で昼食をとるチームスカイのスタッフたち。味は「悪くはないよ」とのこと photo:Sonoko Tanaka


そして選手たちが滞在するのは、オリンピック公園に隣接する5つ星ホテル。なかなか解決しないコンタドールの「クレンブテロール陽性反応事件」を受けて、中国産の牛肉と豚肉は食物汚染の可能性が否定できないため、選手たちは食べてはいけないという。しかし、選手のホテルではパスタや鶏肉料理が多く出されているため、今のところ特別な不満は出ていない。

チームカーとして使用されるのはヒュンダイ。国際免許が使えない中国だが、特別なナンバーが振られ、レース中のハンドルは監督が握るチームカーとして使用されるのはヒュンダイ。国際免許が使えない中国だが、特別なナンバーが振られ、レース中のハンドルは監督が握る photo:Sonoko Tanakaこのキャラクターの名前は何だろう? 同様の着ぐるみたちが観光客を出迎えてくれる(あまり嬉しくない)このキャラクターの名前は何だろう? 同様の着ぐるみたちが観光客を出迎えてくれる(あまり嬉しくない) photo:Sonoko Tanaka


過剰な厳重体制で開催された第1ステージ

ゴールゲート近く、警備にあたる軍人たちが等間隔で並ぶゴールゲート近く、警備にあたる軍人たちが等間隔で並ぶ photo:Sonoko Tanaka第1ステージのスタート/ゴール地点は鳥の巣スタジアムとウォーターキューブ(水泳施設)に挟まれた広場に設置された。

前日までたくさんの観光客で賑わっていた場所だったが、一夜明けるとそこは厳重体制に一変。

オリンピック公園のゲートは固く閉ざされ、一般客は中に入ることができない。そして観客がいないにも関わらず、数メートルおきに警備スタッフが配置された光景は、少し異様とも思えるものだった。

試走を終えた選手からも「中国って、人口がものすごく多い国なんだろ? なのに、なんでここには人がいないんだ!?」なんて感想が飛び出す始末。防げる事故は未然に防ぐ、ということなのだろうか。
公園外の一般道周辺には観客がいくらか集まっていたが「大勢押し寄せた」という表現とは、少し違う……。きっと多くの北京市民はヘリコプターを動員してのTV生中継をお茶の間で楽しんだ、と信じよう。

試走を終え、笑顔をみせる選手。「路面状況はすごくいい!」と話す試走を終え、笑顔をみせる選手。「路面状況はすごくいい!」と話す photo:Sonoko Tanakaメカニックたちはホテル裏の仮設テントで仕事を進める。ヨーロッパでは見られない光景だメカニックたちはホテル裏の仮設テントで仕事を進める。ヨーロッパでは見られない光景だ photo:Sonoko Tanaka


なにはともあれ、下馬評どおり、アルカンシェルを着たトニ・マルティンの圧勝で、無事に第1ステージを終えたツアー・オブ・北京。まずは主催者、関係者一同、ホッと肩をなでおろした。明日から、北京郊外へ向かうラインレースが始まる。


text&photo:Sonoko Tanaka