2011/07/15(金) - 08:43
2004年にその歴史をスタートさせたTARMAC(ターマック)SLシリーズが、更なる進化を遂げた。前モデルであるSL3が昨年のツール・ド・フランスでワンツー勝利を飾ったのが記憶に新しい。4代目となるSL4は、すでに実戦に投入済み。アメリカ・カリフォルニアで行われたGPL(グローバル・プレス・ローンチ)で、その進化に迫った。
4代目へと進化を遂げたTARMAC SLシリーズ
R&D(リサーチ&デヴェロップメント=研究開発)に力を入れるスペシャライズド社は、現在サクソバンク・サンガード、HTC・ハイロード、アスタナの3チームにバイクを供給している。その中で、チームからのフィードバックを製品に反映。プロトタイプがプロ選手たちの手によって入念にテストされるという好ましい開発環境が整っている。
別ページでお伝えするVENGE(ヴェンジ)がハイスピード走行性能に特化し、スプリンター向きの味付けがなされているのに対し、このTARMACは軽量性と剛性を重視したオールラウンドな性能が与えられている。なお、VENGEとTARMACは共通のジオメトリーを有する。
S-WORKSのカーボン素材は、スペシャライズドが誇る先進のFACT IS 11Rを使用。フレームは4分割されたモノコック部分を接合する工法をSL3から継承している。
SL4開発にあたって、技術研究開発部責任者クリス・ダルシオ氏は、ねじれ剛性とBB剛性、そして軽量性を追求しながらも、ハンドリングやライドフィールを重視したと言う。具体的には、SL3から57gの軽量化を果たしている。コンプリートモジュールとして最軽量の地位を守りながら、剛性をアップさせることに成功。その剛性重量比はSL3を19%も上回る。
マッチョな前三角に比べるとバックステー側は少し華奢な印象。しかしブレーキブリッジ部分をワイド化するトライアンギュレイテッド・シートステーを採用し、剛性アップが図られている。
ペダリングパワーが最も集中するBB&チェーンステーはワンピース成形。バイクの推進力や踏み味に直接関わるBB剛性は、SL3と比べてわずかに上回る程度だが、そのぶんBB周辺の軽量化が進められた。
特徴的なのは、決して直線で描かれないトップチューブとダウンチューブ、そしてそれを受け止める「くびれ」のあるヘッドチューブだ。ライダーのパワーを受け止める上下2本のチューブは、ヘッドに向かうにつれ太さを増すテーパー形状。KING COBRA(キングコブラ)テーパーヘッドチューブを包み込む設計となっている。ヘッド上ワンは1-1/8インチで変更無しだが、下ワンは1-3/8インチにサイズダウン。剛性を保ちつつ、軽量化に繋げている。
全面改良されたカーボンフォークは横剛性がアップ。そして、見逃せない点として、シフターケーブルがフレーム内蔵に変更された。ダウンチューブ周辺がすっきりと収まり、メンテナンス性も向上している。
スピード全域で見せる切れ味鋭い加速力
試乗した最高モデルS-WORKS TARMAC SL4は、手に持った瞬間から物理的な軽さが際立った。世界屈指の軽量性を誇るバイクは、軽快な踏み出しを経て動き出す。ギアをかけて踏んでいくと、たわむそぶりを全く見せることなく、踏んだ分だけカツーンと加速。フレーム剛性の高さが加速の鋭さに直結している。カラっとした硬質な踏み味だ。
一言で言えばSL3同様「非常に堅い」フレームだ。低速で回している限り、このバイクの魅力は見えてこない。踏めば踏むほど、しっかりとライダーに呼応し、凄まじいまでの加速感を与えてくれる。低速から高速まで、その全域で踏めば響く走りを見せる。ここ一発のアタックでその鋭さが活きるだろう。それでいて剛性アップと反比例しがちな振動吸収性が保たれているのはさすがの一言だ。
しかし、たわみの少なさ(堅さ)はロングライドでマイナスに転じる。踏めなくなると、途端に地面の重さがダイレクトにペダルにのしかかるような錯覚に陥る。あくまでもレースに特化したレーシングバイクであり、決してロングライド向きのバイクではない。加減速を堪能するうちに思いのほか早くやってきた「売り切れ状態」に一人苦しんだ。
神経を尖らすレベルではないものの、ハンドリングもクイックな印象を残す(スピードの上昇とともに安定感は増すが)。近年スペシャライズドはライダーの脚質やスタイルに合わせたバイクの細分化が進んでおり、俊敏さや加速力を優先しないならば、ROUBAIX(ルーベ)を選択すべきだ。
だが、同社のフレーム細分化の恩恵として、TARMAC SL4は徹底的に軽量化と剛性アップが進められた。より切れ味が増したような印象で、レーシングバイクとしては最高の出来だと言えるだろう。脚力で劣るアマチュアライダーでも、ヒルクライムなど、登りでパワーをかけ続けるようなシーンでは素晴らしい相棒になる。
一つランクを落とし、S-WORKSではないTARMAC SL4 PROに乗るとまた印象が異なる。PROモデルでさえも、剛性重量比でSL3のS-WORKSモデルを上回っている。カーボングレードがFACT IS 11Rから同10Rに落とされている分、角の取れたマイルドさがにじみ出る。ライダーの脚質やライディングスタイルに合わせたバイク選びが可能だ。
text&photo:Kei Tsuji in Monterey, USA
4代目へと進化を遂げたTARMAC SLシリーズ
R&D(リサーチ&デヴェロップメント=研究開発)に力を入れるスペシャライズド社は、現在サクソバンク・サンガード、HTC・ハイロード、アスタナの3チームにバイクを供給している。その中で、チームからのフィードバックを製品に反映。プロトタイプがプロ選手たちの手によって入念にテストされるという好ましい開発環境が整っている。
別ページでお伝えするVENGE(ヴェンジ)がハイスピード走行性能に特化し、スプリンター向きの味付けがなされているのに対し、このTARMACは軽量性と剛性を重視したオールラウンドな性能が与えられている。なお、VENGEとTARMACは共通のジオメトリーを有する。
S-WORKSのカーボン素材は、スペシャライズドが誇る先進のFACT IS 11Rを使用。フレームは4分割されたモノコック部分を接合する工法をSL3から継承している。
SL4開発にあたって、技術研究開発部責任者クリス・ダルシオ氏は、ねじれ剛性とBB剛性、そして軽量性を追求しながらも、ハンドリングやライドフィールを重視したと言う。具体的には、SL3から57gの軽量化を果たしている。コンプリートモジュールとして最軽量の地位を守りながら、剛性をアップさせることに成功。その剛性重量比はSL3を19%も上回る。
マッチョな前三角に比べるとバックステー側は少し華奢な印象。しかしブレーキブリッジ部分をワイド化するトライアンギュレイテッド・シートステーを採用し、剛性アップが図られている。
ペダリングパワーが最も集中するBB&チェーンステーはワンピース成形。バイクの推進力や踏み味に直接関わるBB剛性は、SL3と比べてわずかに上回る程度だが、そのぶんBB周辺の軽量化が進められた。
特徴的なのは、決して直線で描かれないトップチューブとダウンチューブ、そしてそれを受け止める「くびれ」のあるヘッドチューブだ。ライダーのパワーを受け止める上下2本のチューブは、ヘッドに向かうにつれ太さを増すテーパー形状。KING COBRA(キングコブラ)テーパーヘッドチューブを包み込む設計となっている。ヘッド上ワンは1-1/8インチで変更無しだが、下ワンは1-3/8インチにサイズダウン。剛性を保ちつつ、軽量化に繋げている。
全面改良されたカーボンフォークは横剛性がアップ。そして、見逃せない点として、シフターケーブルがフレーム内蔵に変更された。ダウンチューブ周辺がすっきりと収まり、メンテナンス性も向上している。
スピード全域で見せる切れ味鋭い加速力
試乗した最高モデルS-WORKS TARMAC SL4は、手に持った瞬間から物理的な軽さが際立った。世界屈指の軽量性を誇るバイクは、軽快な踏み出しを経て動き出す。ギアをかけて踏んでいくと、たわむそぶりを全く見せることなく、踏んだ分だけカツーンと加速。フレーム剛性の高さが加速の鋭さに直結している。カラっとした硬質な踏み味だ。
一言で言えばSL3同様「非常に堅い」フレームだ。低速で回している限り、このバイクの魅力は見えてこない。踏めば踏むほど、しっかりとライダーに呼応し、凄まじいまでの加速感を与えてくれる。低速から高速まで、その全域で踏めば響く走りを見せる。ここ一発のアタックでその鋭さが活きるだろう。それでいて剛性アップと反比例しがちな振動吸収性が保たれているのはさすがの一言だ。
しかし、たわみの少なさ(堅さ)はロングライドでマイナスに転じる。踏めなくなると、途端に地面の重さがダイレクトにペダルにのしかかるような錯覚に陥る。あくまでもレースに特化したレーシングバイクであり、決してロングライド向きのバイクではない。加減速を堪能するうちに思いのほか早くやってきた「売り切れ状態」に一人苦しんだ。
神経を尖らすレベルではないものの、ハンドリングもクイックな印象を残す(スピードの上昇とともに安定感は増すが)。近年スペシャライズドはライダーの脚質やスタイルに合わせたバイクの細分化が進んでおり、俊敏さや加速力を優先しないならば、ROUBAIX(ルーベ)を選択すべきだ。
だが、同社のフレーム細分化の恩恵として、TARMAC SL4は徹底的に軽量化と剛性アップが進められた。より切れ味が増したような印象で、レーシングバイクとしては最高の出来だと言えるだろう。脚力で劣るアマチュアライダーでも、ヒルクライムなど、登りでパワーをかけ続けるようなシーンでは素晴らしい相棒になる。
一つランクを落とし、S-WORKSではないTARMAC SL4 PROに乗るとまた印象が異なる。PROモデルでさえも、剛性重量比でSL3のS-WORKSモデルを上回っている。カーボングレードがFACT IS 11Rから同10Rに落とされている分、角の取れたマイルドさがにじみ出る。ライダーの脚質やライディングスタイルに合わせたバイク選びが可能だ。
text&photo:Kei Tsuji in Monterey, USA